ハイエースをキャンピングカー仕様にカスタムし、“動くオフィス”やお昼寝空間として、ときには週末旅の相棒として活用しているキマさん&まいさん夫婦。
オフィス、キッチン、リビングルーム、ベッドルーム…すべての要素を兼ね備えた車内空間のこだわりポイントを教えていただきました。
- ふかや夫婦のそとのくらし
- 茨城県在住、元教員夫婦のキマさん&まいさん。こだわりのキャンプギアで週末キャンプを楽しんでいた教員時代から、自由な生き方を求めて教員を退職。ハイエースを3か月でカスタムし、2024年7月〜「動くオフィス」のバンで日本一周を開始。現在は中断中で、バンライフを楽しむ。
- Instagram:@soto_kura
YouTube:ふかや夫婦のそとのくらし
目次
白×黒×オレンジ 3色で統一したシンプル空間
日本一周の旅を目指して、約2か月でハイエースを「動くオフィス」に改装した、「そとのくらし」のキマさん&まいさん夫婦。改造したハイエースでの旅は現在“中断中”ですが、茨城を拠点に週末旅に出かけたり、フリーランスで働くふたりのオフィスになったりと、「家よりもくつろげる空間」でバンライフを楽しんでいます。
車内のデザインコンセプトは、和風(Japanese)と北欧風(Scandinavian)のテイストを融合させたインテリアスタイル“ジャパンディ(Japandi)”。「ほかのクルマと被らないようなデザインにしたい」と海外バンライフの例を参考にしながら、キマさんの好みを反映し、白、黒、オレンジ(茶色)の3色が使われたシンプルな内装になっています。
「まずこだわったのは天井のデザインです。制振剤、断熱材を取り付けたあと、それを黒い板で押し込む形で車体に直接打ち込んで天井を作りました。さらに、細長い木材を均等に打ち付け、柔らかなオレンジ色の木の色味と黒が交互になるようにデザインしました」(キマさん)
ふかふかの断熱材を押し込むのに相当の力が必要だった上、ずっと両手を上げて板を固定した状態でネジを打ち込んでいかなければいけなかったそう。
「打ち込んで固定するのに必死で、ネジの位置まで考えていなかったので、よくよく見るとネジの位置が若干ズレているのはご愛嬌です(笑)」(まいさん)
落ち着いた空間を作りたい、という思いから、バンのカスタムでは珍しい間接照明を選択。横の壁を白に塗装し、シンプルですっきりとしたデザインになっています。
「天井もテーブルもすべてオレンジ系の木材の色になると、締まりのない空間になってしまうかな…と思ったんです。当初は、壁にヘッドフォンなどをかけるフックもいくつかつけようと思っていたのですが、ものがかかっているとごちゃごちゃとした印象になってしまうと思ってやめました」(キマさん)
こうした考えのもと、見事にシンプルでスタイリッシュな空間が具現化されていきました。
靴を脱いで上がるから、家のように過ごせる
くつろげる空間として譲れなかったのは、家のように「靴を脱いで上がる」ことでした。凸凹だった床に端材を入れ、平らにした上で、強度と耐水性に優れた資材「パネコート」を敷き、さらにその上にリビング用のフローリング材を敷いています。
「フローリング材なので、家にいるのと同じ感覚で、靴下で過ごせます。掃除もしやすく、何よりも車内をキレイに保てるところがお気に入りです」(まいさん)
デスクテーブルは一枚板を使用し、ものはすべて収納できるよう引き出しも作りました。デスクスペースは足を入れて仕事ができるような設計になっています。
「見せる収納も好きですが、旅をしながら過ごす空間なのであれば、常にキレイに整っているほうがストレスなく過ごせるのではないかと考えました。引き出しは、設計ミスでうまく閉まらなくなってしまった段があるのですが、それも思い出かなと思っています」(キマさん)
細部まで丁寧に設計されたソファ&ベッド
さらにふたりのこだわりが詰まっているのが、バンライフの快適さの要になるベッドです。普段はほとんどベッド仕様で過ごしているそうですが、ソファ仕様にもすぐに変えることができ、車内空間をさらに広々と使うことができます。
「ベッドサイズに合わせて、3つのサイズのマットを作りました。ソファ仕様のときは背もたれになって、サイズがぴったりハマるのもお気に入りのポイント。マットカバーの生地や色にもこだわったので、肌触りが良くて寝心地も最高です」(まいさん)
掛け布団は運転席の上に作った棚に収納。改装を手伝ってくれたバンライフ仲間のはやとさんが「ここに収納があったほうがいい!」と作ってくれたそうです。
ベッドの高さは、ベッド下に無印良品のポリプロピレン頑丈収納ボックス(大)がぴったりと収まるよう設計。ソファ仕様にする際は、ベッドを折りたたみ、脚を取り外して収納していきます。
あっという間に、ソファ仕様に仕立てが変わりました。
コーヒー好きのまいさんは、毎朝コーヒー豆を手挽きして淹れる「コーヒータイム」を作っているそう。「最近は仕事が忙しくて時間がとれないことも多いのですが、朝早く起きるだけで、1日を早くスタートできてお得な気持ちになります」(まいさん)
車内のソファでくつろいで、ゆっくりコーヒータイムを楽しむ。そんな優雅な過ごし方ができるのも、ハイエースの広さがあるからこそです。
8ナンバー取得に向けてガスバーナー&シンクを完備
車両を改装するにあたり最初から決めていたのが、キャンピングカー登録し、特殊用途自動車に割り振られる「8ナンバー」をつけることだったといいます。
8ナンバーを取得するには、さまざまな条件があり、「宿泊に必要な寝台を規定サイズ(1人分180cm×50cm)以上にすること」「電子レンジあるいはガスバーナーの調理設備」「上下水設備を設けること」などがあります。ハードルの高そうな8ナンバー取得ですが、普通車の場合は「車検のたびに原状復帰するのは大変」というのが、こだわりの理由でした。
ハイエースはボディサイズによって1ナンバーと4ナンバーがあります。ふたりが選んだスーパーロングは普通貨物車の1ナンバー。「1ナンバーの場合、1年に1回の車検で、すべての荷物や装備を取り外す必要があります。8ナンバーであれば車検が2年に1回になりますし、装備もそのままの状態でいい。長期的にはそのほうがラクだなと考えました」(キマさん)
調理設備ができたことで、旅の間に自炊できるようになり「バンライフはかなり充実した」といいます。北海道を一周したときには、地元の野菜を使った料理を楽しみました。
「大好きなナスがすごく美味しくて、麻婆ナスやナスの煮浸しは何度も作った定番メニューになりました」(まいさん)
旅の間は調理も食事も車内ですることが多いそうですが、天気の良い日にはキャンプ用の椅子とテーブルを置いて、青空ご飯を楽しみます。
車内には冷蔵庫もあるので、食材の保存も可能です。電力は、ルーフトップに設置したソーラーパネルからとっていますが、「雨が3日続くと電力が足りなくなってしまう」ことから、予備バッテリーの搭載も欠かせないそう。ベッド下に収納し、旅が続いたときには取り出して使っています。
次は4WD(四輪駆動)車をカスタム!? これからも続くふたりのバンライフ
普段はオフィス使いをしながら、週末にはよく車中泊旅に出かけているそう。デスクに並んで座っても十分なスペースがあり、アイデアに行き詰ったらごろんと転がることもできます。
快適なバンライフでも、夏の暑さと冬の寒さからはどうしても逃れられないところが悩みの一つ。床下、天井に断熱材を入れていますが、昨今の猛暑は解決のしようがないということで、「扇風機をそれぞれ一台ずつ使う」ことでしのいでいるそうです。
バンライフを始める前は、毎週のようにキャンプに出かけていましたが、今ではすっかり車中泊にハマっているそうです。
「キャンプも楽しかったけれど、毎回テントを張ってご飯や寝床の準備をしていたなんて、体力があったんだなぁと思っちゃいます(笑)。バンライフは好きな時間に出かけて、自分のペースで睡眠をとれて、自由に活動ができる。一度味わったら、手放せない心地よさです」(まいさん)
デザインへのこだわりを詰め込んだキマさんは「改善したいところはない」と言い切ります。ただ、購入したハイエースは二駆だったので、今後の旅のバリエーションを増やすべく「次に買うなら4WD(四輪駆動)車にしたい」と、“二代目”を見据えているようです。
「クルマとともに海外旅行にも出かけたい。安全に、どんな道も進めるように4WDのクルマで行けたら最高ですね。でも、まいちゃんは『DIYはもうやり切った』と言っているので、次の改装はワンオペになりそうです」(キマさん)
取材中も終始、笑顔が絶えない仲良しなふたり。“二代目”があるのなら、次はどんな空間を作るのだろう。ついつい、編集部の期待も膨らんでしまうのでした。
前編では、「そとのくらし」ふかや夫婦が教員を辞めてまでバンライフを始めたきっかけ、日本一周を中断している理由など紹介しています。是非、前編もご覧ください。
文/田中 瑠子
写真/やまひらく
編集/くらしさ(TAC企画)
撮影協力/アスパイヤの森