車をカスタムして世界に一台しかない車に仕立てること。そのカスタムしていく過程を通じて愛車への愛着がより深まり、一層楽しいカーライフを送れることは間違いありません。
ただ、初心者にとっては車のカスタムをどこから始めればいいのか分からない人も多いのではないでしょうか?また、初心者はどんなことに注意してカスタムをしたらよいのでしょうか?
この記事では、そんな車カスタムの初心者の人に向けて、注意点や知っておくべきことをまとめました。
なお、カスタムについては法的な面も含めて様々な解釈があります。当記事の記載内容は、改造の法的な適合性については保証していないことを予めご了承ください。純正アクセサリーによるカスタマイズ以外の場合、改造申請が必要になる場合もあります。
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総まとめ! 車のカスタムって何? その種類と変遷をプロが徹底解説!
目次
初心者は「元に戻せるカスタム」「パッと見の印象が変わるカスタム」からスタート
車をカスタムしたことがほとんどない、車のメカニズムにも詳しくないという初心者は、まずカスタムする順番を間違えないことが重要です。
ベース車によってもオススメの順番は変わってきますが、最初はズバリ、タイヤ・ホイールがオススメです。なぜなら、タイヤとホイールが組み付けられた状態であれば、ディーラーやショップなどに依頼せずとも自分の手で元に戻すことができるうえ、見た目の印象も大きく変わるからです。
次いでオススメなのは、カーオーディオのスピーカーです。上を見ればキリがない世界ではありますが、高音質なオーディオシステムを新車装着品として設定していない車種であれば、純正交換タイプの比較的安価なスピーカーを選んでも音質が向上しやすく、費用対満足度も高い傾向にあります。
そして、車検や12ヵ月点検と一緒に交換作業がしやすい消耗品で、部品代・工賃も高額になりにくく、安全性の面からもオススメしたいのがブレーキパッドです。使用環境に適した特性を持つパッドを選べば、高負荷時のフェードを防ぐのはもちろん、絶対的な制動力やペダルタッチ、コントロール性に対する不満・不安を解消できます。
一方、単体の部品代だけで10万円を超える高額なパーツを購入するのは、カスタムに慣れてきてからの方が良いでしょう。特に内外装パーツや電装パーツは穴あけ・加工・塗装などの作業が必要で、元に戻しにくいものが多いため要注意です。
不正改造はNG
車は走っているだけで環境に負荷を与えるとともに、事故を起こすリスクを伴う以上、公道走行の使用許可証とも言えるナンバープレートを付け車検証を持って公道を走る車であれば、原則として国が定める「道路運送車両の保安基準」に適合していなければなりません。
これに適合しない不正改造を行った状態で公道を走行した車には、その使用者に対し整備命令が発令され、従わなければ50万円以下の罰金が科されます。また、不正改造を実施した者に対しても、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。そして当然、車検には通りません。
不法改造に該当するカスタムを行わないようにするための主な注意点を、下記に項目別にまとめました。
なお、各法令については、警察官や運輸(支)局、軽自動車検査協会の検査員によって解釈が異なる可能性があります。また、サーキット専用品など、車検不適合のカスタムパーツもありますので注意が必要です。
サイズ
車検証に記載されている数値を基準として、全長は±3cm、全幅は±2cm、全高は±4cm、車両重量は軽自動車と小型車の場合は±50kg、普通車の場合は±100kgの範囲内なら、エアロパーツやルーフキャリア、ルーフボックスなどを装着することができます。
裏を返せば、この基準を超えるほど大きなものを装着した場合は、そのままでは保安基準に適合しません。車検対応品であっても運輸(支)局または軽自動車検査協会に構造変更を届け出る必要があります。ただし、ルーフキャリアなどの場合、容易に脱着できる構造であれば構造変更申請は必要ありません。
また、最低地上高に関しても規定があり、空車状態かつタイヤが規定空気圧の状態、車高調整機能がある場合は標準位置(任意の位置に保持できる場合は最低と最高の中間の位置)の状態で9cm以上とされています。
ただし、路面と接触しても保安上重要な部位がその衝撃に耐えられる構造やアンダーカバーを備えている場合は5cm以上となります。また、ブレーキやロアアームの下端、柔軟なゴム製の部品、樹脂製のマッドガード、スカート、フラップなどは最低地上高の測定に含まれません。
そして、特に注意したいのがGTウィングです。「確実に取り付けられていること」「鋭い突起がないこと」という規定については他の外装部品も同様ですが、「側方に翼形状を有していないこと」「その付近の最も外側、最後端とならないこと」という規定もあり、翼端板のないものや、ボディ後端から横または後ろにはみ出すものはNGとなります。
ランプ(灯火類)
ランプやリフレクターに関しては、ほぼ全てに光の色や明るさ、個数などの規定があると言っても過言ではありません。以下にその概要を列記します。なお、車の製造年月日によっては、保安基準が異なる場合があります。
- ハイビーム(走行用前照灯):全て照射した状態で夜間に前方100m先の障害物を確認でき、最高光度の合計は22万5000カンデラ以下、光の色は白または淡黄色であること。
- ロービーム(すれ違い用前照灯):全て照射した状態で夜間に前方40m先の障害物を確認でき、個数は2個であること。
- フロントフォグランプ(前部霧灯):光の色は白または淡黄色かつ全て同一で、同時に3灯以上点灯しないように取り付けられていること。
- コーナリングランプ(側方照射灯):光度は1万6800カンデラ以下、光の色は白であること。
- マニューバリングライト(低速走行時側方照射灯):光度は500カンデラ以下、光の色は白であること。
- ポジションランプ(車幅灯):夜間にその前方300mから点灯を確認でき、光源は5W以上30W以下で照明部の大きさが15cm2以上、光の色は白であること。ただしウィンカーなどと一体型または兼用のものはオレンジ色でも可。
- デイタイムランプ(昼間走行灯):光度は1万6800カンデラ以下、光の色は白、照明部の大きさは25cm2以上200cm2以下であること。
- フロントリフレクター(前部反射器):夜間にその前方150mからハイビームで照射した際に反射光を確認でき、大きさは10cm2以上、形状は三角形以外、反射光の光は白であること。
- ナンバー灯(番号灯):夜間に後方20mから数字などの表示を確認でき、光の色は白であること。
- テールランプ(尾灯):夜間に後方300mから点灯を確認でき、光源は5W以上30W以下で照明部の大きさが15cm2以上、光の色は赤であること。
- リアフォグランプ(後部霧灯):光源は35W以下で照明部の大きさが140cm2以下、光の色は赤、数は2個以下であること。
- ブレーキランプ(制動灯):昼間に後方100mから点灯を確認でき、光源は15W以上60W以下で照明部の大きさが20cm2以上、光の色は赤であること。
- バックランプ(後退灯):昼間に後方100mから点灯を確認でき、光源は15W以上75W以下で照明部の大きさが20cm2以上、光の色は白、個数は1個または2個であること。
- ウィンカー(方向指示器):昼間に後方100mから点灯を確認でき、光源は15W以上60W以下で照明部の大きさが20cm2以上、光の色はオレンジで、毎分60回以上120回以下の一定の周期で点滅すること。
タイヤ・ホイール
「はみタイ」と略称されるタイヤ・ホイールのはみ出しについては、2017年6月22日より「回転部分の突出規定」の見直しが行われ、車の製造年月日を問わず適用されました。
この「回転部分の突出規定」とは、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通り、それぞれ前方 30°および後方 50°に交わる2平面により挟まれる回転部分が、フェンダーから外側に飛び出していないことを求めるものです。
これが、従来はどれかが1mmでも飛び出していたらNGでしたが、この見直し以降、タイヤのサイドウォールにあるラベリング(文字や記号を描いた突起)やリムガードに関しては、突出量が10mm未満ならOKということになりました。
ただしホイールに関しては、リムやセンターキャップなどが1mmでも飛び出していたらNGなのは、従来と変わりません。
窓のフィルム、ステッカー
窓ガラスに関しては、ドライバーの視界の良し悪しに直結することから、特にフロントガラスと運転席・助手席のサイドウィンドウに対して厳しい規制がかけられています。
フロントガラスに、車検ステッカー(検査標章)など指定されたもの以外のステッカーを貼り付けたり、装飾板を装着したりするのはNG。運転席・助手席サイドウィンドウに着色フィルムを貼り付けた状態で、可視光線透過率が70%未満となっている場合は保安基準不適合となります。
マフラー
騒音を防ぐマフラーに関しては年々規制が厳しくなっており、車の製造年月日が新しいものほど基準値が高くなっています。
特に、2010年4月以降に製造された車に対しては、簡単に取り外せるインナーサイレンサー付きのマフラーが禁止されるとともに、使用過程時でも加速騒音規制値を満たしていることが求められるようになりましたので、注意が必要です。
車中泊関連&乗車定員
車中泊仕様などで後席を取り外すと乗車定員が変わるため、たとえ一時的だとしても保安基準不適合と見なされる可能性があります。また、レールやボルト取付部などを埋め、容易には元に戻せない状態にした場合は、構造変更を申請する必要があります。
また、炊事設備やサブバッテリー、シャワー、トイレなどを備え付けてキャンピングカーとした場合も、重量が50kg以上増加する可能性が高いため、構造変更の申請が必須です。
改造車の自動車保険について
基本的に不正改造を行っていなければ自動車保険には入れますが、その改造内容、あるいは損害保険会社や代理店、担当者によっては断られる可能性もゼロではありません。
特に、エアバッグなど安全に関わる部品を取り外す場合は、保険料や事故を起こした際の保険金支払金額・条件などが変わる可能性があるため、事前に確認した方が良いでしょう。
中古車にもカスタムはできるのか?
新車は車両本体価格が高いうえ、特に発売されたばかりの新型車はサードパーティ製パーツの開発が進んでいません。また昨今は、安全装備が充実する一方、その機能を阻害する可能性のあるカスタムを行えば誤作動を起こす危険性や、保証の対象外となる可能性があるため、カスタムを行うのはややハードルが高いと言えます。
逆に一世代以上前の中古車は車両本体価格が安いことが多く、カスタムパーツも出揃っており、安全装備も直近のモデルほど多くはないため、比較的カスタムしやすいでしょう。
ただし、生産されてから20年以上経過しているモデルは、一部のスポーツカーや高級車ブランドの車を除き、純正部品でさえもバックオーダーとなることが多く、カスタムパーツとなれば新品を入手するのはほぼ絶望的になります。
改造車の買取・リセールバリュー
保安基準に適合さえしていれば、全面的にカスタムされた車でも、ディーラーや買い取り専門店などで下取り、買い取りはしてもらえます。なぜなら、カスタムカーを得意とする専門店が存在し、カスタムカーが好きなユーザーはそうした中古車販売店から購入するため、中古車オークションに出品すれば買い手が付くからです。
純正アクセサリーであればプラス査定に働くケースもあるようですが、ケースバイケースが実情のようです。
社外品が付いているだけで、ディーラーや民間車検場(指定工場)に入庫を断られる場合がある
ディーラーの中にも、サードパーティ製のカスタムパーツを積極的に取り扱い、サービス工場への入庫を促進しているお店がごくまれに存在しますが、大半は消極的です。
なぜなら、カスタムを行ったことで、カスタムを行った場所以外も通常より消耗が進んでいる可能性があるうえ、不具合が発生した場合に保証の適用を自動車メーカーに認められず、結果的にオーナーとトラブルに発展するリスクが高いからです。
また、運輸(支)局や軽自動車検査協会に実車を持ち込まずとも自社で車検を完結できる民間車検場(指定工場)の場合、不正改造車を整備したことが発覚すれば、指定を取り消されます。そのため、厳密には保安基準に適合しているカスタムカーでも、一目見ただけでは適合か不適合かが分からないほど攻めたカスタムをしている車は、入庫を断られる可能性が極めて高いと考えて良いでしょう。
まとめ
車のカスタムの世界は非常に奥が深く、また車のデザインや設計は高い安全基準をもって製造されていることが多いため、それだけ注意しなければならない点や守らなければいけない法律も多くなっています。
ただその反面、さまざまなものを好きなようにカスタムできるからこその面白さや楽しさがあります。カスタムのやり方やカスタムできるパーツが多いからこそ、世界でただ一台の愛着ある車を育てていくこともできます。
注意点を守りながら楽しく車をカスタムして、個性ある愛車で豊かなカーライフを過ごせればいいですね。
車のカスタムの種類や変遷、その具体的な方法については下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
▼カスタムの種類と変遷についてはこちらも!
総まとめ! 車のカスタムって何? その種類と変遷をプロが徹底解説!
※1 記事内のイラストはあくまでイメージです。実際にカスタムする場合は自己責任のもと行ってください。
※2 記事内の情報は、記事公開時時点での情報です。
文/遠藤 正賢
イラスト/旅する漫画家シミ
編集/カエライフ編集部