【プロに聞いた】クルマやスマホで音楽をもっと楽しむ方法-野村ケンジさん

 

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こんにちは、カエライフ編集部のカミーです。

突然ですが、あなたは音楽をどこで聴いていますか?

家の中ではもちろん、移動中のクルマの中や、最近では手元のスマートフォンを使って聴いている人も多いはず。

ただ、車内やスマホで聴く音楽は、リスニング環境に制限があるため音質に満足していない人も多いのではないでしょうか。

どうすれば限られた環境でもっと「いい音」の音楽を楽しむことができるのか?

本記事では、音のプロである野村ケンジさんにさまざまな環境で「音」を楽しむコツを教えていただきました。

  • クルマでいい音を楽しむ方法
  • イヤホンを変えれば音が変わる?自分にあったイヤホンの選び方
  • そもそも「いい音」とはなんなのか?

ここを読めばより豊かなミュージックライフを送れること間違いなし!少しのコツと工夫で身近な音楽をもっと楽しむコツをお伝えします。

 

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野村ケンジさん

オーディオ系専門誌やモノ誌、WEB媒体などで活躍。カーオーディオやホームオーディオ、ビンテージオーディオ、ヘッドホンなどの話題に詳しい。TBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」のアドバイザーとしてレギュラー出演。

 

クルマで、もっといい音を楽しもう!

こんにちは、野村ケンジです。

最初に、自宅以外で音楽を聴くもうひとつのシチューエション、「クルマで、もっといい音を楽しむ方法」をお教えします。

 

クルマで聴く音楽は、楽しさアップ!音質は…?

クルマで走っている時に見える景色や時間帯に合わせて曲を選んだり、一緒に乗る仲間と大合唱したり。

ドライブ中に音楽を聴くことは、自宅や街を歩きながら聴くのとは違った楽しさがあります。いつも聴いている曲も新鮮に聴こえたりして。

このような点で、クルマの中で音楽を聴くことは身近なエンターテインメントといえます。

 

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しかし、リスニング環境という点で見ると、不利な環境と言わざるを得ません。自宅と比べると当然のことながら空間的に狭く、その上スピーカーが設置できる場所も限られるからです。

そして何よりも走っている以上は外部からの振動や騒音があるので、音響にも影響を及ぼしやすい状況にあります。

 

コストをかけにくい、純正カーオーディオシステム。

さらに根本的な話をすれば、クルマにとって重要なのは「走る・曲がる・止まる」という基本性能を高めることです。

基本性能とは関係の無いカーオーディオは、当然のことながらコストをかけにくいというのが現実です。またコスト効率の観点から、価格帯が同クラスの車種であれば、同じオーディオ製品を流用することがあります。

しかし、たとえ同じ製品であっても、車種によって室内空間の広さやスピーカーからの距離が異なるので、聞こえ方も異なってきます。

このような様々な要因から、購入時から標準装備されているオーディオシステムは、音楽を十分に楽しめるレベルにあるとは言い難いといえます。

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クルマの音をより良くする方法

ネガティブな話ばかりをしてきましたが、もちろんクルマでもいい音を楽しむことはできます。

いちばん簡単なのが、スピーカーの交換やグレードアップです。カーオーディオ専門店やカー用品店なら、価格帯など豊富な種類から好きなスピーカーを選ぶことができます。もっと気軽にという方は、ディーラーで純正オプションのスピーカーに交換やグレードアップするのも手です。

その際にオススメなのが、セパレートタイプのスピーカー。これは、高域を担う小型ユニット“トゥイーター”と中低域を担う大型ユニット“ウーファー”に分かれているスピーカーのこと。

標準装備のスピーカーはドアやダッシュボードの下などに配置されていることが多く、音がこもり、音の広がり感がなくなりがちです。

しかし、セパレートスピーカーならダッシュボードの上など、音がこもらない位置にトゥイーターを配置することができるので、フロントウインドウの奥に大きく広がるサウンドが楽しむことができます。

 

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いっぽう、ウーファーは口径サイズが大きいほど低域の音量を稼げる傾向にありますが、必ずしも大きれば良いというわけではありません。一般的には16cm・17cmが理想のサイズと言われていますが、軽自動車のように室内が狭い車種なら12cmで充分な場合もあります。

逆に、ミニバンなどの室内が広く前後長のある車種は、17cm以上と可能な限り大きなサイズを取り付けるのがベストといえます。

ただし、車種によって取り付けが可能・不可能もありますので、詳しくはお店で、オススメの製品を訊ねてみましょう。

いかがですか?もし、あなたも「いい音」に興味がわいてきたら、ぜひクルマのスピーカーなど音質向上にチャレンジしてみてください。

週末のお出かけはもちろんのこと、毎日の通勤や通学でも、いい音で音楽を聴けば、周りの景色が、より鮮やかに見えてくるかもしれませんよ。

 

イヤホンを変えるだけで、音はグンとよくなる!耳からウロコが落ちる!?

最近は、音楽をスマートフォンで聴くという人が多いのではないでしょうか。

でも、付属の純正イヤホンで聴いていませんか?それでは、せっかくの音楽鑑賞も台無しです。市販製品にかえるだけで簡単にいい音が手に入るのですから。

ここでは、そんなポータブル環境で気軽にいい音を手に入れるコツをご紹介します。

 

なぜ、付属のイヤホンは音楽を聴くのにベストではないのか?

付属のイヤホンは製品的に粗悪というわけではありませんが、音楽リスニング専用として作られていなかったりするので、音楽を聴くのには最適とはいえません。

通話中の“会話のきこえやすさ”や、多くの人が不満なく活用できる“汎用性の高さ”などが優先されるため、音楽を聴くにはクォリティも迫力も物足りなかったり、音漏れがひどく電車内などでは使えなかったりするのです。

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もちろんコストの問題もあります。付属のイヤホンはあくまでもオマケに過ぎないため、市販製品のように十分な原価をかけることができません。

そのため、どうしても音質的には妥協せざるを得ないのが事実です。また低価格の製品は「音が出ればOK」という最低限のチェックしかされないことが多いので、同じ製品でも個体差が出る、つまり個体によって音が違うというケースもあります。

 

高級品であれば、必ずいい音が楽しめるのか?

その点、十分なコストをかけ、音質もしっかりチェックされた高級品は完成度が高く品質も均一なので間違いがありません。

だからオススメの製品となると、どうしても高額なものになってしまいがちです。しかし高級品だからといって万能ではない、というのがオーディオ製品選びの難しいところ。

実は、スマートフォンとの組み合わせでは、高級品だと実力を発揮しきれない場合があります。

高級品は音質を重視するあまり、プレイヤー(スマートフォン)側にも高い品質を(特にヘッドホン出力に)求めてしまうからです。

 

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そこでオススメしたいのが、スマートフォン向けのイヤホン

こちらは、単にリモコンが付属しているだけでなく、音質的にもスマートフォンとベストマッチするよう配慮されています。

価格も3000円〜1万円あたりがメインと、かなりお手頃。1万円前後の製品を選べば、スマートフォンでも格段にいい音を楽しむことができます

 

自分好みの音のイヤホンを、どのように見つけるのか?

スマートフォン向けのイヤホンでも、その製品は多岐にわたります。

イヤホンを選ぶ際は、お気に入りの曲を入れたスマートフォンを持っていき、たくさん試聴して“自分にとっていい音”の製品を見つけましょう。

ポイントは、パッと聴いた時にインパクトの強いものよりも、ちょっと刺激が物足りない、けれども心地よい音がするものを選ぶこと。イヤホンは耳の近くで聴く製品なので、刺激的な音色だとすぐに聴き疲れてしまうからです。

さらに一歩進んで、お気に入りのジャンルによって好みのイヤホンを見つける方法を伝授しましょう。

クラシックや女性ヴォーカルが好きな人には、中高域の表現がきめ細やかな製品がオススメ。活き活きとしたリアルな音を楽しむことができます。EDMやダンスミュージック系が好きな人は、普通のイヤホンより低域の迫力がマシマシな製品がベスト。

その際、単に低域の音量が大きいだけの“ファット”な低音ではなく、芯のしっかりしたゴリゴリの“ディープ”な低音を聴かせてくれるものを選びましょう。ずいぶんと、ノリが変わって聴こえるはずです。

Jポップは、録音された年代やエンジニアによって特徴が異なるのでなかなか一緒にはできませんが、ポイントは高域の響き方を好き嫌いで判断するのが、理想の1台を見つけ出す近道かもしれません。

例えば、シンバルやハイハットの音が決してうるさく感じず、インパクトはしっかりある、といった(自分にとってベストな)バランスのものを探し出せると、同じ楽曲でもずいぶん楽しく感じられるようになります。

このように、自分好みの音のイヤホンを選ぶことで、スマートフォンでも充分にいい音を楽しむことができます。

手軽にどんな場所でも音楽を楽しめる製品だからこそ、いい音にこだわって、楽しさを広げてください。

 

そもそも「いい音」ってなんだろう?

「いい音ってなに?」ということを、きちんと説明をしようとすると長くなってしまったり、専門的な用語が多くなってしまいがちです。

でも、受け取る側にとって「いい音とはどんな音か」と考えると、それはずばり「リアルな音」「気持ちのいい音」の2つといえます。

 

「リアルな音」を、手軽に体験してみよう。

まず、「リアルな音」とはどんなものか。手軽で簡単にわかる方法が、生の声とスマホで録音した声の聴き比べです。

スマホで録音した声は、声の調子が違って聴こえるし、音の広がりや微妙なニュアンスも拾いきれてなかったりします。これは声の一部の要素を切り取って、そこしか録音されていないからなのです。

 

 

スマホ内蔵の通話用マイクでは声の全てを取り込めませんし、スマホ内蔵のスピーカーでは録音した音をきちんと再生できない、ということになります。

つまりスマホでは、好きな音楽を存分に楽しむことはできないんです。音楽を「いい音」で楽しむためには、質の良いオーディオ機器が必要となってきます。

 

質の良いオーディオ機器が、高い理由。

しかし、「いい音」のオーディオ機器は高いという現実があります。

なぜなら、オーディオ機器にとっての「いい音」とは原音に忠実な音=生声そのものに感じられる「リアルな音」であるため、それを作り上げるために高価な素材や長い開発期間が必要となり、自然とコストが上がってしまうからです。

実際のところ高い素材を使っているからといって、「いい音」になるとは限らないのですが、オーディオ機器、中でも音質の要となるスピーカーは、電気信号を振動に換えて音を出すという基本構造が約100年近くも変わっていない“枯れた”技術のため、ある程度のセオリーは定まっていて、低コストで「いい音」を再現する裏技も必殺技もほとんど発見できていない状況です。

 

スピーカーの基本構造図

  1. 1コイルに音声信号(電流)が流れ、磁界が発生する。
  2. 2磁石との反発作用で、振動板が前後に動作する。
  3. 3振動板により空気が押し出されたり引っ張られたりして空気の振動が発生し、音として聞こえるようになる。

 

もうひとつの「いい音」=「気持ちのいい音」。

では、高いお金を出さないと「いい音」は楽しめないのでしょうか?

そんな事はありません。いい音には「リアルな音」の他にもうひとつ重要なファクターがあり、そちらを重要視することで、思ったよりも手軽に、お気に入りのサウンドを手に入れることができます。

それが、「気持ちのいい音」を選び出すということ。

「リアルな音」であることが、「いい音」の重要なファクターであることは確かです。生声に近い音だったら感動もひとしおだし、キレの良い音であればよりノリの良い演奏を楽しむことができます。

そうはいっても、気分を盛り上げたりリラックスさせたりしてくれる音楽ですから、聴き方によってはただの気持ち悪い音、ただの騒音になってしまうこともあります。そのため、自分にとって最も「気持ちのいい音」を手に入れることが、かなり重要なポイントだったりするのです。

 

「気持ちのいい音」の見つけ方。

ここで「気持ちのいい音」の見つけ方をお教えしましょう。

手身近なイヤホンやヘッドホンを例にすると、よく聴く曲、好きな曲を2〜3タイトル用意して家電量販店の試聴コーナーへ。

そこで、最初は様々なメーカーの製品を試聴してみます。できるだけ、聴いたことのないメーカー、興味を持ったことのないメーカーにも手を伸ばしてみることがポイントです。嫌いな音を知るのも、好きな音を知る重要な手立てですから。

 

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いろいろ試聴しているうちに、どんな音の傾向が好きなのか、どんなメーカーの製品が好みに合うのか、だんだんと分かってきます

そうしたら、これだと思うメーカーの製品の最上級モデルを試聴。

そこから徐々にグレードを下げていき、「このグレードまでは音が変わった気がしない」、「この音だったら充分満足できる」という製品を探し出します。これで、自分にとっての「いい音」を見つけながら、コストパフォーマンスも押さえた、自分にとってベストな製品が見つかるはずです。

実際、オーディオ機器が数多くラインナップされているのは、このような好みの問題、人によって「気持ちのいい音」が異なるという要素も関係しているわけです。ぜひ一度、この方法をチャレンジしてみてください。

音が変わるだけで、好きな音楽がさらに魅力的になる。そして、音楽をより感動的に味わうことができる。

皆さんもぜひ自分にとっての「いい音」を見つけて、より豊かなミュージックライフを楽しんでください。

 

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野村ケンジさん

神奈川県出身。自動車雑誌編集部を経てフリーに。その後は、カーオーディオやホームオーディオ、ビンテージオーディオ、ヘッドホンなどの話題をメインに、オーディオ系専門誌やモノ誌、WEB媒体などで活躍。

なかでもヘッドホン&イヤホンに関しては、年間300モデル以上の製品を数年間にわたり試聴し続けているエキスパート。また、ハイレゾ音源についても様々な関わりを持っており、アニソンレーベルのスーパーバイザーなども務めている。

メインとして活躍している雑誌やWEB媒体に加え、近年はTBSテレビ開運音楽堂「KAIUNハイレゾ」のアドバイザーとしてレギュラー出演。レインボータウンFMの月イチ番組「みづきーのrainbow tribe☆」内のコーナー「野村ケンジのたのしいハイレゾ」のパーソナリティを務めたなど、幅広い活躍を行っている。

 

※ この記事は、2017年9月28日、Honda MUSIC GARAGEに掲載したものです。Honda MUSIC GARAGEは2019年10月4日をもって閉鎖しました。