美味しいパン屋さんを訪ねてドライブに出かけませんか?
案内してくれるのは「旅するパンマニア」こと、パン研究家の片山智香子さん。
第2回は、鎌倉エリアで人気のおいしいパン屋さんをめぐりました!
目次
▽第1回めの【逗子・葉山】編はこちら▽
クルマで行く!おいしいパン屋さんめぐり旅vol.1【逗子・葉山】
2021.12.17
おいしいパン屋さんめぐりの旅をしよう
「鎌倉、実は昨日も来ていたんです!」と開口一番に語る片山さん。
パン巡りで毎月訪れていて、そのたびに新しい発見があるといいます。
▼パン旅の案内人
- 片山 智香子(かたやま ちかこ)さん
- 旅するパンマニア。近場から海外までパン屋めぐりをかねた旅行が大好き。これまでに1万個以上のパンを食べ歩いた経験を持つ。著書に『愛しのパン』(洋泉社)、『ボウルで3分こねるだけ! ラク! 早! カンタン! おうちパン』(学研)がある。
- Webサイト https://panyameguri.jimdofree.com/
- Instagram @katayamachikako
- Twitter @katayamachikako
- YouTube https://www.youtube.com/channel/UCTrVsMpIerB_1bTTeMt1mag
言わずと知れた鎌倉は、豊かな自然と古都の風情に包まれ、グルメスポットとしても人気の観光地。その魅力から、移住する人も少なくありません。
観光客と住民が入り混じる町には、多種多様なパン屋さんが生まれています。特徴はというと、鎌倉野菜を使ったパンが多く、地産地消であること。そして、「鎌倉時間」と呼ばれるゆったりした時間が流れているので、ときにオープンの時間が変わることも。
「お目当てのパンがあるときは事前に確認したりして、時間に余裕をもって巡ってくださいね」と片山さんからアドバイスをいただきつつ、出発です!
鎌倉のパン屋さんめぐり旅コース
- KOMOPAN
- リュミエール・ドゥ・ベー
- Bergfeld 雪ノ下本店
ハワイのような穏やかなひとときを感じる「KOMOPAN」
1店舗目は、今年でオープン2年目となるKOMOPANさん。結婚9年目の小森さん夫妻が2020年の夏にオープンさせた、比較的新しいお店です。
店舗の前に広めの駐車場があるので、ドライブ途中の立ち寄りにもピッタリ。
KOMOPANのコンセプトは、ハワイの田舎町にあるお店。小森夫人が好きな映画『ホノカアボーイ』が由来となっているようです。「あの映画のような空気感のお店にしたい」という奥さんの希望を叶えようと、旦那さんは海沿いで物件を探し、イメージに近いと感じたのが鎌倉のこの場所だったとか。
「パンの名前は、ハワイ語でつけられているんですよ」と小森夫人。
お店のこだわりは小麦。北海道や栃木の有機小麦など、12種類の国産小麦をパンに合わせてアレンジしています。
片山さんのおすすめのパン3種をご紹介します!
①アノアノ
店主の小森俊幸さんイチオシのアノアノは、ハワイ語で「種」という意味。石臼で挽いた小麦を使用し、パンプキン、ひまわり、亜麻仁の三種の「種」が入ったサワードゥです。サワードゥとは、小麦粉やライ麦粉と水を混ぜ合わせて発酵させた天然酵母のパンのこと。
②フアモア
ジブリ映画「ラピュタ」に出てくるパンに似ていることから、通称「ラピュタパン」と呼ばれているフアモアは、ハワイ語で鶏卵の意味。とろりとした半熟の目玉焼きの下には、ホワイトソースで味付けされたほうれんそう、ベーコン、チーズが敷かれています。
③ウィップト クリーム マサラダ
マラサダとはハワイ名物の揚げパンのこと。お店のコンセプトに合わせた商品です。横に切れ目を入れて、クリームとイチゴをはさんでいるのが特徴です。
3種類のパンを食べたなかで、片山さんは「マラサダのさっぱり感」が気になったそう。その秘密を小森さんに聞くと、「しつこい味わいにならないよう、生クリームは乳脂肪分を抜いた牛乳を使っているんですよ」とのこと。食べやすさを意識した、作り手の工夫が詰まっていました。
KOMOPANは鎌倉の中心地から離れている場所にありながら、お客様が絶えず訪れる場所。店内が家族のような穏やかな雰囲気に包まれ、お客さんとスタッフさんの距離の近さも魅力です。KOMOPANファンがどんどん増えています。
KOMOPAN
住所:〒248-0033 神奈川県鎌倉市腰越4-9-4 ケイ湘南III 1F
営業時間:8:30~17:00
定休日:月曜日、日曜日
電話:0467-55-5142
Instagram:@komo_pan_hou
駐車場あり
食材へのこだわりが詰まった「リュミエール・ドゥ・ベー」
次に向かったのは、由比ヶ浜海岸の近くにある、真っ白い外観が印象的なお店。
「材料へのこだわりがとにかくすごい」と片山さんが力説する、リュミエール・ドゥ・ベーを訪れました。
店舗名のリュミエール・ドゥ・ベーとは、フランス語で「幸せの光」という意味。
店内には鮮やかな太陽の光が差し込み、まさに幸せを感じる空間です。
リュミエール・ドゥ・ベーは、2010年に無量井さん夫婦が鎌倉の七里ヶ浜で開業。東京オリンピック開催を見越して、より多くの人たちにパンを届けたいと思い、5年前に由比ケ浜に近い現在の場所に移転しました。
店内にはパンのほかに、鎌倉野菜や健康食品も揃っています。食への意識の高さが随所に感じられます。
「鎌倉の魅力は空気感ですね。海と山にはさまれている環境や古都であるところが、地元の石川県金沢に少し似ていて、居心地がいいです」と語る店主の健太郎さん。
鎌倉でお店を出したい、という思いをずっと持っていたそうです。
パンづくりの裏側を聞いたところ、“材料へのこだわり”がたくさん詰まっていました。
酵母は、有機レーズンや有機野菜などを種に約20種類を自家培養した天然100%を使用。小麦は、海外の有機小麦や国産無農薬小麦、近隣の農家から仕入れた粒のままの玄麦を石臼で自家製粉し、挽きたてのものを使っています。食品添加物を一切使用せず、ベーコンやフルーツピールなど細かな具材まで一から作る徹底っぷり。
そんなこだわりのパンの中から、片山さんのおすすめのパン3種をご紹介!
①パンオショコラ
フランス産のオーガニックチョコを包んだチョコパン。チョコレートは、香料から細かく成分をチェックし、ビターすぎず甘すぎないチョコレートを厳選。乳製品不使用で、カカオマス、有機ココアパウダー、有機砂糖を使っているので、ビーガンやアレルギーの人も食べられます。
②有機野菜の焼きカレーパン
有機野菜たっぷりのカレーパンは、たまねぎ、にんじん、ビーツ、りんご、にんにくを中心に、季節によって、キャベツ、さつまいも、ほうれんそうなども入ってたりするとか。
隠し味は、カレーに炊いたオーガニックの小麦を混ぜていること。野菜だけだと水気が多くなってしまうところを、小麦を加えることでひき肉が入っているような食感になり、しっかりとした歯ごたえを出しています。
③自家炊きあんぱん
一番の人気商品は、このあんパン。中のあんは、十勝の特選あずきを豆から仕入れ、きび糖とひとつまみの塩を合わせて自家炊きしたもの。あっさりしながらも、あんこの深みを感じられます。
「天然酵母は、安定させるのがとても難しいんです。季節によって温度管理も変わってくる。 それでもこだわるのは安心安全、味わい深さ、おいしさが違うからです」と語る言葉から、パンに込められた無量井さん夫婦の優しさを感じます。
店舗の前にはベンチがあり、海風を感じながら焼き立てパンを食べることができます。
天然素材100%のパンは、香りからおいしい。口に運ぶ前から自然と笑みがこぼれます。
リュミエール・ドゥ・ベー
住所:〒248-0025 神奈川県鎌倉市長谷2-7-11
営業時間:11:00~18:00
定休日:月曜日、火曜日
電話:0467-81-3672
Facebook:https://www.facebook.com/Lumiere.du.b/info?tab=page_info
片山さんのパン屋めぐり便利グッズを紹介!
これまでさまざまなパン屋を巡ってきた片山さん。現在も都心から地方までパン屋巡りの旅を続けており、1日にたくさんのお店をハシゴすることもあるそう。そこで、パン屋を巡る際のおすすめアイテムを教えていただきました。
①ウェットティッシュ
コロナ対策だけでなく、パンを切ったあとにナイフやお皿を拭くための必需品。惣菜系のパンを食べた後、手に油がつくことがあるので、ウェットティッシュがあると便利です。
②保存袋
英字のシートは、パンが入るパッケージ袋です。かっぱ橋にあるシモジマという店舗用品の問屋で買っています。買ったパンの袋が破けてしまったときに活躍しますし、写真を撮るときに、パンの下に敷くシートとしても使うので、写真映えを意識して英字にしました。
③保冷バッグ
かれこれ2~3年愛用している保冷バッグです。パンがつぶれてしまわないようマチが大事なんですよ。これは13㎝くらいあって余裕があり、使う前は小さく折りたためるのも気に入っています。
④パンのお皿
パンのおいしそうな見た目を際立たせる木製のお皿です。お店で買ったパンを外で食べるときにあると便利ですし、写真撮影などの際も役立ちます。
⑤カッティングボード
保冷バッグに入るちょうどいい小型タイプです。ナイフとセットで、パンをカットするときに使います。
⑥折り畳みナイフ
刃先がギザギザになっているナイフ。やわらかいものも切りやすく、パンの断面写真を撮影するために使用。先日石川県の金沢へ行って新調したばかりです。
これらを保冷バッグにインしてパンを巡るとのこと。たくさんのパンを持ち帰られるよう荷物は最小限にしているそうです。
地元の人たちに愛されるドイツパンのお店「Bergfeld 雪ノ下本店」
最後に訪れたのは、ベルグフェルド雪ノ下本店。ドイツパンを専門とする1980年創業の老舗店です。
ベルグフェルドは、雪ノ下本店と長谷店の2店舗を展開しています。雪ノ下本店は地元の人に愛されていて、近所の憩いの場になっているよう。鎌倉駅から離れていて、観光地とは違う鎌倉の日常の空気が感じられます。一方、長谷店は観光地である長谷寺の近くということもあり、観光客が多く訪れるお店になっています。
昔のパンは保存料が多く、そうではないものを作りたいとオーナーが脱サラして神戸の『フロイドリーフ』へ修行に行きました。そこで習得した技術を元に、ベルグフェルドのパンが生まれたのです。
※フロイドリーフ…日本でドイツパンの文化を広げた歴史的なお店。多くのパン好きが訪れるお店で、教会の建物を改装した厳かな空間になっている。
お店の売りを聞くと「こだわりすぎていないところ」なのだそう。ドイツパンは本来、ライ麦を使ったサワー種という発酵種を使い、酸味がある味わいで、日持ちするのが特徴です。しかし、ベルグフェルドのパンは硬さや酸味などを抑え、日本人に合うものにしているとのこと。
片山さんのおすすめのパン3種をご紹介します!
①カイザーゼンメル
ドイツの朝食パンで、石臼で挽いた貴重な粉を豊富に使用。カイザーはドイツ語で「皇帝」という意味で、模様が王冠に見えることからつけられています。白ゴマと黒ゴマの2種類があって、黒ゴマが人気です。
②ザルツブレッツェル
ドイツの代表的なパンといえば、この特徴的なかたちのプレッツェル。一説によると、下の輪っかが腕を組んでいるかたちを再現しているのだそう。細いところがカリっとして、太いところはふわっとした、食感のコントラストが特徴です。
③トースト
ベルグフェルドの一番人気のパンは「トースト」。商品説明のポップに「まず最初はこちらから」と紹介されている看板メニューです。「焼く」ことでよりおいしさを感じられることから「トースト」という名前がつけられました。
お店の隣にはカフェが併設されており、ウッディな店内はゆったりとした時間が流れています。ベルグフェルドで購入したパンやサンドイッチ、ケーキなどスイーツを食べることができます。
地元民の憩いの場に、片山さんはすっかり溶け込んでいました。
お店の隣にはハム屋さんがあって「そこのハムも一緒に買ったら絶対パンと合う!」と目を輝かせていました。
Bergfeld 雪ノ下本店
住所:〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下3丁目9−24
営業時間:
[SHOP]10:00~17:30
[CAFE]11:00~16:30
(ランチ ラストオーダー15:00、ドリンク ラストオーダー 16:00)
定休日:月曜日、火曜日
電話:0467-24-2706
Webサイト:http://bergfeld-kamakura.com/
Twitter https://twitter.com/bergfeld1980
駐車場あり
旅の終わりは夕日を眺めながら
四季折々の楽しみ方ができる鎌倉はドライブに最適な場所。
春から夏にかけては桜や紫陽花など季節の花が咲き、秋は紅葉に彩られ、季節毎に様々な景色を楽しむことができます。そして、鎌倉の海岸エリアは海が綺麗に見えるスポットがたくさんあります。なかでも稲村ヶ崎〜七里ヶ浜地区は、江の島と富士山を一望できます。
鎌倉には、おいしいパン屋さんが郊外にもたくさんあります。JRや江ノ島電鉄で巡ることもできますが、自然の景色と一緒に楽しむなら、人出の多くない時期にはクルマが断然オススメ。
海辺にクルマをとめて、海に沈む夕日を眺めてパンを頬張れば、身も心もチャージ完了。海の近くの食事はトンビに気をつけなければいけないですが、クルマがあれば、守ってくれます。
鎌倉のパン巡りもそろそろおしまいです。片山さんに感想を聞きました。
今回の鎌倉パン巡りも収穫があったようです。片山さんのパン旅は続きます。
文/ツマミ 具依
写真/長野 竜成
編集/望月 祐 (LIG)