イラストレーターいとうみゆきの クルマのおうちで埼玉一周の旅 vol.4 雨模様の旅〜中央地域編〜

いとうみゆきさん連載記事のアイキャッチ

海外でのクルマ旅を綴ったエッセイが話題となり、多くのファンに支持されるイラストレーター・いとうみゆきさん。ワーキングホリデーをきっかけにニュージーランドを訪れ、車中泊生活を経験したことからその魅力に取り憑かれたそう。

そんないとうみゆきさんの新たな旅が前回よりスタート! いとうさんの故郷である埼玉県を舞台に、愛車でさまざまなスポットを巡りながら地域の魅力をお届けしていきます。

第4回目は、「 雨模様の旅」をテーマに、埼玉県の中央地域を旅していきます。

車中泊の旅をしようと思ったときに気になるのが天気の様子。雨が降ってしまうと、憂鬱な気分になりますよね。そこで今回は、天候に左右されない、クルマ旅ならではの過ごし方・楽しみ方をお届けしていきます!

いとうみゆきさんのプロフィールイラスト
イラストレーター いとうみゆき
埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
Twitter @noca_m
Instagram @nmoytke
tumblr Miyuki Ito Illustration

 

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目次

 

「中央地域」を巡る、雨でも楽しいクルマ旅

空も気分もどんよりした日が続く梅雨の季節。

散歩にいくのが億劫になり、洗濯物はたまり、気を抜くとあっという間に家にこもってしまいます。そうして今日も天気を言い訳に、家の中でだらだらしてしまうのです。

どんな天気でもへっちゃらなのは私の相棒・車中泊仕様のクルマ「白くま(愛称)」だけ。

そう、クルマ旅なら急に雨が降ってきても問題なし。雨のほうが涼しくて過ごしやすいし、この機会に室内で過ごせる場所を探すのもいいかも……! 白くまと一緒にいろいろな場所に出かけることを想像したら、どんよりとしていた気持ちも晴れて、わくわくしてきました。

雨模様でも楽しいスポットを巡る、埼玉旅のはじまりです!

 

埼玉中央地域のイラスト

今回巡るのは、埼玉県の中央地域。

県庁所在地であるさいたま市、日本で一番小さな市である蕨市、川を渡ればすぐに東京都になる戸田市・川口市などを含む、伊奈町 · 鴻巣市 · 上尾市 · 桶川市 · 北本市が、中央地域とされています。

 

①鴻巣市〜日本一の水管橋〜

まずは中央地域の端っこにある鴻巣市へ。

鴻巣市には、全長1,101mと日本一の長さを誇る水管橋「荒川水管橋」があります。さっそくクルマを走らせていると、美しい赤色の橋が現れました……!

 

荒川水管橋といとうみゆきさんのクルマ

灰色の空に、真っ赤なアーチがとてもよく映えます。徐々に重たくなっていく灰色の雲たち。まだ雨は降り始めていないけれど、これはかなり怪しいぞ……。

普段、橋の上は立ち入り禁止ですが、ときどきイベントなどで歩けるようになります。いつか歩いてみたいものです。晴れていると橋の上からは富士山が見えることもあるそう。

 

クルマの車窓から荒川水管橋を見た様子

少し場所を移動すると、ちょうど収穫時期の小麦畑になりました。

シロクマの荷室からリアゲートを開けてみると、一面に広がる赤に黄色に緑……白い画用紙にカラフルな景色が描かれたよう。何気ない場所でも、クルマの窓や扉によって切り取られる景色で車内の様子がグッと変わります。

本当はこのまましばらく散歩でもしたかったけど、今にでも雨が降り出しそうなので、ちょっと予定変更。クルマ旅だと、時刻表に左右されないので旅の計画変更も簡単です。

 

雨の中クルマを運転する、いとうみゆきさん

クルマに戻って走り出すとすぐに雨が降りはじめました。早めに撤収してよかった!

雨の日の運転はいつもより注意することが多いので、慎重になります。しかも今私がいる場所は、数年前に運転免許試験を受けた鴻巣市……なんだか初心にかえる気持ちです。

 

②上尾市〜室内でできるスポーツ〜

しばらく運転していると、やっぱり体を動かしたい! という気持ちがむくむく膨らんできました。運転続きだし、散歩できなかったし……。だけど外は雨。そんなときは、室内でできるスポーツに限ります。

近くに住んでいる妹と姪っ子を誘って、上尾市にある「埼玉アイスアリーナ」へ。

 

フィギュアスケートを楽しむ、いとうみゆきさん

アイススケートは中学生のとき以来。想像以上に難しく、最初は立つのがやっとでした。しかもこの日は平日だったので、リンクの上には上手い人しかおらず……! ちょっと恥ずかしかったです!

氷の上って、本当につるつる滑るんですよね。そしてすぐスピードがでる。姪っ子が乗った氷上ソリを押しながら、これがクルマの運転だったら……と想像してしまいました。いつか白くまにも結氷を見せてあげたいけれど、雪道の運転は危険だから厳しいだろうなあ。氷の世界と白くま、とっても合いそうなんだけど。

白くまの代わりに(?)氷の世界をびゅうびゅう走り抜けて、束の間の運動を楽しみました。

埼玉アイスアリーナ

住所:〒362-0032 埼玉県上尾市日の出4-386

営業時間:10:00~17:45

定休日:年末年始や大会、イベント、設備点検等で臨時休業・営業時間変更の可能性あり。

滑走料(税込):おとな ¥1,200、こども(中学生以下)¥700、貸靴:¥500、付添観覧:¥500

アイスアリーナ専用駐車場(90台・無料)及び、さいたま水上公園駐車場をご利用頂けます。

電話:048-775-3456

Twitter @saitamaicearena

 

③伊奈町〜緑につつまれた憩いの場〜


ひと運動を終えて外に出ると、雨が止んでいました。
またすぐに降り出しそうではあるけれど、ひとまず私も休憩です。

 

「森の音珈琲」の店舗外観

道路に突然現れた小さな森。緑のトンネルをくぐるようにして、コーヒーのいい香りが漂うお店へ向かいました。ここは伊奈町の「森の音珈琲」。

運転をしていると無性に甘いものやコーヒーが飲みたくなるのはどうしてだろう? 眠気覚ましに……というわけじゃないんだけど、疲れがすうっと消えていく気がするのです。

 

「森の音珈琲」で提供されている珈琲とチーズケーキ

まろやか珈琲 ¥570、ニューヨークチーズケーキ ¥400(共に税込)

しかも、それが本当においしいコーヒーとケーキなので、今日は最高の日! 焙煎したての新鮮なほろにがコーヒーと、ニューヨークチーズケーキをいただきました。

本当に居心地のいいカフェでした。植えられた緑も、家具も、食器も、コーヒーをおいしく楽しむためのセットのよう。どんよりした天気のことなんかもう遠くにいってしまいます。


窓の外できらきら葉っぱが揺れて、小さな葉がサラサラ落ちて……
ここならきっと、雨が降っていてもその雨音すら心地がいいことでしょう。

 

「森の音珈琲」の店内にいる、いとうみゆきさん

森の音珈琲

住所:〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町中央1-120

営業時間:13:00-18:00

定休日:月・火・水曜日

電話:048-677-8916

Twitter @morinonecoffee

facebook @morinonecoffee

駐車場あり

 

④川口市〜雨の日は一冊の本を〜

午後になると、雨が本格的に降りはじめました。この後はずっと雨みたい。

雨の日の夜は部屋(車内)にこもるに限ります。持ってきた本もいくつかあるけど、せっかくなので新しい本でも探しに行こう。

川口市にある町の小さな本屋さん「ててたりと」に行って、今宵のお供を探しました。

 

「ててたりと」の店舗の前にいる、いとうみゆきさん

「ててたりと」は、障害のある方に必要な支援を行い、働いていただく場を提供するためにできた本屋さんです。

この場を通して、世の中にあるたくさんの障害を少しでもなくしていけるようなきっかけをつくれたらという思いではじまったそう。

ぐるりと店内をまわって、まだ読んだことがなかったサン=テグジュペリの『夜間飛行』を購入しました。

 

『夜間飛行』(新潮文庫刊)の書影

サン=テグジュペリ、堀口大學/訳『夜間飛行』(新潮文庫刊)

夜読む本を探していたこともあって「夜」というキーワードに惹かれたのと、雨の日だったので青色の装丁に惹かれたのと、白くまとずっと一緒だからか乗り物が出てくる話に惹かれたのと……

考えてみると、本を手に取る瞬間って何気ないのに、いろいろな理由でその本を選んでいて、面白いものです。

ててたりと

住所:〒333-0845 埼玉県川口市上青木西5-25-17

営業時間:9:45〜17:00

定休日:日曜日

電話:048-423-4858

Twitter @tetetarito

Instagram @tetetarito

店舗裏に駐車場あり。(店舗へお声がけいただくか、事前に電話でご確認ください)

今回の旅では、お気に入りの本をお供として持ってきていました。

 

いとうみゆきさんが旅におすすめする書籍

電力問題や電波問題に悩まされることもあるクルマ旅において、本は最強のお供なのです。ベッドのすぐ近くにこしらえた、本棚に見立てた段ボール。いつでも読める位置に本が置いてあるだけで安心します。

ここで、車中泊の旅におすすめしたい本を紹介します。

 

『星旅少年1』(PIE International)の書影

『星旅少年1』(著:坂月 さかな、出版 :PIE International)

夜、眠る前に少しずつ読んでいるので連れてきました。様々な星を訪ね、人や文化に触れ、記録していく主人公の様子を追っていると、少しだけ自分の明日も楽しみになります。どんな出会いがあるのかな、出会ったものや人を大切にしたいな、って。とても穏やかなのに、胸の奥でぐうっと輝く漫画です。

 

『男子厨房学入門』(中公文庫)の書影

『男子厨房学入門』 (著:玉村 豊男、出版: 中公文庫)

友だちに借りっぱなしの本。そろそろ返さなきゃなと思ったので今回の旅で読み切ることにしました。ぱらぱらめくってるだけで面白い、ユーモラスな料理本です。旅をしているときはちゃんとした料理をしないので、この本はちょうどよく役立ちます。

 

『自選 谷川俊太郎詩集』 (著:谷川 俊太郎、出版:岩波文庫)

『自選 谷川俊太郎詩集』(岩波文庫)の書影

私にとって、お守り代わりの詩集です。このなかにある「旅」という詩が大好きなのです。この本を持っているだけで今回の車中泊旅も私らしくいられる気がします。

 

⑤さいたま市〜超豪華な車中泊スポット〜

相変わらず降り続く雨。
手に入れた本を持って、さっそく今日の車中泊スポットへ向かいます。

 

おふろカフェutataneの外観

今日はさいたま市にある、「おふろcafé utatane」の高架下で一泊します。

おふろカフェというだけあって、ただお風呂に入るだけではなくカフェみたいにくつろげる素敵なスポットです。たくさんの本と漫画においしいごはん、ハンモックやいいソファがあるんだって。

車中泊プランもあり、利用者は翌日の午前5〜9時の間でお風呂と館内を利用可能。さっそくチェックインを終えて車中泊専用の駐車場へ向かいます。
(トイレはいつでも利用可能・オプション1人あたり1000円で深夜2時まで館内利用可能)

駐車場は東北新幹線などが通る線路の高架下。雨でも過ごしやすくて助かります。ちょっと外に出たときに濡れるのは、なんだかんだストレスになるからなあ……。

 

おふろカフェutataneの駐車場

早く本を読みたかったので、夕飯はさくっとでき合いで間に合わせて物語の世界へ。雨の音とよく合うGoldmudのアルバム『Sometimes』を流しながら、『夜間飛行』を読みふけりました。

 

愛車の荷室で読書をする、いとうみゆきさん

外がどんなに雨でも、ここにいれば安心。すぐそばで降っている雨のおかげで、雷雨のシーンにも臨場感が増すような気がします。

そういえば今回はいつも使っているランタンを忘れてしまったので、急遽DAISOで代わりのランタンを購入しました。しっかり明るくて、見た目も可愛いいのでお気に入り。しかも550円。

自宅の部屋で読む本もいいけれど、このちょうどよく狭い場所での読書もいいものなんだよなあ。

車中泊読書は集中しやすくて、とても気持ちが良いものです。

 

お風呂へ向かう、いとうみゆきさん

翌朝、電車の音で目が覚めました。
朝の5時から館内利用が可能になるので、さっそく朝風呂です〜!

 

おふろカフェ utataneの店内のイラスト

ほかほかの内湯、サウナに露天風呂。お風呂場はとっても広くて快適でした。
お風呂を心ゆくまで堪能したら、オシャレ度満点の館内でくつろぎます。

 

おふろカフェ utataneの店内で読書をする、いとうみゆきさん

たくさんの漫画や本、雑誌、セルフコーヒー、休憩スペース……。

車中泊ができて、朝風呂に入れて、ゆっくり本も読めるなんて本当にうれしい。
雨の日でも、雨の日じゃなくても楽しい、いい場所でした。

おふろcafé utatane

住所:〒331-0815 埼玉県さいたま市北区大成町4−179−3

営業時間:10:00~翌朝9:00

定休日:不定休(詳しい内容はHPをご確認ください)

電話:048-856-9899

Twitter @ofurocafe_uta

facebook @ofurocafe.utatane

Instagram @ofurocafe.utatane

車中泊の予約はこちらから

1泊車中泊駐車場代:1,000円+税(朝風呂(5:00-9:00)込み)

 

雨のなかクルマを運転する、いとうみゆきさん

雨模様のクルマ旅、いかがでしたでしょうか?

外に出るのが億劫になりがちな雨の日ですが、いろいろな場所に行きやすいクルマ旅なら楽しくおでかけをすることができます。雨の音を楽しみながら寝ることもできますし、人も少なく、気温的にも過ごしやすいため、とっても楽しかったです。

どんな天気でも楽しめる白くまとの車中泊旅、これからも楽しみだな〜!

漫画/いとうみゆき
編集/望月 祐 (LIG)

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