
愛車「白くま」に乗って全国を旅するイラストレーター・いとうみゆきさん。都心からでも3時間ほどで行ける「長野県」を舞台にした旅もついに最終回を迎えます。最後の目的地は「千畳敷カール」。高低差日本一のロープウェイに乗り、山頂からの大絶景を目指します。
▼プロフィール

- イラストレーター いとうみゆき
- 埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
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- Instagram @nmoytke
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目次
旅の終わりを記念する、大絶景を目指して

遠くの空が明るくなって、朝が近づいていることを知る。
朝日を目指して走る早朝ドライブは、目まぐるしく変化していく空模様が楽しめます。山と町を分断するように流れる雲の線が、スクリーンに映った光のように揺らいでいました。
時折、クルマとすれ違うだけの静かな道を一人、ただ進んでいく。
瞬間、いや違うな、私には道連れがいるんだった……と思い出します。
そう、私には相棒がいる。話しかけてはくれないけれど、いつもそばにいてくれている「白くま」が。
朝日が顔を出すまであと少し。目的地はもうすぐそこまで迫っています。

①中央アルプスを望める絶景ドライブコース ビーナスライン・美ヶ原高原

一日のはじまりは朝日から。
遠くに富士山やアルプスの山脈が映える、ビーナスライン富士見台駐車場に辿り着きました。

朝一番の光と色って、どうしてこんなに幻想的で美しいんだろう。
まだ布団の中にいる人も多いであろう朝6時、ここに集まった人たちだけが共有できるこの朝の色。流れていく雲の荘厳さ。
外にはこんなに綺麗な景色がありますよ〜! って、布団にくるまっているみんなに教えたくなるくらい、素敵な景色がここにありました。

朝の高原は想像以上に寒くてあっという間に身体が冷えてしまったけれど、大丈夫。
こういうときのために、白くまキッチンの引き出しにはお湯で簡単に作れる飲み物やインスタントスープがたくさん入っているのです! どれも旅先で集めたもので、道の駅などで見つけるたびにどんどん増えています。

少し移動して、オニオンスープを飲みながら完全に朝が来るのを待つことに。
朝からIHや鍋を準備するのがちょっと手間だから、電気ケトルを導入してもいいかも。

太陽が昇り、気温が上がってきたら早速出発。
ここは高原のドライブが気持ちいい「ビーナスライン」。
長野県茅野市から松本市の美ヶ原高原まで続く全長75.2kmのドライブロードです。
(※冬期は通行止めとなりますのでご注意ください)

ビーナスラインのホームページ曰く、「あえて駆け抜けることをせず、車から降り、各地域に滞在して、四季折々の自然と一つになる」。
まさに私たちの得意分野!
寄り道しながら今日も楽しんでいきましょう!

まずは霧ヶ峰の主峰、車山へ。
日本百名山のひとつで、頂上まで登って下りるだけなら早めに歩いて往復1時間ほどで楽しめます。

標高1,925mの山頂からは一面に広がる草原と北アルプス、八ヶ岳を見渡すことができました。ロープウェイもあるようなので、歩くのが苦手でも気軽に訪れられる絶景ポイントです。
休日だったこともあり麓の無料駐車場がほぼ満車だったので、混雑を避けるなら早めの到着がオススメ。

次は「八島ヶ原湿原」の遊歩道へ。
1万年をかけて形成された泥炭層を持つ場所で、泥炭が積み重なり、ミズゴケに覆われるようになった高層湿原のひとつでもあるそうです。
秋色の湿原と、青空をそのまま写したような池の水面が美しくて、いつまでも散歩していたかったな〜。

ビーナスラインをさらに進むと、「美ヶ原高原」に辿り着きました。美ヶ原高原は標高2,000mに位置する日本一広い高原台地!
とっても寒かったので道の駅でほかほかのおやきとホットコーヒーをゲットし、北アルプスや八ヶ岳、鹿たちを眺めながら休憩しました。
道の駅からは屋外美術館「美ヶ原高原美術館」に足を運ぶこともできます。

広い空と山々をバックに彫刻作品を眺められる、高原ならではの芸術鑑賞はとても贅沢な気分に浸れます。

そういえば、一年前の私たちは新潟県の海沿いで夕日スポットを巡る旅をしていました。
一年後の私たちはどこを走っているんだろう? いつだってどこだって、行きたい場所に連れていってくれる白くまとの旅が、これからも楽しく続いていきますように!
そう願いながら、ビーナスラインを後にしたのでした。
住所:長野県上田市武石上本入美ヶ原高原
TEL:0268-86-2331(冬季:12月~3月は0268-85-2111 )
営業時間:9:00~17:00(入場は16:30まで)
開館期間:2025年度は4月26日(土)~11月3日(月)の予定
※冬季は休館
URL:https://www.utsukushi-oam.jp/
②地元のものをたくさん手に入れよう 産直市場グリーンファーム
一気に南下し、ずっと気になっていたお店「産直市場グリーンファーム」へ。
ここは地元の名産、古いものなどが集まり、さまざまなものが販売されている産直市場です。

まずはいつも通り、地元で採れた食材を買い込みました。だけど、ここはこれだけじゃ終わりません。

外に出れば生き物がたくさん! これが産直市場グリーンファームの魅力です!
飼育員さんに尋ね、買ったばかりの青梗菜を動物たちにプレゼントしてまわりました。

さらにリサイクルコーナーでは理科室の椅子、地球儀、古いフィルムカメラを購入。
フィルムカメラには、「使えるのかはわかりませんが、どうか使えますように!」と願いながらちょうど持っていた古いフィルムをセットしました。
旅先で購入したもので、旅の記録が撮れたら楽しいだろうなあ。

最近はシンプル傾向だった白くま部屋が、ちょっとだけ賑やかになりました。
住所:長野県伊那市ますみヶ丘351-7
TEL:0265-74-5351
営業時間:夏季(4月~10月)8:00~19:00、冬季(11月~3月)8:00~18:00
定休日:元日
※ポポー、松茸、大スズメバチなどは季節もののため、販売時期が限られています
URL:https://green-farm.asia/
③お出かけのためのキャンプ飯弁当作り 宮田高原キャンプ場
デイキャンプのために向かった「宮田高原キャンプ場」は標高1650mに位置するキャンプ場。

木々でいっぱいの林道をぬければ、そこは美しい高原!
真っ青な空は広くて、木々の合間に小屋が立っていて……まるで絵本の世界のようでした。

ここまでの道中で手に入れた食材を使って、明日向かう千畳敷カールのためにお弁当を作ります!

キノコを買い忘れたり、栗の茹で時間が思ったよりも長かったり(30〜40分くらい)、油が切れたり……終始ドタバタのお弁当作りでした。
それでも新鮮な食材のパワーを信じてとにかく手を動かすこと1時間半、お弁当がなんとか完成しました!

たまご焼き、この近辺で生まれ育った豚肉で作ったソーセージ、新鮮な野菜と果物、そして栗ごはんを詰め込みました。
長野県産の食材だけで作ったお弁当です!

白くまキッチンで料理をすることは何度もあったのですが、今日はやけに気持ちがいい料理体験になりました。天気が良くて空気がおいしい高原パワーのおかげかな。
人があまりいないタイミングだったので、キャンプ場を一人占めできたような気がしてテンションが上がっていたのかもしれません。白くま青空キッチン、楽しかったな〜!

自然の中にあるキャンプ場ながらきれいな炊事場やトイレ、シャワーが完備されていて、周りの山散歩も魅力的な、最高のキャンプ場でした。デイキャンプだけじゃもったいない! 次に来るときは数日過ごしてみたいです。
住所:長野県上伊那郡宮田村4746-1内
TEL:0265-85-2683(管理棟)、0265-85-5864(宮田村役場産業振興推進室商工観光係)
営業期間:5月1日~10月31日(林道の状況により変更の可能性あり)
URL:https://kankou.vill.miyada.nagano.jp/camp
④高低差日本一のロープウェイに乗って絶景散歩へ 千畳敷カール
夜、近くの温泉に寄ってから千畳敷カール行きのバスが出ている「菅の台バスセンター駐車場」へ(千畳敷カールまでは車両規制がかかっているので、「菅の台バスセンター駐車場」に停め、路線バスで「しらび平駅」まで向かい、そこからさらにロープウェイに乗る必要があります)。
ここは約300台が収容できる駐車場ですが、ハイシーズンはすぐに満車になるため前泊をする人も多いといいます。
ということで、私もそれにならって車中泊。特に予約はいらず、好きな場所に停めて車中泊をしていいそうです。

駐車場での車中泊は基本的に寝るだけ。来る途中で汲んできた湧水でお湯を沸かし、ラーメンを食べたら、トイレで歯磨きをして就寝!
フリーWi-Fi、水洗トイレと手洗い場がある、便利な車中泊場でした。地面がフラットだからクルマが傾くこともなく、寝やすいところも高ポイントです。

そして翌日。
目覚ましをかけていた時間より随分前に賑やかな声に起こされました。
カーテンを開けて外を見ると、そこにはバス停に並ぶ超超超長蛇の列! まだバスの出発時刻の40分前だというのに! 慌てて準備をして、列に並びます。
ここからはバスとロープウェイを乗り継いでの旅。白くまは駐車場で留守番です。
狭い山道をするする登るバスに揺られ森のドライブを楽しんでいたら、あっという間にロープウェイの駅へ。

日本一の標高を誇る「千畳敷駅」までは約7分30秒の天空旅です。

そしてロープウェイを降りればそこはもう別世界!
山の上にたどり着いていました。
ここは標高2,612mの絶景スポット、「千畳敷カール」。氷河時代に形成された半円状の窪地「カール地形」が畳1,000畳分の広さを有していることから「千畳敷」と呼ばれるようになったそうです。
木曽駒ヶ岳や宝剣岳など、中央アルプスへの本格的な登山ルートに進むこともできますが、私は景色や池を楽しめる初心者向けの遊歩道へ。

30分強で回れる遊歩道だったので、右回りと左回りを両方楽しみ、壮大な景色を一望できるビュースポットで昨日作ったお弁当を食べ、思い切り満喫しました。

360度、どこを見渡しても最高の天気! 早起きしてよかった! こんな素晴らしい景色を味わえる場所にさくっと来られるなんて、白くまと公共機関のダブルタッグに感謝〜! とテンションが上がっていたのですが……。

たった20分ほどで、あたりはガスで一面真っ白に。山の天気はやっぱり変わりやすい。
車中泊して朝早くのバスに乗れたからいいものの、もしのんびりしすぎていたら、最高の景色を拝めずにいたかもしれません。
白くまで車中泊できたおかげです。白くま、本当にありがとう!

ちなみに、買ったばかりの古いフィルムカメラで撮った山はこんな感じでした。
期限切れのフィルムだったのと、巻き上げレバーが歪んでいてうまく巻けず、一度裏蓋を開けてしまったのでこうなっちゃったけど、これはこれで味があります。
あのカメラは白くまに住まわせて、今後もいろいろ撮ってみる予定です!
まとめ

帰り道、バス停に座り込んでいるバックパッカーのカップルを見かけました。その姿がなんだか懐かしくて、つい声をかけてしまいます。
まだ白くまに出会う前、私もそうだったから。
大きな荷物を抱えながら夜行バスで遠くまで出かけて、その先でたくさんの優しい人たちに乗せてもらって……ヒッチハイクで旅するので何日後に帰ってこられるかわかりません、なんて言って、バイト先の店長に驚かれたこともあったっけ。

だけど今の私には白くまがいます。
荷物をたくさん詰めて、時間を気にせず行動できて、いつでも眠らせてくれる白くま。帰りたくなったらいつでも飛ばしてくれる白くま!
バックパッカーの彼らは海外から来たカップルで、1カ月間、日本を旅しているとのこと。白くまに乗せてあげると、白くまをとても気に入ってくれました。白くまに知らない人を乗せたのは初めてのことだし、きっと白くまにとって初めての英語だっただろうな。
彼らはこれから登山をする予定だそうです。一緒に登ろうよ! って言われたけど、どうしても今日中に終わらせなきゃいけない仕事があったので断りました。
登山口で手を振ってお別れ。そして長野県ともお別れです。

急に一人になったらなんだかさみしくて、でも人と話せたことがうれしくて、そんな気持ちのままに音楽をかけてみました。
I Mean Usの「Søulмaтe」。車内に音楽が響き渡ると同時に、ドライブ風景が映画のように輝き出して、思い出します。ああ違う、これは一人と一台の旅だったな、と。

帰り道、いつものようにいい感じの場所に立ち寄って、ちょこっと休憩。
朝が来る前に起きて、きれいな景色を見て、好きな場所で過ごして、その場で会った人とお話しして、おいしいものを食べて、暗くなったらまた眠る。
好きなときに好きな場所に行って過ごせる白くまとの旅が、今日も私のお気に入りです。
さあ、次はどこへ行こうかな。そんなことを考えながら、長野の景色を目に焼き付けたのでした。
漫画/いとうみゆき
写真/いとうみゆき、瀬間瞳
編集/イガラシダイ、TAC企画