Hondaの「N-VAN」は軽自動車ながら驚きの輸送力で、テントや各種ギアなど荷物の多いアウトドアフリークから支持されています。しかも、オートバイまで載せられる=トランポにもなるんです。
その収納力の秘密は、運転席以外のシートは背もたれを倒すだけでフラット仕様になるという、ダイブダウン機構にあります。車内全体を低ポジションの荷室スペースにできるんです。そして、カスタムすれば使い勝手はさらにアップ。頼れるパートナーとして、自分の趣味をもっと楽しく快適にしてくれます。
そんなクルマの個性を存分に引き出して、充実のアクティビティライフを送っているオーナーが、千葉県在住の堀 琢磨さん。大好きなバス釣りのためにN-VANをカスタムしています。釣り道具がたっぷり積みこめるようにしたガレージ仕様のN-VANは、参考にできるポイント盛りだくさんです。
- 堀 琢磨(ほり たくま)さん ※写真右
- 1970年生まれ。千葉県在住。ハーレーダビッドソン正規販売店のメカニックとして長年にわたってキャリアを積んだのち、退職。プライベートにおいても数々のバイク、クルマと付き合ってきたため、乗り物に対するセレクト眼はかなりのもの。休日は奥様の友紀子さん(写真左)と一緒に外遊びを楽しむのが定番。
Instagram @taku4555
今回は、実際に"湖へバス釣りに行く一日"に密着させていただき、素敵なカーライフを覗き見しちゃいました!
目次
トランポ仕様のN-VANなら、釣りスポットをバイクで探せる!
堀さんが長年楽しんでいるアクティビティがフィッシング。特に夢中なのがバス釣りです。休日にはN-VANに乗って奥様と一緒に亀山湖や印旛沼流域、利根川など、地元千葉の人気陸釣りスポットに向かいます。
荷室スペースには、自分流に改良したブラックバス用タックル(道具)と一緒に、なんとオートバイも積み込みます。バイクは、穴場巡りやラフな水辺を走り回るのに便利なんです。現場まではクルマ、到着したらより小まわりのきくバイクが足代わりになります。
遠方釣行が負担にならない、軽自動車ならではの扱いやすさ
愛車のN-VANは、軽自動車ならではの取り回しの良さやランニングコストの低さが光ります。そして高い収納力と拡張性も魅力的。オーナーの堀さんはこう話します。
「車内には、複数のユーティリティナットやフックが、ノーマルの状態から付いているので、カスタムの方向性をつかみやすかったです。自作したパーツもスムーズに装着できましたよ。あとは衝突軽減ブレーキやACC(アダプティブクルーズコントロール)など、安全運転をサポートするホンダ センシング搭載なのも嬉しいですね」
これまで約20台以上のクルマに乗ってきた堀さん。乗り継いできた愛車は、トヨタのスターレットをはじめ、日産のサニートラック、スズキのジムニーやマイティーボーイ、ハスラー、ダイハツのミラ、シボレーのC1500、フォードのトーラスワゴンなどなど。今年、N-VANに乗り換える直前はスズキのエブリイがパートナーでした。
「エブリイやハイエースは自作パーツを取りつけるために、自分で車体にボルト穴を開けて増設する必要がありました。でもN-VANなら、はじめからボルト穴がたくさん開けられています。カスタム方法や完成後のイメージを想像しやすかったのが、購入の決め手となりました。
もちろん軽ならではの扱いやすさ、コストパフォーマンスの良さも魅力。大好きなバイクを横に置きながら、妻も同乗できるドライブは最高です」
亀山湖に着いたら、陸上の好スポットを求めてバイク発進!
自宅からN-VANを駆って、なじみの陸釣りエリアに到着。N-VANを駐車場に停めたら、いよいよトランポしてきたバイクを降ろしていきます。堀さんの愛機はHondaのスーパーカブです。こちらも存分にカスタムされている様子。
バイクで釣りスポットを探していく楽しさを堀さんに尋ねると、こう答えてくれました。
「バス釣りにおける陸っぱり=陸釣りは、自分の勘を頼りに好スポットを探すのも楽しみの一つです。クルマ移動とは違って、細い悪路をバイクでグイグイいく感覚がたまりません!」
バイクの機動力を活かせば、複数のスポットを巡ることも可能です。
「しばらく釣れなければ次のスポットへ移動します。ローラー作戦的に、バイク移動を繰り返すのが私流の陸っぱりなんです」
「N-VANでトランポができるようになってからは、かなり遠方の釣り場でもバイクが使えるようになりました。活動範囲がより広がったのでワクワクです。バイクなら狭いエリアでも停められるので、釣り場周辺の駐輪場所に困ることもありません。
N-VANはパーキングに待機させ、バイクは釣りスポットまで私のお供に。ちょっと奥まった場所に入っても、バイクがあればすぐにクルマまで戻れますから、釣り道具の交換だってノーストレスなんです!」
堀さん流! N-VANのトランポ&バス釣り用カスタムを大公開
トランポ用のカスタムをはじめ、かなりの工夫が詰まっていそうな堀さんのN-VANでしたが、実際どのようなカスタムが施されているのでしょうか?
ここからは亀山湖へ向かって自宅を出発するところまで時間を巻き戻し、メカニックマンらしいこだわりのDIYテクニックをはじめとした、驚きのカスタム術に迫っていきます。
加えて、バス釣り用に積み込んでいた装備はもちろん、堀さんのこだわりの原点が垣間見れる、自宅やバイクのコレクションもご紹介!
まずはバイクの積み込みシーンから、レポートしていきます。
バイクの積み込みには、助手席裏にボルト穴を増設してホイールを固定
まずはN-VANの助手席と後部座席の左側シートを、背もたれを倒したフラット仕様の状態にしておきます。そしてリアゲートに、折り畳み式三段ラダーを立てかけ、バイクの積み込みスタートです!
助手席裏に接続したホイールクランプへバイクの前輪を載せて固定した上で、ベルトでさらにしっかりロックしていきます。
「ハーレーが本国から送られてくる際に使われている、梱包資材のベルトを再利用しています。少しコツのいる作業ですが、N-VANにはいろいろな場所に荷物固定用のU字フックが付いていますから、初心者の方でもやりやすいでしょう。
厚みがある運転席のアームレストは、バイクを積みやすくするために外しています。アームレストを外すと露出する大きな穴は、スーパートラップマフラーのオープンエンドという部品を加工したパーツで塞ぎます」
随所に配されたユーティリティナットとフックが便利
バイク積載後、釣り用のギアを積んでいきます。このとき役に立つのが、N-VANのデフォルト装備であるユーティリティーナットを活用して取りつける、自作のアタッチメントたち。
細く繊細なロッドはもちろん、ボート釣りに必要なエレキモーター、船内の足場の高さを上げてくれるハイデッキなどの大型アイテムも、それぞれ固定して運びます。また、車内の随所に薄手のスポンジクッションを置き、傷や故障が生じるのを防いでいます。
プロのメカニックだからこその技術とこだわりが詰まったカスタムです。
「本来は家の壁に設置するための折り畳み式サーフボードラックを、ユーティリティーナット位置に合わせて土台製作と溶接、リサイズをしてロッド置き場にチェンジ。
また、エレキモーターをボートにマウントするためのバウデッキ(車内左側面、ドア近くに固定)は、不要になったエレキモーターのシャフトをカット&溶接して専用のホルダーを作成しました。
ほかにも車体に配されているフックや自作パーツ、ベルトなどを駆使して運転中にギアたちが動かないように固定しています」
ラゲッジが満載でも後方の視界に困らないよう、ルームミラーは後付けパーツで大型サイズにアップグレード。
その上に位置する純正アクセサリーのルーフコンソールには、ポケットティッシュや薬、SDカードといった雑貨を収納。
オプションのベッドセットもより使いやすくカスタム
N-VANを選んだ理由の一つが「快適な車中泊ができるから」という堀さん。社外品のオプション装備であるMGR Customsのベッドセットに、Montagnaのエアマットを載せるスタイルがお気に入り。
「遠方のスポットに出陣したり、絶好のフィッシングタイミングを待ったり、寝る必要があるときはベッドセットを組み立てます。
工具を使わないで済むよう、元から配されていた付属ナット全てをグリップのあるノブナットやフックボルトに交換しました。おかげでベッドセットの設置は15分、分解も5分程度で終わるようになりました!」
本来、車内からは開かない設計のリアゲート。しかし、車中泊時に車内から開けられないと不便なため、リアゲートを内側から開けられるように改造。その解錠スイッチには、ハーレーについていた走行距離積算系計のトリップボタン(写真右)を転用してるんだとか。
ちなみに、無骨なミリタリー風ボディカラーは、ガーデングリーン・メタリックというノーマルのまま。ただしドアノブ、給油口カバー、リアバンパーなどのディティールは、ペイントやフィルムでマットブラックにアレンジを。ランプ系もスモーク加工によってシブいブラックアウト仕様になっています。
堀さんのご自宅&バイクコレクションもちょこっと拝見!
堀さんの自宅にはバス釣りやDIYのためのギアコレクションがいっぱい。月に3回は挑むフィッシングは小学校4年生からの趣味。ロッドだけでも30本以上所有しているそう。
イタリアの工具メーカー、 Beta社のツールボックスが玄人感を漂わせます。
「若い頃から凝り性なので仕方ないかなって。まぁ、私の趣味にも付き合ってくれますから、特に口出しはしてません(笑)」とは奥様、友紀子さんの弁。
現在、堀さんがN-VANと併用しているのが4台のオートバイ。なかでもお気に入りが’78年式のベースに、60’sのパーツを配したスーパーカブ(写真左上)です。今回はこちらを、釣りのお供としてN-VANに積んでもらいました。ハーレーダビッドソンの販売店でメカニックを勤めている堀さんは、自身の愛車についてこう語ります。
「10代からいろんなバイクに乗っていますが、やっぱりスーパーカブは名車ですね。燃費が良くて壊れにくい。カスタムのバリエーションだって豊富。ハーレー乗りはなぜかスーパーカブ好きが多く、一緒に所有しているライダーも多いんですよね」
このN-VANなら亀山湖でボート釣りも楽しめるんです!
釣り用の荷物をすべてN-VANに積んだら、いよいよ亀山湖に出発。実はこの日は記事冒頭のトランポ活用の陸釣りだけでなく、奥様と一緒に楽しめるボート釣りも満喫していました。
荷物を積みやすいから整理整頓も簡単
一通りバイクで陸釣りポイントを巡ったあと、亀山湖の湖畔にある行きつけのレンタルボート「つばきもと」に到着。施設のカートにギアたちを積み替えます。荷室の整理整頓された収納術のおかげでスピーディ。たっぷりフィッシングが楽しめるわけです。
自慢のボート装備もN-VANなら丸々積める
クルマから降ろしたボート釣りが快適に楽しめる装備を、レンタルボートに設置していきます。
エレキモーターに魚群探知機、ハイデッキ、バウデッキなどの大物以外は、アタッチメントやホルダー含めてほぼ自作。以前使っていたロッドカラーに合わせて、カラーリングは紫と黒を効かせています。
「市販品もあるのですが、イマイチ使いづらかったり、デザイン的に好みではなかったり。船首につけた魚群探知機用のアタッチメント=振動子ポールも、配線をポールのなかに入れてスッキリするように製作しました。
自分で考えて製作したパーツだから、見た目だけでなく使い勝手も良いんです。ちなみに、ボート用シートポールは、自分の身長に合わせてポールシャフトをカットしています」
奥様と二人、のんびり釣り糸を垂らす。調子が良ければ超大物のブラックバスがヒットすることも。
現状に満足しているボート装備ですが、新たなアイデアが生まれればさらにアップデートするそう。
「趣味の世界はこだわると本当にキリがないですね(笑)。特に自分の技術や知識を存分に反映できるDIYは満足度抜群。クルマでもボートでも自分のしたいように作る楽しみがあり、完成後には実用性まで実感できる。
私は仕事柄、複雑で難しい作業が可能ですが、ビギナーの方でもホームセンターで買える既製品を組み合わせれば、面白く便利なパーツが作れると思いますよ」
1日密着取材を終えて…
あらためてN-VANのカスタムについて尋ねると、「見栄っ張りなのでノーマルのまま、つまり”吊るし”では乗れないんです」という堀さん。数々のカスタムを施していますが、外装内装合わせてもコストは数万円ほど。ほぼ材料費だけだそうです。
メカニックとしての、プロだからこその技術はともかく、標準装備のユーティリティナットやフックを使ったN-VANならではの収納アイデアは参考にする価値大。特にバイク乗り、釣り好きなら役に立つはずです。
「次は足まわりのリフトアップとルーフキャリアに興味あり」とのこと。ぜひバージョンアップさせた姿も拝見したいものです。
取材・文/金井 幸男
写真/長野 竜成
撮影協力/つり・レンタルボート つばきもと