静岡県浜松市の代表的なお土産である「うなぎパイ」。夜のお菓子として知られるこの「うなぎパイ」の県境はどこにあるのでしょうか。東名高速を使って徹底的に調査してみました。
▼書いた人
- pato
- テキストサイト管理人。テキストサイトを運営する傍ら、様々なメディアにコラムやエッセイ、旅行記、検証記事を寄稿する。狂気じみた過酷な取材と、常軌を逸した長文の記事で多くのバズを生み出すWeb記事モンスター。
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目次
うなぎパイファクトリー
本日は、静岡県浜松市にある「うなぎパイファクトリー」に来ています。
東京から浜松までは高速道路で4時間くらい、朝8時に中野を出発したのにもうお昼ですよ。
ここは静岡の、特に浜松のお土産として知られるうなぎパイの製造工程を見学できる場所です。平日の昼間だというのに多くの人が見学に訪れています。
さて、なぜこのような場所に連れてこられたのでしょうか。確かにうなぎパイの見学ができるのはうれしいのですけど、東京から4時間ともなると、なかなか来ようという気にはなれません。そう、連れてこられたのです。何も分からないうちに連れてこられたのです。一体、なにが起こったのでしょうか。
編集部
patoさん、こんにちは。前回は桔梗信玄餅の記事をありがとうございます。
pato
ああ、あれですね……。検証系の記事ではなく、工場見学の紹介記事だとワクワクしていたら、県境を検証させられたやつ。
▼桔梗信玄餅の県境はどこにあるのか、山梨から東京に向かってSA・を調査する検証記事
編集部
前回のこちらの記事がとても好評でして……。
pato
ありがとうございます!
編集部
我々、すっかり味を占めてしまいまして……。
pato
味を占めるな。
編集部
今回は浜松の銘菓うなぎパイでその県境を探ってもらおうと思ったのです。
ということで、完全に味を占めてしまった編集部により、4時間かけて浜松市まで連れてこられたというわけです。どうかしてる。
うなぎパイとは、春華堂が製造・販売する洋菓子で、静岡県浜松市の名産品として高い人気を誇っている。ウナギのエキスをパイ生地に練りこんで焼き、最後にたれを塗って仕上げたもので、「夜のお菓子」というキャッチフレーズで親しまれている。
ここ、うなぎパイファクトリーはうなぎパイの製造工程を見学できる新工場として2005年4月に浜松工業団地に開設された。
平日の昼間であっても家族連れやカップル、団体客までやってきてけっこうな賑わいを見せている。ちなみに工場見学は無料。
ちなみに工場見学記念に特別パッケージのうなぎパイがもらえる。なかなか太っ腹。
編集部
さあ、それでは工場見学に行ってみましょう!
うなぎパイが焼きあがる工程が小さな窓からのぞけるようになっている。そこではロボットが繊細に動きながらタレを塗りたくっていた。
編集部
patoさん、めちゃくちゃジッと眺めてますね。
pato
うなぎパイを食べたことある人なら分かると思うんですけど、うなぎパイってめちゃくちゃ壊れやすいんですよね。ですからそれを扱うロボットもかなり繊細に動いている。
製造工程はかなり繊細なので、ロボットが入って自動化されている部分がありつつも、最終的には人の手が入る場面が多い。
pato
たぶん、ここでちゃんと焼きあがっているか見極める必要があるので、ここには職人級の人が配置されているはずです。
pato
この工程、ずっと見てられる。
30分経過。
編集部
(本当にずっと見ているよ。なんなんだよこの人……)
pato
この工程ずっと見ちゃうな。この後の行程で包装されるんですけど、流れてくるうなぎパイを包装しやすいようにロボットが1列に並び変えているんです。ただ、壊れちゃまずいから、あのアームがめちゃくちゃ俊敏に動きながら、かつ繊細に「うなぎパイ」を並び替えてるんです。
編集部
なるほど。
pato
ただね、あのロボット、こうやって見ていると、たまに諦めるんです。一列に並べる場所に空きがないのか、処理するうなぎパイが大量に来ているのか、どういう事情があるのか分からないですけど、諦めるんです。そのままスルーしちゃう。スルーした「うなぎパイ」が貯まるとアラームが鳴って作業員の人が来るみたいですね。
その「諦め」がすごく興味深くて、だって、ロボットって基本的に命令に忠実じゃないですか。なにかを遂行させることは得意そうなのに、そこに「諦め」をどうやっていれているのか。
編集部
(なんだか面倒なことを言いだしたぞ……)
pato
その「諦め」って自我なんですよ。命令ではなく、自分の判断で諦めるわけですからね。つまりこの「諦め」によって次第にあの並べるロボットに自我が目覚めるわけです。それが最終的にはシンギュラリティを引き起こし、うなぎパイロボットと人間との最終戦争が引き起こされ、我々はロボットとAIに徹底的に管理される時代がやってくるのです。そうなったときにどう生きますか! ロボットの言いなりになるか、それとも反抗し、レジスタンスとなるか!
編集部
(めちゃくちゃ面倒な人だな……)
編集部
こちらでも包装された製品が割れたりしていないかチェックが入るみたいですね。
pato
みていると、けっこう弾かれている製品があるので、かなり繊細に作ってもそれでも割れたりするみたいですね。僕なんか、割れてるくらいなら普通に食べちゃいますけどそうはいかないんでしょう。
工場見学ゾーンが終わると、シアターみたいな場所がありました。その横に備えられた通路がなかなか興味深い。
編集部
patoさん、この細長い通路はなんなのかわかりますか?
pato
いや、単なる順路じゃないの?
編集部
なんと! ここは「うなぎの寝床」を模しているのです!
pato
なるほど。うなぎ尽くしなわけですね。
編集部
通路内では、クイズが出題されています。「夜のお菓子」というキャッチフレーズで有名な、その「夜のお菓子」とはどんな意味でしょうか。
pato
これは簡単ですよ。僕の大学時代の同級生に静岡出身の山村という友人がいましてね、そいつがことあるごとに言っていました。嘘だったら牛丼を奢るとまで言って豪語していました。
編集部
じゃあ、この問題は簡単ですね。
pato
製造工程にもあったように、うなぎパイにはウナギのエキスが混ぜられているわけですよ。ウナギといえば、こう精をつける感じじゃないですか。そう、精力がつくんです。そういう意味で夜のお菓子です。山村がそう豪語してました。
編集部
正解は、家族団らんのひとときに召し上がっていただきたい、という意味です。うなぎパイが販売された当初は高度成長期、労働時間が増えたり、共働きなどが増えてきたりして団らんの時間が失われつつありました。そこで、うなぎパイを食べて家族団らんを過ごして欲しい、そんな願いが込められています。こんな素敵な理由があるのに、なんですか、精力って? は?
pato
クソっ! 山村のヤロウ。
編集部
第2問です。うなぎパイに含まれる隠し味はなんでしょう?
pato
これも山村が豪語してました。合コンの席で豪語してました。答えは同じく静岡の名産品である「わさび」です!
編集部
正解はガーリックです。
pato
クソっ! なんなんだ山村! 嘘ばっかりじゃないか。
うなぎの寝床を抜けると、ちょっとよく分からないタイミングで2メートルくらいある巨大な「うなぎパイ」モニュメントが飾られていました。
pato
金色のパッケージのヤツが気になりますね。V.S.O.P.って高級なやつなんですかね。
編集部
うなぎパイの頂点を極めた最高級パイという触れ込みです。芳醇な高級ブランデーの香りがするそうです。
見学コースの途中には「UNAGI PIE café」という少し高級感の漂うカフェがあります。こちらではうなぎパイファクトリーならではの料理を楽しむこともできます。
落ち着いた店内。
pato
あっ!
pato
電灯までうなぎパイ。
編集部
本当に徹底してますよね。
編集部
カフェ前の手すりはウナギですし。
そんな、うなぎパイカフェで遅めの昼食をとることに。
pato
けっこう遅めの昼食になっちゃいましたね。取材時間がおしてるのでは?
編集部
(あんたがずっとロボット見ていたからだよ……)
食事やカフェのほかに独自の「"まるで"うなぎパフェ」などが人気らしい。5000円もするジャンボパフェもあるようなのだけど、食べきる自信がないので取材班一行は注文できなかった。3つの食事メニューを注文することに。
食事メニューについてくるサラダになぜかうなぎパイが付属してくる。
砕いてクルトンみたいにして食べるらしい。徹底している。
遠州灘産釜揚げしらすの和風オムライスを注文すると、店員さんが升に入った「しらす」を持参してくる。
「私が“しらしょー”って言いながらかけていきますので、一緒に掛け声をかけてくださいね。ちょうどいいところでストップをかけてください。」
どうやらしらすはかけ放題らしい。
「しらしょー」
編集部
しらしょー(消え入りそうな声)
pato
どうしたんですか。もっと声を出さないと
編集部
しらしょー(消え入りそうな声)
pato
もっとオムライスが見えなくなるくらいまで「しらしょー」って言えばよかったのに…。
pato
これは完全に美味ですわ。うなぎパイファクトリーに来たら絶対に食べたほうがいい。
見学コーナーのラストはお土産コーナー。他の店舗ではなかなか買えないような商品が勢ぞろいしています。
pato
おお、徳用うなぎパイだ。
編集部
割れがあったり、規格外だったりして外れたやつをお得な値段で販売しているようですね。個別包装もされていないのでかなりお安く手に入れることができます。
pato
職人が見極めていたやつですね。
編集部
このお徳用パックは春華堂直営店でしか販売していないようです。
編集部
こちらが、本物のウナギの白焼きとセットになった商品です。
pato
7,000円を超えている。これ、ほとんどウナギの値段でしょ。
pato
グッズも充実。
編集部
キャリーケースまであります。
pato
空港でこれ持っている人がいたらちょっとビックリしちゃうな。
うなぎパイファクトリーの外には、ジェラートなどを食べられるキッチンカーがあります。かわいいデザインで子どもたちに大人気。
ジェラートにぶっ刺さっているうなぎパイはノーマル、ナッツ、V.S.O.P.から選ぶことができます。ジェラートに「静岡産 紅ほっぺ」を使用したストロベリー味は期間限定です。
こちらの「チョコレートとうなぎ工場」も冬限定です。
編集部
さて、これでひと通り工場見学が終わったわけですが、このうなぎパイはもちろん静岡の名産品ですが、どこまで販売しているのか気になりませんか?
pato
いや、ならないですね。
編集部
そうですよね。気になりますよね。うなぎパイが販売されている県境、どこにあるのか気になりますよね。
pato
いや、ならないですね。
編集部
というわけで、ここ浜松から東名高速を使って東京まで戻り、その間のSAおよびPAでうなぎパイが販売されているか、それを調査してもらいます。
pato
なんでまた東名高速なんですか。
編集部
実は、うなぎパイと東名高速道路は密接な関係があるんです。昭和36年にうなぎパイが誕生し、それから東名高速道路が開通、物流が一気に良くなったことでうなぎパイも広がりを見せたんです。
編集部
昭和45年の東名高速道路が全線開通した時にはそれを記念して「ナッツ入り」を誕生させているくらいなんです。
pato
まあ、それは見学したんでわかるんですけど、別におみやげの県境を調べなくても良くないですか? あれ、クルマに乗ったり降りたり、地味に大変なんですよ。
編集部
もちろん、前回の桔梗信玄餅のときと同様、売っていない売店があればそこで検証は終了。そのまま東京に帰りましょう!
pato
うーん…。
編集部
大丈夫ですよ! うなぎパイは静岡の名産品です。われわれ編集部の見立てでは、静岡県内で終わりと思ってます!
pato
静岡ってめちゃくちゃほそなげえんだよ。うなぎの寝床じゃねえか!
三方原PA(静岡県浜松市)
ということで、浜松西インターから東名高速道路に乗り、東京に向けてPAおよびSAを調査していくことになりました。うなぎパイを販売していない店があればそこで調査終了。
ただ、僕にはある程度の勝算がありました。前回の桔梗信玄餅は本当にどこのPA/SAでも売っているイメージがありましたが、うなぎパイはそこまであちこちで売っているイメージがない。となると、本当に静岡県内でしか販売していない可能性がある。それどころか、静岡県内であっても取り扱っていない店がある可能性すらある。そうなると早々に調査終了となり帰宅できるわけです。
高速道路に入ってすぐ、さっそくひとつめのPAである三方原PAがみえてきました。さすがにここはうなぎパイのお膝元である浜松市、ここでしっかりと販売されているのは仕方がない。
pato
はいキタコレ。
編集部
どうしました?
pato
すいませんね。1つめのPAで検証終了ですわ。見てください。この三方原PA、トイレとファミマしかありません。コンビニとトイレしかないんですよ。お土産物を売るスペースがないわけです。
編集部
なるほど。
pato
ファミマにうなぎパイ売ってますか? 売っているの見たことありますか? ないでしょ。これはもうここで完全に検証終了です。
俺たちが愛したファミマの光景。完全にいつも行くファミマと同じ店内だ。ここにうなぎパイなどあろうはずがない。
なんであんだよ。しかも特設コーナーじゃねえか。
pato
さすがお膝元の浜松ですね。ファミマでもしっかりと売っていました。ただ、こういっちゃなんですけど、ちょっと在庫が少なくないですか? かなり売れてしまったのかな。
編集部
どうやらうなぎパイはかなり品薄のようですね。転売に対する注意喚起をされるくらい入手困難なケースもあるみたいです。
pato
ほんとだ。
これちょっと気になるんですけど、高速道路のPA/SAでうなぎパイを売っていない店を見つけたら検証終了ですよね。売り場があるのにすべて売り切れている、これはどうなりますか?
編集部
その場合は「売っていない」ですから検証終了ですね。
pato
シャオラ! こりゃ期待が出てきたぞ。ここまで注意喚起されるくらいなら売り切れている場所もあるはず。そこに賭けるしかない。
次のPAである「遠州豊田」に向けて車を走らせます。
pato
それにしても、この車についているナビ、めちゃくちゃ画面がデカくていいですね。持って帰れたりしないですか。
編集部
しないですね。
遠州豊田PA(静岡県磐田市)
遠州豊田パーキングエリア。後ろに「ららぽーと」がそびえ立っているけど、パーキング外の施設らしい。
pato
完全にいただきました。ここもお土産スペースがありません。お食事処とファミマがあるだけです。
編集部
でもまた、ファミマ内に特設コーナーがあるのでは?
pato
それは、うなぎパイのお膝元である浜松市だったからですよ。ここはもう磐田市になっていますから、特設コーナーまではないでしょうよ。うちの近所のファミマには特設コーナーないですもの。
店に入るまでもなくもう見えとるわ。
しかもこっちのほうが特設コーナーの扱いが良い。力が入っている。在庫も充実だ。
ここ遠州豊田PAも、まったく疑問の余地なくうなぎパイが販売されていました。さらにクルマを走らせます。
pato
これ3つ先のPAまで案内されてますけど、これぜんぶ静岡県内のPAですよね。
編集部
そうですね。
pato
静岡県、どれだけ長いんだよ……。もう静岡県内は絶対に販売しているでしょ。
編集部
それどころか9個くらい先まで静岡県ですよ。
pato
もうめちゃくちゃだろ。
小笠PA(静岡県掛川市)
pato
このPAの案内表記がカップだけのヤツって、本当にコーヒーしか売っていないとか、自動販売機だけみたいな可能性ありますからね。そうなるとけっこう期待値が上がります。
と思いきや、しっかりと土産物を販売する売店がありました。
pato
はいはい。こういう場所で売ってないはずがない。
pato
ほらね。充実のラインナップ。
編集部
だいたいいちばん目立つ場所に特設コーナーが置かれていますね。
pato
ぜんぜん関係ないですけど、ここで売っている弁当がおいしそうでした。
pato
静岡市が近づいてくるとお茶畑が増えてきますね。ここからお土産としてお茶の勢力が強くなってきて、うなぎパイを置いていない、なんてことがあれば、いや、ないな。
なぜなら、お茶とうなぎパイは同列で語れるものではないからだ。うなぎパイを食べながらお茶を飲む、それこそがあるべき姿で、家族団らんの光景だ。
うなぎパイを夜のお菓子として捉えた場合、決してお茶とは競合しない。むしろ相乗効果で売れるまでありえるから、うなぎパイとお茶が並べられていることすらありえる。うん、間違いないな。
編集部
(いつも運転しながら独りでブツブツ言ってるんだよな、この人……)
牧之原SAに到着。これだけ案内表示にアイコンが多いと入る前にかなり充実したSAだと分かるので絶対に売っている。すでに諦め半分だ。
pato
うおおおおおお、なんだこれ。
編集部
建物なにもないですね……。
SAに飛び込んだはいいものの、そこには広大な駐車スペースが広がるだけで何もない。本当にただの広大な駐車場。
pato
これ、きたでしょ! そもそも店がない! うなぎパイ売っていない! これは期待してもいいでしょ!
と思ったら、広大な駐車場スペースの隣のブロックに普通に建物がありました。
編集部
どうやらあちらは大量に停車するトラックに対応したみたいな感じですね。
pato
期待させやがって。
牧之原SA(静岡県牧之原市)
pato
これだけ立派な売店に売ってないはずがない。
完全に立派なお土産もの売り場、その手前におそろしいものを発見します。
桔梗信玄餅。
pato
前回の記事で探し続けて桔梗信玄餅が、ここ静岡でも販売されていた。いったいどこまでの広がりを見せるんだ。
編集部
あらゆる方角に徹底調査したくなりますね!
pato
いや、それはないです。
もちろん、うなぎパイも充実のラインナップ。
ちなみに、みかんジュースが蛇口から出てくるカフェもあります。
pato
めちゃくちゃ濃厚でうまい。
さて、濃厚なみかんジュースで喉を潤し、次のSAを目指して車を走らせます。
pato
いや、そもそもですね、うなぎパイの県境を探ってなんになるかって話なんですよ。
編集部
(相変わらずめちゃくちゃクセの強いハンドルの握り方をする人だな……)
pato
うなぎパイは僕らの心の中に存在するんです。県境なんてない!
編集部
(足も収まってない。もっと座席を下げればいいのに……)
pato
クソっ! 東京まで200kmもあんじゃねえか!
編集部
(ホント、ずっとうるさい人だな……)
そんなこんなで日本坂PAに到着。
日本坂PA(静岡県焼津市)
pato
きました。これは完全に激熱です。
編集部
そうですか? 大きな売店スペースもあるし、ファミマもありますよ。絶対に売ってますよ。
pato
ああ、そういう意味ではなく、このPAにはファミマ、松屋という僕が日常的に通い詰めている店が居並んでいるわけですよ。もうここに住みたい! うなぎパイ? ああ、売ってんじゃないの。
pato
松屋でご飯食べましょうよ。牛焼肉定食にはなにをかけます? 僕はポン酢。
pato
ほら、もう入った瞬間に売っているじゃないですか。それより松屋ですよ。サラダにはなにかけます? 僕はゴマだれです。
編集部
見てください。大きな広告まで展開してますよ。かなりうなぎパイに力を入れていますね。
pato
お、こっちの売店と松屋、繋がってんのか。
どうしても松屋でご飯を食べようとするライターを説得し、次のPAを目指します。
pato
だんだん大きなビルが見えるようなってきました。静岡市ですね。大都会ですよ。この光景の中にどれだけの松屋が存在するのか。
編集部
ずいぶんと浜松市から走りましたね。ここまで遠くなるともしかしたら「うなぎパイ」の影響が及んでいないかもしれません。
pato
ちょっと期待していいんですかね……。
日本平PA(静岡県静岡市)
pato
はい、売ってます。
編集部
え、なんでこの時点で分かるんですか。
pato
ついでに桔梗信玄餅も売ってます。
編集部
なんでわかるんですか。
pato
こういう検証していると研ぎ澄まされてくるんですよ。この画像の中央よりやや右下には「うなぎパイ」と「桔梗信玄餅」の看板がある。
編集部
とんでもない特殊能力に目覚めている……。
編集部
本当だ……。
うなぎパイは2か所に分かれて展開される充実っぷり。
もちろん桔梗信玄餅もあります。
pato
この盤石っぷり。確実に静岡県内は売っています。ついでにいうとたぶん桔梗信玄餅も売っている。
静岡は長すぎるんよ、どうかしてる、と文句しか言わなくなっているpatoを尻目に次のSAを目指します。
編集部
あ、見てください。河津桜ですかね。まだ2月だというのにもう咲いていますよ。
pato
いくら早咲きの桜が綺麗でも静岡が長すぎるという罪は消えない。
編集部
(もうわけわかんないことになってるな……)
由比PA(静岡県静岡市)
編集部
由比PAに到着しました。
pato
はあ、どうせこのPAにも売ってるんでしょ。おいちょっと待て!
pato
売店がない……。ちょっとこれ激熱だろ!
由比PAにはトイレと自動販売機スペースしかありませんでした。
pato
これ絶対に「うなぎパイ」売ってないでしょ。検証終了! 第二部完!
編集部
ちょっと調べてみたんですが、もともと海岸線に近いために下りPAには売店がなかったようです。ただ、こちら側の上りPAにはスナック・ショッピングコーナーがあったみたいですね。ただ、2020年5月6日に閉店したみたいです。
pato
検証終了!
編集部
落ち着いてくださいpatoさん。もう一度、検証のルールを確認してください。最初に言ったルールです。「売っていない売店があればそこで検証は終了。そのまま東京に帰りましょう!」ですよ。
pato
は?
編集部
売っていない売店はありましたか?
pato
売っていない売店はない。そもそも売店自体がないのだから。
編集部
ということは?
pato
検証続行?
編集部
さあ、いきましょう!
編集部
ほら見てください、patoさん、ここ面白くないですか。高速道路が海の上を通っていて、その内側に漁港があります。海側から漁港が見られる高速道路ってなかなかないですよ。
pato
売っていない店があったら……売ってない店……店がないのとは違う……。
納得いかない思いを抱えつつ車を走らせると、富士川SAが見えてきました。なんか観覧車が見える!
富士川SA(静岡県富士市)
pato
僕の記憶の限りだと、観覧車があるSAは日本に4つあります。淡路、刈谷、川島、そしてここ富士川ですね。
さっそく乗ってやろうと思ったのですが、点検のため臨時休業でした。絶妙に間が悪い。
もちろん、観覧車があるくらい巨大なSAなので、うなぎパイも充実のラインナップで販売していました。
確認のために触れておくと、桔梗信玄餅も充実のラインナップでした。
このSAは巨大な観覧車に巨大な売店、巨大なフードコートなどを備えているのに、さらに敷地内にもうひとつ別の施設がある。どうやらこれは「富士川楽座」という道の駅のようで、下を通る一般道からも利用できる施設のようだ。各種店舗のほかにプラネタリウムまであるという。
こちらの道の駅にも充実のラインナップで販売してました。それどころか、いちばん上には「うなぎパイキャリーケース」まで置かれていました。
ちなみに、上階にはこういうしゃらくさい感じで富士山が見えるスポットがあるのですが、あいにくの空模様でまったく見えませんでした。さっきまで快晴だったのにな。微妙に間が悪い。
超巨大な富士川SAをあとにし、次のPAに進む。もう日が暮れるというのに一向に静岡県が終わらない。
愛鷹PA(静岡県沼津市)
pato
なかなかオールドタイプの売店がある。
編集部
浜松からずいぶんと離れて沼津まで来ましたし、もしかしたら「うなぎパイ」を売っていないなんてことも。
pato
これだけきてもまだ静岡県なの絶対におかしいよ。
pato
綺麗な桜が咲いていても静岡県が細長い罪は消えない。
昔ながらといったレトロな雰囲気がする店内にしっかりと「うなぎパイ」コーナーがありました。
pato
ただ、これまでみたいにメインっぽい場所じゃないし、ちょっと展開も小さめなんですよね。さすがに影響力が落ちてきたか。そろそろ期待できるかも。
編集部
桔梗信玄餅もありました。
pato
さすがにどこでも影響力を発揮しすぎだろ。
すっかり日が落ちたのにまだ静岡県が終わらない。
駒門PA(静岡県御殿場市)
駒門PAに到着。
編集部
下り線のPAはかなり施設が充実しているんですが、上り線の方は2022年に売店が閉鎖になっているようですね。いまはトイレと販売機、あと富士山の名水を汲める場所があるようです。
pato
狂ったようにペットボトルを並べて水を汲んでいるおじさんがいましたね。
もちろん、ここも「店がない」という理由で検証続行となります。
pato
ここにあったお店はここで51年間も営業していたんですね。「アメリカンドッ君」ってのが何なのか分からないですけど、生誕の地だったみたいです。
ルールにのっとり検証は続行、次のSAに向けて車を走らせます。
完全に日が落ちてしまった。
編集部
朗報ですpatoさん! なんと、次の足柄SAで長かった静岡県が終わりです!
pato
ほんとに長かった。死ぬかと思った。
足柄SA(静岡県御殿場市)
pato
めちゃくちゃでかい。
もちろんこれだけ大きなSAなのでかなり充実した形で「うなぎパイ」コーナーがある。
そして桔梗信玄餅コーナーも大充実。
pato
まあこれだけ大きなSAですからね。そりゃありますよ。問題はここからですよ。
実は僕には目論見みたいなものがあった。大学時代の同級生で静岡出身である山村は、帰省するたびにお土産として「うなぎパイ」を買っていた。その際に「うなぎパイ」は静岡県内と名古屋市内でしか売ってないんや、と豪語していた。
つまり、基本的には静岡県内だけで販売しているが、春華堂のある浜松市と関係が深い名古屋市では販売しているということではないだろうか。つまり、静岡県が終わり神奈川県となった次のPAでは販売していない可能性が高い。
pato
次が熱い!
pato
長かった静岡県がついに終わったぞ!
鮎沢PA(神奈川県山北町)
けっこう大きめの売店だ。
あれ、うなぎパイコーナーがない?
いつもだったら入った瞬間に見つかる目立つ位置に特設コーナーがあるのに、それがない。これはもしや……。
と思ったらあった。
pato
クソっ! 山村め。普通に神奈川県にもあるじゃねえか。
編集部
ただかなり品薄になってませんか? 数が少ないです。これは次のPAあたりでひょっとするとひょっとするかもしれませんよ。
ちなみに2つ前の駒門PAが誕生の地だった「アメリカンドッ君」がこちらで販売されていました。
pato
顔が描かれているアメリカンドックだ。
pato
ケチャップとマスタードつけるとめちゃくちゃ生々しいな。
ちなみに、普通のアメリカンドックに比べて中に入っているソーセージが極太で美味でした。
編集部
この案内板を見てください。中井、海老名、港北、残りの東名高速PA/SAはこの3つです。
pato
まじかー、このまま残り3つぜんぶは避けたい。中井で終わればそこから圏央道で八王子に帰れる。
中井PA(神奈川県中井町)
pato
案内表示ではカップのアイコンしかなかったのにけっこう盛りだくさんのPAだ。これだから高速道路PAのアイコンは信用できない。
pato
あれ、うなぎパイ特設コーナーがない? ないのか? そうなのか、山村!?
pato
なんだよ、あんじゃねえか!
編集部
ちょっと待ってください!
「本日販売分は完売しました」
品切れ!?
pato
これ、もしかして売ってないお店きちゃいました。ここで検証終了いけますか?
編集部
V.S.O.P.のうなぎパイが2個だけ残ってました
pato
これ僕が買うんで品切れってことにしません?
編集部
ダメです。
関係ないけど桔梗信玄餅も品切れ寸前だった。
編集部
残すは海老名SAと港北PA、なんだかドキドキしますね。
pato
ここを曲がれば八王子なのに。
海老名SA(神奈川県海老名市)
かなり巨大なSAで、様々な店舗が入っている。かなり利用客が多く、人でごった返していた。
大充実のお土産物コーナー。
もちろん充実の「うなぎパイ」コーナー。
さらに、さきほど見事なファインセーブを見せたV.S.O.P.だけの特設コーナーまで存在した。
編集部
V.S.O.P.だけの特設コーナーは初めて見ましたね。
pato
この海老名SA、ちょっと高級なスーパーとか総菜、スイーツを売っているお店が多いじゃないですか。全体的にちょっと贅沢な感じを売りにしているのかもしれません。
編集部
さあ、いよいよ、東名高速最後のPAですよ。
pato
こういうこと言っちゃうとあまり盛り上がらないからダメなんですけど、最後のPAに限っては「うなぎパイ」があろうがなかろうが関係ないんですよね。どうせここで終わりなんで。
編集部
そういうこと言わないでください。
港北PA(神奈川県横浜市)
編集部
あ、思ったより小ぶりな売店ですね。これは期待できますよ!
pato
あろうがなかろうが同じなんで。
ありました。
結局、お店自体が存在しないPAを除いて、浜松から東京まで東名高速の全てのSA・PAにうなぎパイがありました。一部は、品薄で売り切れ間近というところもありました。
ここでは売店の店長さんがインタビューに答えてくださいました。なんでも前回の桔梗信玄餅の記事も読んでいただいていたようで完全に趣旨を理解されてました。うちにも桔梗信玄餅ありますよって言ってた。
「いやー、うなぎパイはうちが県境ですよ。ここがラストです。これ以降、高速では販売していないはずです。」
店長さん曰く、うなぎパイは静岡県内と名古屋市での販売を基本としているけど、東名高速とは繋がりが深いので、東名のPAにある売店だからということでここ横浜市にある売店でも販売できているということです。
編集部
いやー、結局ぜんぶ調べちゃいましたね。
pato
毎度のことながら、全部行く羽目になるようなお土産を選んでません?
編集部
そ、そんなことないですよ。
ということでお土産物の県境を探る旅シリーズ、次こそは序盤で県境を見つけて1000文字くらいで終わる記事にしたい。
- この取材に使用したクルマ
- STEP WGN e:HEV AIR / FF
ボディーカラー:フィヨルドミスト・パール
純正アクセサリー装着車
- 今回、僕の方からこのステップワゴンを指名させてもらいました。僕の大学時代の友人に山村っていうやつがいるんですけど、そいつが静岡出身でした。大学卒業後は静岡に帰って家業を継ぐことになっていたのですが、山村は上京して一旗あげたいと考えていたんですね。その際に、両親から「家業を継いで静岡に留まるなら新車を買ってやる」そう言われて買ってもらっていたのがこのステップワゴンでした。当時もかなりオシャレな車でしたけど、現行モデルはさらにオシャレ。あと、このボディーカラーが僕の愛車であるHonda クロスカブ110と同じでめちゃくちゃ愛着が沸きます。これ欲しいなあ。乗って帰っちゃだめですか? ダメ。そうですか。ああ、山村はどうなったかって? 彼は新車のステップワゴンが納車されてすぐに、やはり家業は継ぎたくないと、そのステップワゴンに乗って上京しちゃいました。ほんと、とんでもないやつですよ。
文/pato
写真/KEI KATO(ヒャクマンボルト)