今回はキャンプ・車中泊のプロが作った、おしゃれな軽バンの自作キャンピングカーをご紹介します。「軽バンでキャンピングカーを自作したい」「軽自動車を車中泊仕様にカスタムしたい」といった方は必見です!
ご紹介するのは、渡辺 圭史さんの愛車「ハイゼットカーゴ」。渡辺さんは小学2年生の頃からキャンプを始めたという生粋のアウトドア好きにして、キャンピングカー専門誌の編集長を務めた経験を持つ、いわば車中泊やオートキャンプのプロ中のプロ。
「さすがプロ! 」と思わせる驚きのアイデアに満ちた一台を、徹底的にご紹介していきます。
- 渡辺 圭史(わたなべ けいし)さん
- 1971年、東京都生まれ。アウトドア好きなフリーランス編集者、ライター。アウトドア用品メーカー、出版社を経て、キャンピングカー専門誌『キャンプカーマガジン』編集長に。現在はWebサイト「キャンピングカーナビ」編集長を務めながら、いろいろなメディアでキャンピングカーや車中泊についての情報を発信中。
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目次
軽キャンピングカー仕様のハイゼットカーゴ! 内装は驚きの車中泊仕様
「渡辺さんの愛車は、きっと隅々まで工夫が施された一台だろう」と思って取材場所である埼玉県・飯能のケニーズ・ファミリー・ビレッジ/オートキャンプ場を訪れてみると、やってきたのは一見するとごく普通の商用バン、ダイハツ「ハイゼットカーゴ」。
渡辺:商用バンの姿かたちが好きだということもありますし、目立つ見た目にすると「昨日、あそこにいたでしょ?」って知り合いに見つかりやすくなるので、外側はあえてそのままにしています。
外から見たときに車中泊仕様だとわからないようにしたかったので、ソーラーパネルも取り付けていないんです。
ハイゼットカーゴは業務用のイメージが強いので、このクルマに乗ってキャンピングカーのイベントを取材に行くと、会場のスタッフに、お弁当屋さんの配達車とまちがわれたりしますね(笑)。
渡辺:まず、2シーターの車両をベースに、カーゴルーム(荷室)を天井からフロアまで板張りにしています。材質はほぼすべて杉材を使っています。
渡辺:床には、カフェなどのフローリング用の、厚手の杉の無垢材を使用しました。
商用車のフロアには凹凸があるんですが、厚みのある板を使うことで、地ならしをしなくても上面をフラットにすることができます。
連結の金具をはめる溝の部分だけ少しフローリングを削って面一(ツライチ)にすることで、足が引っかからないようにしました。
渡辺:ベッドキットを組むと、天井までの距離が近くなって空間が狭くなり、車内での着替えがしにくくなります。
杉の無垢材を使ったのは、使っているうちに傷がついても味わいとして楽しめると思ったから。
また、僕の場合、就寝時の快適さよりも、オフィスとしての作業のしやすさを重視したので、床材を直張りする方法を選びました。
渡辺:就寝の際は、サーマレストのマットレス「リッジレスト ソーライト」の上にチマヨラグを重ねて敷いています。これに電気毛布とハイランダーの封筒型ダウンシュラフを組み合わせれば、冬季でも十分暖かいですよ。
渡辺:また、クルマ用のカーテンレールを周囲に設置しているので、就寝や着替えのときのプライバシーも確保できています。
渡辺:カーゴルームのリアの窓には、シナ合板をカットして自作したウッドブラインドを取り付けました。木枠の裏側には100均で買った磁石を瞬間接着剤で貼りつけてあるので、取り付けるのも取り外すのも簡単です。
ここだけカーテンではなくブラインドにしたのは、完全に外の光を遮断せず、朝日が昇ったことがわかるようにするためです。
ただ、急いで作ったこともあって粗さが目立つので、そのうち作り直したいと思っています。
渡辺:両サイドの天井近くに、1×2(ワンバイツー)材とフックを組み合わせて、ハンガーを掛けられるようにしています。
軽バンだとスペースの関係でクローゼットや収納棚は作りにくいので、こういったフックとハンガーを活用する方法を思いつきました。
ネットバッグには朝食用の果物や小物類を入れています。
渡辺:快適な車中泊のために、意外と重要なのが臭い対策。
車中泊、とくに連泊をしたりするとどうしても生活臭が出てしまいます。その臭いの原因は汗や体臭、食べ物などが混じりあったものだと思いますが、この生活臭はクルマ用の消臭剤だけでは解消できないんです。そのため僕はクルマ用と家庭用の消臭剤、さらにアロマポプリを組み合わせて使用しています。
驚きのアイデアで軽キャンピングカーを自作! 「ハイゼットカーゴ」の車中泊カスタムの様子をご紹介
杉の無垢材で天井と床を板張りに
渡辺:天井と壁には、薄手の杉の内装材を使用しています。こちらは制作中の写真なのですが、天井のフレームに下地材を結束バンドで固定し、断熱材を入れてから下地材に杉材をネジで留めています。そうすることで、ボディに穴を開けずに施工できるんです。
総重量がもともとの車重の1.1倍以下なので、このままの状態でも構造変更申請を行わずに車検を通せるのですが、念のため床材も簡単に取り外せるようにしてあります。
渡辺:これもホームセンターで見つけた素材で、「溝ゴム」や「差し込みゴム」という商品名で販売されています。
無垢材は湿気で膨らんだり縮んだりしますから、縁の部分にどうしてもガタつきが出てくるんですね。それで、その部分を隠す工夫が必要なんですが、このゴムを使ったことで、一気に純正パーツ感が出たように思います(笑)。
SUAOKIのポータブル電源で冬の車中泊も快適
天井にはLEDのダウンライトを仕込んでありますが、ライトは車体のバッテリーからではなく、SUAOKI(スアオキ)のポータブル電源から給電される仕組みにしています。
渡辺:自分の持ち物に合わせてぴったりと設計できるのがDIYのいいところ。サイドに置いたテーブルもDIYで作ったものなのですが、その長さはYETI(イエティ)のクーラーボックスを置いたときにぴったりになるように決めました。
サイドテーブルの下はワイン箱を使った物入れになっていて、カセットコンロなどの小物を収納しています。
渡辺:サブバッテリーのほうが走行充電も楽だし容量も大きいんですが、DIYで設置するのはハードルが高い。電子レンジや冷蔵庫などを置くつもりはないので、大容量のサブバッテリーは必要ないと判断しました。
ポータブル電源ならシガーソケットから充電できますし、ソケットとバッテリーの間に昇圧コンバーターをはさめばフル充電も可能です。これ1つあれば、冬場の電気毛布も、ひと晩なんとか持ちますよ。
渡辺:荷室の壁の後方には、4口の電源タップを設置しています。これはカインズのオリジナルDIYブランド「Kumimoku(クミモク)」の商品。
Kumimokuは、おしゃれでリーズナブルなアイテムが揃っているのでよくチェックしています。
渡辺:この電源タップは、クルマのバッテリーやポータブル電源からではなく、キャンプ場などの外部電源から給電できるようにしています。また、給電用のタップはバンパーの下部に設置してあります。
テーブルも自作だからこそピッタリサイズ
渡辺:ハイゼットカーゴの2シーターは、フロアとフロアパンのあいだに隙間があるんですが、このスペースを利用してアウトドアテーブルやタープを収納しています。このスペースがあったのも、2シーターの商用バンを選んだ理由の1つですね。
渡辺:サイドテーブルには、ガラス製のウォータージャグと漏斗(ろうと)とポリタンクを組み合わせて簡易シンクを自作しました。歯磨きやコーヒーを沸かすときに使用しています。
渡辺:荷掛け用の穴(ユースフルホール)が空いているのも商用車ならではです。こうやってカラビナでサイドテーブルの脚をつないでおけば、山道などのワインディングを走ってもズレることはありません。
渡辺:サイドテーブルは横置きにすることも可能です。自然豊かな場所にクルマをとめて、バックドアを開けて外の景色を眺めながら仕事をするのは、とても気持ちいいですよ!
渡辺:キャンプの際は、タープを設置します。一般的なキャンプ用のタープだと、このハイゼットカーゴには大きすぎるので、いろいろ探した結果、Kookaburra(クッカバラ)の日除けシェードセイルという、ガーデニング用のタープがぴったりでした。
車両のレインガーター(雨どい)に、キャプテンスタッグのテント・タープ用カージョイントを取り付けて固定しています。
渡辺:アウトドア用テーブルも、自作したものです。
テーブルの天板は車内のテーブルと同じ杉板で、脚はソーホースブラケットと呼ばれる作業台やテーブルの脚用パーツと、杉の2×4(ツーバイフォー)材を組み合わせました。
こちらもハイゼットカーゴの床下スペースにぴったり収納できるサイズで作りました。
テーブルの木材にスチールウールを浸したお酢を塗ることで、使い込んだ風合いを出しています。 DIY好きの間ではよく知られているテクニックで、木材の中のタンニンが鉄と反応することで色合いがシャビー(古めかしい)に変わるんです。
車中泊仕様の「ハイゼットカーゴ」は3日で完成! 誰でも真似できる自作軽キャンピングカー
渡辺:まず、「四駆の軽バンで2シーター」という条件で探して、エブリイとハイゼットカーゴが候補になりました。エブリイのほうが車内空間は数センチだけ広いんですが、センターにバッテリー用のメンテナンスホールがあるんです。
整備のたびにウッドフロアを取り外すのも面倒なので、最終的にハイゼットカーゴを選びました。
このクルマは、平成20年式のハイゼット10代目にあたるモデルで、この世代からエンジンが改良されていることもあって、値段と性能の兼ね合いも考慮して決めました。約20万円で手に入れて、内装の材料代は10万円ほどで、3日かけて作りました。
渡辺:「キャンピングカーがほしい」と思ったときに、誰でも手に入る形を模索したのがこのクルマです。だから「簡単に真似できる」というのがポイント。
自動車整備の知識がなくても、日曜大工レベルで作れますし、使った材料もすべてホームセンターやアマゾンで手に入るものです。
僕はキャンピングカー専門誌の編集長を務めてきましたが、若者がキャンピングカーを手に入れるのは夢のまた夢、といった現状をなんとかしたかったんです。
キッチンやシャワー、トイレなどの設備がついた大型キャンピングカーを所有できるのは、ある程度、経済的に余裕のある人に限られますが、若者たちにこそ、もっとキャンピングカーを使って旅をしてほしいなと。
日本では長らく若者のクルマ離れが叫ばれ続けていますが、若者だってクルマがほしくないわけではないんですよね(笑)。もっと手頃な値段で買えて維持費も安くなれば、クルマに乗りたい若者はたくさんいます。
僕がこのクルマを買ったのは2017年で、ちょうどバンライフが日本でも注目を浴び始めた頃でした。バンライフというのはまさに、若者たちの「クルマで気軽に旅をしながら暮らしたい」というニーズから生まれたライフスタイル。
もともとアメリカのヒッピーカルチャーやサーフカルチャーをルーツに持つだけあって、自分でリーズナブルに作ろうというのが主流です。本格的なキャンピングカーではなくても、商用バンをDIYで改造して自分らしいクルマを作ればいいんですよね。
ですから、クルマ業界に関わっている人間のひとりとして、「手軽で楽しいクルマの遊び方があるよ」と若い人たちに伝えたくて、このクルマを作ったという側面が大きいですね。
渡辺:とはいえ、快適性でいえば、専門メーカーが架装したキャンピングカーにはかないません。キャンピングカーが「移動式の家」だとしたら、あくまで僕のクルマはキャンプの延長線上にある「動くテント」くらいのイメージですね。
僕は以前、ウルトラライトハイク(極限まで軽量化した道具と荷物で長距離を歩く、ストイックなアウトドアスタイル)についての本を企画したことがあるんですが、このクルマはウルトラライトなキャンピングカー、というイメージです。
「軽」バンをベースに、お手「軽」に作った、ウルトラ「ライト(軽)」スタイルのクルマ。3つの軽が合わさった「ウルトラ軽なキャンピングカー」ですね。
渡辺:オフィス、仕事場として使っているはもちろんのこと、仕事柄、キャンピングカーやカスタムカーを取材をすることが多いので、季節を問わず取材先へ前日入りして仮眠をとって、翌日の朝から取材と撮影をするという使い方をしています。
また最近は、このクルマで実際に車中泊をして体験レポートを書くこともよくあります。これは、温度計のアプリの表示画面なんですが、車内とバンパー下にセンサーを設置していて、車内の気温と車外の気温がわかるようにしてあります。「こういった装備で、気温が何度になると、こういうふうに車中泊できた」といったことを調べるためです。
キャンピングカーはもっと面白くなっていく! 自作にチャレンジしてみては?
渡辺:コロナ禍以前からアウトドアはブームになっていましたが、アウトドア×クルマというジャンルには追い風になっていると思います。
クルマという要素が加わることで、三密を避けながら移動ができて、オープンエアの中で快適に過ごせるようになる。キャンピングカーやバンライフ、車中泊は今の時代にフィットしていると思います。
キャンピングカーの展示会にくるお客さんたちを見ていると、これまでは購入前提でカタログをしっかり調べた上で実車を見にくる人が多かったんですが、最近は興味を持ったのでとりあえず見にきたという人たちが増えた印象があります。
日本でもキャンプブームが続き、バンライフのカルチャーが普及してきたこともあって、キャンピングカー人口の裾野が大きく拡がっているのはまちがいないですね。
海外ではさらに一歩進んで、DIYで作っているけれど、もっとラグジュアリーで完成度の高いクルマが登場するようになりました。日本でもこれからもっとDIYのキャンピングカー分野は成熟していくと思います。
また大手の自動車メーカーが、バンライフのテイストを取り入れたキットやコンプリートカーモデル、純正オプション品を作るようになってきたのも大きな変化です。
まずは僕のクルマを見て、「こんなに手軽にキャンピングカーが作れるんだ」ってことを知ってもらえたら、そしてDIYにチャレンジしてもらえたらうれしいですね。
取材・文/廣田 俊介
写真/木村 琢也
編集/平林 享子(LIG)
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※2 本記事に掲載された情報は、記事公開時点のものです。