ペーパードライバー歴3年の私に突然、試練がふりかかりました。それは、クルマで両親を駅まで迎えに行くこと。ひとりでの運転は不安しかありませんが、その中でも一番の難関は、「縦列駐車」。
普段縦列駐車をする機会は少ないですが、駅前のようにクルマが多く停まっている場所だと、できなければならない場面も多いです。他のクルマにぶつけてしまったらどうしよう? モタモタして他のドライバーに迷惑をかけてしまうかも……。普通に運転するだけでも自信がないのに、そんなことを考えていると、不安は募るばかり。両親にも、それが伝わったみたいで、みんなが不安な状態に……。
そこで、今回はペーパードライバーの私が不安なく運転できるように、練習をさせてもらうことになりました。そして、縦列駐車が簡単にできるコツも、教わってきました。
さらに、最新のカメラやセンサーを取り付けたクルマでも縦列駐車にチャレンジ。どのくらい縦列駐車が楽にできるようになるのか、体験させてもらいます!
目次
バズー
学生時代に運転免許を取得してから3年。それ以来運転することもなく、すっかりペーパードライバーになる。同居している親を駅まで迎えに行かなければいけなくなったが、自動車教習所でも苦戦した「縦列駐車」に不安を覚えている。
私が向かったのは企業ドライバー向けの安全運転講習や個人スクールなどを行っている「交通教育センター レインボー埼玉」(埼玉県比企郡川島町)。インストラクターの方が隣に座ってくれて練習できるので安心です。今回の先生は、交通教育センター レインボー埼玉のインストラクター・望月さんです。
望月圭太さん
バイクと、人に何かを教えることが大好きという「交通教育センター レインボー埼玉」の若手インストラクター。おもに企業ドライバー向けの安全運転講習を担当している。
まずはハンドル操作に慣れることが大切
まずは運転の感覚を取り戻すために、望月さんに同乗してもらってコース内の慣らし運転からスタート。望月さんの話では、ペーパードライバーはバックする時にハンドルをどちらに切ればいいか混乱してしまうことがあるので、縦列駐車をする前にハンドル操作に慣れておくことが大切とのこと。
確かに教習所の時にも、ハンドル操作を間違えて、思った方向とは逆に行ってしまったことがありました……。
最初は久しぶりの運転でぎこちなかった私も、コースを何周か走って少し運転にも慣れてきました。いよいよ縦列駐車にチャレンジします。
周囲の確認と「外輪差」を意識すること
赤いコーンを前後の駐車車両と縁石に見立てて、その間のスペースに駐車をします。 「まずは自分で思った通りにやってみてください」という望月さんの無茶ぶりで、自動車教習所で習ったことを思い出しながら、まずは自力で縦列駐車に挑戦します。
ルームミラーやサイドミラーを何度ものぞき込みますが、前後のクルマや縁石との距離感がいまいちつかめません。ぶつかってしまうのではないかと心配になって、ハンドルをこまめに左に切ったり右に切ったりと大忙し。
そして、最後には前の車に見立てたコーンにぶつかってしまいました。コーンだったからよかったものの、実際のクルマだったらと思うと、ぞっとします。
外輪差に注意!
「バズーさんは外輪差が意識できていませんね、周囲の確認も足りていません」 望月さんの話では、縦列駐車では「外輪差」を意識できておらず、前方のクルマにゴツンと当ててしまうことが多いんだとか。外輪差という言葉を聞いたのも久しぶりです。
外輪差とはクルマ(四輪車)がカーブを曲がるときに、前輪と後輪の外輪が描き通る位置の差のことを指します。ハンドルを切ってバックするときは特に、この外輪差を意識しなければなりません。
ハンドルの向きと逆方向に車体の前方がふくらむので、後方ばかりに気をとられて前方の車にぶつからないよう、特に注意が必要なんだそうです。
例えばこの状況で、右にハンドルを切ってバックすると、車体の前方が左にふくらみます。そうすると、一番左にあるコーンに当たってしまう、というわけです。
私がやってしまった失敗がまさにこれでした。
縦列駐車をするために知っておきたい5つのポイント
「次は、順番にポイントを教えますので、その通りにやってみてください」 今度は望月さんの指示通りに縦列駐車にチャレンジしてみました。
ハザードランプをつけて車を左側に寄せ、駐車位置の前方の車(A)を過ぎたところで安全を確認して車を止めます。交通量の多い道では、後方から来る車両にも注意。
まっすぐバックして、自分の車がAの車を少し超える位置まで来たら止まります。
ハンドルを左へ一杯に切ってバックします。右側のサイドミラーや目視で確認しながら、自分の車の右側面の延長線上に、後ろの車(B)の左側ヘッドライトが来る位置までバックします。
ハンドルを戻し、まっすぐにバックします。右側の後輪が駐車目標の右サイドと水平の位置まで来たら止まります。
ハンドルを右へ一杯に切ってバックします。最後に自分の車がAとBの車の中間にくるように位置を調整して完了です。
縦列駐車をやってみて
インストラクターの望月さんに教えてもらった手順で、縦列駐車をしてみると気持ちいいほどすっきりと車が駐車スペースに吸い込まれていきます。
2回ほど練習したらコツもつかめてきて、運転が上手くなった気分になってきました。気持ちに余裕も出てきたので、外輪差を気にしたり、周りの状況をちゃんと確認したりできるようになり、縦列駐車への苦手意識はすっかりなくなりました。望月先生、ありがとうございました!
最新の技術を使って縦列駐車にチャレンジ
縦列駐車のコツはわかりました。ですが、ここはセンターの中。いざ駅の近くで縦列駐車をするとなると、焦って周りへの注意が散漫になってしまい、ハッとするようなトラブルが起こりかねません。
そこで役立つのが、運転をサポートしてくれる最新の装備です。今度はHonda純正アクセサリーの「リアワイドカメラシステム」と「パーキングセンサー」を装着したクルマ(車種は同じHondaのフィット)で縦列駐車に挑戦してみました。
リアワイドカメラシステムで後方確認はバッチリ
シフトレバーをR(バック)に入れると、自動的にナビのモニターがカメラ映像に切り替わります。後退するときにガイド線付きの画面で後方の視界をサポートしてくれます。
モニターにはバックの見え方が異なる3つのモードがあり、"ノーマルビュー"、約180度を見渡せる"ワイドビュー"、真上から見下ろしたような"トップダウンビュー"に切り替えが可能です。トップダウンビューでは真上から見下ろしたような視界範囲で、停止位置と距離感がつかみやすいです。
パーキングセンサーが危険を察知してくれる
クルマの4つの角に設置された4つのセンサーが障害物を感知します。そのセンサーが、車両と障害物の距離を4段階のブザー音で知らせてくれます。障害物が近づくと、ピピッと音が鳴って警告してくれますが、近づくごとに音の間隔が短くなり、衝突を防ぎやすくなります。
カメラやセンサーがあると、目視だけよりもさらに安心
リアワイドカメラシステムのガイドラインは、目視やミラーではつかみにくい後ろのクルマや縁石との距離が一目でわかるので、縦列駐車をするときにとても安心感がありました。
これは後方の情報を正確に把握することができる、ノーマルビュー。バックの際に通常使用するのはこのモードです。
真上から見下ろしたようなトップダウンビュー。これに切り替えると距離感がつかみやすいので助かります。後方の障害物にクルマが接近しているときは、より便利です。
ノーマルビューよりも広い範囲の情報を知ることができる、ワイドビュー。今回の縦列駐車では使用しませんでしたが、人通りが多い場面などでは、人の接近に気づきやすくなりそうです。
雨の日などはバックミラーで後方確認がしづらいので、3つのビューを備えたリアワイドカメラシステムが役立ちます。
さらに、クルマの前方についたパーキングセンサーは、前方に障害物が近づいた時も教えてくれるので、ついつい外輪差が意識から外れがちで前方のコーンにゴツンと当ててしまった私には心強い味方でした。障害物に近づくほど、ブザー音が変わっていくのも分かりやすくていいですね。
これなら、駅前はもちろん、路上パーキングでの縦列駐車でも、思った場所にピタッと縦列駐車ができそうです。
目視とカメラとセンサーで、安全に縦列駐車ができた!
教えてもらった5つのポイントを意識しつつ、リアワイドカメラシステムとパーキングセンサーでクルマの位置を確認しながら縦列駐車をしてみたら、すんなり1回でできました。最初にぶつけてしまったことが嘘のようです……!
望月さん曰く、リアワイドカメラシステムやパーキングセンサーは、あくまでも補助的な役割で、しっかり目視で前方、後方を確認することを忘れないようにしましょう、とのこと。
安全に縦列駐車ができれば、どこに出かけたとしても駐車には困ることはありません! ペーパードライバーだからといって気後れすることなく、駅までクルマで親を迎えに行くことができそうです。これをきっかけにもっとドライブを楽しもうと思いました。
交通教育センター レインボー埼玉の望月さん、ありがとうございました!
文/三浦 晋也
写真/黒崎 健一
取材協力:交通教育センター レインボー埼玉