車中泊をするときに、ベッドで快適に寝たいと思ったことはありませんか? ベッドがあればフルフラットにならないクルマでも平らな場所で寝ることができ、フルフラットになるクルマでも微妙な凸凹や角度が気になりません。
そこで今回は、ベッドがあると車中泊が快適になるクルマやベッドを導入する方法、選ぶ際の注意点、自作方法を解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも車中泊にベッドは必要?
そもそも気になるのが、「車中泊にベッドは必要なのか」というところ。ベッドがなくてもシートが倒せて横になることができれば寝ることはできます。
単に車の中で眠ることを考えているのであれば、ベッドを設置することは時間がかかり、かさばる荷物となる可能性があるため、必要とは限りません。
しかし、車中泊をする上で快適に睡眠をとりたいならば、ベッドを使うのがおすすめです。フルフラットのシートでも、微妙な凸凹を感じながら寝ることになりますが、ベッドならそんな凹凸もなく最適な環境で横になることができます。
また、特に寒い時期はクルマの底から冷気が伝わるのを防いでくれるというメリットも。このようにベッドがあることで、クルマの中でも家で寝ているような快適な睡眠環境を作り上げることが可能です。
車中泊にベッドを導入する3つの方法
車中泊にベッドを導入するには以下の3つの方法があります。
- ①既製品のマットを敷く
- ②既製品のベッドを設置
- ③自作のベッドを設置
上から順に設置し易く、導入が簡単な方法です。ただし、クルマのシートがフルフラットになるかどうかで、愛車で使えるベッドが決まります。
①フルフラット車で大活躍のマット
フルフラットになるクルマには、マットがオススメです。マットを広げるだけで、組み立て作業はいらないため、簡単にセッティングすることが可能。
フルフラットにならないクルマでも使えないわけではありませんが、隙間にタオルやラグを詰めて凸凹を減らさないと、体が真っ直ぐにならずフィットしないため、快眠できない可能性が高いです。
マットには4つの種類があり、快適さ、コンパクトさ、設置のし易さなど、どんな機能をマットに求めるのかで選択肢が異なります。
クローズドセルタイプ |
じゃばら折りになった薄手のマット。開いてすぐに使うことができ、コンパクトになることが特徴。 厚みがないため、シートの凸凹や硬さが伝わりやすい。 |
インフレータブルタイプ |
バルブを開くことで空気が自動的に入り膨らむマット。ある程度厚みがあるのでシートの凸凹や硬さは気になりにくい。 収納時は空気を抜いて丸めて保管できるが、あまりコンパクトにはならない。 |
エアータイプ |
空気を入れることで厚みが出るマット。厚みがあるのでシートの凸凹や硬さが気になりにくい。インフレータブルタイプに追加で空気を入れて厚みを調節できるものもある。 手動で空気を入れるため、セッティングに時間がかかる。 |
折りたたみタイプ |
折りたたんで収納できるマット。厚みがあって快適で、広げるだけなのですぐにセッティングできることが特徴。折りたたんでも他のタイプよりかさばる。 |
特に「インフレータブルタイプ」「エアータイプ」「折りたたみタイプ」の3種類は、厚みが10cm以上あると、シートの凸凹が感じにくく、冷気がクルマの底から伝わることも防げます。
②手軽に使える既製品のベッド
既製品のベッドは、パーツを組み立てたり、折りたたんであるものを展開したりして使用します。フルフラットにならないクルマで使うことが多く、運転席や助手席のシートを倒して、ベッドの脚をシートの隙間にフィットさせて設置します。
しかし、車種専用品や車種に適合したベッドでなければ、ベッドがシートにフィットせず使用できないため、購入する前に愛車に適合しているか確認する必要があります。
また、ラインアップが少ないため、すべてのクルマで既製品のベッドを使用できるわけではありません。
フルフラットのクルマならキャンプで使う簡易ベッドのコットをベッドとして使う方法もあります。
③どんな愛車にもフィットする自作のベッド
自作のベッドは、愛車の形状に完璧に合わせることができ、フルフラットにならないクルマでも、シートの凸凹をカバーして快適な寝心地を実現できます。
車種の制約を受けずに、クルマに合わせたカスタマイズができることが最大のメリットですが、自作するには手間がかかります。
材料をカットしたり、つなげたりとある程度の手先の器用さも必要になります。また、価格は材料次第なところもあり、既製品よりも高くなってしまう可能性もあります。
車中泊で使うベッドの選ぶ際の注意点
車中泊にベッドを導入する方法がわかったところで、ベッドを選ぶ際の注意点を紹介します。
前述したフルフラットになるかどうかは、まず初めにベッドを選ぶ上で注意しなければいけない点ですが、それ以外にも以下の2点に注意して選ぶようにしましょう。
- 愛車にフィットする大きさ、形を選ぶ
- 折りたたんでかさばらないものを選ぶ
愛車にフィットする大きさ、形を選ぶ
特に車種専用品ではない、既製品のマットやベッドを導入する際は、クルマの内寸を計測してから、サイズに合わせてベッドを選ぶことが重要です。
また、大きさだけではなく、隙間や段差などの形状にも合ったものを選ぶと、より快適に使うことができます。
折りたたんでかさばらないものを選ぶ
車中泊時はベッド以外の荷物もあるはず。ベッドはサイズが大きく、かさばりやすいアイテムです。
折り畳めたり、パーツを分解できたりとコンパクトに収納できるものを選ぶとよいでしょう。
車中泊で使うベッドを自作する方法
ベッドを導入するには、既製品という選択肢もありますが、販売している種類が少なく、愛車にぴったり合ったベッドを購入できることは稀。そのため、ベッドを自作するのが、どんなクルマでもジャストサイズのアイテムを手に入れる方法です。
今回は筆者のクルマ、トヨタ 「RAV4」に合ったベッドを自作してみます。
- Step1:採寸と構想
- Step2:材料の準備
- Step3:パーツの組み立て
- Step4:クルマに設置
Step1:採寸と構想
まずはクルマの寸法を計測しながら、どんな構成でフレームを製作し、設置するのかを決めます。
後部座席の足元のスペースもベッドにしますが、真ん中が出っぱっているため、ここに置くベッドの脚は短くなる予定。
運転席と助手席の間にあるセンターコンソールボックスが後部座席にも干渉しているので、ベッドの脚の代わりに使います。
- 赤→フレーム
- オレンジ→脚
- 緑→天板
フレームを置く場所
- A)ラゲッジスペース
- B)後部座席の裏側
- C)後部座席の足元のスペース
寸法を測ってどのようにベッドを置くか考えた結果、今回は上記のようなパーツ構成になりました。
車種やベッドを設置する位置によってフレームを置く場所は異なりますが、今回は3つに分けてフレームを設置して、その上に天板を乗せるようにします。
Step2:材料の準備
パーツ構成が決まったら、買い出しに行きます。
- イレクターパイプ(2m)×5本
- ジョイントパーツ(三つ叉)×8個
- ジョイントパーツ(四つ叉)×1個
- ジョイントパーツ(L字)×1個
- ジョイントパーツ(脚部分)×4個
- ジョイントパーツ(アジャスター)×5個
- ジョイントパーツ(ポールとポールを接続できるパーツ)×7個
- ジョイントパーツ(板とポールを接続し固定できるパーツ)×8個
- 木の板(210×900×2cm)
- 溶着液
- タッピングネジ
フレームにはイレクターパイプを使用します。イレクターパイプとはスチールにプラスチックを被せたパイプのこと。強度があり扱いやすいため、DIYでよく使われています。
なお、今回使用する材料は、すべてホームセンターで購入可能です。
木の板は購入店で寸法に合わせてカットをしてもらいましたが、イレクターパイプは購入店でカットをお願いすることができず、電動カッターを購入店で借りて自分でカットしています。
木の板もイレクターパイプも専用の器具があったほうが、早く正確にカットできるため、購入店にカットをお願いしたり、器具を借りることができないか相談したりするのがおすすめです。
Step3:パーツの組み立て
まずはポールにジョイントパーツを差し込み、仮組み立てをしてフレームを作ります。
ラゲッジスペースに設置するフレームを仮組み立てして天板を乗せます。
後部座席の裏側に設置するフレームは、Aのフレームにイレクターパイプ3本をつなげて天板を乗せます。
後部座席の足元のスペースに設置するフレームは、センターコンソールボックスが干渉するため、長方形ではなく正方形に1辺だけ追加した変則的な形になります。
フレームができたら、天板を乗せてみて、はみ出したりしていないか確認しましょう。
仮組み立てをして問題がなければ、溶着液でパーツを溶着していきます。
すべてのパーツを溶着してもいいですが、分解して持ち運びたい場合は必要に応じて溶着するパーツを減らしても問題ありません。
今回は、パーツを分解して持ち運ぶために、脚になるパーツとポール同士を接続するジョイントパーツのみを溶着しました。
溶着液は30分ほど乾かす必要があります。乾かしている間に天板の切り口や角でクルマを傷付けないために天板の4辺にマスキングテープを貼ってガードします。
乾いたらフレームを天板の上に置いて、天板とフレームを接続するジョイントパーツをタッピングネジで固定します。
このパーツを付けることで、フレームに天板を乗せた際にジョイントパーツで天板とフレームが固定されるため、寝ている間に天板がずれることはありません。
これで、ベッドの製作は完了です。
Step4:早速ベッドで車中泊をしてみた
では、製作したベッドをクルマの中に設置してみましょう。
各フレームを配置し天板を置いて、微調整をすると…フルフラットのベッドができあがりました。
実際にインフレータブルタイプのマットを敷いて横になってみると、寝床がフラットなのでとても快適です。後部シートの足元のスペースにも天板を置いたので、縦幅にはかなり余裕があります。
実際に2時間ほどベッドで仮眠をとりましたが、とても快適な寝心地でした。
製作にかかった時間は、今回の工程で約6時間ほど。筆者はあまりDIYをしないため、慣れている方ならもう少し時間を短縮できるでしょう。
製作にはかなりの労力がかかりましたが、寝心地は想像以上の快適さです。車中泊でベッドを使いたいという方は自作をしてみてもいいかもしれません。
車中泊にはベッドで快適に
車中泊時にベッドがあるとフルフラットにならないクルマでも、寝床がフラットになって、快適に眠ることができます。
ベッドはどんな方法で導入するかを決めた上で、大きさや収納などをチェックしてクルマに合ったものを選びましょう。
車種専用品のベッドの商品数は少ないので、愛車にぴったりのベッドが欲しいのなら、手間はかかりますが自作がおすすめです。ぜひベッドを使って快適な車中泊を楽しみましょう。
文/ヨシダコウキ
写真/ヨシダコウキ、カエライフ編集部、井手 勇貴
編集/ヨシダコウキ、TAC企画