アクティバンを男前カスタム!キャンプの達人が愛車とギアで自分らしさを演出

01_Hondaの軽自動車「アクティバン」をカスタム。アウトドアの達人、インテリアデザイナーの宮崎秀仁さん

愛車の見た目をもっと良くしたい。快適な走りを追求したい。車中泊で遠くへ出かけたい……。クルマをカスタムする理由は人によってさまざまですが、おそらくすべてに共通しているのは、カスタムがその人の「自分らしさ」を表現するものだということ。

今回ご紹介する宮崎 秀仁さんは、キャンプを始めて30年以上のアウトドアの達人。実用的なアイテムを小粋に使いこなす独特のキャンプスタイルは、Instagramを中心にファンが増えて、ついにはオリジナルのアウトドアブランドまで立ち上げてしまったという「究極の趣味人」です。

そんな宮崎さんの愛車は、Hondaの軽商用バンである「アクティバン」 。自身でフルカスタムを施したクルマには、おしゃれかわいいカスタムとはひと味違った、大人の男の生き様がにじみ出ています。宮崎さんの渋カッコいいカスタム術と、カーライフについて聞きました!

※2018年7月に販売終了

02_アウトドアブランド「38explore(サーティーエイト・エクスプロー)」を主宰するインテリアデザイナーの宮崎秀仁さん
宮崎 秀仁さん
通称ミヤさん。1973年生まれ。アウトドアブランド「38explore(サーティーエイト・エクスプロー)」主宰。持ち前の発想力と手先の器用さで、「用の美」を追求した独自のキャンプギアを企画制作する。本業ではフリーランスのインテリアデザイナーとして、店舗内装の設計や施工などを手がける。Instagramのフォロワーは1.9万人のカリスマキャンパー。
Instagram 38explore

目次

車体込みで合計20万!? アクティバンの俺流カスタムの全貌を徹底紹介!

03_千葉県「森のまきばオートキャンプ場」と宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン

 

今日は千葉県にある「森のまきばオートキャンプ場」にやって来ました。もとは牧場だったという広大な敷地の中ですが、宮崎さんのクルマは遠くからでもひと目でわかりました!

宮崎:はい、目立ちますよね(笑)。街中だともっと目立つみたいで、出先の駐車場で「もしかしてミヤさんですよね?」と見知らぬ人から声をかけられたりします。

 

04_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバンフロントサイド

 

05_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバンリアサイド

 

ベース車両はアクティバンですが、ずいぶん印象が違いますね。

宮崎:もとはシルバーで普通のアクティバンだったんです。2017年、中古車両をヤフオクで10万円で購入しました。2008年式で走行距離は10万kmオーバーという、けっこう使い込まれたクルマでしたが、まあ何かあったら自分で直せばいいかなと思って。今のところ、壊れずに走ってくれています。

 

アクティバンを選んだのはなぜですか?

宮崎4WDのパワフルな性能と、コンパクトな軽自動車の機動力が魅力だったから。ぼくはキャンプや登山をするので、そういうときに山奥や森の中の細い道にも入っていけるのはありがたい。あと、エンジンがフロントではなく車体中央にある「ミッドシップ」のレイアウトで、運転中に聞こえるエンジン音がいい感じなのも好みです。

20歳のときに初めて持ったクルマが、Hondaの軽商用バン「アクティストリート」でした。こういうデザインのクルマがカッコいいとぼくは思うんです。

同クラスだとスズキの「エブリイ」とか、ダイハツの「ハイゼットカーゴ」も人気ですが、アクティバンでアウトドア仕様のカスタムをする人っていうのは、当時ほとんどいなかった。それも個性が出ていいかなと思いましたね。

 

俺流「ミリタリー調」を突き詰めたアクティバンの外装カスタム

06_4WDのパワフルな性能を持つHondaの軽自動車アクティバンのロゴ

 

具体的には、どんなカスタムをしたのでしょうか?

宮崎:コンセプトは「これ1つで完結するクルマ」。普通に街乗りすることもあれば、遊びに出かけることもあって、遠くに行ったらそのまま車中泊する。食料さえあればここでずっと生活できる、シェルターみたいなものをイメージしました。

ただ、そういうカスタムをやっている人が他にもたくさんいる中で、どうやって自分っぽさを出していくか。ぼくはもともとキャンプの世界では「ミリタリー好きなキャンプおじさん」で通っていたので、そのテイストで行くことにしました。

 

07_街乗りから車中泊まで「これ1つで完結するクルマ」を目指しカスタムした宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン

 

たしかに、アメリカの軍用車を思わせるカラーリングです!

宮崎:ボディカラーは2色。ベースカラーの「サンドベージュ」は建物の外壁用のペンキで塗っています。うちに余っていたのを使いました(笑)。

フロントとリアのカラーの「マットブラック」は、トラックの荷台などに使う「チッピング塗装」というタフな塗料です。また、ホイールもブラックに交換して、タイヤは外径5㎝くらいインチアップしています。

 

08_Honda・アクティバンのカラーカスタムを説明。ベースの「サンドベージュ」は外壁用ペンキで塗装。トラックの荷台などに使うチッピング塗装でフロントとリアをマットブラックに仕上げている

 

09_Honda・アクティバンのフロントに後付けした「BOSCH(ボッシュ)」の黄色いフォグランプ

宮崎:フロント部分では、「BOSCH(ボッシュ)」の黄色いフォグランプを後付けしました。飾りではなく実際に点灯します。ランプの土台はパイプを切って作っています。

 

10_Honda・アクティバンフロントのナンバープレート付近の写真。ナンバープレートはヘッドライト下に移動し、もともとナンバープレートがあった部分にアルミ製のチェッカープレートを取り付けている

宮崎:ナンバープレートは中央下からヘッドライト下へと移動しました。4WDのクルマは、走行時に小石などがぶつからないよう少し高い位置にナンバープレートがあることが多く、これだけでアウトドア感が出るんです。

もともとナンバープレートがあった部分には、アルミ製の「チェッカープレート」をつけました。よく階段や床などに張ってある鉄板ですね。

 

11_Honda・アクティバンのフロントカバーの写真。デザイン重視の飾りの役割としてスコップと取っ手をつけている

宮崎:フロントカバーにつけたスコップと取っ手は、実用性というより、デザイン性重視の飾りです(笑)

 

12_Honda・アクティバンフロントバンパーの右側タイヤ付近

 

13_Honda・アクティバンフロントバンパーの左側正面。バンパーをカットしているのがわかりやすい画像

 

14_Honda・アクティバンリアバンパーのタイヤ付近の画像

宮崎:バンパーは前後とも10㎝くらいカットしています。こうすることで、まるで車高が上がったように見えるんです。

いわゆる「クロカン車」(クロスカントリー車の略、砂地や岩場などのオフロードを走るクルマ)などのアウトドア車は、車高を上げる「リフトアップ」のカスタムを施しているのがほとんど。こうやって車高をアップして見せることで、それらしい雰囲気を出すことができます。

 

15_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン。リア側もナンバープレートを移動させ、ボックスとラダーを設置しているのが分かる写真

宮崎:リア部分では、前面と同じくナンバープレートを移動したのに加えて、「ボックス」と「ラダー」を設置しました。どちらも純正カスタムではないので、工具を使って車体に穴を開けて、ビスでとめています。

このボックスは、地上最強ともいわれる堅牢性を持つハードケースの日本ブランド「PROTEX(プロテックス)」のもの。JAXAや自衛隊などでも採用されています。定価は7〜8万円と高価ですが、これもヤフオクで見つけて5000円くらいでした。普段は汚れ物入れとして使っています。

ラダーも他の車種の中古品を安く手に入れました。よく見るとちょっと寸足らずですが(笑)、上がるには問題ありません。

 

カスタム予算はたったの10万円! 費用を抑えるためのコツって?

16_ルーフキャリアに登り、笑顔でカメラに顔を向ける宮崎秀仁さん

 

中古品を安く入手したり、視覚効果を利用したりと、いろいろなアイデアと工夫が散りばめられているんですね!

宮崎このカスタムには、全部あわせて予算10万円もかかっていないんです。カスタムってお金をかけようと思えばいくらでもできますけど、せっかく安く買ったクルマだから、穴を開けるのもペンキを塗るのも、気にせずやりたい放題でしょ。

ぼくにとってクルマのカスタムは今回が初めてだから、自分で気の済むまでやってみたかったんですよね。

 

17_テールランプの「ランプガード」には、ワイングラスホルダーを利用してカスタム

宮崎:これなんかもそうですね。テールランプを覆う「ランプガード」は、アウトドア感を演出するエクステリアとして設置しました。でもこれ、本当はクルマ用の部品ではないんです。もとは何だと思いますか?

正解は、飲食店などでよく使われる「ワイングラスホルダー」です。本業の仕事場でこれを見たとき、「もしかして合うかも?」と思いついて、試しにやってみたらぴったりでした!

 

18_ルーフキャリア全体がよく見える画像。宮崎秀仁さんがライフルケースを持っている

宮崎:ルーフキャリアはヤフオクで1万5000円くらいかな。それを支えるキャリアベースはAmazonで買って、2セット(4本)で3000円くらい。

上に載せている樹脂製ハードケースは「ライフルケース」と呼ばれるミリタリー製品。アサルトライフルとかサブマシンガンを入れておくものです。こんなものもAmazonで手に入るんですよ。ぼくはテント用のポールをしまっています。

まあでも、こうやって自分ひとりで材料を集めてフルカスタムするのは、ものすごく時間と手間がかかります。お金を払って人に頼む気持ちはよくわかりますし、ぼくも誰かに頼みたかったな(笑)。

 

これぞプロの技! 車内を快適空間にするカスタム

19_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン荷室。バックドアが開いていて、コンテナやキャンプギアが整然と積まれている

 

20_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン荷室を後部座席方向から見た写真。座席は倒してフルフラットにし、その上にクッションやキャンプギアが置かれている

 

続いて、車内の様子も見せてください!

宮崎:普段から積んでいる荷物はこんな感じ。男ひとりだったら、これだけあれば1週間は暮らせます。

 

21_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン車内天井部分の写真。もともとの遮音材を剥がし、制振材に張り替えている

宮崎:天井は、もともとあった遮音材をはがした後、「レジェトレックス」という制振材を張っています。制振材というのは、外からの振動をおさえて音の発生を防ぐ素材のこと。夜の大雨はやっかいで、雨音がうるさくて眠れなくなったりしますからね。これがあると雨が降っても車内は静かです。

あとはスポンジの断熱材を入れて、温度対策も。断熱材はサイドの壁にも張っています。今はあえてむき出しの質感を残していますが、そのうち板張りにしようかなと計画中です。

 

22_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン荷室床面の写真。ジョイントマット、セミダブルの低反発マット、室内用ラグを敷いて快適な空間を設計

宮崎:床面はシンプルです。フルフラットにした上に、ホームセンターで買った「ジョイントマット」、セミダブルサイズの「低反発マット」、ニトリの「室内用ラグ」を順に敷いているだけ。

ジョイントマットはクルマに入れておくと便利です。正方形のマットをつなげて大きさを自由に変えられるので、車外でもどこでも使えます。たとえばテントを張るときに地面に敷くと、下からの冷気を防いでくれます。

 

23_Honda・アクティバンの窓にソーラーパネルをカスタムして装着した写真

宮崎:窓につけているのは、太陽光発電でファンをまわすシステム。左がソーラーパネルで、接続したモバイルバッテリーに自動的に給電します(モバイルバッテリーは埋め込んで見えないようにしている)。貯めた電気で、右上に埋め込んだファンを動かすという仕組みです。ファンの下は網戸になっています。

 

24_Honda・アクティバンに取り付けたファンの機能を、宮崎秀仁さんが説明している写真

宮崎:内側にスイッチが4つあって、それぞれのファンとつながっています。ファンは直径8㎝。全稼働すると夏でもけっこう涼しいです。

 

25_Honda・アクティバンの窓にファンが4つ付いている写真。内側に4つのスイッチがあり、それぞれのファンと連動していることを説明

宮崎:窓に換気扇を取り付けるDIYは車中泊仕様のカスタムでよく見かけますが、給電がめんどうなものが多い。だから充電機能つきのパネルを自分で考えて作りました。このパネルごと外せば、普通の窓に戻ります。

 

26_「PowerArQ(パワーアーク)」のポータブル電源

宮崎:ポータブル電源は「PowerArQ(パワーアーク)」。他にも電源はいくつか持っていますが、これは車内のテイストに合うカラーなのでよく使っています。

 

27_宮崎秀仁さんが「NANGA(ナンガ )」の寝袋をHonda・アクティバンの荷室に広げている様子

宮崎:寝るときはこうやって、ラグの上に寝袋を敷きます。これは「NANGA(ナンガ )」の寝袋。

 

28_宮崎秀仁さんが「KingCamp(キングキャンプ)」のブランケットをHonda・アクティバンの荷室に広げている様子

宮崎:その上からブランケットをかければ、あっという間にリラックスモードです。この「KingCamp(キングキャンプ)」のブランケットは、軽くて使い心地がいいのでお気に入り。小さく折り畳んでポーチに収納できるし、丸めてクッションとしても使えるのもいい。

荷室のシートは基本的に常時フラットにしています。ぼくは寝るときはテントがメインなので、車中泊するのはおそらく年に10泊くらい。キャンプや登山の前乗りのために必要であればするという感じですね。

 

29_Honda・アクティバンのカスタム。リアゲートを中から開けられるノブを宮崎秀仁さんが説明

宮崎:ちなみに、リアゲートを中から開けられるノブもつけました。

 

30_宮崎秀仁さんのHonda・アクティバン荷室。荷物を降ろして広々とした様子が分かる写真

宮崎:リアゲートには近々ライトを設置する予定で(リアゲートをフルオープンにしたときに天井のダウンライトになるように)、今は工事中です。購入から3年が経ちましたが、これで完成というのはなくて、少しずつカスタムを続けています。

荷室のサイドウィンドウにも、黒の断熱材を付けています。Amazonで買ったものを自分で切って張っただけです。

 

機能的かつユニークな小物使いで、唯一無二の自分テイストを

31_Honda・アクティバンの前列座席シートを後ろから見た写真。ヘッドレストをベースに「モールシステム」というアタッチメントを装着して様々なメーカーの道具入れをつなげている

 

32_Honda・アクティバンの前列シートヘッドレスト(運転席側)に寄った写真。ミリタリーカラー(コヨーテブラン)で統一した道具入れの様子が見える

宮崎:座席後ろの道具入れは、上部のヘッドレストをベースに、別々のアイテムをつなげたもの。「モールシステム」というアタッチメントをつけるためのベルトを活用しています。メーカーはバラバラですが、統一感があるように見えるのは、カラーを揃えているから

ミリタリーカラーにも実はたくさんあって、これは「コヨーテブラウン」。アメリカ海兵隊がよく使っている色です。まあ、パロディみたいなもんですね。ぼくはこのコヨーテブラウンを車内のテーマカラーに選びました。

 

33_Honda・アクティバンの前列シートヘッドレスト(助手席側)に寄った写真。取り付けられた道具入れのマガジンケースにランタンが入っている

 

34_Honda・アクティバンの前列シートヘッドレスト(助手席側)に寄った写真。取り付けられた道具入れのマガジンケースに入ったランタンを取り出している

宮崎:鉄砲のマガジンを入れるケースには、小型のランタンがぴったり収まります。「GOAL ZERO(ゴールゼロ)」のコンパクトLEDランタン「ライトハウス マイクロフラッシュ」。

 

35_Honda・アクティバン天井にクローズアップ。さきほどのランタンを天井に設置したマグネットフックに吊るした写真

宮崎:天井につけたマグネットフックに吊るすと、これだけで車内の光源には困りません。USB充電式で、ひと晩中つけっぱなしでも保つくらいパワフル。ぼくのアウトドアブランド「38explore」のシールを貼って使っています。

 

36_Honda・アクティバン天井にクローズアップ。天井のマグネットフックは、磁石でどこにでもつけられることを説明

宮崎:マグネットフックは大活躍。車内が金属むき出しだと、こうやってどこにでも磁石をつけられるのがいいですよね。

 

37_Honda・アクティバン。宮崎秀仁さんが前列シートヘッドレストの道具入れから水筒を取り出している

 

38_Honda・アクティバン。宮崎秀仁さんが前列シートヘッドレスト(助手席側)の道具入れの中身を見せている

 

39_Honda・アクティバン。宮崎秀仁さんが前列シートヘッドレスト(助手席側)上部の道具入れからSONYのRX100IIIを取り出している

宮崎:他にも、タンブラーやヘッドライト、カメラなどの道具をそれぞれのポーチに。カメラはSONYのRX100IIIで、これで撮った写真をインスタグラムに投稿しています。

 

40_Honda・アクティバンのサンバイザー部分の写真。コヨーテブラウンのポケットには、宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」のロゴワッペンが貼られている

宮崎:サンバイザーにつけたポケットも、カラーはコヨーテブラウン。ここにも38exploreのロゴワッペンを貼っています。もともと兵隊たちも、国旗や自分が所属する部隊のワッペンを軍服につけて、戦地での認識に使っていたんです。

 

41_サーモスの「保冷缶ホルダー」専用のレザーカバー。宮崎秀仁さんの友人が手掛けるアウトドアブランド「omadesign(オマデザイン)」のアイテム

宮崎:これはサーモスの「保冷缶ホルダー」専用のレザーカバー。友だちがやっているアウトドアブランド「omadesign(オマデザイン)」のアイテムです。使い込んだ革のいい味が出てますよね。

 

38パレット:「あったらいいな」から生まれたアウトドア多機能テーブル

42_Honda・アクティバンの荷室の写真。手前には宮崎秀仁さん考案のテーブル「38パレット」が映っている

 

この手前に置いてあるテーブルは、宮崎さん考案の「38パレット」ですか? キャンパーの間で大人気、売り切れ必至のレアアイテムだと聞きました……!

宮崎:これはぼくが2016年に作って、自分のブランドを立ち上げるきっかけとなったキャンプギア。木製の天板にステンレスの脚をつけた、ごくシンプルな組み立て式のミニテーブルです。

 

43_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」のテーブル・38パレット

 

44_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」のテーブル・38パレット。テーブル側面のアタッチメントを取り出している様子の写真

宮崎:普通のテーブルと何が違うかというと、この天板はスノーピークの定番アイテム「シェルコン(シェルフコンテナ)」という収納ボックスのフタとしてジャストフィットするんです。

 

45_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」のテーブル38パレットシリーズ「PALEO」と「PALEKO」。スノーピークのシェルフコンテナのフタとして使用している写真

38パレット「PALEO」(スノーピークのシェルフコンテナ50に合うサイズ)と「 PALEKO」(同25用) 写真提供:宮崎 秀仁

宮崎:シェルコンには純正のフタがないので、多くのキャンパーはDIYでフタを自作していました。でも、キャンプ場に到着してフタをとったら、その板の使い道がなかった。それじゃもったいないので、脚をつけてローテーブルにしたらどうかと。

脚を天板のサイドにはめた状態でシェルコンに乗せると、いい具合に固定されて、そのままシェルコンごとテーブルとしても使えるという仕組みです。

 

46_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」のテーブル「38パレット」。テーブル裏面のネジ穴を見せながら、カメラの三脚に接続できることを説明

宮崎:さらに裏面にはネジ穴がついていて、カメラの三脚に固定してハイテーブルにもなります。三脚なら丈夫で安定性が高く、高さも調整できるので使い勝手がいい。ぼくの家に先輩からもらった三脚があったので、どうにか活用したいと思って考えました。

 

47_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」の最新アイテム「A38grate」の写真

宮崎:これは最新のアイテム「A38grate」です。焚き火やキャンプ用品を制作するブランド「Asimocrafts(アシモクラフト)」とのコラボで作りました。

ウッドテーブルとロストル(焚き火台で使う網)が合体して、テーブルとして自立し、さらにランタンをかけるハンガーもセットできます。

 

48_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」の最新アイテム「A38grate」。ロストル(焚き火台で使う網)をテーブル天板と組み合わせている様子の写真

 

49_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」の最新アイテム「A38grate」。ロストルのみ、天板とロストルを半分ずつ組み合わせたもの、天板を完全に組み合わせたものの写真

宮崎:天板とロストルを組み合わせて拡張でき、脚の高さも2段階に調整可能です。

 

50_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」の最新アイテム「A38grate」。裏面のネジ穴にカメラの三脚を付けている写真

 

51_宮崎秀仁さんのアウトドアブランド「38explore」の最新アイテム「A38grate」。「バーナー付きテーブル」にできることを説明

宮崎:もちろん三脚にもつけられますし、バーナーを取り付けて「バーナー付きテーブル」にすることも。SOTOのシングルバーナー「ST-310」専用のアタッチメントをまもなく発売予定です。

 

52_宮崎秀仁さんが「A38grate」を組み立てている様子の写真

 

発明家のようですね。「こんな風に使いたい」というアイデアと、それを実現できる技術力がすばらしいです。

宮崎:結局はただ「自分のほしいもの」を作ってるだけなんですけどね(笑)。ぼく自身がずっとキャンプをやっていたから、何がほしくて、何が足りていないのかよく見える。そうやって何かを作ると、世の中には同じことで困ってる人が一定数いるようで「私もほしかった!」って言ってもらえるんです。

 

「現場を見なさい」建築の師匠に習ったものづくりの原点

53_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。宮崎さんが「38explore」で販売予定のカーサイドシェルターを組み立てている様子

 

続いては、カーサイドシェルターを設営しながらお話を聞かせてください。

宮崎:これは38exploreで販売予定のアイテムで、テントとしても使えるカーサイドシェルターのサンプルです。キャンプギアの制作では、図面を書いてゼロからデザインしています。工房に製作を発注し、でき上がったものを自分で使ってみて、気になるところを随時修正していくという流れです。このアイテムの発売まで、あと数カ月以上はかかると思います。

 

54_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。Honda・アクティバンにカーサイドシェルターを取り付けている様子

 

趣味のキャンプを飛び越えて、完全にプロの領域ですね。宮崎さんのものづくりのルーツを教えてください。本職ではこれまでどんな経験を積まれてきたのですか?

宮崎:高校ではデザイン科に通っていました。18歳のとき、とある建築家の先生に拾ってもらって設計事務所に弟子入りしました。その先生はちょっと変わった方で「机上で設計するだけでなく、自分たちで建てるところまでを経験しなさい」という教えだった。アメリカやカナダから次々とインターン生が勉強に来ていて、彼らと一緒に住み込みをしながら働いていました。

 

55_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。Honda・アクティバンにカーサイドシェルターを取り付けている

 

56_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。宮崎さんがカーサイドシェルターのペグ打ちをしている

 

宮崎:2年間の修業を終えたとき、現場の専門的なプロセスを知りたいと思って、電気工事の会社に就職したんです。だって施工の現場に最初から最後までいるのが電気工事士だから。そこで2年間勤めた後、ものづくりのもっと細かいところを学ぶために大工になりました。

29歳でインテリアをやりたくなって、店舗内装の設計と施工をする会社に転職しました。こんな風に、設計、電気、大工、内装と勉強し続けて、満を持してフリーランスになったのは2013年。ぼくが40歳になる年です。

 

やりたいことと、やってきたことがつながった! キャンプの世界で見えた可能性

57_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。カーサイドシェルターの設営が完了した写真

 

キャンプを始めたのは?

宮崎:10歳のころかな。ぼくは施設で育ったのですが、そこの先生が大の登山好きで、よく連れて行ってくれました。中学校のときにはひとりで北アルプスに登りに行って、周りの大人たちを心配させたり(笑)。自然とキャンプもするようになりましたね。

 

58_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。アクティバンの前で宮崎さんが焚き火の準備をしている

 

59_Honda・アクティバンと焚き火台。焚き火台は「PETROMAX(ペトロマックス)」のファイヤーボウルを使用

焚き火台は、PETROMAX(ペトロマックス)のファイヤーボウル

宮崎:30代は仕事と家庭で忙しく、いったんキャンプから遠ざかりました。復活したのは40歳のとき。独立して自分の時間が増えたんです。数年間ソロキャンプを続けていたら、キャンプ仲間がたくさんできました。変な連中ばっかりですよ。みんな個性的で、こだわりが強い。

ぼくはぼくで、キャンプギアを自作してInstagramで発信していたら「私もほしいです」という声が増えてきた。それならばと、自分でガレージブランド(小規模で高品質のギアを作るアウトドアブランド)を立ち上げたのが2016年でした。

 

60_Honda・アクティバンの前でチェアを準備する

 

61_Honda・アクティバンの前でチェアを準備する宮崎秀仁さん。友人のガレージブランドNATURAL MOUNTAIN MONKEYS」のナイロンシートに張り替えたカーミットチェアに脚を付けている

キャンパー御用達の「カーミットチェア」は、友人が立ち上げたガレージブランド「NATURAL MOUNTAIN MONKEYS」のナイロンシートに張り替えたことで、座り心地が大幅アップ。さらに、チェアの脚にエクステンション用パーツを取り付けている

宮崎:すると申し合わせたかのように、ほぼ同時期に仲間たちもブランドを設立して、どんどん成功し始めました。結果的に「ガレージブランドはだいたい友だち」みたいな状況に(笑)。ぼくがよくコラボアイテムを企画するのはそういう理由からです。

 

62_Honda・アクティバンの前で「FEUERHAND(フュアハンド)」の灯油ランタンを準備する宮崎秀仁さん

ドイツ発祥のブランド「FEUERHAND(フュアハンド)」の灯油ランタン

 

63_ランタンハンガーの写真。友人のブランド「sanzoku mountain」のものを使用

ランタンハンガーは、こちらも友人のブランド「sanzoku mountain」のもの

それまで建築の世界で培ってきたものづくりの技術が、アウトドアの世界で生かされたのですね。

宮崎:まさかこんなことになるとは! って感じですよ。デザイナーにとって「自分のブランドを持つ」というのは、途方もなくでっかい夢です。ずっと建築業界でがんばってきたんですが、趣味のキャンプのほうで芽が出ました(笑)。

というのも、アウトドア業界ってしがらみがないんです。業界を牛耳るえらい先生はいないし、めんどうな派閥もない。新しいデザイナーの入り込む余地がありました。

 

64_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さんの写真。荷室に宮崎さんが腰掛けて喋っている

宮崎:今までやってきたことと、自分がやりたいことが、やっとつながった感覚です。もうね、アイデアが次から次へと湧いてきますよ。ぼくからすれば「なんでこれがまだ世の中に存在してないの!?」というのが山ほどあります。

 

65_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さん。すべてのギアの設営が完了し、全景が見える写真

 

このカーサイドシェルターもすごいですね。

宮崎:今は片側だけにつけていますが、両サイドにつけてさらに大きくすることもできます。また、キャンプ場で「ワンポールテント」として使うのも可能というアイテムです。

ぼくはそもそも、狭いクルマの中で寝るのがあんまり好きじゃなくて(笑)。どうやったら車内空間をもっと広く感じられるか考えて、これを作ってみました。

 

クルマは「大事な道具」。楽しくなければ意味がない!

66_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さんの写真。ギアの設営が完了した荷室の全体が見える写真

 

宮崎さんにとって、クルマとはどんな存在ですか?

宮崎:「大事な道具」ですね。決して相棒とかじゃない。だって相棒だったら、平気で穴開けたりできないでしょ(笑)。

つい最近、関東の片田舎に家を買いました。古い建物なので、1年くらいかけてゆっくりリノベしていくつもり。だからクルマをもう1台、今度は1トントラックを買ってカスタムして、資材を運んだり寝泊まりしたりできるようにしようかなと。そういう様子をYouTubeで発信したら、きっと楽しいですよね。忙しくて仕事してる暇がありません(笑)。

 

67_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さんの写真。宮崎さんがチェアに腰掛け話している様子

 

68_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さんの写真。アクティバンと各種ギアの全体像が映っている

手に持っているのは「CATAPULT(カタパルト)」の木製カップ「FIKA 12」

宮崎ブランドを始めて感じたのは「自分が楽しくないとうまくいかない」ということ。無理してやってることは必ず周りに伝わります。自分が楽しいかどうかが一番大事なことで、その1つにクルマがあるんじゃないかな。

ぼくのブランド名「38explore」は、自分の名前の「38(ミヤ)」と英単語「explore(冒険する)」を掛け合わせたもの。何か1つにこだわることなく、キャンプも登山も、クルマも、他の新しいことも、つねに冒険し続けたいですね。

 

69_Honda・アクティバンと宮崎秀仁さんの写真。アクティバンのフロントとカーサイドシェルター、キャンプ場の様子が映っている

 

取材・文/小村 トリコ
写真/木村 琢也
編集/平林 享子(LIG)

撮影協力/森のまきばオートキャンプ場

 

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