かわいいけれど本格派! 還暦夫婦の車中泊バンカスタム

車内でリラックスするふみさんとよっこさん

ワーゲンバス風のイエローボディ、かわいいセンスでまとめられた温かみのある内装、極寒から猛暑まで対応できる本格装備。還暦を迎えたfumiさん&yokkoさん夫婦の「ノエル号」は、節約と投資のメリハリが効いたカスタム車です。体力が落ちていても心ゆくまで遊べるように快適性も追求。「時間はもうそれほど残っていないから、やりたいことは今やり尽くす!」と語る60代夫婦の、オールシーズン対応のクルマづくりの全貌とは? 60代からの生き方の参考になりそうな車中泊スタイルをお見せします!

 

ふみさんとよっこさん

fumiさん・yokkoさん
奈良県在住。夫fumiさんは2020年、妻yokkoさんは2022年にそれぞれ58歳で早期退職。コロナ禍にfumiさんがソロキャンプを始め、2022年にボンゴを購入して車中泊仕様にカスタム。夫婦で車中泊スタイルで、北海道一周をはじめ、2年で3万kmを走破。2024年に岐阜県ひるがの高原に別荘を購入しDIYや畑仕事に勤しむ。
Instagram(fumiさん): @fumi3798yy
Instagram(yokkoさん): @yokko7393

目次

 

見た目も大事。中身はもっと大事

「いつかじゃなくて、今すぐ楽しむ!」をモットーに、早期退職後の第二の人生を歩み始めたfumiさん&yokkoさんご夫婦。4WD(四輪駆動)のマツダ ボンゴバンを手に入れ、3カ月で完璧ともいえる車中泊仕様へのカスタムを完成されました。

岐阜県ひるがの高原の別荘前に停まる黄色いボンゴバン『ノエル号』

白と黄色のツートンカラーに塗り分けたマツダ ボンゴバン

外装はあまり見ないマスタード系のイエローカラー。マスキングテープで丁寧に養生し、二人で協力しながら下半分を塗装したそうです。

ボンゴを塗っている様子

使ったのは、DIY愛好家の間ではお馴染みのタカラ塗料。「スプレーガンを使ったから、私でもきれいに塗れました」とyokkoさん(写真提供:fumi&yokko)

ワーゲンバス風にカスタムしたフロントグリルのNエンブレム

車名の「ノエル号」は亡くなった愛犬ノエルの名前から。「エンブレムのNはワーゲンバスの真似をして作りました」とfumiさん

鏡のように光るタイヤホイール

書籍『VAN LIFE(バンライフ)』に掲載されていたワーゲンバスからアイデアをもらって、ホイールは鏡面仕様にカスタム

内装の改造では、まずは鉄板を剥き出しに。その後、制振シートを貼り、続いて耐熱塗料を塗装。さらに、-15度まで耐えられる断熱材を全体に入れていきました

断熱材をバックドアにも施工

バックドアの内側にも断熱材がぎっしり

一方、内装の色彩やインテリアなどコーディネート面はyokkoさんが担当。

ガーリーな雰囲気の車内インテリア

ホワイト×イエロー×ブルーの3色でコーディネートされた車内

温かみのある印象は、たっぷりと使われている木材によるものです。これらの材料の入手の際は、奈良在住という地の利を最大限に活用したんだとか。

「吉野杉の産地が近いため、端材を格安で入手できるんです。使っている板は、どれも数百円レベル。入手したときは汚れていても、やすりをかけたり、ペンキを塗ったりすれば、十分きれいになります」(fumiさん)

天井には吉野杉を用い、白いペンキで塗装。木目がきれいに出ているのは、サンドペーパーで削ったためです。

木目が美しい天井に、小型プロジェクターも設置

ペンキを塗った上から削ることで経年変化も演出。天井に付いているのは映画などを投影できるプロジェクター

車内の壁面に使われている穴の開いた木材も、驚きのリサイクル品。なんとベビーベッドの底板でした。

ベビーベッドの底板を再利用した車内の壁

ノエル号の壁に生まれ変わったベビーベッドの底面

「ベビーベッドはジモティーで見つけて、無料で譲り受けました。買ったら2000円はしますから、お得でしたね」(fumiさん)

こうした節約の甲斐あって、内装のインテリア部分にかかった費用はなんと10万円ほどというから驚きです。

吉野杉の端材で作った手作りの収納スペース

バックドア側上部の収納棚も、もちろんDIYによるもの

「最初は、背丈ぴったりのサイズで家具を作りました。でも、実際に使ってみると圧迫感がすごくて……。そこで気づいたのが“遊び”の必要性。高さを1cm下げたり、角を削ったりして作り直しました。たった1cmでも、狭い車内では大きな違いを生むんです」(fumiさん)

1cm単位で調整した圧迫感のない車内空間

実は棚の一部を削ることで、身長の高いfumiさんが心地よく過ごせるスペースを確保

車内でお茶を入れる二人

テーブルモードの車内で向かい合ってティータイム

こうした細かい設計で、夫婦共に快適に過ごせる車内空間ができました。

 

車中泊を快適に過ごすための設計

限られた車内で車中泊していくには、寝食の切り替えも大切になります。「では、就寝モードに変えますね」とfumiさん。テキパキと動き出すと――。

テーブルを外しているfumiさん

就寝モードへの切り替え。まずはテーブルとテーブル脚を外して……

ベッドの床板をはめ込む様子

テーブルの天板をベッドの底面としてはめ、分割されたマットを敷き詰める

身長に合わせて延長できるベッド構造

fumiさんのベッドは荷物入れを活用して延長し、180cmの奥行きを確保

就寝モードの車内。二人が快適に眠れる広さ

布をかければ、二人が快適に眠れる広さのベッドが完成!

わずか数分で、車内がベッドルームに早変わり。しかも、それぞれの身長に合わせた、オーダーメイド仕様です。

一方、運転席の後ろには、DIYで設置した棚があります。そこには給排水の整ったシンクまで!

電子レンジや炊飯器といったキッチン家電が並ぶ収納棚

電子レンジや冷蔵庫、炊飯器といったキッチン家電も完備

排水タンクは10リットルのコンパクトサイズを採用

排水タンクは小さめの10リットルを採用

「出発前は、排水ケースは空にせず、キッチンハイターを濃い目に溶かした水を入れておきます。こうすることで、水が腐りにくくなり、ぬめりや悪臭も出にくくなるんです」(yokkoさん)

バンライファ―にとって排水問題は悩みの種の一つ。fumiさんとyokkoさんも長い車中泊旅をするなかで、道中臭いを気にすることなく、自宅に戻ってから排水処理できるようにと考えついたバンライフハックの一つです。

 

夏の暑さも冬の寒さも疲れ対策も

fumiさん&yokkoさん夫婦にとって「夏も冬も楽しい遊びの季節!」そう言い切れるのは、徹底した暑さ寒さ対策があるから。断熱材を奮発したfumiさんは、さらなる秘密兵器を導入しています。

 

暑さを和らげる「ポータブルクーラー」

まずは、夏の暑さ対策を見せていただきましょう。fumiさんがおもむろに設置し始めたのは「ポータブルクーラー」です。

車外に吊るすポータブルクーラーの設置準備

大きなマシンとダクトホースが登場し……

車外に吊るされたポータブルクーラー

ポータブルクーラーが設置完了! 高額なので南京錠をかけて盗難防止

一般的には、風雨を避けるために車内に設置するポータブルクーラーですが、「本体が熱いんですよ。だから停車して使用するときは外に出しちゃいました」。常識を覆すfumiさん流の発想ですが、当然雨の日にはシートをかけているそうです。

窓にはめ込むダクト用の自作板

ダクト部分をくりぬいた板を窓に取り付け、冷たい空気だけを車内に取りこむ

「去年の真夏に名古屋の街中で一晩使いました。めちゃくちゃ涼しいというほどではないけど、除湿してくれるので、湿気がないから涼しく感じるという感じですかね」(fumiさん)

 

寒さをしのぐ「FFヒーター」

続いて、冬の寒さをしのぐ秘密兵器が登場。それが「FFヒーター」です。

車外に設置されたコンパクトなFFヒーター本体

サイドのスライドドアを開けたステップに置かれたコンパクトなFFヒーター。ダクトホースをつなぐことで暖気口を自由に移動できる

この「FFヒーター」とは、吸排気を車外で行うヒーターのこと。サブバッテリーから電力を得て、灯油を燃焼させる仕様です。

スイッチを入れてもらうと、車外にほんのりと漂う灯油のにおい。でも、車内では無臭のまま。暖かさだけを車内に届ける、理想的な仕組みです。

「通常は5kwのサイズが多いのですが、これは2kwでコンパクトだからちょうどこの隙間に置けるんです。価格は約1万円と格安でした」(fumiさん)

温度設定もできるFFヒーターのコントロールパネル

寝ながら操作できる車内側面部にスイッチを設置。細かい温度設定も可能

北海道を1カ月ほど旅したときも、このFFヒーターが大活躍だったと言います。

「旅の間に使った灯油は10リットル未満と燃費もよく、ポカポカと暖かく過ごしました。ただ、中国製ということでカスタマーサポートも中国語。僕は前職の関係で中国語ができたのでメーカーに聞きながら設置したのですが、ちょっと苦労しました」(fumiさん)

 

還暦夫婦のバンライフの過ごし方

長旅になるときは、完全に車中泊。テントは張らず、タープと椅子を出して外でご飯を食べるのが楽しみだそう。今回はいつもの旅先の食卓を、庭で再現してくださいました。

電子レンジで温めた即席ハンバーグの包みを開くyokkoさん

ハンバーグを電子レンジで温めてアツアツに

別荘の庭に張ったタープの下で食事を楽しむ夫婦

庭に張ったタープの下で「いただきます!」

地元の食材を調達して食べるのも旅の醍醐味の一つ。ガイドブックに載らない、地元の魚屋さんや八百屋さんが大好きなのだそう。

「北海道で、サンマの干したものがたくさん入って1パック100円で売られていたのにはびっくりしました。ホタテやカニも驚くほど安くて楽しかった! 私が『今日はここに行きたい!』と主張すると、主人が天気やスポット情報を調べて、『今日は天気がこうだからダメ』とか『そっちは暑いからあっちにした方がいい』とか総合判断してプランを立ててくれます」(yokkoさん)

yokkoさんは希望を言う係。fumiさんは実現する係。「性格も正反対だし、ケンカすることも多い」と言いますが、とってもいいコンビです。

バンライフをスタートし、4WDのボンゴで走った距離は2年で3万km。北海道、九州、四国――日本中を走り抜けたのち、最近は涼を求めて岐阜の高原に別荘を購入し、畑仕事も始めました。

還暦を迎えたからこそ、やりたかったことは全部やり尽くす、そのために全力投球するfumiさん&yokkoさん夫婦。節約しながらかわいいインテリアを叶え、命を守る装備へのお金は惜しまないメリハリの効いたクルマは、本格的なアウトドアをいつまでも楽しむための心強い相棒に見えました。

年齢を言い訳にしない生き方で、いくつになってもまだ見ぬ景色を目指して走り続ける。そんな二人のスタイルは新しい時代の老後を楽しむ大きなヒントになりそうです。

 

前編はこちら

文/矢口 あやは
写真/やまひらく
編集/くらしさ(TAC企画)