クルマ旅をエンジョイしているのは、もちろん若者だけではありません。定年を迎えたシニア世代のあいだで、セカンドライフの趣味として車中泊を始める人が増えています。
今回ご紹介する岩見さんご夫婦もそんな方々。Hondaの軽バン「N-VAN(エヌバン)」を車中泊仕様にカスタムして日本各地へ旅に出かけています。
ご夫婦がクルマに求めるのは、ずばり「居住性」。自宅にいるかのような快適な空間をクルマの中で実現するため、さまざまな工夫を施しています。
そんな2人のカスタム術と、シニアライフの楽しみ方についてお話を聞きました!
- 岩見 兼次(いわみ けんじ)さん & 眞由美(まゆみ)さん
- 今年(2020年)68歳の兼次さんと64歳の眞由美さんは、結婚して32年。以前は奈良県に住んでいたが、2008年ごろに滋賀県の琵琶湖近くにセカンドハウスを購入。2018年には本宅も滋賀県へお引っ越し。現在は2つの家を行ったり来たりしながら、クルマの旅や釣り、庭いじりなどをゆったり満喫する日々。
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目次
クルマのカスタムは定年後に見つけた2人の楽しみ
岩見さんご夫婦が車中泊を始めたきっかけを教えてください。
兼次:もともと2人とも旅が好きで、年に数回、クルマで旅行していました。15年前くらいに「ちょっと変わったことをしてみようか」と、車中泊にチャレンジしたのが始まりです。
兼次:そのときは、北陸の能登半島をぐるりとまわりました。車中泊の旅なので、行きたい場所へ好きなタイミングで行けて、好きな場所で眠れて、とにかく自由で楽しいという印象でした。
なかでもよく覚えているのが、ある海岸沿いの駐車場で車中泊をしたときのこと。朝、太鼓の音が聞こえてきて目が覚めました。窓の外を見ると、お祭りの練習なのか、太鼓を叩いている集団がいたんです(注:輪島の御陣太鼓をはじめ、能登半島の各地に和太鼓の伝統文化がある)。そういった予想外の体験ができるのが、車中泊の良さだなと感じました。
眞由美:その数年後、琵琶湖の近くにセカンドハウスを買いました。当時住んでいた奈良から月に一度くらい遊びに来ては、ここを拠点に、クルマの旅をよくするようになりました。主人は釣りが趣味なんですよ。
兼次:琵琶湖でワカサギ釣りをしたり、日本海に出て海釣りをしたりね。ぼくは釣るだけで、魚を食べるのは妻の担当です(笑)。夜は釣り場の近くで車中泊して、朝すぐに釣りを始められるので、泊まれるクルマがあるととても便利です。
兼次:本格的に車中泊の旅を始めたのは、ぼくが定年してからです。それまで2人で1台のクルマを共有していたのが、1人1台を持つことになって。
「自分専用のクルマなら、好きなようにいじれる!」とうれしくなり、いよいよ車中泊に適したカスタムを始めました。
眞由美:カスタムはすべて主人がやりますね、私は見ているだけ(笑)。ちょこちょこいろんなものを作っては、試作品を私に見せてくれるので、「また夢中になって作ってるなあ」と、横にいる私も楽しいです。
冬用のコタツから春夏用の二段ベッドにモードチェンジ!
かなり手の込んだカスタムをされていますね。
眞由美:主人はもともと文具メーカーの技術職をしていたので、組み立てや金属加工がすごく得意なんです。それまでも家の壁に手すりをつけるなど、ちょっとした日曜大工を積極的にしてくれていました。
兼次:カスタムの作業は、やりながら固めていくスタイルで進めています。これは職人言葉で「現場合わせ」と呼ばれるもの。最初から完璧な図面を引いて作り始めるのではなく、とりあえず仮置きできるものをささっと作り、それを実際にクルマに合わせてみて、カーブの具合を調整したり、部品を追加してみたり。
兼次:ここ琵琶湖のセカンドハウスは、ガレージのすぐ横に作業小屋があるので、作って試してやり直しての作業を何度でも繰り返せます。このN-VANは2018年に購入して、半年くらいかけてカスタムして基本形を作りました。今でも少しずつ改良を続けていますよ。
こうしたカスタムのアイデアはどこから?
兼次:車中泊の専門誌『カーネル』を見て参考にすることもありますが、基本的には「アイデアを試してみて考える」です。
たとえば「コタツ」のアイデアを思いついたのは、今のN-VANになってから。冬場の寒い時期に車中泊するときに、以前のクルマでは羽毛布団を使っていたんですが、N-VANはコンパクトな軽自動車なので、荷室の横幅がちょっと狭く、2人用の掛け布団では端っこがめくれてしまうんです。
兼次:布団がめくれると、冷気が入ってきて寒い。それならいっそ、「木の板で布団を囲んでみようか」と考えました。荷室の左右の壁に作った「収納棚」に渡し板をはめこみ、そこに布団を挟んで冷気をカット。さらに湯たんぽを入れれば、ポカポカ暖かい「簡易コタツ」のでき上がりです。
兼次さんにとって、クルマのカスタムの魅力とは何でしょうか?
兼次:自分たちの使い勝手がいいように、自由なアレンジができることですね。季節によって快適な環境も変わってくるので、それに合わせてカタチも変化させています。
兼次:真冬の寒いときはコタツにして使っていますが、それ以外の季節には、布団を抜いてテーブルとして使います。天板を外せば荷室を広く使うこともできるし、天板をベッドの床板として使って二段ベッドにするモードチェンジも先日、考案しました。工夫次第で、可能性は無限大ですね!
天井が高く、着替えも楽にできるN-VANは、車中泊にピッタリ!
N-VANを選ばれたのは、どういった理由ですか?
兼次:走り心地、座席がフルフラットになるなど、クルマ旅をする上でのメリットはいくつもありますが、一番の決め手は「荷室のスペースの広さ」です。
天井が高いので、食事のときも着替えをするときも、窮屈さを感じません。以前のクルマで車中泊するときは、ずっとかがんだ姿勢で動きまわっていたので、それと比べると快適性はぐんとアップしました。おかげで、移動と寝るためだけの車中泊から、くつろぐための車中泊へとバージョンアップしました。
兼次:ほかにも、床が低くてスライドドアが大きく開き、ピラーレス(柱がない)なので、大きな荷物も乗せやすい。引っ越しのとき、2メートルあるベッドもこのN-VANで運びました。
また、シニアの運転ということで、安全性も大事なポイントです。たとえ本人に自覚がなくても、視力や反射神経などの運転能力が年とともに鈍ってくることは避けられません。そこで、さまざまな安全運転を支援する装置がついていることも大きなポイントでした。
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セカンドライフをもっとアクティブに! 車中泊で深まる2人の絆
車中泊を始めたことで、2人の生活は変わりましたか?
兼次:定年後のセカンドライフでは、今までやれなかったいろんなことに挑戦しています。クルマのカスタムと車中泊も、趣味の家庭菜園と同じで「何かを作る、育てる」楽しみの1つです。
眞由美:今は数カ月に一度、1週間〜10日程度の旅に出ています。クルマの旅をするときは、主人が行き先を決めてくれます。私は御朱印集めが好きなので、「このエリアに行くならここの神社に寄って」とお願いして、行き先に追加してもらいます。
兼次:ぼくの趣味に付き合ってもらってるわけだから、少しでもリクエストに応えないとね(笑)。
眞由美:その土地の有名な場所を観光して、一緒にごはんを作って、食べて。すっごく楽しいですよ。ちなみに、私が車中泊でよく作るのは「タコ飯」です。おいしいと主人にも評判なんです。
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眞由美:ただ、旅をしていると、ときには険悪なムードになることも。疲れてきて口をきかなくなったり、相手のちょっとした言葉にカチンときたり(笑)。でも車中泊だから、いやでも24時間一緒にいなきゃならないでしょう?
腹が立っても、ひと晩寝て起きたら、大体のことはすっきり忘れています。そんな風にして絆が深まっていくのも、車中泊ならではなのかも。正直、たまにはホテルに泊まりたいなって思うこともありますけど、だんだん慣れました(笑)。
兼次:新しい出会いもありますね。インターネットの交流サイトでシニアの車中泊サークルに入っているんですが、そのオフ会で、メンバーたちとキャンプ場に集まって車中泊することもあります。いろんな人から車中泊の体験談を聞けたり、情報交換できたりして楽しいですよ。
車中泊をするようになってから、北海道や四国、北陸など、さまざまな場所を見られるようになりました。新しい場所、経験、出会い。世界が広がって、人生がもっと面白くなったと感じています。
文/小村 トリコ
写真/竹中 稔彦
編集/平林 享子(LIG)