より洗車に関する知識を深めるため、洗車ソムリエ・高橋さんに、手洗い洗車に続いて、高圧洗浄機やブロワーを使った、時短にもつながる、プロならではの洗車テクニックを教えてもらました。
ご家庭で洗車用の高圧洗浄機を持っている方はもちろん、コイン洗車場でも高圧洗浄機やブロワーが利用できるケースは多いので、ぜひ参考にしてください。動画でも全体の流れを紹介していますので、写真だけではイメージしづらい動作もバッチリ理解できます。
また、素人では落としにくい汚れの対処法をはじめ、洗車時のNG行為や、洗車に適した時間帯など、素朴な疑問に対するQ&Aまで網羅しています。この記事の知識を活用すれば、洗車マスターへの近道になること間違いなし!
▼手洗い洗車の基本を紹介した記事はコチラ!
- 洗車ソムリエ® 最高技術責任者、カーコーティング専門店Cent 代表
高橋宏宗さん - 日本洗車ソムリエ協会が認める、静岡県で唯一の「洗車ソムリエ®」であり、洗車ソムリエを指導育成する立場の「最高技術責任者」。静岡市清水区で、コーティングや洗車サービスを行う専門店「Cent -サン-」を運営している。
Webサイト Cent -サン-
目次
高圧洗浄機を使ったプロの洗車テクをHondaの「N-BOX」で実践!
今回、高圧洗浄機を使った洗車用の車両サンプルとして用意したのは、Hondaの「N-BOX」。一ヶ月以上洗っていなかったため、少々くたびれた表情です。洗車ソムリエである高橋さんが見て、一般的な洗車では落ちないであろう、次のような汚れもついていました。
「固着した虫の死骸」の汚れ
フロントバンパーやサイドミラー部分に黒く点々と見えるのは、多くが虫の死骸。特に高速道路での走行時や、夜間にヘッドライトを点灯して走行していた場合、どうしてもたくさん付いてしまいます。「走行中のスピードによって潰れて固着した結果、簡単には取れないケースも多いんです」とのこと。
「メッキパーツのシミ」汚れ
汚れが目立ちやすい、光沢感のあるメッキパーツ。白い斑点のようなシミやくすみがついてしまっているケースも多いのではないでしょうか。
これは水垢による汚れが一番の原因だそう。高橋さん曰く「しっかりキレイにするには、専用の除去剤を使って一手間かける必要があります」。
「タイヤハウス内」の汚れ
意外と気になるのが、タイヤの奥から覗く、フェンダーの内側部分の白っぽくなった泥水や砂などの汚れ。
「こだわり派なら、タイヤと車体のスペース=タイヤハウス(ホイールハウス)もしっかり洗いたいですね」と高橋さん。SUV系など、タイヤハウス内が広いタイプは特に汚れが目立ちますので、ぜひキレイにしておきたい箇所です。
セルフ洗車「プロのマル秘テク」
「私が普段お店で使っているのは高圧洗浄機です。一般的な手洗い洗車より格段に作業を時短することができ、洗浄効果も高いんです。
特に"流す"作業はコツさえ掴めば数分で完了でき、仕上がりも非常に美しくなります。ほとんどの汚れを高い水圧で吹き飛ばすことができますから、結果としてクルマのボディに傷をつけるリスクが減らせるのもポイントですね」
洗車ソムリエ・高橋さんオススメの高圧洗浄機は、リョービ「AJP-4170VGQ」だそうです。
「使いやすいアタッチメントが多く、パワーも十分。こちらのモデルはプロ用ですが、4万円前後で購入できますので、洗車を極めたいなら購入を検討してみるのも良いかと」
なお高圧洗浄機は、自宅用に購入する以外にも、多くのコイン洗車場で借りることもできます。ぜひ今回のプロのノウハウを参考に実践してみてください。
Step①高圧洗浄機で汚れを落としながら「流す」
- ▼プロの「流す」POINT!
- ・ルーフ、リア、サイド、フロントと面ごとに流す
・あまり動き回らず手前は広く、奥は細い水流で流す
・同じ箇所に何度も水流を当てない
「ルーフやリアゲート、サイドパネル、ボンネットなど、上から下へ車体の各面に向けて手早く水流を当てていきます。
自分自身はあまり動かずに、アタッチメントで噴射口を操作しながら、近い場所にはワイドに水流を広げて当て、遠くなるほど狭めて威力のある水流を当てるイメージでOKです」
▼近い場所には水圧が弱めのワイドな水流を当てる
▼遠い場所には水圧が強めのナロー(細い)な水流を当てる
基本的には、同じ箇所には繰り返し水流を当てなくてOK。高圧洗浄機の強い水圧に負けないようなガンコな汚れは、直接的な対策を講じないと落ちないそう。
「高圧洗浄機で流すコツは、表面のホコリを払う気持ちで操作することです。あまり動き回らず手元のコントロールだけで広い範囲をカバー、さらに往復しないことでスピーディな洗車が目指せると思います」
ちなみに水流の幅を調節できるのは、一部メーカーの高圧洗浄機のみ。できないモデルの場合は上下左右に大きく動かしながら、自身も動いて対応しましょう。
ホースとはレベルが違う水圧なので、ホイールやタイヤハウスの汚れだって簡単に吹き飛ばせます。
「水を大量に使っているように感じますが、実際には小さい水粒の集合体になっているだけなので、ホースより圧倒的に節水にもなるんですよ」
Step②高圧洗浄機でシャンプーを吹き付けて「洗う」
- ▼プロの「洗う」POINT!
- ・高圧洗浄機にシャンプーをセットして全体に噴射
・ムートンで手早く全体を撫で洗い
お次は、高圧洗浄機のアタッチメントを付け替え、広範囲にシャンプー溶液が噴射されるモードでクルマ全体に吹き付けていきます。
「車体を回りながら上から下に向けて放てば、あっという間にクルマは泡に包まれます」
この状態から、Step①で紹介した手順で再び水をかけ、シャンプーを流す作業に移ってもOK。
ですが、プロはここでもうひと手間を掛けて、さらに愛車に磨きをかけていきます。スポンジより柔らかく、一度に広い範囲が磨けるムートンでさらに「洗い」の仕上げ作業を進めます。
ただし、高橋さんが使用しているこのムートン、お値段が5〜6万円ほどする高級品。スポンジよりも圧倒的に効率は上がりますが、カビの発生を防ぐメンテナンスも必要なため、一般的にはオススメできないそうです。
安価なフェイクムートンも販売されていますが、ステッチの入っているエッジ部分が硬く、使いにくい場合が多いので注意が必要だとか。
「広げたムートンの起毛面を使い、泡を落とす要領で撫で洗いしていきます。力を入れずにムラなく行なってください。すぐに水分を吸って重くなりますので、適宜すすいで絞りましょう」
この作業後、先ほども説明したように、Step①で紹介した手順で高圧洗浄機を使ってシャンプーを洗い流しましょう。
ここまでで、かかった作業時間は7分弱。高圧洗浄機を使用しない一般的な手洗い洗車と比べて、圧倒的なスピード感です。
▼高圧洗浄機を使った「流す&洗う」の動画はこちらでチェック!!
Step③ブロワーであっという間に水滴を吹き飛ばす
- ▼プロの「拭く」POINT!
- ・強力な送風機=ブロワーで水滴を飛ばす
・最後に、ディテールに入り込んだ水もチェック
仕上げは、高い風圧を送り出すマシンである、ブロワーを使って水滴を吹き飛ばすのがプロ流です。スピーディかつ、クロスのように拭き筋も残りません。高圧洗浄機同様、コイン洗車場なら使用できるケースもありますので、チェックしてみてください。
「ボディ全体はもちろん、ドアと車体のような隙間に入り込んだ水もブロワーで処理します」
「ちゃんと汚れが落ちていれば水滴がスムーズに飛ぶので、汚れが落ち切っているか、最後のチェックにもなります。汚れで凹凸ができていると、そこに水滴が溜まっちゃうんですよ」
この方法なら、スタートからフィニッシュまでの所要時間は、洗車ソムリエ・高橋さんなら10分かからないそうです。なんとスピーディ!
厄介な4つの汚れを落とすプロの技をご紹介!
- ▼プロの「厄介な汚れを落とす」POINT!
- ・ボディに食い込んだ鉄粉も溶かし出す
・こびり付いた虫の死骸は専用洗剤で対応
・メッキパーツは酸性の洗剤で磨く
・タイヤハウスまで見逃さず
ここからは素人では太刀打ちできない汚れに対抗できる、プロならではのテクニックがズラリ。入手できないグッズを使うわけではないので、自分で真似することだって可能です!
▼ボディに食い込んだ鉄粉を溶かし出す
実は車体の塗装部分には、目に見えないほどの小さい鉄粉が付着、埋没しています。視認できないので気になりにくいですが、経年によってサビの原因になりかねません。
「鉄粉除去剤で溶かして流すと良いでしょう。様々なタイプが市販されていますが、スプレー式なら車体にキズが付きにくく扱いやすいですよ」
鉄粉除去剤をスプレーしてしばらくすると、写真のように鉄粉が紫色に反応して浮かび上がってきます。あとはしっかり水で洗い流しましょう。
▼固着した虫の死骸は専用洗剤で対応
「虫の死骸はタンパク質であり、油や砂による汚れとは本質的に違います。うちのお店では、タンパク質が分解できる『Bug-Out』という虫専用の洗剤を使っています。吹き付けてから乾いた布で拭き取るだけで、ボディをキズつけることなく除去できますよ」
『Bug-Out』はプロ仕様のためなかなか手に入りませんが、他社製の虫取り専用のクリーナーはカー用品店でも販売していますのでチェックしてみてください。
▼メッキパーツのシミはスケール除去剤で対応
塗装部分より材質的に汚れが付きやすく、目立ってしまうのがメッキパーツ。どのように対処すべきでしょうか。
「スケール除去剤と呼ばれる、固着した水垢を取るための酸性の薬剤をクロスにつけ、少し力を入れて磨きます。さらにドライタオルで拭き取ればピカピカに! 酸性なので手袋をつけてから施工しましょう」
Before
↓
After
スケール除去剤は水垢除去剤とも呼ばれ、ネットショップを中心に、一般の方でも購入することが可能です。
▼タイヤハウス内の汚れは濃度を高めたスケール除去剤で対応
「タイヤハウスは意外と気になる人が多いスポット。汚れが取れにくい樹脂パーツなので、メッキパーツに使ったスケール除去剤の濃度が高いバージョンを使用します。強い酸性ですから手袋は必須です!」
Before
↓
After
固く絞ったクロスに、濃度を高くしたスケール除去剤を少し染み込ませて磨くと、元の黒が蘇ってきます。
洗車ソムリエ流に聞く「洗車の基本Q&A」
洗車にまつわる素朴な疑問を、洗車ソムリエ・高橋さんにぶつけてみました。理想的な洗車の頻度から、知っておくべきタブーやタイヤワックスの有効性などなど、5つの疑問に対してロジカルにお答えいただきました。
Q.どれくらいの頻度で洗車すればいいの?
屋根付きの自宅ガレージのケースや、青空駐車の場合など、クルマの保管環境によって洗車の頻度は変わってくるとはいえ、何か目安になることはあるのでしょうか。
A.自分に無理のないサイクルでOK!
Q.洗車時のNG行為ってありますか?
セルフで洗車するとき、良かれと思っていたことが実はクルマを傷つけることになっていて逆効果だった……、そんな悲しい思いはしたくないので、やってしまいがちなNG行為があれば教えて下さい!
A.次の3つには必ず注意してください
①指輪や腕時計は外す!
②洗車は早朝か夕方以外の時間帯は避ける!
③コーティング施工車には中性洗剤以外を使用しない!
Q.洗車機を使うメリットとデメリットはありますか?
コイン洗車場やガソリンスタンドに設置されている、機械式の洗車機。近年はゲート型タイプで、洗い方のメニューを選択してお金を投入すれば、あとはクルマを指定の位置まで移動するだけでOKな「全自動洗車機タイプ」が広く普及しています。手洗い洗車に比べて、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
A.洗車せずに放置するならぜひ洗車機で洗車を!
洗車機での洗車終了後、少し水分が残っている状態を利用して、簡易タイプのスプレーコーティングを使えば、拭くついでにコーティング施工もラクにできちゃいます。
Q.タイヤワックスってタイヤに悪影響って本当?
タイヤの艶出しに使われるタイヤワックス。でも、使うとひび割れの原因になるらしい、という噂を聞いたことがある人もいるのでは。実際のところ、どうなんでしょう?
A.水性ワックスならまず安心!
タイヤワックスには油性と水性があり、前者はタイヤに若干の悪影響があると言われています。
Q.鳥のフンは放置していても問題ない?
屋根がない駐車場を利用していると、知らない間に鳥のフン害にあってしまった、なんて人も多いはず。場所によってはついそのままにしておいて、次の洗車のタイミングで取ればいいや、なんて思うケースも多いでしょうが、実際のところどうなんでしょうか?
A.塗装にダメージを受ける可能性あり!
ちなみに、いきなり乾いたタオルなどで拭き取ろうとするのはNGとのこと。万が一、木の実の殻や小石などの固形物がフンに混じっていると、キズの原因になってしまいます。
手洗い洗車テクも一緒に確認し、自分にあった洗車ライフを!
高圧洗浄機を使ったテクニックを中心に、洗車ソムリエならではのプロの妙技と知識を披露していただきました。道具的に真似するのが難しいテクニックもありましたが、「洗車tips Vol.1」で教わった内容とハイブリッドすれば、参考にできるはず!
また、洗車時のNGやフン害への対応など、覚えておいて損のないツボも必ず役に立つことと思います。今後は学んだテクニックを生かして、充実の洗車ライフを送ってください!
取材・文/金井 幸男
写真・動画/大根 大和
編集/高橋 要(LIG)