イラストレーターいとうみゆきの クルマのおうちで埼玉一周めぐり旅 vol.7〜秩父地域編〜最終回:冒険はつづく〜

いとうみゆきさん連載企画 アイキャッチ

海外でのクルマ旅を綴ったエッセイが話題となり、多くのファンに支持されるイラストレーター・いとうみゆきさん。ワーキングホリデーをきっかけにニュージーランドを訪れ、車中泊生活を経験したことからその魅力に取り憑かれたそう。

そんないとうみゆきさんの新たな旅がスタート! いとうさんの故郷である埼玉県を舞台に、愛車でさまざまなスポットを巡りながら地域の魅力をお届けしていきます。

第7回目は、いよいよ埼玉の旅の最終回。「冒険はつづく」をテーマに、埼玉県の秩父地域を旅していきます。訪れたさまざまな場所で、思いもよらない出会いや発見があり、まるで“冒険”をしているような感覚になる車中泊の旅。そんな冒険のような旅を、これからも多くの人に届けていくべく、最終目的地からメッセージを届けていきます。

いとうみゆきさんのプロフィールイラスト
イラストレーター いとうみゆき
埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
Twitter @noca_m
Instagram @nmoytke
tumblr Miyuki Ito Illustration

 

目次

 

今日も冒険へ

2022年のはじめ、冬から春の季節の変わり目に始まった埼玉一周のクルマ旅。

様々な場所を巡っていくうちに、自分がどんなスポットが好きか・どんな旅をしたいか・どんな車中泊をしたいかなど、いろいろなことがわかってきました。

関わりを持ちにくい時期でありながらも親切にしてくれる地元の人たちと触れ合ったり、隠れたいいスポットを発見し、新しいおいしいものに出会い……なによりあちこち運転していくうちに、「白くま(いとうみゆきさんのクルマの愛称)」と仲良くなれました。

「白くま」との旅は、出会いと発見に満ち溢れた冒険のよう。半年間にわたる埼玉県の旅で、身近な地域に潜む魅力に触れ、車中泊・運転レベルも向上してきたような気がします。今日は、これまでの成長を感じながら、また少しレベルアップに向かう旅。

だから今回の旅のテーマは、「冒険はつづく」。

 

いとうみゆきさん の愛車のイラスト

舞台は自然がいっぱいで、クルマで走っていて楽しい・おいしいものいっぱい・冒険スポット盛りだくさんの秩父地方です。秩父山地に囲まれた、秩父市、小鹿野町、横瀬町、皆野町、長瀞町にお邪魔します。

 

埼玉県秩父地方のイラスト

これにて埼玉旅は一旦終わりだから、ちょっとだけ盛大に。でも、いつもと変わらない、楽しい旅の始まりです!

 

①秩父市_雷電廿六木橋〜走っても歩いても楽しい! 巨大絶景ループ橋〜

雷電廿六木橋と滝沢ダム

まずは秩父の山奥にある、「雷電廿六木(らいでんとどろき)橋」へ。

大滝大橋と廿六木橋という二つの橋によってループが描かれた、息を呑むほど美しいループ橋です。すぐ隣には滝沢ダムがあります。

 

雷電廿六木橋の様子

秩父の山奥深くに突如現れる、この巨大な橋。

「どうやってつくったんだろう?」と不思議になる造形、きれいなカーブを描いた美しいループ、橋の下を覗き込むと震え上がるほどの高低差とスリル……。うまく写真には撮れなかったのですが、とても大きくて美しいこの橋。クルマで走っていると地面からの振動を全身で感じ、ゆっくりと空中に上がっていく感覚に。なんとも言えない気持ちになります。

橋の途中に駐車場があったのでクルマから降りて、橋の端にある展望台まで歩いてみました。

 

雷電廿六木橋と滝沢ダム

橋の上を歩いていると坂道のせいか、ふわふわ空中を歩いているような不思議な感覚になります。下を見ればブロッコリーみたいに細かい木々、米粒よりも小さなバイク、地面との距離はどれくらいなんだろう。カメラを落としたら絶対に粉々になる高さです。

さらに隣を連続で駆け抜けていく何台ものトラック。その瞬間は少し橋が揺れて、心臓がきゅっとなりました。クルマで走っている時は道路から伝わる振動にドキドキしますが、歩くとさらにドキドキ。スリル満点の橋です!!!

クルマで走っても楽しいし、歩いても楽しい。楽しくて、面白くて、ドキドキする。絶対におすすめしたいドライブスポットです。

雷電廿六木橋

住所:〒369-1901 埼玉県秩父市大滝地内

駐車場:あり(近くに無料駐車場「ループ橋 駐車場」をご利用ください)

 

②小鹿野町_毘沙門水〜おいしい名水をくみに〜

山を越えて隣町へ。平成の名水百選の一つ、毘沙門水をくみにやってきました。すでに駐車場には何台もクルマが停まっており、たくさんの人がペットボトルを手にしていました! この場所に向かうための高速道路からも距離がある場所なのですが、県外ナンバーも見かけました。人気のスポットなんだなぁ。

地元の方々によってしっかり整備されているので、汲みやすさも抜群。施設管理費の100円を払えば、誰でも水を汲むことができます。

 

毘沙門水で水を汲む人々

石灰岩の山である白岩山から湧き出ている毘沙門水は、ミネラルがたくさん含まれています。水量も豊富で、古くからこの地域に住む人たちの生活を支えてきたそう。

一口飲んだだけで、つい息をつくぐらい、冷たくて、まろやかで、とってもおいしい水でした。今日はこの水がドライブのお供、そして料理の材料になります。ペットボトルに余裕があったら、もっとたくさん持って帰りたかった……。

秋が近づいているけれど、まだまだ昼間は暑い季節。冷たい水で水分補給しながら、また次のスポットへ向かいます!

 

毘沙門水で汲んだ水
木々の間から見える太陽

毘沙門水

住所:〒368-0114 秩父郡小鹿野町藤倉183

利用料:100円

駐車場:あり

※容器はご持参ください。

 

③横瀬町_道の駅果樹公園あしがくぼ〜幸せいっぱい道の駅〜

次の目的地「道の駅果樹公園あしがくぼ」へ。今日はしっかりひと休みするために立ち寄りました! 秩父地方は道の駅がたくさんあるので、何箇所も巡ってみるのも楽しそう。

 

道の駅果樹公園あしがくぼでアイスを食べるいとうみゆきさん

安全で快適なドライブには欠かせない休憩施設、道の駅。

24時間誰でも使える施設があるというだけで気軽に家を飛び出せるので、道の駅って本当にありがたいんですよね。綺麗なトイレを借りられるし、その町のことがわかるし、土地のおいしいものがいっぱいだし…!

到着したら、まずはトイレへ。その後、ひと休みするためにアイスを食べて、お腹が空いたら、お昼ご飯に名物の「ずりあげうどん」を食べて、地図を眺めて……。冒険の途中、小さな町に寄って、ひと休みしたり買い物したりするような感覚になります。

 

道の駅果樹公園あしがくぼで販売している「ずりあげうどん」

埼玉県秩父地方の家庭料理である「ずりあげうどん」

お腹を満たしたらお買い物! 今日の夜ご飯で食べたい野菜を手に入れました。野菜は地元のものをたくさん使って料理を作りたいんです!

 

道の駅果樹公園あしがくぼで食材を購入するいとうみゆきさん

クルマを運転している途中、何度も看板で見ていた名産品。道の駅に来れば記憶に残っている名産品がいっぱいなので、実際に手に取ることでその地域のことをもっと知るきっかけになります。

おやつには秩父名物の「味噌ポテト」。その土地でしか味わえないおいしいものや体験がいっぱい。地域の魅力がぎゅっと詰まった、とっても楽しい道の駅でした。

 

道の駅果樹公園あしがくぼの駐車場の様子

道の駅果樹公園あしがくぼ

住所:〒368-0071 埼玉県秩父郡横瀬町芦ケ久保1915-6

営業時間:9:00〜17:00

休館日:なし

TEL:0494-21-0299

駐車場:あり

※施設内の店舗によって、営業時間等が異なります。詳しくはHPをご覧ください。

 

④皆野町_キャンプ場mahora〜最後のキャンプは盛大に!〜

道の駅を出たら、一旦駅に向かいます。
今日の夜は、友だちと一緒にキャンプをするのです!

ということで、ついに「白くま」を4人乗りモードにアレンジする機会がやってきました!
こういう時のために、簡単に床板やベッドをバラバラにできるようにしていたんだよなぁ。

 

いとうみゆきさんの愛車の荷室の様子

どうしたらコンパクトにできるかな? どうしたら部屋(車内)を広く使えるかな? と、いろいろ考えながらDIYの設計をしていたころが懐かしくなります。ピカピカだった床板に、いつの間にか傷ができていて、ずっと臭かった柿渋塗装の匂いもやっと薄れてきて……また蜜蝋を塗ってあげないとな。

そして、友だちを乗せてキャンプ場へやってきました。

今日は「白くま」と一緒に、キャンプをします! テントを立てて、キャンプグッズを置いて、料理をして、といつもよりちゃんとした(?)キャンプ。楽しみだなぁ。

 

キャンプの準備をする いとうみゆきさんと友人

今日は美術館やカフェ、古墳や散歩道がある自然公園の中にあるキャンプサイトに滞在します。キャンプ場を利用するのは私たちだけだったので、贅沢な気持ち!

友だち2人がテントなどを準備している間に、私は夜ご飯の準備と「白くま」のお片付けをします。やっぱり複数人のキャンプは荷物が多くなるので、クルマがあると便利だなぁ。しかもオートキャンプ場だとクルマごとキャンプサイトに入れるので、荷物的にも寝床的にも楽ちんです。

いろいろ道具を持ってきたので、クルマの中はいつも以上にしっちゃかめっちゃかですが……。

 

いとうみゆきさんの愛車
キャンプ場に咲く花

キャンプ上で食事を楽しむ いとうみゆきさんと友人

暗くなる前に準備が完了しました。簡単な料理も済ませ、一旦腹ごしらえ。今日も「白くま」の調理台が大活躍です!

 

クルマの荷室で調理をする様子
夕食の料理

リトリートフィールドMahora稲穂山

住所:〒369-1412 埼玉県秩父郡皆野町大字皆野4048−1

営業時間:9:00~16:30

休園日:火曜日(祝日の場合は翌日休園)

※冬季凍結期間は休園となります、詳しくは管理事務所へお問い合わせください。

TEL:0494-62-1688(キャンプ専用TEL:090-6485-3100)

Instagram@mahora_inahoyama

 

⑤皆野町_登谷山〜夜の山道ドライブに挑戦だ〜

料理や寝床の準備も完了し、余裕も出てきたので一旦キャンプ場の外へ。埼玉県北部や群馬県の夜景を見渡すことができる、標高668mの山頂へ向かいます。標高668mと言っても、すぐ近くまでクルマで行けるので気持ちは楽々。と感じたのも、最初だけでした……。

 

夜景を見に登谷山へ向かういとうみゆきさん

昼間は、高い橋でドキドキしたのとはまた別のドキドキ。

次は、狭い山道を十数分ほど突き進んでいかなければなりませんでした! どんどん日が落ちて暗くなっていく山道、対向車がすれ違いになったら大変そうな細い道、気を抜いたら負けてしまいそうな急勾配……。

ドキドキしながらも、「今までいろいろな道を乗り越えてきたもの」と勇気を振り絞りながら進みます。

 

夜道を走る いとうみゆきさんの車

そうしてなんとかたどり着いた駐車場! 真っ暗すぎて不安にはなりましたが、ナビの案内では、ここがクルマで来れるギリギリの場所。

真っ暗闇に取り残された「白くま」は、恐怖に慄いているように見えました。

 

廃墟を探索するいとう みゆきさん

駐車場は徒歩で山頂に向かいます。5〜10分ほど急勾配の坂をのぼるのですが、とにかく真っ暗で、蜘蛛の巣だらけで、謎の廃墟と建物が立っていて、人っ子一人いなくて怖くてたまりませんでした!!!

しかもずっと霧がかかっているんですよね…………(汗)。

複数人だったので冒険気分を楽しめましたが、一人だったら絶対に諦めて帰っていたと思います。それぐらい怖かったです!!

 

登谷山の山頂から夜景を見る いとうみゆきさん

だけど、山頂に到着して、目の前に現れた景色は、本当に綺麗でした。ぼんやりとかかった霧のおかげでむしろ幻想的な夜景だったな。恐怖に耐え忍んで、前に進んだ者だけに与えられる宝物。これはまさに夜の森ダンジョンのようでした。

登谷山

住所:〒369-1411 埼玉県秩父郡皆野町三沢4289-4

 

カーサイドタープを広げる様子

そして、夜の森ダンジョンから帰ってきた頃、雨がポツポツ降り始めました。いつもだったら「白くま」に避難すればいいだけなのですが、今日はみんなでキャンプなのでそういうわけにもいかず。

「どうにかして雨を防ごう!」と、「白くま」の一部とテントの前室用に持っていたポールを使って、ビニールシートで即席タープが張られました。見栄えは悪いですが、ビニールシートでも案外しっかりとした屋根ができるもの。だけどこういう時のためにちゃんとしたカーサイドタープがあったらいいな! またひとつ、「白くま」にしてあげたいことが増えました。

雨もしのげたところで、焚き火を再開。夜はクルマの中でしっとり過ごすことが多いですが、今日はちょっと賑やかに。

 

焚き火をする いとうみゆきさん

おいしい食べ物を食べて、しゃべって、笑って、ぼーっと火を見て。夏の終わり、楽しい夜のひと時でした。

 

冒険はつづく

そして翌朝、早起きして山頂へ。

 

ブランコに乗る いとうみゆきさん

山の上にあった絶景ブランコに乗ってみると、秩父が一望できました。見えているのは、自分が昨日ドライブして通ってきた景色たち。

 

山の上から見渡す秩父地方

今まで通ってきた道、これから進む道。怖いこともあるけど、それ以上に楽しいこともたくさんある、冒険のような毎日。

ひとりだったら行けなかった場所に行くことができたのは、まぎれもなく「白くま」のおかげ。「白くま」のDIYを手伝ってくれた人たち、おいしいものを提供してくれる人たち、安全で楽しいドライブのために関わってくれている人たちのおかげです。

帰路の車中、スピーカーから流れてくる歌は、優河の「めぐる」。その歌詞の一部が今でも頭に残っています。

(歌詞の一部)今はまだ新鮮なこの色は、ここを離れたらきっとゆっくりと色褪せてしまうけれど、私はまた別の輝く景色を見に行けるんだ。たくさんの日々と思い出をめぐって、手を振って、それでも繋がって。

 

山道を進む いとうみゆきさんの車

そうやって今もこれからも続く、私たちの小さな冒険。昨日は楽しかったな、また成長できたな、明日はどこへ行こうかな!

 

愛車の前で笑う いとうみゆきさん

漫画/いとうみゆき
編集/望月 祐 (LIG)

 

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