「ダッチオーブンで焚き火台、作りません!?」
そのプロジェクトは、企画会議の際に出た小雀(こすずめ)さんの一声から始まりました。「なにそれ! 超面白そう!」と 骨髄反応したプロジェクトのメンバー一同。だってみんな、好奇心と美味しいキャンプ飯だけを食べて生きていますから♪
2017年12月某日
AM10:00
そんなわけで、精鋭ドリームチームが集結!!
メンバー
アウトドアコーディネーター:小雀 陣二
ホンダアクセス 商品企画部
プロジェクトメンバー:片山 貴王、廣瀬 沙由里、藤巻 愛実
プロダクトデザイン:三ツ尾 一孝
当日、作業部屋に用意されていたのは、10年以上使い込まれて味が出ている小雀さん愛用のステンレス製ダッチオーブン10号サイズ2つ。そしてなぜか、かっぱ橋道具街で調達してきたアルミ製の鍋が2つ。作業室にいい大人数人と大きな鍋がズラリって、かなりシュールな光景かも…。
AM10:30~
大真面目に作戦会議スタート!
メンバー:「そもそもなぜ、ダッチオーブンで焚き火台を?」
小雀さん:「ダッチオーブンを使った焚き火台は、20年ほど温めてきた夢であり野望でして…。ダッチオーブンと暮らすうちに、ある日ふと思い立ったんです。この形って焚き火台にもってこいなんじゃないか? って。世の中に焚き火台は数あれど、丸い鍋状の形の物ってないんですよ」
メンバー:「あ、言われてみれば確かにそうかも」
小雀さん:「で、ダッチオーブンを2つ重ねることを思いついたんです。ほら、なんだかカッコイイ焚き火台に見えてきません? ステンレス製で頑丈だから直火にも断然強い。ただ、ジョイントするために穴をあけないといけないし、しかも愛着のある物だけになかなか決心がつかなくて…」
一瞬落胆の表情を浮かべる小雀さん。
メンバー:「うーん、高価な物でもあるし、たしかに勇気がいりますね…」
小雀さん:「でも、聞いてくれます!? 僕の野望の具体案!」
メンバー:「おお、聞きたい! ぜひお願いします!」
小雀さん:「構造はいたってシンプル。逆さにしたダッチオーブンBの上にダッチオーブンAを乗せるだけ。ただ焚き火台なので、Aに入った薪がしっかり燃えなくてはならない。だからAとBの鍋底には空気孔を開ける必要があるというわけ」
「ほら、こんな感じで」
小雀さん:「Aを回転させると空気孔の大きさが変えられて空気の量が調節できるから、火加減の調節もOK。でもこれだけだとBの内部の空気がなくなってしまうので、Bの側面にも外気取り入れ用の空気孔を開けます。さらにAとBは一体化させないと安定して回らないし移動が不便なので、双方の鍋底の中心に穴を開けてボルトとナットで固定します」
小雀さん:「ダッチオーブンAに薪を入れて火をつけますよ。はい、火がつきましたー。火がついた薪の下に空気を送り込むようAのダッチオーブンを回して空気の量を調節します。火力を望み通りに調節できるということは…」
メンバー:「なるほど! 火力調整ができるなら、料理の時にも便利かも」
小雀さんの説明トークはさらにヒートアップ!
小雀さん:「そうそう、しかも元が頑丈な鍋だから重い鍋を乗せても大丈夫! 底が深いので、薪もガンガン入れて燃やすことができる。Aを回転させて空気孔の大きさを調節し、火加減がちょうどよくなったら空気孔を絞るとそのままキープできるからとても便利!」
小雀さん:「ダッチオーブンを使おうと思った大きな理由のひとつは、この形状。空気は暖かい方に引っ張られる。つまり上昇気流です。Bの中の空気は焚き火の熱で上に引っ張られて行き、すると側面の穴は外気を取り込む。底がすぼまっているので、こうした煙突効果を発揮するんです! ほらね、よく考えられているでしょ?」
メンバー:「うんうん! 型紙まで作ってきてくれてすごい気合いを感じるー!」
小雀さん:「ステンレス製ダッチオーブンを使うメリットはまだあります! なんと言っても強度が高い! 華奢な焚き火台と違い、そのまま重い鍋などを乗せても大丈夫だし調理がもっと自由に、楽しくなること間違いなし。しかも煙突効果で燃焼効率抜群、Aを回転すれば火加減も簡単に調整できる。撤収する時は、上下のダッチオーブンを分解して積み重ねれば約半分の大きさになるから持ち運びもしやすくイイことづくし。あ、フタももちろんちゃんと使うよ。これは使ってみてからのお楽しみ…!」
さすが、20年も温めてきただけに炎のように熱い構想! どこをとってもパーフェクトです。
ハイ、ここでトドメの一言がやってきます。みなさん準備はいいですか?
小雀さん:「これは間違いなく、一生モノの焚き火台になるよ!」
AM11:00
では、さっそく作ってみよう!
ダッチオーブンの作業は、持ち主である小雀さんが担当。廣瀬さんたちも比較用としてアルミ鍋で作ってみることに(以下、アルミ係と呼びます)。
まずは穴を開けてみよう! 開くのか!?
いよいよ小雀さんが、ハンドタイプの電動ドリルで最初の作業。上下ボルト固定用の中心穴開けから始めます。「さようなら、10年分の思い出がつまったダッチオーブンよ…また新たな姿になって我が元へ帰ってこいよ…」なんて心の声が聞こえたような聞こえないような。
うっ!!! か、硬い!!
さすが6mm厚の鍋底、そう簡単には穴なんて開きません。「大丈夫? もしかして今日中に終わらないんじゃ…?」と全員が不安に。格闘すること約5分…。
「開いたーーーー!」
最初の中心穴が見事に貫通! 我々はダッチオーブンに穴を開けた最初の人類かもしれない! うーん動画も撮っとけばよかったかな?
PM12:00
穴が開いたのでランチタイム♪
まだ穴ひとつしか開けていないのにみんなナゾの楽勝モード。社食の美味しいカレーに舌鼓♪
PM1:00
お腹いっぱい、さあ怒涛の作業!!
じゃあ、どんどん穴を開けて行くぞー! アルミ係もドリルでがんばる! こちらはステンレスよりも早く貫通、意外とラク? 改めてステンレスの硬さを実感。
小雀さんのステンレス鍋は、スピードアップのため備え付けの電動工具で穴開け。職人モードにスイッチし、ガンガン穴を開けいく。アルミ係の廣瀬さんはすっかり穴開けが上手になり、余裕の笑顔。DIY女子カッコイイ!
PM2:00
予定は変わるもの。
三ツ尾さん:「台形の空気孔の『辺』を切ろうとすると、硬いから電動糸ノコ自体が折れてしまうかも」
この一言で、ミシン目のようにドリルで穴をつなげて空気孔をぶち抜く作戦に変更。このスライムのような柔軟性こそがメンバーらしさ。「誰だっ! こんなめんどくさい企画考えたのは!? あ、俺か…」小雀さんの自虐的ネタも冴えわたります。
PM3:00
最初の空気孔が…っ!
片山さんもステンレス鍋の穴開けをお手伝い。鍋底にミシン目状の21個もの穴を開けたところで「そろそろいける!」と意を決し、金づちでたたく! たたく! たた…
「ガコン!」
ステンレスのカタマリが落ち、空気孔が突破!
「うわー! 長い闘いだったよおお…!」思わず天をあおぐ。それに続けと、アルミ係も最初の空気孔を開けました。こちらはわりとスンナリ。ふう。
ここまでで、すでに2時間経過…。だけど闘いはまだ終わっていません。まだあと7か所の空気孔をステンレス鍋とアルミ鍋それぞれに開けねば…。
「ハハハ!こりゃ無理だね」
「小雀判断」により、これまた急きょ作戦変更! 空気孔の数を減らし、上下2つずつにすることに。予定は未定、これでいいのだ。一方、穴側面のギザギザを取るためグラインダーを使い派手に火花を散らしながら削っていく小雀さん。ワイルド男子カッコイイ!
下のダッチオーブンに大きな空気孔を2つ、上のダッチオーブンには小さな穴ボコを開けて…。
鍋のツルをはずしたら上下をボルトとナットでジョイント。スムーズに回りました。「ま、まさかちゃんとできるとは…!」じつはみんな内心ビックリしております(笑)。
アルミ係のほうも、側面穴を開けて完成。片山さん独特のセンスで開けられた穴は、宇宙船っぽくてゆるい雰囲気に。作品には人柄がよく出ますね。
PM4:30
ついに完成!夢のダッチオーブン焚き火台!
実は作っている最中、「小雀判断」がもうひとつありました。
小雀さん:「薪の燃えくずが下のダッチオーブンの中に落ちるのは好ましくないよねえ」
ということで、上のダッチオーブンの底の空気孔はドット状の小穴に変更し、燃えくずが落ちにくい仕様にチェンジ。そのへんも抜かりはありません!
同時にアルミ係の焚き火台も完成。全員鉄クズまみれになりながら、やり遂げました!それでは小雀さん愛用ダッチオーブンから劇的な変化を遂げた、焚き火台の全貌をご覧ください。
なんということでしょう…! 予定よりも穴は少なめだけどほぼ設計図通り! これはすぐにでも商品化できそうな…(にやり)。
PM5:00
次が楽しみ!熱い点火式
小雀さん:「よーし上出来! これなら一生モノにふさわしいんじゃないかな? 丸くてだるまみたいな形も愛らしいし、こういう焚き火台が本当に欲しかったんだ!」
手ごたえはバッチリです。こうして、小雀さんの熱い想いから生まれたダッチオーブンの焚き火台。「どうせなら素敵な場所で冬キャンプしながら点火式しようよ! 焚き火で小雀さんにごはんも作ってもらおう♪」というメンバーのわんぱくな願望が、近いうちに実現しますよー!
みなさん、本当におつかれさまでした!
ステンレス焚き火台 ホンダアクセス公式オンラインストアにて販売中!
次回予告
次回、いよいよ夢の焚き火台に最初の火をともす!
「冬キャンプで火と遊ぶ!」編
さらに!夢の焚き火台、商品化なるか!?
「職人との熱いコラボによる試作品プロジェクト!」編
乞うご期待!
*この記事は、2018年2月6日、Circle hに掲載したものです。Circle hは、ホンダアクセスが運営するオンラインストアの旧名称です。現在は「ホンダアクセス PayPayモール店」として出店しています。