軽バンで日本一周夫婦が教える 食事・仕事・睡眠を一台で完結させる 車中“住”の極意

軽バン内に設えられたベッドで寝転びながら見つめ合ううんまほふうふ夫婦ふたりで会社を辞め、住んでいた家も手放して、DIYした軽バンで日本一周の旅に出た「うんまほふうふ」。SNSで発信する車中泊の楽しみやバン改造のハウツー、旅先の情報などが人気となり、わずか1年足らずで多くのファンを獲得。そんなおふたりにバンライフの楽しみを教えてもらった前編に続き、後編では軽バンをステキな“自宅”に変えたDIYのアイデアを伺います!

 

うんまほふうふ

うんまほふうふ
1993年生まれの“うんちゃん”と“まほ”さん。「行く先々の景色の感動を味わいながら、たくさんの方にその地域の魅力を伝えること」を目標に、2023年9月から夫婦でDIYした軽バンにて日本一周をスタート。”旅するように暮らす”DIYの方法やクルマで巡るおすすめの旅プランなどを紹介したSNSが人気を博し、Instagramは2.3万人がフォロー中。
Instagram @unmahofufu
YouTube うんまほふうふ Travel
公式サイト うんまほふうふブログ

目次

 

お気に入りの外観にリメイクする方法

SNSでたくさんのDIYのアイデアを発信されていますね。もともとお好きだったんですか?

まほさん:いいえ、もとは全然DIYをするタイプじゃなくて、クルマの改造もシロウトには無理だと思っていました。でも、2021年にたまたま知人のエブリイを買い取らせてもらえることになり、初めてのカスタムにチャレンジしてみたら、意外とカタチになりました。

その後、ふたりで日本一周をしようと決めてから、それまではデザイン重視だった内装を見直して、バンの改造を得意とする友人にも手伝ってもらいながら、もっと機能的になるように改善したのが今のクルマです。

横から見たうんまほふうふの愛車、スズキのエブリイ

ブルーとホワイトのツートンカラーがかわいい車体

車体の色は手塗りですか?

まほさん:はい、もともと白いクルマだったので、ホワイトは地の色を生かし、上からブルーの塗料を重ねました。上手に塗るコツは、塗装前に車体の表面をしっかりと削ること! あとは、正確にマスキングしてローラーで塗るだけなので、そんなに難しくはありませんでした。

うんちゃん:カスタム前は、Pinterest(ピンタレスト)で海外のクルマをたくさん見て、デザインや色を参考にしました。ブルーにした理由は、純粋にふたりが好きな色だったから。あまりない色なので、すぐに自分たちのクルマがわかります。あとは、キャリアを追加でつけています。

 

キャリアにはソーラーパネルを載せているんですね。

うんちゃん:バンライフに必要な電力は、すべて太陽光でまかなっています。よく晴れた日に山頂へ行くと、午前中だけでフル充電になることもありますね。念のため、予備として他にも2つのバッテリーを搭載しています。

ルーフ部に設置したソーラーパネル

2枚のソーラーパネルを並列でつなげ、車内に給電

車内テーブル下に設置された「ポータブル電源」

ポータブル電源「AC200L」。購入時は安価な鉛製と迷ったが、扱いやすいリチウム製を選択

 

車中で快適に暮らすためのDIYハウツー

コンパクトな車体なのに、ずいぶん広く感じますね!

うんちゃん:天井の板を細くすることで、目の錯覚で広く見えるんだと思います。あらかじめ設置されていた天井のバー部分に木材を取り付け、そこに打ち付ける形で天井板を張っていきました。

細めの板を縦に何本も張っている車内の天井の様子

板はホームセンターで購入し、ブラウンのオールドワックスを塗って落ち着いたカラーに。好きな長さでカットできるIKEAのテープライトも活躍

床面はどのように着手されたんでしょう?

まほさん:まずは2列目以降の座席や床をすべて取り払いました。エブリイの場合、すべてのパーツを剥がしても床が完全にフラットじゃないので、床を平らにするための土台を組むことにしました。土台の内側のスペースは収納として使っています。

車内土台内部のスペースには収納スペースが

床下収納には、IKEAの衣装ケースを使ってふたりの衣類を入れてある

このテーブルも手作りですか?

車内にT字型に設えられたテーブル

T字型にテーブルが設置されているのにも訳が

まほさん:はい。テーブルの面積がなるべく広くなるように、足を伸ばして座れるように、気を配りながら設置しました。天板の内部にはポータブル電源などを格納しています。

車内それぞれの席とテーブルで仕事をするうんまほふうふ

車内が2人それぞれの席を設えたオフィスに! 足が伸ばせるスペースもある

オフィスのデスクにもなり、ダイニングテーブルにもなるんですね。

うんちゃん:もっと言うと、ここで調理を行うので、キッチンカウンターでもあります。だから、匂いがこもらないように換気扇も付けているんですよ。パソコンの冷却ファンとして使われているものを4点付けています。暑いときは、車内の暖気を逃すのにも大活躍です。

車内側面窓に設えられた換気扇

底面の窓にはパソコンの冷却用ファンを応用。5ボルトのUSBタイプが一般的だが、パワー重視で12ボルトのコンセントタイプを設置

そして、夜にはここがベッドルームになる…?

まほさん:はい。テーブルの天板が広がるようになっているので、車体いっぱいに拡張して、上にマットを敷きつめればベッドの完成です。

車内全面にマットを敷き詰めた状態

低反発クッションを3枚重ねて布でくるみ、底に滑り止め用のゴム板を付けた手作りマット

車内ベッドに寝転ぶまほさん

フルフラットでセミダブルベッドに早変わり

車内バックドアに設置したロールスクリーンにプロジェクターで映写しているシーン

車内バックドアに設置したロールスクリーンに、プロジェクターで映写も可能!

うんちゃん:皆さんのバンキャンプを見ていると、ベッドを展開したまま過ごされていることが多くて、ラクで良いなあと思うこともあるのですが、ぼくらは日中を車中で過ごすことが多いので、ベッドは片付けるようにしています。

車内から開閉可能なように改造したバックドアを開けるうんちゃん

バックドアも車内にいたまま自由に開閉できるようにカスタマイズ

 

吊るす&飾る“見せる収納”を活用

家としての機能をすべて満たしているのに、ずいぶんものが少なく見えますね。

まほさん:実は、収納をめちゃくちゃ工夫しているんです。エブリイは壁に丸みがあり、棚を付けるとデッドスペースができて車内も狭く見えてしまうので、天井に収納することにしました。

車内側面上部のデッドスペースに設えた棚

天井の木製の支柱に棚を固定した“天井収納”。細々とした生活雑貨もすっきり整頓

うんちゃん:走行中に中身が落下するのを防ぐために、ゴルフネットを付けています。これなら多少はみ出ていても大丈夫だし、板を付けるより圧迫感が減ります

天井収納の底面はマグネットで収納ボックスを設置

車体が金属製なので、磁石とフックをフル活用した“空中収納”で各種ハーブティーの茶葉も見事に陳列

インテリアもかわいいですね。

まほさん:生活感があるものは本当は隠したいところですが、よく使うものでもあるので、しまいこむと使い勝手が悪くなってしまいます。だったら、なるべくオシャレに飾って“見せる収納”にしようかな、と。

車内側面に設えられた両開きの棚

歯ブラシや化粧水などが並ぶ棚の横には何やら両開きの扉が

車内側面に設えられた両開きの棚を開いて出てくる鏡でおめかしするまほさん

扉をあけるとセンサーで照明が灯り、鏡と棚が登場。タイルシートが海外のパウダールームのよう

車内側面の見せ棚にはスパイスがたくさん並ぶ

鉄板の上に木製の板を貼って作ったスパイス棚も“見せる収納”の一つ。食品関係だった前職の知見を生かし、ちょうどいいサイズの瓶を調達

カーテンも絶妙なサイズ。どのように作られたのでしょう?

まほさん:細いステンレスの棒に、クリップ付きのリングを通して布を吊るす簡単な手作りカーテンです。バンキャンプを楽しむ人たちの間ではよく知られる方法なんですよ。

車内のチェック柄のカーテン

表はチェック・裏はネイビーの布を縫い合わせた自作カーテン

まほさん:布は、自分たちの好きなデザインを選びました。1枚だと遮光ができないので、2枚合わせてリバーシブルに。洗うのも簡単だし、気分によって裏表を変えて使ったり、テーブルクロスにしたり、撮影時の背景として活用したりと何通りにも使えます。

 

こうしたアイデアは、どうやって生まれるのでしょうか?

まほさん:Pinterestは日常的に見ています。DIYをする人のオシャレな家のアイデアも。既製品や流行のギアを買うのもいいんだけれど、私たちは作るのも面白いと思うタイプだから、Pinterestのチャンネルはとても勉強になります。

車後方で車内のDIYについて語り合ううんまほふうふ

車内DIYに終わりはない

うんちゃん:ほかにも、お家でカフェタイムを楽しんでいる人の動画を参考にして、そこで使われている道具を「これ、クルマで使うと楽しいんじゃない?」って取り入れることもあります。

あとは、バンキャンプのイベントに出かけたりして、いろいろな人のバンを見ると発見があると思います。自分たちも結構作り込んでいるほうだと思うけれど、それでもみんなのクルマを見るとまだまだ参考になることが多いんです。

 

クルマを快適な家に変えるDIYの極意

おふたりのようなバンライフをはじめたいと思ったら、どんなふうにカスタムしていくといいでしょう?

まほさん:私たちはクルマを手に入れてから、最初は床作りから始めて、「硬い床で寝ると疲れるからマットを用意しよう」「マットの上で寝るためのシュラフはどんなのが良いかな?」ってアップグレードしていきました。

車内で快適に眠れるようになると「料理できるテーブルが欲しい」とか、どんどん欲が出てくるはず。そこから、好みの路線でカスタムされると良いのではないでしょうか。“自分の好みの家を買う”となるとハードルが高いけれど、クルマを好みのスタイルに作ることなら意外とできます。

うんちゃん:クルマだけど、家で過ごすみたいに暮らせるのがぼくらの理想。空間がコンパクトだからこそ、妥協せずにたくさん調べて、好きなものを見極めて、ちょっとずつ集めていく生活って意外と楽しいんです。これからも自分たちの夢に向かって進もうと思います。

 

空間自体は小さいけれど、自分たちの“好き”を丁寧に育てていけば、充実したお家ができるんですね。うんちゃん、まほさん、ありがとうございました!

 

文/矢口 あやは
写真/やまひらく
編集/くらしさ(TAC企画)
撮影協力/TINY CAMP VILLAGE