JALで働く3,000人の整備士の頂点「トップマイスター」に安全の極意を聞いてみた

羽田空港に隣接する広~い格納庫

 

羽田空港に隣接する広~い格納庫で取材班を待っていたのはJALエンジニアリングに所属する樋田 典昭(といた のりあき)さん。社名から分かるように、こちらJALエンジニアリングとは、JAL(日本航空)の飛行機を整備する会社です。

こちらがJALに所属する約3000人の整備士のなかで2人しかない「トップマイスター」である樋田 典昭さん

こちらがJALに所属する約3000人の整備士のなかで2人しかない「トップマイスター」である樋田 典昭さん

 

初めてお目にかかるので、まずはごあいさつ。樋田さんは私たちを笑顔で迎えてくれましたけど「やっぱり貫禄があるなぁ」これが第一印象でした。

実は樋田さんはJALエンジニアリングに所属する約3,000人の整備士のなかで最も上級である「トップマイスター」の資格を持つ方なのです。貫禄があって当然ですよね。

 

安全第一の現場から教わる安全の心得

さてさて、カエライフはカスタムで暮らしを変えていくことを提案するメディアですが、そこがなぜ飛行機の格納庫に来ていて、しかもトップマイスターという整備の神様のような人に会っているか? ひょっとして取材班に飛行機マニアがいるのだろうか? そんなことも考えたりするかもしれません。

まあ、「JALの格納庫に入れる!」ということをかなり楽しみにしていたスタッフばかりだったことは事実ですが、樋田さんを訪ねた理由は真剣なものです。それは航空機の整備というミスの許されない世界で行われている「安全」への想いや行動を伺うことから、クルマの世界に活かせる「安全のための大切な何か」を得ることが今回の目的なのです。

そんな突飛な申し入れを快諾していただいたJALエンジニアリングさんと樋田さんに感謝しつつ、さっそく格納庫のなかに入っていきましょう! あ~みんな、歩くの早いですよ(笑)

JALの格納庫は羽田空港内に3棟あり、2棟には作業用のやぐらがあって、高所の作業ができるようになっています

JALの格納庫は羽田空港内に3棟あり、2棟には作業用のやぐらがあって、高所の作業ができるようになっています

 

もう一つは取材時には大きな機材が入っておらずボーイング 737-800型機が整備を受けていました

もう一つは取材時には大きな機材が入っておらずボーイング 737-800型機が整備を受けていました

 

格納庫の外は滑走路

格納庫の外は滑走路

 

整備士の仕事は飛行機を飛ばさないこと?

樋田さんの職場である羽田の格納庫では、比較的時間のかからない定期的な点検や一晩かけて念入りな整備をするオーバーナイト整備などを行っています。規定どおりの作業が終わったとしても、資格を持つ整備士が書類にサインしないと作業完了と見なされず、格納庫から出すことができないそうです。それくらい安全管理が徹底されています。

機体整備用の工具が集められているツールルームです。ここの工具はバーコードで管理されていて、持ち出し時と返却時には認証が必要です。こうすることで機内に工具を忘れたりすることを防いでいます。なお、返却記録がない場合は見つかるまで探すとのことです

機体整備用の工具が集められているツールルームです。ここの工具はバーコードで管理されていて、持ち出し時と返却時には認証が必要です。こうすることで機内に工具を忘れたりすることを防いでいます。なお、返却記録がない場合は見つかるまで探すとのことです

 

整備の際にボルト類のチェックは必須です。そのためのトルクレンチも非常に多くの種類が揃っていました。正確さが求められる検査工具なので毎回使用前にはテスターで数値が正確かを測ってから使うそうです

整備の際にボルト類のチェックは必須です。そのためのトルクレンチも非常に多くの種類が揃っていました。正確さが求められる検査工具なので毎回使用前にはテスターで数値が正確かを測ってから使うそうです

 

ちょうどエンジンの整備が行われていました。樋田さんはエンジン整備の達人でもあります

ちょうどエンジンの整備が行われていました。樋田さんはエンジン整備の達人でもあります

 

手前にあるのはファンブレード。チタン合金でできているそうです

手前にあるのはファンブレード。チタン合金でできているそうです

 

「やはり緊張感のある職場なのだな」と安全管理のお話を聞いていると、樋田さんは「われわれ整備士は次のフライトのために飛行機の整備を行いますが、そこで大事なのは飛ばすことよりも悪いところを見つけて出発を止めることです」と付け加えました。

この一言はガツーンと響きました。飛行機の出発を止めてしまえば会社は対応に追われることになるし、なによりその便に乗るはずだったお客さんに迷惑をかけることになります。だけど飛行機には「絶対の安全」が不可欠なので「少しでも気になることがあれば見逃さず」整備士は誇りと自信を持って「止める」のです。

場所を移してじっくりお話を伺いました。面白い話題からシビアなことまでたくさん教えていただきましたが、やはり安全の話になると真剣な表情になり「職人」のオーラを感じました

場所を移してじっくりお話を伺いました。面白い話題からシビアなことまでたくさん教えていただきましたが、やはり安全の話になると真剣な表情になり「職人」のオーラを感じました

 

気になることを見逃さないための装備とは

こんなホレボレする答えを聞いて気持ちが妙に高ぶりましたが、ここは冷静に戻して……今の話のなかに、求めていた答えが一つありました。それが「少しでも気になることがあれば見逃さない」という部分です。

クルマは動き出した瞬間からほかの動体(人や車両)との位置関係が大切になります。とくに車両の後方はドライバーから状況がつかみにくいので後方の確認はとくに重要といえるでしょう。

だから振り向いて目視をしたり、窓を開けて周囲の音を聞いたり、ドライバーがやるべきことも多くなります。そんなときにあったらいいなと感じたものが純正アクセサリーで用意されている「リアカメラ de あんしんプラス2」です。

リアカメラ de あんしんプラス2には、バックする際、左右から接近してくる車両や歩行者を検知して知らせる「後退出庫サポート」や、走行中、後方から近づいてくるクルマの存在を感知し、距離に応じて2段階のレベルに分けて知らせてくれる「後方死角サポート」の機能があります。

また、リアカメラで道路上の白線を認識し、車線を逸脱しそうな場合に警告する機能や、バックをするときにリアカメラの映像に加えて自車を真上から見た映像のダブルビュー表示も可能です。

つまりリアカメラ de あんしんプラス2は、クルマに乗るときに死角になりがちな後方における「気になるものを見逃さない」ための装備というわけです。

 

家族が乗るクルマには

樋田さんは新人のころ、先輩整備士から「自分の身内が乗ると思って常に真剣に作業を行え」と教えられてきたそうです。そうした想いはもちろん今も持っていて、作業の速さや正確さを十分に身につけた今でも作業後に「確認」を行うことで仕事の精度を高めています。そしてこれは樋田さんだけのことではありません。

空港では格納庫のほかに駐機場にも整備士が待機しています。ただそちらはたいてい1人のみ配置されるので、作業から完成チェックまですべてを1人で行える整備士が担当します。そしてそのクラスの整備士も、チェック箇所は指さし確認を欠かさないそうです。

作業後の確認についてはとくに社内の決まりにはないとのことですが、経験を積んだ整備士ほど自主的に「確認」をはじめるそうです。つまり仕事の重みが分かってくるほど、最後に確認することが必要だと感じてくるのでしょう。

これはクルマの運転にもいえることだと思います。すべての操作でとはいいませんが、死角が多い後退時などは、直接周囲をよく見ることはもちろん、ミラーやナビの画面に映るリアカメラ de あんしんプラス2からの映像も参考にしつつ、大丈夫なら「左右OK」と声を出してみてはどうでしょうか。

声を出すという行為によって目だけのときよりも集中して確認できます。そうすることで、クルマの動きや周辺の状況をより細かく理解できるので、より確実に安全を得ることができるのです。

リアカメラ de あんしんプラス2からの映像を見ながら声を出して確認してみては?

リアカメラ de あんしんプラス2からの映像を見ながら声を出して確認してみては?

 

ということでJALのトップマイスターである樋田さんへの取材は終わりの時間になりました。飛行機の整備というと難しい作業を思い浮かべていてそれこそが要(カナメ)のように思っていました。ただ実際は、整備箇所をよく見て異変を見逃さないことや、やったことの確認を行うなど基本的なことこそ大事であるということが改めてわかりました。

格納庫の柱に掲げてあるこの言葉。お話を聞いたあとで見上げるとその重みを感じました

格納庫の柱に掲げてあるこの言葉。お話を聞いたあとで見上げるとその重みを感じました

 

樋田 典昭さん

 

「リアカメラ de あんしんプラス2」の情報はこちら

 

文/深田 昌之
写真/若林 直樹(STUDIO海童)

取材協力:日本航空