収納力に優れ、車中泊しやすいフラットスペースが魅力のHonda N-VAN。「旅するひきこもり」を自称するruiさんも、このN-VANに魅了されたバンライファーの一人です。
標準装備のユーティリティナットを活用し、アジアンリゾート風にDIYカスタムされた車内は、オフィス・リビング・寝室の三役を兼ね、まるでワンルームの自宅のような仕上がり。
コロナ禍で一般化したリモートワークにだって問題なく対応します。そんな、旅をしながら仕事もこなせる、理想的な荷室空間作りのコツを伺いました。
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目次
- rui(るい)さん
- サウンドデザイナー・作曲家として活動。関西地方の自宅を拠点にしつつも2018年より車中泊生活をスタート。自身のYouTubeチャンネル「rui vanlife」では、N-VANのDIY術や旅の様子などをオリジナル楽曲とともに公開中。
- Twitter @megezonu
- YouTube rui vanlife
サウンドデザイナーが、なぜバンライファーに?
以前は関西の自宅を拠点に活動していたruiさん。サウンドデザイナーという仕事柄、さまざまな専門的機器をしっかり置ける住居でないと難しいように思えますが、どうしてバンライフに移行したのでしょうか。
ruiさん:音楽制作や効果音を制作をするのが私の仕事です。専門スタジオで作業するとスムーズではありますが、最近はパソコンひとつでも作業が完結できるので、クルマの中でも不可能ではありません。
そんな環境に加えて、コロナ禍で現場仕事が相次いでキャンセル。代わりに舞台の映像配信に使う音声のミックス作業を担当することが増え、一層リモート作業でも差し支えがなくなりました。設備が不足するほど大規模な作業が必要な場合は、スタジオを借りれば対応できますしね。
ruiさん:さらに、車中泊生活なら簡単に旅行が楽しめる、との考えもあって……。以前から旅行願望はあったのですが、旅費はもちろん宿やチケットの手配が億劫でなかなか踏み出せずにいたんです。
クルマで暮らせば、以前から興味があった北海道でも自由に制覇できる! との思いにも背中を押されましたね。関西地方の自宅と中部地方の実家、2ヶ所の拠点を活用しつつ、念願叶って昨年は160日ほど北海道で過ごせました。
滞在先や各種イベントでバンライフ仲間と繋がれたのも嬉しかったですね。
N-VANのカスタムはどんな順序で取り組んだのでしょう?
実はruiさん、現在乗っているN-VANが2代目。全く問題のなかった先代N-VANをわざわざ手放し、2018年11月に新しく購入し直したそう。
ruiさん:ずっとHondaファンの家系で、自身の初めての愛車もFITでした。何台か乗り継ぎつつも、音響機材がもっとたくさん乗るクルマを探しているとき、2018年7月にN-VANがリリースされることを知ったんです。
良い機会だとばかりに、早速ブラックを機材車として購入。とても重宝したので、すぐに気に入りました。同時に、この車なら寝られるなぁと思い、遠方へ行く際は寝床としても利用を。
ただ、現在乗っている、後発カラーのガーデングリーン・メタリックに一目惚れしてしまい……。短い期間で乗り換えてしまいました(笑)。このカラーは、すぐれたカラーデザインのクルマを顕彰する『オートカラーアウォード2018』でグランプリに輝いたほど人気があるんです。
▼車内のカスタム中
▼車内のカスタム完成後
その後、コロナ禍の影響もあり、リモートワークの増加に伴ってバンライファーとなるも、初めは床面を整えて荷室にデスクを置いた程度。ところが、車中泊を繰り返しながら試行錯誤をするうちに、ふとベストレイアウトが浮かび、一気に作ってしまおうと決心したそうです。
ruiさん:銀マットを床材に取り入れたり、リアゲートに自作テーブルを取り付けたり、少しずつ工夫していたのですがイマイチしっくりきませんでした。
結局、最初に作ったテーブルやインナーラックなどは外してやり直し。バンライフって実際に経験しないと何が不必要かわからないんです。ある種のミニマリストになるんですよね。
▼ルーフ部分のカスタム中
▼ルーフ部分のカスタム完成後
本格的なDIYカスタムをサポートしてくれたのが、いろんなフェスやオフ会で対面し、意気投合したYouTuber「旅する*くまころりん」さん。
ruiさん:マイクロバスをキャンピングカーにカスタムして車中泊の旅をしているご夫婦、「旅する*くまころりん」さんの愛車に一ヵ月半ほど居候させていただき、板の切り方から教わりました(笑)。
まずは【TERZO】のルーフキャリアを愛車と似合う2トーンに塗装して取り付け、ソーラーパネルも設置。続いて行った天井の断熱&デッドニングや、それまでのバンライフによって固まっていた、理想の車内レイアウトの具現化などでも助けてもらいました。
▼天井&壁面のカスタム中
▼天井&壁面のカスタム完成後
ruiさん:手をつけていった順番は、車体の外装→車体の内装→インテリアの流れです。内装の断熱や防音処理は、内張りを剥がしたりとクルマのボディ部分のカスタムが必要なため、テーブルや棚を設置する前じゃないと施工が難しくなってしまいます。
家具系を取り付けるなら内装全体のイメージが確定してからがベストでしょう。特にこだわったのは、運転席後ろスペースに設置している大きめのデスクです。
▼デスクのカスタム中
▼デスクのカスタム完成後
ruiさん:私のバンライフにマストなのが、この大きなデスクです! 車中泊をしていると、デスクに向かっている、寝る、運転している、の3つが基本の生活パターンだとふと気付いたんです。
ですから、寝るスペースさえ確保できていれば、残りの面積は机で良いんだ、と思い至って、今のような大型サイズのデスクに辿り着いたんですよね。バンライフを続けるなかで、はじめて私に必要なサイズ感を意識した気がします。
ちなみにこちらのデスク上部は、N-VANの車内の高さを活かして棚がセットで設置されています。実は運転席後ろのスライドドアからは写真のように侵入できない状態に。
ただし、ruiさんはこのスペースを出窓のように活用。スライドドアを開けるとデスク越しに外が見え、開放感を演出してくれています。
「住居」としての快適さを実現したN-VAN車内のカスタム
ruiさんのDIYカスタムは、快適さを追求した車内の居住空間作りが秀逸。ここではそのカスタムのポイントを、「天井&壁面」「就寝スペース」「収納スペース」の3箇所にフォーカスしてご紹介していきます。
①天井&壁面カスタムポイント
ruiさんのN-VANの内装は、天井・壁面が木材カバーで覆われています。この木材カバーの内側は、さきほども紹介したように断熱材が仕込まれています。さらに、天井には防音機能に優れた高機能制振材・レジェトレックスを多数貼り付けてあります。
ruiさん:内張りを一度剥がし、断熱材を挟んでから再び貼り付けました。おかげで車内から熱が逃げにくくなって、冬は助かっています。ちなみに夏も屋根に当たる直射日光からの熱の伝導を防いでくれるので役に立っています。
また制振材も貼り付けているので、デットニング効果で屋根にぶつかる雨音が静かになるので、特に就寝時はありがたいですね。
ちなみに内張りの脱着って難しそうに聞こえますが、やってみると初心者でも可能な作業。DIY経験ゼロの私でも無理なくできましたから。
DIY初心者なのに凝ったセルフカスタムを実現できたのは、N-VANの標準装備であるユーティリティナットの存在も大きかったそうです。車内のインテリアはすべてユーティリティナットによって固定されており、車体には穴がひとつも空いていません。
こちらで固定されているもののひとつが、荷室の右側にある大きなデスク。カットした段ボールでサイズバランスを考慮しながら試作を繰り返し、ようやく完成に辿り着いた渾身の逸品です。
ruiさん:ユーティリティナットのおかげで、走行中にズレたり転倒しないよう、簡単に車体に連結することができました。固定するためにクルマのボディに穴開けしてしまうと、乗り換え時の下取り査定で不利になってしまいますしね(笑)。
②就寝スペースのカスタムポイント
▼就寝スペース
▼就寝中
デスク横のスペースにぴったり収まっているのは、【タンスのゲン】というブランドの3WAYコンパクトソファ。リクライニング式なので、起きているときはソファ、就寝時にはベッドとして役立っているそうです。
ruiさん:寝袋はクッションカバーの中に収納しています。夜間しか使わない寝袋が、昼間はフカフカのクッションになってくれて、省スペースにも役立つアイデアですよね。
ちなみに寝袋と一緒に使っているネイティブアメリカンモチーフ柄のブランケットは、お気に入りのブランド【チャイハネ】のもの。こちらはくるくる畳めば、ブランケット自体をクッションにできちゃうので重宝してます!
最後に、就寝スペースの直接的なカスタムではないが、就寝時に車内を遮光するための重要アイテム、カーテンのDIYテクをご紹介。ruiさんが使用しているのは、車内のフロントガラス部分から後方まで覆うことができる、本格的なタイプです。
窓からの冷気侵入を緩和しつつ、お部屋感を演出するのにも役立っているというこちらは、出窓用のカーテンレールを応用して取り付けているとのこと。
ruiさん:薄いリボン状のレールなので形状を自由に変えられるため、簡単にボディに沿わせられます。固定は付属のL字金具を折り曲げて、クリップのように内張りに挟むだけでOKです!
③収納スペースのカスタムポイント
車内の収納スペースとしては、複数の自作ラックをはじめ、N-VANオプション装備の純正ルーフコンソールなどが活用されています。
バンライフは車内の省スペース化が大切というruiさん。極力無駄のない収納を実現すべく、一部の棚は荷物に応じて高さが変えられる仕組みにしているそうです。
ruiさん:例えば夏と冬では服のボリュームが違います。季節や状況次第で収納スペースを変更できると便利ですよ。
くつろげるバリ風インテリアが車内の雰囲気を統一
機能性だけでなく自分好みのテイストにもこだわるのがruiさん流。車内全体をアジアンムードでまとめているのには脱帽です。
ruiさん:いわゆるキャンピングカーやバンライファーのインテリアは、北欧かオールドUSAテイストが主流。別に嫌いではないですけど、同じテイストだと個性がないかなと思い、自分の好きなアジアン風にしました。色は濃いめの木材色とターコイズに絞り、統一感を狙っています。
ruiさん:木材はすべてワトコオイルを塗ってアンティークっぽく仕上げています。そして、デスクや棚の角の部分はヤスリやサンダーで丸めています。木の四角さが見えると、日曜大工感が出てしまうかなと思い。
テールゲートに取り付けたカーテンや、床面に敷いた布はオリエンタルなテイストで統一されており、アジアンな雰囲気を一層引き立てています。
さらに、車内のさり気ないスパイスになっているのが、天井からわずかに覗く同テイストのファブリック。ターコイズカラーが差し色にもなっています。
ruiさん:このファブリックの取り付けは、内張りに巻き込んで画鋲で止めているだけなのでとても簡単です。接着剤を使っていませんから、汚れたり気分を変えたくなったらすぐに外せますよ。
照明には、車内全体のナチュラルな色使いとケンカしない、温かみがあるテイストがセレクトされています。結果、アウトドア系ランプが多めになったそうです。
また、一部をフェイクグリーンでデコレート。ボタニカルランプのような見た目となり、ウッディな車内と一層マッチするように。
ruiさん:ケーブル隠しに使いたくて、少し高級な造草を【東京インテリア】で購入。余ったものは勿体ないのでランプに巻き付けてみました。すると減光にもなって、結果的に目にも優しくなりました(笑)。
ruiさん:シェラカップなどの食器類が吊り下がっているアイアンバーには、ターコイズブルーのインテリアテープを貼り付けました。挿し色になるだけでなく、滑り止めにもなって走行中の振動によるズレも防いでくれています。
ruiさん:食器棚の中にはLEDテープライトを設置。シール式なので装飾としてもいろいろな場所に使えて、かつ眩しすぎないのもポイントです。
ruiさんが愛用する、車中泊に役立つ便利グッズをご紹介
最後はruiさんがバンライフにおいて重宝している便利グッズをご紹介。ルーフキャリアやポータブル電源といった基本的なアイテムはもちろん、長期間に及ぶ車中泊生活のリラックスタイムを彩る気分転換のための家電グッズなど、ruiさんらしいセレクトは必見です。
カスタム手順のパートでもご紹介したように、【TERZO】のルーフキャリアには、バッグとソーラーパネルが取り付けられています。
頻繁に使用しないグッズは、こちらのバッグにまとめて収納。収納スペースが限られる車中泊生活ではなくてはならない存在です。なお、バッグの中には2つの衣装ケースが収められており、この中に細々としたギアがまとめられています。
ruiさん:ちなみに衣装ケースに入っているキャンプギアは、バンライフ仲間とアウトドアを楽しむときに重宝しています。といっても頻度は高くないので、普段はルーフキャリアに積んでいますね。
ruiさんにとって、PCを使うお仕事上、ポータブル電源は超重要な存在とのこと。ソーラーパネルはポータブル電源の充電用として活用しているそうです。
ruiさん:ソーラーパネルは晴天時には重宝しますが、天候に左右されてしまうため、あくまで保険的な存在です。充電はネットカフェなどでも対応できますし。急速充電なら1時間で80%程度まで充電可能なんです。
ポータブル電源の【エコフロー】には、エクストラバッテリーを追加して、計1440whの大容量タイプとして使用しています。日中8時間作業しても3〜4日は保ちますね。
ruiさん:【スアオキ】のG500は容量がやや小さいため、冷蔵庫用として活用しています。【エコフロー】もそうですが、性能の割に小型なのがありがたいです! 車内の占有スペースが、小さく収まってくれるに越したことはないですから。
なお、【スアオキ】のポータブル電源で電源供給している冷蔵庫も、小型タイプをセレクト。運転席横のスペースにコンパクトに設置されています。
リラックスタイムに欠かせないのが電気ポット。電力と収納スペースの都合上、ruiさんはコンパクトなサイズをセレクトしています。
ruiさん:コーヒーとお酒が苦手なので、リラックスタイムのお供はもっぱらお茶です。中国産のポータブルティーセットが手放せません。ポットは使い切れる量のお湯が素早く沸く、【カシムラ】のワールドポット2を愛用しています。
約3年に及ぶバンライフでも、自炊は数えるほどなんだとか。車内もそのように設計されています。
ruiさん:仕事と食事、車内でするのはどちらかと言えば前者。車中泊生活では各地の名産品を食べるのが楽しみでもありますし……。そのため、車内にキッチンの設置は省きましたが、【ハック】のちょこっと家電は使っています。アヒージョくらいなら作れるので、たまの気分転換に重宝しています!
寒い季節の車中泊時にやっておきたいのが、車内に入り込む冷気対策。特に底冷え対策としては荷室下に空間を作ることに加え、ruiさんのように銀マットを活用すると断熱と保温効果が高まります。
ruiさん:おかげで底冷えするような寒さはなくなり、クッション性も改善しました。ちなみに、就寝スペースとして利用している助手席後ろ側には、シューズを収納するのにちょうどいいスペースができるので、ここも有効活用しています!
窓をあけておきたい季節に役立つのが、ドア用のメッシュカバー。虫の侵入だけでなく、車内の換気を良くすることで、湿度対策にもつながります。
ruiさん:100円ショップのセリアで購入しました。バンライファーの中でも話題になっていたグッズです。取り付けも簡単なんですよね。
ruiさんの今後のカスタム展望
およそ1ヵ月半の期間と材料費約8万、工具代3万円が掛かったというruiさんのDIYカスタム。一番悩まされたのがN-VAN独特の構造だと言います。
ruiさん:N-VANは車内がアシンメトリーなんです。そのため、左右で同じパーツが使えない。全部きっちり測り直す必要がありました。丁寧に測ったからこそ、私のような初心者でもノーストレスな居住空間が実現できたのかも。
現時点でとても満足している一方、ネクストステージへのステップアップも画策中。
ruiさん:この状態で1年暮らして、床に座り続けるのは結構しんどいと知りました。椅子に座って作業したい!(笑)。ガラッと全改造する考えも浮かびましたが、やっぱり現状だって捨て難く。
もう一台N-VANを購入して作る手も視野に入れつつ、当分はこのままでしょうね。ただ、頭の中ではレイアウトが完成済み。タイミングが整ったらチャレンジしようと思っています。
N-VANをより使いやすく進化させたとはいえ、まだまだブラッシュアップする余地があるようです。しかし、ruiさんによると「本当はN-VANって、私のように大掛かりな改造をしなくても快適に車中泊ができるモデルなんですよね」とのこと。
車中泊ビギナーなら、まずは簡単なアレンジで楽しむのもアリかも知れませんね。
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