大学時代に出会って卒業後、結婚し、「バンライフで日本一周の旅をする」という、ユニークな新婚旅行をスタートした「ちゃんじろー夫婦」。自分たちでカスタムした日産キャラバンでバンライフしながら、北海道から九州まで日本各地への旅を続けています。旅の目的は「定住したい場所を見つけること」。
ちゃんじろー夫婦の特徴は、本格的なバンライフを実践しているだけでなく、国際結婚のカップルであり、サーフトリップをしており、さらに愛猫ジョンくんと一緒に旅をするペット連れ旅でもありと多面的で、ふたりのチャーミングな人柄もあってファンが急増中。そんなふたりとジョンくんに会うため、いま彼らがお試し移住中の宮崎県を訪ねました。
撮影場所は、宮崎県宮崎市「AOSHIMA PICNIC CLUB(アオシマピクニッククラブ)」内に2024年夏にオープンしたオーシャンサイドキャンプエリア。太平洋に面した17万㎡の敷地に植物園やサウナ、カフェなどを併設する複合施設で、波乗りとサウナが好きなふたりにピッタリのロケーションです。
- ちゃんじろー夫婦
- 神奈川県出身のじろーさんとベトナム・ハノイ出身のちゃんさん。ちゃんさんは小学生のとき、外交官だった父の赴任に伴って来日。大学在学中に交際をスタート。就職により遠距離恋愛となるが、会社をやめてバンライフを始めるタイミングで結婚。バンライフや車中泊のリアルな暮らし、愛猫とのほのぼのしたシーンを動画で発信して人気急上昇中。2022年12月にスタートしたYouTubeチャンネルは、登録者数22万人を突破(2024年9月時点)。2024年9月には初の著書『ねこと夫婦とくるま旅 24歳で会社やめてバンライフ始めてみた』(KADOKAWA、9月18日発売予定)を出版。
- YouTube ちゃんじろー夫婦【バンライフ】
- Instagram @trangjiro_fufu
目次
キャラバンを自分たちでカスタム。デイジーの花柄がポイント
じろーさん:はい。今年の夏はあまりにも暑いので、ジョンくんが車内で過ごすのは無理だと判断して、一時的に宮崎県内に家を借りて「プチ移住」しています。今日も気温が36度を超えていて日差しも強烈なので、ジョンくんを連れてくるのは危険だと判断しました。
ちゃんさん:北海道や標高の高い山間など涼しい場所にしばらく行くことも考えたんですが、費用を考えると夏の間だけ家を借りるのとあまり変わらなかったので、前から好きだった宮崎にしばらく住むことにしました。
じろーさん:ジョンくんの写真を撮るなら、あとで一緒に家に行きましょう!
じろーさん:バンライフを始める前に、軽バン生活さんの記事を読んで、すごく参考にさせてもらいました。もちろん軽バン生活さんのYouTubeもよく見ていましたが、カスタムのポイントや旅の背景、リアルな苦労話などがまとまったインタビュー記事を読むことで「僕らだったら、どうするか?」を考えるヒントになりました。なので、今回、カエライフから取材の依頼をもらって 「今度は僕らがバンライフしたいと思っている人の背中を押してあげる番だ!」って。
▼「軽バン生活」のおふたりにインタビューした記事はこちら👇
じろーさん:2008年式の日産キャラバン E25 ハイルーフで、買ったときの走行距離は8万kmくらいでした。いまは12万kmを超えています。去年、北海道を回ったときにだいぶ距離が増えましたね。
ちゃんさん:クルマの名前は「FUFU(ふーふー)号」です。
ちゃんさん:ふたりで働いて貯めたお金が300万円だったので、なるべく予算を抑えたかったんです。最初は「軽バンにしよう」と思ったんですが、サーフボードも載せたいので、現実的に考えてそれなりのサイズが必要だなと。それでマツダ ボンゴや日産 バネットを探しましたが、なかなか気に入る車両が見つからなくて。キャラバンは高いと思って候補から外していたけれど、ダメ元で検索したら意外と安くて「これだ!」となりました。
じろーさん:車両本体は約60万円、カスタム費用も約60万円で、トータル120万円くらいでできました。セールのときを狙って70%オフでバッテリーを手に入れたり、友人からオーニングを安く譲ってもらったり、費用を抑える努力もいろいろしています。
じろーさん:海外のバンライファーの動画を観ると、メルセデスベンツのトランスポーターをベースにしていることが多いんです。それでベンツのトランスポーターに憧れてたんですが、現実的にはちょっと手が出ません(笑)。キャラバンのハイルーフなら、同じように車内で立って過ごせるかなと思ったのもあります。
ちゃんさん:外車はメンテナンスが大変だという話をよく聞きますが、その点、キャラバンは日本車なのでメンテの手間もあまりかからずにコスパがいいので、私たちには合っています。
じろーさん:ただ、購入時は、とにかく安く買いたかったので、ガソリン車を選びましたが、プラス20万円くらい出せば、ディーゼル車もあったんです。これだけ長距離を走るのなら、ディーゼル車にしたほうがトータルで安かったなと、あとから思いました(笑)。
ちゃんさん:なるべく目立つようにこのペイントにしたので、声をかけてもらって大丈夫です(笑)。クルマの車種選びの前に、塗装をどうするか、ずっと相談してたんです。「海をイメージしてブルーとベージュを基調にしようか」とも思ったんですが、「YouTubeで発信するなら、思い切って派手にしたほうがいいよね」という話になって、このオリーブグリーンっぽいカラー(タカラ塗料のグリーンソイビーンズ)とデイジーの花柄にしました。
じろーさん:最初はキャラバンのルックスがあまり好みじゃなかったんですが、自分でペイントしているうちにどんどん愛着が湧いてきて好きになりました。
じろーさん:もとの塗装にヤスリをかけてから、ペイント材をローラーで塗っています。
ちゃんさん:デイジーの花柄もフリーハンドで塗ったんですよ。
ちゃんさん:リアゲートには、旅の途中で出会ってお友だちになった人や好きなブランドのステッカーを貼っています。バンパーはもともと黒だったんですが、明るい雰囲気にしたくて黄色に塗りました。
じろーさん:リアゲートの内側にはベニヤ板を張って、パイプレールを取り付けて、ウェットスーツや洗濯物を干せるようにしています。
ちゃんさん:ルーフキャリアはタフレックのもの。ルーフキャリアの前方にトランクカーゴを積み、後半部分にソーラーパネルを設置して、エコフローのデルタ 2 maxというポータブルバッテリーに充電されるようにしています。
じろーさん:本当はサブバッテリーシステムを組んで走行充電もできるようにしたかったんですが、電気関係の配線が難しかったので、いったん諦めました。走行中は、運転席そばに置いているエコフローのリバー 2 maxにシガーソケット経由で充電しています。
ちゃんさん:いまの暮らし方だと多少天気の悪い日が続いても、電気が足りなくなることはないですね。
ちゃんさん:サンバイザーに三面鏡をつけてるので、ここでお化粧直しもできるんですよ。
じろーさん:運転席のカスタムで気に入っているポイントは、サーフィンの後で濡れたまま座っても大丈夫なように、ゴードンミラーのシートカバーを付けたこと。あとは、フロアに人工芝を敷いて、裸足でも快適に過ごせるようにしています。もちろん、運転するときは靴を履いていますので、安心してください(笑)。
じろーさん:いえ、それまで一度も電動工具を使ったことがなかったぐらい初心者でした。
ちゃんさん:たまたまサーフィンで知り合った人が大工さんで、私たちがバンライフのクルマを作ろうとしてたときに「これから仕事の一環としてクルマの内装をやってみたいから、キミたちのクルマ作りを手伝いたい」と言ってくれたんです。私たちはその人のことを「師匠」と呼んでいるんですが、師匠が来てくれるときに一気に大掛かりな作業をやって、自分たちだけのときは細かい作業をするという感じでした。
じろーさん:最初は自宅近くの駐車場で作業していたんですが、途中から周囲にご迷惑をかけないように「Mobi Lab.(モビラボ)※」を借りて作業しました。ソーラーパネルからバッテリーへの配線など、電気系統の作業も詳しいスタッフの方がサポートしてくれたので、なんとか自作できました。ルーフキャリアやソーラーパネルのように大きなパーツの受け取りと保管もしてくれるので、すごく助かりましたね。
※ クルマをDIYカスタムするためのシェアガレージで、専門スタッフからアドバイスとサポートを受けられる。キャンピングカーのレンタルや車中泊スポットの予約プラットフォーム事業をおこなうCarstay(カーステイ)株式会社の施設。
大好きな海のイメージで、船室のようなインテリアに
じろーさん:後ろから見ると、こんな感じです。ベッドの下に収納スペースを設けています。
ちゃんさん:最初は廃材や安い木材を使って済ませようとしたんですが、DIYの師匠から「絶対にちゃんとした材料を使うべき」と言われて、師匠が持っていたカリンのフローリング材を譲ってもらって天井に張りました。
じろーさん:天井のカリン材は色が濃くて、それだけだと暗い雰囲気になるので、壁材は白く塗装して明るく仕上げています。内装には海のイメージを取り入れたかったので、マリンライトをつけました。
ちゃんさん:床の角のアールは、師匠が「ストッキングを履いた女の子がささくれで破かないように」って(笑)、丁寧に仕上げをやってくれました。プロの大工さんならではの視点で、私たち初心者が見過ごすようなポイントを教えてくれたので助かりました。
ちゃんさん:私が気に入ってるのは、この窓です。この窓も師匠が作ってくれたので、すごくきれいにできています。もっと大きくすることもできたんですが、「映画のスクリーンのような比率がいい!」とお願いして、この形にしてもらいました。
じろーさん:ロールスクリーン(ロールカーテン)の端には木材を入れていて、カーテンを閉めると木材が重しになってくれます。カーテンを開けるときは、布をくるくると木材に巻きつけるようにして留める仕組みです。
ちゃんさん:海外の動画を参考に、天井に掛け具を付けて、ロープとナスカン(茄子鐶)で固定しています。
じろーさん:ルーフに固定すると、車高があるので積み下ろしが大変ですし、僕らの場合、一時的に積むのではなくてずっとそのままで旅をするわけですから、夏場は高温でサーフボードが劣化したりワックスが垂れたりして具合が悪いだろうと。それで車内の天井に設置することにしました。最初は寝てるときに落ちてこないかヒヤヒヤしましたが、もう慣れました(笑)。
ちゃんさん:走行中にボードが動くとしたら前方向だけで、前はしっかりと止めてあるので安全です。
ちゃんさん:ウクレレは、ホームセンターで見つけたフックとゴムバンドで固定しています。
じろーさん:遠距離恋愛のときに「ふたりで一緒にできる趣味を作ろう」ということでウクレレを始めたんです。「僕がウクレレを弾いて、ちゃんが歌うといいんじゃない」なんて言っていたんですが、僕がクルマを運転している間にちゃんは練習するので、ウクレレの腕も追い越されました(笑)。
ちゃんさん:私はまだ運転免許をもっていなくて、クルマの運転はもっぱら、じろーくんにお願いしています。早く免許をとって、運転を交代したいと思ってるんですが(笑)。
じろーさん:ベッドキットはこんな感じで、集成材で作った3つの天板を組み合わせてフタにすることで、その下に収納した荷物にアプローチしやすいようにしてあります。
ちゃんさん:真ん中のフタは後ろに脚が付けてあって、取り外してテーブルとしても使えます。
じろーさん:ALL GROUND(オールグラウンド)のカーサイドオーニングは、270度に広がるのが特徴です。友人から格安で譲ってもらったんですが、風のない日ならタープポールを使わなくても自立するのですごく便利ですね。
ちゃんさん:サイドからリアまでぐるっとクルマを取り囲むようになっていて、日差しの向きに左右されず、必ずどこかに日陰ができるので、気に入っています(笑)。
持ち物は最小限に。ミニマルな暮らしで価値観も変化
ちゃんさん:就寝のときはこんな感じで、ふたりの間にジョンくんが入って寝ます。シーツや枕カバーはニトリの接触冷感の中でも一番強力なやつを選びました(笑)。
じろーさん:カーテンレールは、最初は雰囲気のいい木の棒にしてたんですが、あまりにも使い勝手が悪かったので(笑)、あとからニトリのカーブレールを付けました。以前は、車内にポータブル冷蔵庫も載せていたんですが、「毎日スーパーに行って、使い切れる量の食材だけ買えばいい」と気づいて、リユースショップで買い取ってもらったりと、少しずつカスタムも装備も変化しています。
じろーさん:大学生の頃は、友だちから「また同じ服を着てる」と思われたくなくて、毎日違う服を着ていましたが、いまの暮らしをするようになって「服は夏用と冬用が一着ずつあればいいや」と思うようになりました。いまにして思えば「みんな、他人の服なんてそんなに気にしてないよな」って(笑)。バンライフを始めて、所有物をなるべく絞り込むようになって、考え方もどんどんシンプルになりました。できれば持ち物はもっと減らしたいですね。
ちゃんさん:ここはキッチンです。カウンターの上に置いている丸い穴の開いた木箱は、ジョンくんの爪研ぎ兼隠れ場所です。
じろーさん:サーキュレーターは旅先のオートバックスで買ったものです。この年式のキャラバンは後ろまで冷房が届きにくいので、走っているときにジョンくんも涼めるようにと思ってつけています。
ちゃんさん:カウンターテーブルは、天井に使ったカリン材の余りを斜めに張っているのがお気に入りポイントです。料理をするときは、こんな感じでテーブルを跳ね上げて、使わないときは折り畳めるようになっています。
じろーさん:これを作るの、すごく難しかったよね。
ちゃんさん:スノーピークのHOME&CAMPバーナーは、お友だちがプレゼントしてくれたもので、コンパクトですごく使いやすいです。マルチグリドルも、フライパンとしても鍋としても使えるので、だいたいこれひとつで料理ができちゃいますね。
ちゃんさん:床は下地材の上にフローリングシートを貼っています。クルマの後部は土足禁止で、入口には玄関マットを敷いてるんですが、これはジョンくんの爪研ぎも兼ねています。
じろーさん:キッチンの横に、折りたたみ式のテーブルを付けてあるので、サーフィンから戻ってきて、ここでコーヒーを淹れたりもできますよ。カウンターのスイッチ類は、車内のマリンライトや水道のポンプ用です。
ちゃんさん:シンク(流し台)は苦労して作ったものの、廃水の処理が大変なので、いつの間にか使わなくなって、いまはジョンくんのエサの保管庫になっています(笑)。
じろーさん:上水道は使っていて、蛇口のホースが伸びるので、手や脚が汚れたときにさっと洗えて便利です。
愛猫と一緒に旅する決断と、クルマを家にする工夫
じろーさん:僕たちもジョンくんを連れて行くかどうか、最後の最後まで悩みました。猫好きの知人に預かってもらうことも試したんですが、そこの家の先住猫と折り合いが悪かったことに加えて、僕たちもジョンくんにずっと会えなくなってしまうのがつらくて、思い切って連れて行こうと。
ちゃんさん:大学生の頃、排水溝に落ちている子猫を見つけて保護したのがジョンくんなんです。それ以来、ずっと一緒に暮らしていて、私たちにとっては本当に家族なので、旅にも連れて行くことにしました。最近はInstagramやYouTubeを通じて、猫と一緒にクルマ旅をしている人たちと知り合って、いろいろと教えてもらいながら試行錯誤しています。
じろーさん:夏の暑さだけはどうしようもないんですが、猫は一度家だと認識すると落ち着くみたいで、ジョンくん本人はクルマでの生活に対して、あまりストレスは感じていないようです。ジョンくんはお散歩が好きで、クルマを停めたあと、まわりをチェックして「安全だ」と感じたら、お散歩に出たがるんです(笑)。
ちゃんさん:宮崎に住んでいる間もこのクルマを使うので、ジムに行ったりスーパーに寄ったりして私たちがクルマから少し離れている間に、「クルマの中に猫が閉じ込められてるに違いない!」と思った人に警察に通報されるんじゃないかとか、まわりの目が気になって心配になることはあります(笑)。
じろーさん:目立つクルマだから仕方がないんですけど。夏場にジョンくんをクルマに置いていくことは絶対にないですし、ジョンくんも大切な家族なので、できるだけ快適に過ごせるようにすごく気をつけています。
じろーさん:バンライフをやっていると、サーフィン以外では、あまり体を動かす機会がなくて。不健康だなと思って、ジムに通うようになりました。
ちゃんさん:全国展開しているフィットネスジムの会員になっていて、ジムを使わなくても、シャワーだけでも借りられるので助かっています。各地の温泉に行くのも楽しみですが、「今日はパッとシャワーだけ浴びたい」というときに、とても便利です。
じろーさん:あとはゴミ問題がずっとネックだったんですが、キャンプ場を借りたときに捨てさせてもらったり、ゴミ処理場に持ち込みOKという自治体があったり、解決策が見つかってからはすごくラクになりましたね。いまのところ、困っているのは夏の暑さぐらいで、あとはまったくストレスを感じません。
ちゃんさん:今後は、サブバッテリーを積んでポータブルクーラーを使えるようにしたいなと思っています。ただ、毎年夏の間はずっと北海道に行って過ごすようにすれば、このままポータブルクーラーなしでも大丈夫かもしれませんが。
じろーさん:なるべくストレスをためないように、旅の中で工夫するようにしています。僕らが旅をしているのは都会よりも自然豊かな地域が多いので、きれいな海や山の風景を見たり、サーフィンをしたり、なるべく自然に触れる時間を作るようにしています。それだけでストレスがかなり解消されますね。
ちゃんさん:広い家に住んでいてもクルマに住んでいても、誰かと一緒に暮らしていれば、必ずストレスはあると思うんです。とくに私たちの場合、いまはYouTubeが仕事のメインになっていて、仕事も一緒にしているわけですから、ときどき意見が合わなくてケンカになることもありますし……(笑)。ただ、バンライフにしろ、動画の制作にしろ、好きなことをやっているので、サラリーマンとして働いていた頃に比べれば、かなりストレスは減ったと思います。
就職と遠距離恋愛を経て、たどり着いた自由な暮らし方
ちゃんさん:大学卒業、ふたりとも就職したんですが、私は東京、じろーくんは大阪に住むことになり、遠距離恋愛をしていました。そんな中、じろーくんが仕事のストレスなどが重なってメンタル面でかなり弱ってしまったことがあって。久しぶりに会って遊んで、楽しくて笑うところなのに、急に泣き出してしまうくらい、精神的に不安定な時期があったんです。それで「会社をやめようかなぁ」という話になったときに、たまたまバンライフと出会って。就職してからは一緒にサーフィンする時間もとれなくて、そのかわりにサーフトリップの動画をよく観ていたんですが、サーファーたちがいい波を求めてクルマ旅をするバンライフというライフスタイルがあることを知って、「これだ!」と思いました。といっても、そのときの私は、じろーくんが元気になってくれることが最優先で、バンライフじゃなくても「ふたりで海外旅行をする」でもよかったんですが。
じろーさん:あの頃は「お金を貯めてバンライフを始める」という共通の目標があったから、つらい時期を乗り越えられたと思います。
ちゃんさん:バンライフという目標が決まってからは、お金を貯めるために頑張りました(笑)。お互いに注目しているバンライファーの写真を集めてGoogleドライブで共有して、それを見ながら「こうしたい、ああしよう」と、遠距離恋愛のよいコミュニケーションツールになっていました。それに、じろーくんは大学生の頃からずっと「YouTubeを始めたい」と言っていたので、バンライフの様子をYouTubeで発信することに決めてからは、ものすごくモチベーションが上がりました(笑)。
じろーさん:実は「ユーチューバーになりたい」というのが夢だったんです。ずっと動画制作に興味があって。ちゃんは17LIVE(ライブ動画配信サービス)のライバー(配信者)をやっていたこともあって、動画の配信に慣れているので、ちゃんとふたりならできるかなと。
ちゃんさん:それで私も会社をやめて、ふたりでバンライフとYouTubeをやろうと決めたんです。ただ、私は外国人なので、会社に就職していないと就労ビザが下りないので、「じゃあ、このタイミングで結婚して、配偶者ビザに切り替えよう」ということになりました。
じろーさん:好きなときに働いて、好きなときに好きな場所へ行って、会いたい人に会いに行く。こんな生活をするのがずっと夢だったので、いま夢が叶っている状態です。収入の面でも、最初は1円も稼げなかったので、本当の意味でニートだったんですが(笑)、YouTubeが軌道に乗ってからは、会社員のときより収入も増えています。最初は親に反対されましたし、ずいぶん心配もかけましたが、いまは応援してくれています。夢を諦めずに挑戦してよかったですね。
ちゃんさん:今後はYouTubeに限らず、私たちにできることで、やりたいと思える仕事をいろいろやっていきたいね、という話をしています。
じろーさん:以前に出会った方から「福島は原発や震災の影響で、あまりいいイメージがないかもしれないけれど、素晴らしい場所がいっぱいある。福島のいいところを動画にしてくれたら、うれしい」と言われたことがあって。それで実際に福島を旅したときの様子を動画にしたら、ものすごく喜んでくれたんです。自分の故郷や住む場所の魅力が発信されるのは、地元の人にとってうれしいことだと思うので、これからも積極的に日本各地の魅力を伝えたいです。
ちゃんさん:最初は自分たちのライフスタイルを伝えたいと思ってYouTubeを始めたんですが、実際に訪れた地域の人たちから「うちの地元を紹介してくれて、ありがとう」と言ってもらえるのがうれしくて、各地の観光スポットや私たちが感動したポイントを紹介するような動画をアップするようになったら、フォロワーさんの数もどんどん増えていった感じです。
じろーさん:YouTubeで僕たちのことを知ってくれる人が増えたおかげで、いろいろと面白い提案をもらえるようになりました。そのひとつが著書を出版することで、「いつか、本を出せたらいいな」とは思っていましたが、こんなに早く夢が実現するとは思っていませんでした。
ちゃんさん:バンライフを始めて日本各地を旅するようになって、農業や漁業などの一次産業はもちろんのこと、いろいろなライフスタイルの人たちと出会い、「会社勤めじゃない生き方って、実はたくさんあるんだな」ということを知りました。なので、これからもご縁があって出会った人と、何かお仕事を一緒にできたらいいなと思いますし、バンライフやYouTubeだけじゃなくて、どこかの土地に定住した後でも、積極的に新しいことにチャレンジしたいと思っています。
好きなときに好きな場所で暮らすライフスタイルの魅力
住む場所も働き方も、マイペースに無理をせず、楽しみながら暮らしているちゃんじろー夫婦。もともと自然体のふたりですが、バンライフを通じて、さまざまな価値観の人たちと出会うことで視野が広がり、またYouTubeでたくさんのファンを獲得したことで、可能性の拡大も加速しているようです。ふたりにとってバンライフは、いまを充実して生きるための手段であり、同時に、将来に向けてさらに羽ばたくための助走期間でもあるのでしょう。
▼ライターのプロフィール
- 廣田 俊介(ひろた しゅんすけ)
- 出版社でバイク専門誌、ファッション誌の編集者として勤務した後に独立。アメリカンカジュアルやトラッドを中心としたファッション、乗り物、アートなどの分野を中心に各種媒体で記事を執筆。コロナ禍をきっかけに葉山へ移住し、趣味の釣り、キャンプ、バイク、園芸を満喫中。
Instagram @shunthe1564
取材・文/廣田 俊介
写真/大石田 瞬
編集/平林 きょうこ
撮影協力/AOSHIMA PICNIC CLUB