子どものためのクルマ AIBOU 東京オートサロン展示モデルができるまで

年に一度のカスタムカーの祭典「東京オートサロン2020」が2020年1月10日(金)~12日(日)に開催されます。

ホンダアクセスはホール9(北ホール)のNo 956 Moduloブースに出展します。今回のテーマは「乗り物で人と人とがつながる」。昔もこれからも乗り物を通じて、人と人とが繋がる。そこで生まれる価値を表現したい、という想いが込められています。

前回に続き、今回もホンダアクセス従業員が企画から製作まで一貫して関わり、当日の展示に向けて強いこだわりをもって準備しています!

必死に頑張っている仲間のこと、製作の過程や裏側を皆さんにも届けたい!ということで、カエライフ編集部が今年の展示コンセプトモデルの一つ、「AIBOU (アイボウ)」の製作現場に潜入。その製作過程をお届けします。一つの作品が少しずつ形になっていくさまは、まるで“大人の図画工作”という印象を受けました。

後半には「AIBOU (アイボウ)」の担当メンバーであるホンダアクセス 商品企画部 デザイナーの隈さん、岩崎さんへのインタビューも掲載しているので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

 

AIBOU (アイボウ)

AIBOU (アイボウ)って?
「子どものクルマ、はじめてのHonda」をコンセプトに、未来のユーザーとなる子どもたち向た乗り物の提案です。自分の世界を広げ、家族や友だちとの“こころ”をつなぐ、新しい移動のワクワクを持つ乗り物(コンセプトモデル)です。

 

製作現場に潜入!

2019年8月上旬:社内選考会

今回は “世代をつなぐ(過去)” “生活をつなぐ(現在)” “こころをつなぐ(未来)”という3つの方向性のもと、コンセプトモデルのアイデアを社内で募集しました。

この日に行われたのは、集まったアイデアの選考会。社長や役員が一つ一つに目を通し、確認します。「このアイデアと、あのアイデアは繋げられるよね」といったアドバイスもありました。

社内選考会の様子

 

社内選考会の様子

 

2019年8月下旬~10月下旬:スケッチ作成、協力会社の決定

社内選考会で選ばれたのち、社内の関係者からのアドバイスをもらいつつ、提案者である隈さんを中心にコンセプトをブラッシュアップ。スケッチに描き起こし、アイデアをより具現化していきます。

車両を透明のバルーンで囲うなどの方向性も決まりました。どんな車両になるのか、わくわくします!

 

AIBOU (アイボウ)のスケッチ

 

AIBOU (アイボウ)のスケッチ

 

また、「AIBOU」の製作協力会社が株式会社アークさまに決定。コンセプトを実際に形にしていく部分のサポートをしていただきます。

 

AIBOU (アイボウ)

 

2019年11月中旬~11月下旬:いよいよ製作に突入!

「AIBOU」のユーザーターゲットは小学校低学年のお子さんです。ホンダアクセスとしては、子ども向けのクルマ製作の経験はないため、ステアリングやシートの形状・大きさなど子どもの体格を仮定してスケッチするほか、社内の小柄な人に試してもらいながら検討を進めていました。

そして11月某日、アークさまにて、実際のターゲットユーザーであるお子さんに簡易モデルに乗ってもらう確認会が実施されました。

お子さんに簡易モデルを試してもらっている写真

お子さんに簡易モデルを試してもらっている写真

無理なく持てるか?アクセルに指先が届くか?など細かく確認し、何度も位置を変更します。

 

クレイモデラーがクレイ(粘土)を削る様子

その場でクレイモデラーがクレイ(粘土)を削りながら、握る部分の厚みを調整します。ちなみにクレイは普段、自動車パーツのデザインを開発する際にも用いられます。デザイナーのスケッチを3次元で再現する非常に重要な役割なのです!

 

AIBOU (アイボウ)のシートを確認

その後も何度も確認会を重ねます。ここでは最終仕様に近いレベルのシートを確認し、細部の処理や形状などを相談していました。また、生地の違いによる差を比べながら、使う生地を決めていました。

 

LEDライトの確認

ステアリングやシートの使い勝手の調整が完了したら、今度は「いかにデザインを再現するか」の部分を詰めていきます。ステアリングのスイッチのLEDライトの光り方などを確認します。

 

間口の大きさの確認

間口の大きさ(子どもが足をひっかけないかなど)も確認。

 

子どもがAIBOUに乗る様子

だいぶ形になってきましたね!

 

2019年11月下旬~12月上旬:バルーンの製作

乗り物を囲うバルーン部分の製作は、飛行船ネットワーク株式会社さまにお願いしました。展示会やイベント用の大型バルーンの製作を行っている会社です。

試作品で検討した結果、分割が多いタイプで進めることになりました。分割が少ないタイプより、しわが少なく狙った形状が表現できているからです。

 

バルーンの試作品

次の週には、実際のPVCというビニール生地で最終仕様に近い形のものが作られました。

飛行船ネットワーク株式会社さまとしても、今回のような形のバルーン製作は初めてだったそうですが、さすがはプロ。想定していた形に仕上げていただきました!しわを無くすことや、ファスナーをつけて出入りできるような構造にすること、強度を保つのに苦労されたとおっしゃっていました。

 

フレームを覆うバルーンの確認

また、車両のフレームにつける小さなバルーン部分の仕様も細かく確認します。この部分は子どもがフレームに頭をぶつけても大丈夫なようにクッション材としての役割を果たすもので、安全面で非常に大切な要素。透明だから視界も良好です。

 

2019年12月上旬:車両とバルーンを合体。最終仕上げです!

12月某日、初めてボディとバルーンを合体し、最終形に近づいてきました!

AIBOUのボディ下部

AIBOUのボディ
新たな課題も出てきました。車体の隙間から空気が漏れ、バルーン単体で見た時より膨らみが弱くなってしまいました。隙間をシーリングで埋める方向で修正することに。

 

AIBOUの入口を確認する様子

入口部分は子どもが足をひっかけそうだったので、さらに間口を大きく修正することになりました。また、乗降時に掴めるところがステアリングしかなかったので、つり革を追加することにしました。

実際の最終形で確認してみて気づくこともありますね。ぎりぎりのタイミングまで改善をしていきます。

 

2019年12月下旬:ついに一時納車!

社内関係者に見せるため、一旦ホンダアクセスへ一時納車。前回の改善点もしっかり反映されています!ステアリング部分も最終仕様に近い形になっていますね~。

一時納車されたAIBOUを確認する様子

一時納車されたAIBOUの車内の様子

この後、本番までにバルーンにグラフィックを印刷し、ボディを塗装して完成予定です。

 

「AIBOU」に込めた思いとは?

最後に「AIBOU」の製作に携わった、隈さんと岩崎さんにこだわりポイントや、製作の中で苦労した点などをインタビューしました。

 

商品企画部 隈 泰行さん
商品企画部 隈 泰行さん
2007年入社。過去にはN-BOXシリーズ、『バービー』コラボ、『CHUMS』コラボ、FIT CROSS STYLE Packageや北欧スタイル コレクションなどの用品デザインを担当。昨年の東京オートサロンでは「Well concept(ウェル コンセプト)」を提案した。

 

商品企画部 岩崎 晴也さん
商品企画部 岩崎 晴也さん
2018年入社。昨年の東京オートサロンでは「Modulo Neo Classic Racer」のデザインサポートやブースデザインに関わっていた。

 

― 「AIBOU」の提案の経緯は?

隈さん

隈さん
今回の募集テーマが“こころをつなぐ(未来)”だったので、まず未来=子どもという考えになり、子ども目線で考えることにこだわりました。子どもが持つ大人への憧れや“自分で操りたい”という思いを形にした子どもが主役のモビリティ、自転車に代わる「コレカラの新しいワクワクする乗り物」を目指しました。

 

―苦労した点は?

岩崎さん

岩崎さん
子どものサイズ感に合わせた構成です。子どもサイズのクルマの製作は初めての挑戦だったので手探りでデザインを進めてきました。当初ボディは余裕を持たせた縦長シルエットでしたが、車体構成を考える過程で子どもの着座姿勢やフォルムの安定感を考慮した結果、最終的なシルエットに落ち着きました。他にもシートの傾きやステアリングの握り心地など何度も修正をしながらデザインを詰めていきました。

 

隈さん

 

―バルーンで囲うアイデアはどこから?

隈さん

隈さん
人が中に入って遊ぶバブルボールからインスパイアされました。見た目のインパクトがあり、見た目の通り柔らかい印象もあるので、子どもが喜ぶデザインにできると考えました。多少ぶつかっても衝撃を吸収してくれる安全性や、未来感も感じさせられるかなと。
普通の車ではあり得ない素材を使うことで、当たり前という考えをなくし、「柔らかい想像力で未来は自分で創れるモノ」という子どもたちへのメッセージも込めています。

 

―バルーンはどうやって膨らませているのでしょうか?

隈さん

隈さん
送風機を積んでおり、電源が入っている間は送風機で空気を送っています。
電源を切るとしぼみ、シート部分もバックルとカラビナで固定しているだけなので、取り外し可能で分解できる仕様を想定しています。

 

―色も蛍光レッドで目立ちますよね。

隈さん

隈さん
売られたことを想定すると目立った方が周囲への注意喚起にもつながると思い、あえて蛍光色で派手にしました。それと、見た目でも子どもたちや周りの人が楽しい気分になって欲しいという思いもあります。

 

岩崎さん

 

―「AIBOU」で想定している機能を教えてください。

岩崎さん

岩崎さん
「通話機能」と「自動追尾機能(カルガモ走行)」を想定しています。例えば使われるシーンとして、野球の練習帰りに子どもたちが縦一列で土手を走っていて、通話機能でわいわい話しながら、カルガモ走行で楽しく帰宅する・・・そんなイメージを持って機能を考えました。また、子どもが危険な道に行かないように親がスマホで現在地やルートを確認できるような機能も想定しています。

 

―こだわった点を教えてください。

隈さん

隈さん
車両後部のモーター部分のところをあえて透明にし、モーターが見られる仕様にしました。「どうやって動いているんだろう」という子どもの好奇心を形にしました。
それと、シートもこだわりました。ハンモックのようになっていて、ファスナーを開くとリクライニングするようになっています。
バルーンを膨らませるための空気が出る穴の形状も遊び心を加えてファンの形にしました。

AIBOUの車内

岩崎さん

岩崎さん
実はステアリングの下から矢印が出ていて、家のかたちになっています。方位磁石のよう、常に矢印が自宅の方角を指し続けるような仕様を想定しています。子どもが大好きな探検感を出したかったのと、スマートで無機質になりがちな未来において、あえてアナログなギミックを残したいという遊び心もあります。
このステアリング自体、「意のままに操る楽しさを届けたい、時代や世代が変わってもそれを残したい」という思いも込めています。

AIBOUのステアリング イラスト

 

―ありがとうございました。

 

隈さんや岩崎さん、制作に携わった全ての方含め、多くの関係者が細部まで子ども目線でこだわって製作した「AIBOU」。

当日は実際にお子さんに乗り降りしていただくことも可能ですので、ぜひ実際に見て触って「AIBOU」を体感してみてくださいね。ホンダアクセスのModuloブース(ホール9のNo 956)でお待ちしております!

AIBOU (アイボウ)

 

東京オートサロン2020 ホンダアクセスブース特設ページ

文/カエライフ編集部
写真/カエライフ編集部