餃子というものがある。中国料理の一種で、歴史は古く三国時代の辞典「広雅」にも登場している。日本に伝わったのは江戸時代中期頃と言われるが、昭和初期までは人気はなく、第二次世界大戦後に急速に普及した。今では誰もが食べたことのある料理となった。
全国各地には有名な餃子屋があり、それぞれが特徴的で美味しい餃子を作っている。今回は餃子の専門家がオススメする1都3県の餃子を一皿に集結させて、最強の餃子定食を作ろうと思う。
目次
呼び出されて餃子
ある日「1都3県の餃子で最強の餃子定食を作りませんか」と連絡が来たとする。忙しい人は「そんな暇はない」と言うかもしれないけれど、餃子好きでほぼ無職だったら、それは素晴らしい提案だと飛びつくと思う。
そのような連絡を当サイトの編集部からいただき、私はお手本のように飛びついた。話を聞けば餃子の専門家にお持ち帰りできる美味しい餃子屋を聞いて、教えていただいたお店にクルマで向かうとのこと。餃子とクルマの運転が好きな私にとってはちょうどいい企画だ。
- 小野寺 力(おのでら ちから)さん
- 一般社団法人焼き餃子協会の代表理事・ギョーザジョッキー。
2013年から全国から取り寄せた餃子を焼いて食べるイベントを主催。全国の逸品餃子の紹介と、家庭でも簡単に美味しく焼く技術の普及に努める。
一般社団法人焼き餃子協会HP: www.gyoza.or.jp
自分で焼くことに意味がある。腕がなるではないか。私は料理が好きなのだ。餃子職人との共同作業。それは結婚式のケーキ入刀を彷彿とさせる。私は結婚の予定もないので、結婚式のテンションで餃子職人との共同作業を行いたい。
その後、小野寺さんから1都3県それぞれでオススメのお持ち帰りできる餃子屋の詳しい情報をいただいた。それぞれのお店同士は離れているけれど、なんせこの旅の相棒はフィット。実は私の実家のクルマもフィットである。乗り心地がいいフィットがあれば1都3県なんて全然余裕なのだ。
千葉県:行徳昇龍浦安店
お持ち帰り餃子千葉県代表は、「行徳昇龍 浦安店」。昭和50年に行徳に誕生した中華料理店の「行徳昇龍」が、2020年12月に浦安で生餃子テイクアウト専門店をオープンさせた。それがこちらのお店。
餃子屋と言われなければわからないオシャレな外観のお店だ。本店で出している「紺巻」という餃子はもちろん、青紫蘇を使った「緑巻」、フカヒレの入った「金巻」などのオリジナルの餃子もあり、全部で5種類の餃子をテイクアウトすることができる。
店内は一部がガラス張りになっており、餃子作りの様子を見ることができる。また紺巻のみ店内で焼いてもらうことも可能だ。ただ今回は緑巻を買ったし(紺巻も買ったけど)、小野寺さんの言うように餃子職人との共同作業を私は求めているので、普通にテイクアウトをした。
幸先のいいスタートが切れた。次は千葉県の上、埼玉県の餃子屋さんへと向かおう。
行徳昇龍浦安店
住所:〒279-0002 千葉県浦安市北栄4丁目20−20
営業時間:11:00~20:00
電話番号:047-323-6730
埼玉県:餃子のヨコミゾ 三条町店
埼玉県代表として小野寺さんにオススメしてもらったのが「餃子のヨコミゾ 三条町店」。ヨコミゾは埼玉県内の給食や生協にも餃子を卸しており、埼玉県人は知らず知らずのうちに口にしている餃子メーカーだ。そんな餃子屋の直売所がさいたま市西区の三条町にある。
餃子工場の横にあるこの直売所。もう、それだけで美味しそうに感じる。化学調味料や保存料を一切使わず、国産の豚肉と野菜を使い作られているそうだ。いろいろな餃子があり、餃子女子の玉木ちはるさんがプロデュースしたタデ藍入りの「藍♡餃子」も売り出している。
ただ今回は「おおみやジャンボ餃子」をオススメしてもらった。一粒一粒を手作業で包むモチっとしたジューシーなジャンボ餃子。手で包むのは機械で包むと餡がペースト状になり肉汁が出てしまう。旨みが出てしまうのだ。そこで手包みということなのだ。
1カ月で約10万粒を手包みで作っているという。10万粒である。気が遠くなるけれど、見た目からして美味しそうだ。創業60年、OEM・PB商品を含む商品数は140点。全てを食べるにはたいへんな数だ。いつか埼玉県民になった暁にはチャレンジしてみたい。
さてさて、次は南下して東京都に向かおう。東京代表の餃子。どんなシティボーイが待っているのだろうか。
餃子のヨコミゾ三条町店
住所:〒331-0056 埼玉県さいたま市西区三条町75番地
営業時間:9:30〜18:00(金・土・日は19:00まで営業)
定休日:年末年始
電話番号:0120-593-534(平日9:00~17:00)
東京都:餃子の金猫 大森本店
東京のオススメお持ち帰り餃子は「餃子の金猫 大森本店」。2020年9月にオープンしたお店。まずお店の看板を見て驚いたのはその値段だ。40個で1080円。安い。
この餃子の金猫、もともとは居酒屋などで餃子を出していたそうだ。また今後は餃子の自動販売機を設置していくとのこと!コーラを買う感じで餃子を買う時代の到来である。また金猫タレ、酢醤油タレ、ラー油入りタレの3つから選べるのが面白い。オススメは金猫タレだ。
小野寺さん曰く「ここの餃子はとてもスタンダードな餃子です。餡のシャキシャキ感も残っていてすごく美味しい」とのこと。期待できるではないか。
これまで3軒の餃子を買ってきたが、信じられないことにまだ一回も食べていない。4種全てを揃えてから食べるためだ。残るはあと1軒、神奈川県の餃子である。最強の餃子定食の完成は近い。
餃子の金猫 大森本店
住所:〒143-0023 東京都大田区山王2丁目2−11
営業時間:平日・土 10:00~21:00 日・祝日 10:00~20:00
(翌日が休日の場合、日・祝日の営業時間は10:00~21:00)電話番号:03-3774-1485
神奈川県:公珠
神奈川でオススメしてもらったのが「公珠」というお店。今までの3軒はテイクアウト専門店だったけれど、こちらは店内で食べることもできる。とはいえもちろん今回はテイクアウトをする。私はあくまで餃子職人との共同作業がしたいのだ。
横浜中華街で30年の経験の後に2017年にできたこちらのお店。飲食店と食品製造工場を併設しており、その餃 子を買うことができるのだ。ニンニク入りの「金餃子」、ニンニク無しの「銀餃子」があり、明日葉餃子や桜えび餃子もある。
そんな中で今回買ったのは「6倍金餃子」。ニンニクが通常の金餃子の6倍なのだ。つい最近までは5倍だったけれど、オープンから3年10カ月を経て、6倍になった。このペースでいくと、10年後には15倍、50年後には75倍になっている。餃子にニンニクは正義。食べるのが楽しみだ。
餃子・ワンタン 公珠
住所:〒232-0053 神奈川県横浜市南区井土ケ谷下町37−6
営業時間:ランチ 11:30~15:00
ディナー 15:00~23:00(L.O.22:00)
テイクアウト電話受付 11:30~22:00
※自粛期間中は11:30~20:00(L.O19:00)
※水曜日は18:00~23:00での営業定休日:不定休
電話番号:045-298-9091
まだできない最強餃子定食
これで1都3県の餃子が揃った。移動にはなかなかに時間がかかったけれど、これらが一堂に会することはなかなかないので、餃子好きとしては嬉しい。焼く前からもう美味しいとわかるのだ。これだけ揃うと重いけど、この重みが美味しさなのだ。
さて、それでは早速調理に移りたいと思う。しかしキッチンスタジオの駐車場に着くと、編集部スタッフが不穏なことを言い出した。
「行かないよ」という私の声は、誰にも届かなかったようで、4時間後、私は日本海を見ていた。朝は太平洋を見ていたのに。あと日本海を見ていた、と書いたけれど、真っ暗だからもはや海なのかもわからない。
新潟に来たからと言って、その辺に米があるわけではなく、ただただ暗い海を見ていた。
最強の米を手に入れる
新潟で一泊して起きると、素晴らしく晴れていた。昨日の私は、翌朝の自分が新潟でこんなにも青い空を見ているとは思っていなかった。昨日見た新潟は、暗い海だけだった。朝起きて初めて、新潟に来ているんだと実感がわいた。
フィットを1時間ほど走らせて魚沼にやってきた。魚沼と言えば「コシヒカリ」だ。誰もが知る魚沼産コシヒカリ。食味ランキングで、最上位である「特A」を取っている。問題はここまで来たけれど、田んぼには全く、もう全くお米の雰囲気がないことだ。
ちょっと考えればわかることなのだ。お米の収穫は超早場米でもない限り、秋なのだ。田植えはもちろん、田起こしすらまだ行われていない。餃子と違い、年中いつでもではないのだ。
田んぼはまだだけれど、魚沼でコシヒカリを生産する渡邉さんにお話を聞くことはできた。渡邉さんは20歳の頃からここでコシヒカリを作っている。魚沼ブランド認証のモチモチ食感が自慢のコシヒカリだ。
イメージする田植えは苗を植えていくけれど、渡邉さんは「水稲直播栽培」でコシヒカリを作っている。苗ではなく、種を直接田んぼに植える方法だ。本来は苗を別の場所で育て、田んぼに植えるけれど、直接種を田んぼに植えるので、苗に植え替えのストレスを与えることなく、深く根を張り旨みと甘みがたっぷりのコシヒカリとなる。
そもそも魚沼は谷川連峰を源にする魚野川が流れる。水が綺麗と言うことだ。また昼夜の寒暖差も大きい。この2つが旨味と甘味をお米に与える。そして、渡邉さんのこだわりが、最高のコシヒカリを産むのだ。
話を聞けば聞くほど、稲が育っているところを見たいと思う。お米の生産者を訪ねて、全く稲の雰囲気がない写真がここまで続くって、コンテンツ史上見たことがないから。渡邉さんは種まきは5月からと言っていた。やはり我々は訪れるのが早すぎた。なぜもう少し待てないのか。
最強を作る
千葉、埼玉、東京、神奈川を代表するテイクアウト餃子と、魚沼の中でも美味しいお米と水が揃った。早速作ろうではないか。チラッと編集部スタッフの方を見たけれど、新たに何かを提案してくる気配はなかったので、これで材料は揃ったということだ。
続いては餃子。フライパンを温め、油を引いて、餃子を並べる。焼き色がついたら、水を入れてアルミホイルで蓋をして蒸す。水がなくなれば、ごま油を入れて、さらに少し焼けば完成だ。10分くらいでできる。1都3県の餃子職人と私の10分間の共同作業。
餃子を焼き始めると私の後ろにフィットが配置された。風を避けるためだ。フィットには移動するだけではなく、風を避ける機能もあるのを知った。
最強をいただく
完成した餃子定食は、食べる前から「最強」と言ってもいい雰囲気を放っていた。オーラがあるのだ。
こんな最高なロケーションで餃子を食べたことがない。テイクアウト餃子だからこそ実現できる景色だ。そういう意味では編集部スタッフにありがとうと言いたい。餃子は当然美味しく、小野寺さんが言うように、何もつけなくても、むしろ何もつけない方が餃子本来の力を感じることができ、ご飯もバンバンに進んだ。
千葉代表「行徳昇龍浦安店」は、さわやかなアクセントの紫蘇の風味が素晴らしかった。あっさりでありながら、肉汁をしっかりと感じることができる。なんだかとてもおしゃれな餃子だ。美味しい。
埼玉代表「餃子のヨコミゾ 三条町店」は、まさに王道の味。少年誌で言えばジャンプ。ジャンプで言えばワンピース。ワンピースで言えばルフィだ。肉の旨みをしっかりと感じる。餃子の王道がここにある。美味しい。
東京代表「餃子の金猫 大森本店」は、食感はフワフワしているけれど、具にパンチを感じる。40個1080円だし、80個は食べたくなるような、飽きのこない餃子だ。ずっと食べていたい。美味しい。
神奈川代表「公珠」は、さすがの6倍ニンニク。ニンニク好きとしては最高の一品だ。そしてちゃんとニンニクに負けない肉の味も感じられる。美味しい。
そして新潟代表「魚沼特選」は、甘いお米の旨みとモチモチ食感がたまらない。これぞ本物の魚沼ブランド。パンチのある餃子の旨みが口中でご飯の旨みとマリアージュされ、至福の時間が訪れる。美味しい。
お米が進むこと、進むこと。餃子にはビールな気もするけれど、私はご飯派。お米が輝き、餃子が輝き、もう言うことがない。素晴らしいロケーションの中、あっという間に完食してしまった。実は渡邉さんのお米はネットでも買うことができるのだ。わざわざ新潟まで来なくてもよかったかもしれないと思ったことは胸の内に秘めておくことにする。
特産魚沼株式会社
住所:〒949-7421 新潟県魚沼市吉水880番地
電話番号:025-794-3698
最強の餃子定食が作れた
何を持って最強とするかは難しいところだけれど、今回の餃子定食は最強だった。だって美味しいんだもん。もっと食べたい、もっと食べたい、となるのだ。共同作業の賜物。餃子もそうだし、お米も私が炊いたので共同作業。共同作業が幸せを生むのだ。
そうか。だから我々は、結婚式でケーキ入刀をするのかもしれない。