アウトドアブームと並び、近年ますます盛り上がりを見せている車中泊ブーム。キャンプ場やRVパークでの宿泊手段としてはもちろん、サーフィンなどのアクティビティを楽しむ人の場合は、前日夜から現場の近くで仮眠を取る手段としても活用されています。
アウトドアアクティビティを楽しむ場合は荷物が多くなりがちなので、クルマの積載にも工夫が必要です。クルマを使った経験が少ない人の場合、積載方法や快適な車中泊での過ごし方について迷っている人も多いのでは。
そこでカエライフでは、実際にアクティビティ×車中泊を楽しむ人に取材を行い、クルマを活用したさまざまなアクティビティの楽しみ方に迫る連載記事をスタート! 第2回は、三菱の軽自動車ミニキャブバン(スズキ・エブリィOEM)でサーフィン×車中泊キャンプを楽しんでいるKeiさんにインタビュー。快適な居住空間を生みだすDIYカスタムのポイントや、サーファーならではの工夫を教えていただきます。
目次
- Keiさん
- 1979年茨城県生まれ、東京在住。かつてはインディーズバンドでギターを担当。ツアーで全国を回る一方、ライブのチラシやプロモーションビデオの作成も行っていた。解散後はそのスキルを活かして映像関係の会社に就職。撮影から編集作業までを一人でこなしている。現在、平日はフルタイム勤務、週末は愛車のミニキャブバンでサーフィンやキャンプに出かけ、合間にDIYで車内をカスタム中!
- Instagram:@ymmt1979
- Youtube:Kei - SURF and VAN LIFE
探し続けてやっと見つけたマニュアル×4WDのミニキャブバン
KeiさんがDIYカスタムを楽しんでいるのは三菱の「ミニキャブバン」。現在のクルマは2台目ですが、実はKeiさんが初めて購入した愛車も旧型のミニキャブバンでした。
Keiさん:お正月に帰省した時に、中古車販売店で手頃なミニキャブバンをみつけたのが1台目を購入したきっかけでした。移動手段としては便利でしたが、商用の軽貨物車だったので後部座席の窓が開かなくて。いざ車中泊をするようになったら、換気ができないことに不便を感じました。そこで、10万キロを走ったところで買い替えることにしたんです。
2台目にもミニキャブバンを選んだ理由を「同じ三菱のディーラーに相談できるから」と笑うKeiさん。ところが、あるこだわりからクルマ探しは難航したようです。
Keiさん:マニュアルの4WD(四輪駆動車)が欲しかったんですよ。マニュアルに関しては僕のちっぽけなこだわりなんですけど、最初の愛車もマニュアルでしたし、やはり(オートマより)カッコイイなと思って。4WDは、道の悪いキャンプ場や砂浜も運転できるように。でも、その条件を満たす車が東京周辺には出回っていないんです。あまり雪が降らないから、4WDを買う人がいないのかな。インターネットで中古車情報をチェックし続けて、ようやく見つけたのは長野県にあるショップでした。
Keiさん:それから1年以上乗っていますが問題はありません。でも、実はまだ4WDに切り替えたことがないんですよね。僕がホームにしている千葉県の片貝海岸は堤防とコンクリートに囲まれていて、砂浜を走ることがないので。ただ、長期の休みが取れたら1週間ぐらいサーフィン旅をしたいので、その時に活躍してくれると思います。
ミニキャブバンを快適な車中泊仕様にDIY!
広い室内×フラットな床面が魅力の三菱「ミニキャブバン」。ストレスなく車中泊を楽しむために、KeiさんはDIYでさまざまなカスタムを施しています。
既製品のベッドキットの高さを調節して収納スペースを確保
Keiさん:ベッドキットは既製品を使用していて、下にサーフィンバケツやポリタンクが入るようにベットの高さを設定しています。その際、ベットの上で過ごす時に天井に頭が当たらないこともポイントなので、何度も高さ調整を行いました(笑)
就寝時はラグマットを敷いたベッドフレームの上に敷きふとんを広げ、その上に寝袋を置いて冬の底冷えを防止。
Keiさん:奮発してNANGAのシュラフを購入したら、真冬でも寒さ知らず! 寝る前に湯たんぽをシュラフに入れておくと、氷点下でもTシャツ1枚でポカポカです。シュラフの下はエアマットにしたいのですが、大きな荷物を入れるたびに空気を抜かなきゃいけないのが面倒で、簡単に畳めるふとんを使っています。
天井と両サイドにLED照明を取り付けて室内を明るく
ホームセンターで購入した板を自ら切り出してニスを塗り、LEDライトを設置。天井にはメイン照明、両サイドには間接照明を取り付けています。天井の内張りを剥がして配線を通し、どちらも後部座席に置いたスイッチパネルで操作できるようにしています。
Keiさん:ミニキャブバンと同型のスズキ「エブリィ」をカスタムしているYoutuberさんが照明のDIYを紹介していたので参考にさせていただきました。作業中にスイッチパネルへの配線がどうしても分からずご本人にメッセージを送ったら、丁寧に手書きの配線図を送ってくれて、本当にありがたかったですね!
ハッチバックドアは内側からも開閉が可能に
ハッチバックドアの内張りを剥がして内部にチョークワイヤーを入れ、レバーを引っ張ると室内からも開けられる仕組みに改造。開閉しやすいよう、助手席のドアグリップを外して取り付けました。
Keiさん:室内にいながらハッチバックを開けて換気ができるし、出入りもできて便利です。内張りは自分で切り出したウッドパネルに替えて照明を仕込み、夜でも荷物を取り出しやすくしています。
窓に網戸を設置して夏場も快適
Keiさん:風が穏やかな午前中にサーフィンを楽しんだあと、昼間クルマで休憩をとるときに網戸があれば便利です。僕は市販の商品を取り付けていて、虫の侵入を防ぎながら快適に過ごせます。
後部右側に棚を作って使用頻度の高いアイテムを配置
型取りゲージ(木や金属の曲線部の寸法を測り、型取りに使用する工具)を使い、壁面に沿うように板を切り出して棚を自作。収納するアイテムに合わせて各段の高さを調整して固定し、落下防止のステンレスバーを取り付けました。下段にある照明のスイッチパネルは、床下のバッテリーに繋がっています。
Keiさん:軽キャンパー(軽キャンピングカー)と呼ばれるクルマには大体棚がついているので、マネして作ってみました。ガス缶やバーナー、カップなどを手前に置いて、海から上がったら30秒でコーヒーが飲めるようにしています。DIYで一番大変だったのが、実はこの棚。型取りゲージを使った型取りがめちゃくちゃ難しかった! 近くで見るとガタガタなのがバレちゃうのであまり写さないでくださいね(笑)。ステンレスバーを切断したパイプカッターはダイソーのものですが、切れ味がよくておすすめです。
後部左側に小さなシンク&収納棚を設置
板を切り出して作った台にシンクをはめ込んだミニキッチン。汚水はホースを通って床下に置いた排水タンクにたまるようにしました。シンクの下の空間は収納棚に。
Keiさん:カップなどちょっとしたものを洗ったり、歯を磨いたりしています。床下にホースを通す際、純正マットに穴を開けてしまうのがもったいなくて、ベニヤでかたどった自作のマットを使いました。排水タンクは頻繁に取り出すので床下の手前に設置。給水タンクはどこに置くか、まだ思案中です。
サーフィン&バンライフを楽しむための工夫をチェック!
週末ごとのDIYで少しずつ作り上げた居心地の良い車内空間。そこには、大好きなアクティビティを楽しむための小さな工夫がいっぱいです。思わずマネしてみたくなるポイントを挙げてみました。
ゴチャゴチャしがちなギアはケースに入れて床下へ!
サーフィンやキャンプで使う細かいアイテムは床下のスペースに収納。常に車内に入れておくもの(日焼け止め、水温が低い時のための手袋・ブーツなど)と、毎回帰宅後に洗う、脱いだウェットスーツや洗濯物、足とサーフボードをつなぐリーシュコードなどを別のケースに分けておきます。
Keiさん:キャンプへ行く時はサーフィン用のギアを取り出し、タープや折りたたみテーブル、薪などを積んでいます。収納位置は取り出しやすさを考えて、あまり使わないものは奥、頻繁に使うものは手前が基本です。
天井やドアの内側に断熱材を入れて暑さ&寒さ対策
Keiさんは天井やドア部の内張りを外し、内部に断熱材(アルミマット)を敷き詰めることで、外気をシャットアウトしています。
Keiさん:ミニキャブバンは4ナンバーの小型貨物車なので、内装は鉄板むき出しで冬はかなり寒いんです。正直、断熱材を入れても体感温度はそれほど変わらないのですが、入れる前と比べて結露が増えたので効果は出ているのかなと。
あと、僕はまだ試していないのですが、蒸し暑い時は車内に氷を持ちこむと、そこに湿気が集まって除湿効果が得られるそうです。今年の夏はコンビニでブロックアイスを買って実践しようと思っています。
天井などの内側に制振材を入れて外部の音を軽減
断熱材を入れた天井やドアには、車内の振動音を抑える制振材も一緒に敷き詰めました。
Keiさん:レジェトレックスTMというシート状の制振材を使ったのですが、ルーフに雨が当たる時の「バチバチ」という音がかなり軽減されています。これを入れなかったら雨の日はうるさくて眠れないかもしれません。
車中泊&サーフィンにはフックが大活躍!
濡れたウェットスーツや洗濯物を乾かす時は、ハッチバックドアの裏側につけたマグネット付きのフックにかけて。夏の車中泊で換気をしたい時は、ハッチバックドアを少し開けてツイストS字フックで固定しています。
Keiさん:風が穏やかな午前中と夕方はサーフィンのゴールデンタイム。午前中に使ったウェットスーツをフックにかけて干しておけば、夕方にはしっかり乾いて気持ちよく2ラウンド目に挑戦できます。
愛用のGoProにもひと工夫!
臨場感あふれるサーフィン動画をInstagramやYoutubeにアップするのもKeiさんのライフワーク。撮影はGoProを口にくわえて行うため、メーカー純正のフローティ(紛失防止の浮き)をそのまま使うと邪魔になってしまいます。そこで思いついたのがGoProのカスタム。市販のストラップにフローティをくくり付け、GoProと一緒に首にかけることで、ストレスなく撮影できるようになりました。
Keiさん:実は昨年、うっかりフローティを付けずにサーフィンをしてGoProを失くしてしまったので、反省を生かして自作しました。GoProは本来下向きにくわえるのですが、僕はボードに寝そべる時にぶつからないよう上向きにしています。
楽しむからには気を付けたい車中泊の場所選びとマナー
車中泊を始めてから、週末2日間をフルに使ってサーフィンを楽しめるようになったというKeiさん。ただし、土曜の夜はどこに車をとめるのか、その場所選びは毎回の課題です。
Keiさん:初めての場所に行くときは事前にインターネットで確認していきますが、基本的に道の駅に停めることが多いですね。もちろん、禁止事項をしっかり確認するのは大前提。それを踏まえた上で僕は静かなところで眠りたいので、いかに車通りの少ないところを探すかを考えています。治安も大事だけど、僕にとっては“うるさくない場所”が一番なんです。
車中泊に関してはその土地ごとのローカルルールもあると思うので、楽しませてもらうからには迷惑をかけないよう気をつけたいですね。
ミニキャブバンでアクティビティを満喫。「サーフィンもDIYも、自分が納得できるまで続けます! 」
今では週末サーファーとして関東近県の海で波乗りに勤しむKeiさんですが、かつてはゴリゴリのバンドマン。ワンボックスカーに乗り込んで全国のライブハウスを回る日々を送っていたそうです。そんなKeiさんがサーフィンを始めたのは、ご友人の何気ないひとことがきっかけでした。
Keiさん:30歳手前くらいでバンドが解散しまして。お金はないけど時間はあったので、友人と海水浴に行ったんです。当日は雨が降ってしまい「どうする?」となった時に、友人が「サーフィンだったら雨が降っても関係ないよ」と。それが僕の初めてのサーフィン体験。雨の中で波にもみくちゃにされて終わりました(笑)。楽しかったかと言われれば疑問ですが、思うようにできない難しさやもどかしさ、波に乗れた時の達成感がクセになって「納得いくまでやってみたい」と思ってしまいました。
サーフィンの魅力にすっかりはまったKeiさん。現在の職場に就職後は週末ごとに海へ繰り出すように。やがて土日連続の日帰り旅は大変だからと車中泊を敢行、そして、より快適な車内空間を目指してDIYによるカスタムを始めます。
Keiさん:Youtubeに上がっているカスタム動画を見ながらベニヤ板でベッドを組んだのが最初です。寝袋もないので、普段自宅で使っている敷きふとんと掛けふとんを持ちこんで寝ていたのですが、毎回出し入れするのが大変でした(笑)。
昨年、2台目のミニキャブバンに乗り換えてからはDIYカスタム熱がさらに加速。Youtubeの動画や個人ブログなどを参考にしながら、「これは」と思うものを取り入れていったといいます。
Keiさん:乗り換えて最初に作ったのは照明です。車中泊を始めた頃は車内にランタンをひっかけていましたが、それだけだと夜は真っ暗でテンションがガタ落ち。車内泊を楽しむためには「明るさの確保」が最重要事項でした。
カスタムするにあたって僕が目指したのは“部屋っぽさ”。内張りをウッドパネルに替えたのも、自宅の部屋にいるような気分になれるから。リラックスできる居住空間を車内に作りたかったんです。
InstagramにアップしているDIY動画には10件以上のコメントがつき反応も上々。 時には取り付けを間違えたり、木材の切り出しに失敗したりというハプニングも起こる自称“DIY初心者”のKeiさんですが、それでも自作にこだわります。
Keiさん:いやあ、大変ですよ。一番苦戦した棚を作った時は何度も心が折れそうになりました。でも、サーフィンにはまった理由と一緒で、片足突っ込んでしまった以上は自分が納得いくところまでやりたいですね。中途半端に終わったらカッコ悪いし、悔しいなって思うので。
サーフィンも、DIYも、“自分が納得いくまで”という目標に向かって邁進するkeiさん。最後に、これからの目標を伺いました。
Keiさん:いつか大きなキャンピングカーに乗ることですね。都内だと駐車スペースや維持費という現実的な問題があるけれど、10年後か20年後にはなんとか。でも、以前キャンピングカーショーに出展していた企業の方に「初めのうちは自作した方がいい」って言われたんですよ。自分で作りながらいろいろ経験して、最終的にキャンピングカーを買うときの参考にした方がいい、と。「それもそうだ」と思ったので、体力のあるうちはまだまだミニキャブバンでDIYを楽しむつもり。あと、サーフィンももっとうまく、カッコよくなりたいですね!
まとめ:DIY&ちょっとの工夫でミニキャブバン は“自分の部屋”になる
シンプルなミニキャブバンが、大好きなサーフィンやキャンプを心行くまで楽しむための空間に大変身。「カスタムの材料費は10万円以下。でも、DIY用に買った道具代はもっとかかったかも」と笑うkeiさんですが、ひとつひとつ夢を形にしていく時間はプライスレスといえるでしょう。次なるカスタムはカーテンの取り付けを予定しているそう。さらにリラックスできる自慢の“部屋”になりそうですね。
カスタム次第でどんな空間も思いのまま。ミニキャブバンであなたも理想の部屋を作ってみては?
文/ほそい ちえ
写真/木村 琢也、Kei
編集/井上 寛章(LIG)