宿泊やアウトドアアクティビティをともなう旅、あるいは帰省時といった、長距離かつ長時間のドライブ時に利用できると助かるのが立ち寄り湯。とりわけ、行き帰りの途中にある道の駅に併設されていると、お土産を買ったり食事を取ったりするついでに汗も流せる、とあって効率的ですよね。そんな入浴施設のある道の駅ですが、実は全国でおよそ150ヶ所もあるのだとか。そこで道の駅キュレーターの守屋之克さんに活用術を直撃。立ち寄り湯を上手に利用して旅の疲れを癒やしましょう。
- 守屋 之克(もりや ゆきかつ)さん
- ゼンリンにてガイドブック『道の駅 旅案内全国地図』編集長として取材活動を続けるうち、道の駅に精通。独立後は「道の駅キュレーター」として軽キャンパーで全国の道の駅を巡り、その魅力を発信している。FMヨコハマ「Lovely Day♡〜hana金〜」に月イチ出演中
- Twitter @moriyayukikatsu
目次
立ち寄り湯のある道の駅は全国に約150ヶ所
旅行や帰省といった宿泊をともなうロングドライブ時は、1日の終わりに、あるいは仮眠の前にお風呂に入りたくなるもの。日帰りのレジャーだとしても釣りだBBQだと外で1日遊ぶと帰り際には汗を流したくなりますよね。となれば、ナビで温泉やスーパー銭湯といった公衆浴場を検索するわけですが、それ、道の駅にあったらめちゃくちゃ便利ではありませんか?
「実は、立ち寄り湯のある道の駅は全国で150ヶ所以上もあるんです」
と話すのは、元『道の駅 旅案内全国地図』(ゼンリン)編集長で、現在は全国1,198ヶ所コンプリートを目指し、軽キャンパーで旅をしているという道の駅キュレーターの守屋之克さん。
守屋さん:そもそも道の駅は、一般道におけるサービスエリア、パーキングエリア(高速道路)を目指して、各自治体が国土交通省に登録申請して設置する休憩施設です。みなさんご存知のとおり24時間利用できるトイレと駐車場のほかに地域の魅力をアピールする物産店や飲食店、展示コーナー等が併設されているんですが、なかには宿泊施設や立ち寄り湯まで備えた道の駅も登場しました。
守屋さんいわく、約150ヶ所の立ち寄り湯には本格的な温泉もあれば沸かし湯もあり、足湯までくわえると180ヶ所以上にものぼるそうですが、いずれにせよドライブの疲れを癒やすのにはありがたい。そこで、実際に道の駅の立ち寄り湯の使い心地はどんなものかを検証すべく、関東近郊で守屋さんのお気に入りという道の駅こすげ(山梨県小菅村)にある「小菅の湯」を体験することに。
守屋さんの相棒・軽キャンパーを紹介
この日は守屋さんにもお越しいただいたのですが、その前に愛車を拝見できませんか! すごい軽キャンパーですね。
守屋さん:2010年に買ったスズキ・エブリィベースの軽キャンパーです。購入金額は250万円くらい。道の駅コンプリートの旅をともにして走行距離はかれこれ14万kmを超えましたが、ポップアップルーフが付いているので最大家族3人での車中泊もできるし、取りまわしが良いので日常使いできるし、とても気に入っています。
テントに変身するポップアップルーフばかりに目がいってしまいますが、車内にはそこかしこにオーセンティックな木製の収納やキッチンシンクまでレイアウトされていて便利そうです。
守屋さん: 後から自分で収納ボックスなんかを用意すると、どんどん車内が狭くなってしまうので、この備え付けの収納は決め手でもありましたね。流し台は折りたたみ式のものが付いてますが、長期の旅だと給水と排水が困るので良し悪しです。
ちなみに近年の軽キャンパーブームもあり、10年落ちながらリセールバリューも良いとか。これは良い買い物でしたね。おっと閑話休題。
おすすめの道の駅こすげ・小菅の湯に行ってみた
そんな守屋さんと小菅の湯に浸かってきたのですが、たしかにヌルヌルの高アルカリ泉で、肌はもちろん疲労回復にもよさそうですね。近隣の山を登ってきたハイカーたちがこぞって利用するのもうなずけます。いま流行りのサウナも併設されていますし、なにより浴場以外のエリアも広く、お食事処や休憩室、整体コーナーはもちろんのこと、貸切個室に無料のマッサージチェア、仮眠専用コーナーまで用意されていて、これは1日滞在したいやつかも!
「特にオープンまぎわの一番風呂がサイコーですよ」と守屋さん。
小菅の湯のほかにも物産コーナーやレストランも充実している道の駅こすげ。
守屋さん: 最近は大手のコンサルタントが入って非常にマーケティングが上手な洗練された道の駅が増えてきており、どこも人気が高いです。それも決して悪くはないんですけども、わたし個人としては道の駅こすげみたいな素朴だけど、地域の人たちの熱い想いが伝わってくるような手作り感あふれた道の駅が大好きなんです。その気持ちにこたえたくて思わずお土産をいっぱい買って帰ってしまいますね。
事実、源流レストランで提供している石窯で焼いた「小菅産ヤマメのアンチョビ ヒラタケのクリームピザ」(1,400円)は絶品。「小菅産ヒラタケとソーセージのペペロンチーノ」(1,300円)も大盛りにしちゃったんですが、2人でぺろりとたいらげてしまいました。
売店も地場の新鮮野菜をはじめ、敷地内で焼き上げたパンや手作りのお弁当などが目白押しなんですが、後の話にもかかわってきますのでこのへんで。
電話番号:0428-87-0765
営業時間:11時〜15時(平日)、11時〜16時(土日祝)
定休日:水曜日(臨時休業あり)
道の駅の入浴施設を上手に利用するコツ
ところで小菅の湯をはじめとした、道の駅の入浴施設を利用するにあたって上手な利用方法ってあるんでしょうか?
守屋さん: まずは下調べが大事。道の駅(のお湯)の特色をあらかじめ調べておくとより魅力が堪能できます。たとえば「源泉かけ流しでゆっくりつかれる」ですとか、「早朝から営業していて朝日が拝める」「海に沈む夕日を眺めながら入浴できる」といった、その施設ならではのウリを調べておけば、おのずと訪問に最適な時間帯もわかるんです。
なるほど。せっかく行くならば、ウリを堪能できないともったいないですもんね。下調べでいえばシャンプーやタオルといったアメニティの準備はいかがでしょう?
守屋さん: 道の駅に併設されているような入浴施設は、ほぼアメニティ完備なのでタオルさえあれば困ることはありませんが、まれに何にもないところもありますので、事前に調べるか、念のため一式をクルマに載せておくと安心ですね。温泉地の共同浴場を利用するときにも使えますし。
入浴施設にあるシャンプー・リンス類って自分が普段愛用しているものと違うので用意しておいた方がいいかもですね。
守屋さん: そもそもですが、立ち寄り湯のある道の駅って人気が高く、混んでいることが多いんですよね。なので、混雑前提で利用された方がよいかもしれません。RVパークやキャンプ場が併設された道の駅もありますので、お風呂ではサッと汗を流してゆったり過ごすのはそちらで……と割り切った方がよい場合もありますね。
となると、そのまま道の駅で宿泊および仮眠していくことになりますが、気になる食事は?
守屋さん: 通常のスーパー銭湯なんかだと夜遅くまで飲食施設が空いていますが、道の駅は閉まるのが早いので、入浴後でも食べ物が手に入ると思わない方が無難です。実際、小菅の湯のお食事処は16時ラストオーダー。道の駅側の物産館も17時には閉まりますので、できれば入浴前にお弁当類を買っておくことをオススメします。
たしかに地方だとコンビニすらないところもありますからね。幸い道の駅こすげはお弁当やおにぎり類がめちゃくちゃ充実していますので、まずは入浴前にしっかり確保しておくのがポイントです。
マナーやルールも大切! 道の駅利用時の注意点
道の駅でひとっ風呂あびて、車内でご飯も食べ、となると眠気に襲われ車中泊という流れになろうかと思うんですが、そんな時の注意点も守屋さんから伺いました。
守屋さん: そもそも 道の駅での車中泊はNGです。そのために近年はRVパークが併設されている場所も増えています。あくまで常識の範囲内での仮眠、という前提でお話しすると、「道の駅は無料で24時間使えるトイレ&駐車場である一方、地域にお金を落とす重要な拠点でもある」ということを理解してほしいんです。私も一晩お世話になったら早朝に立ち去るのではなく、店舗オープンを待ってお土産を物色するようにしています。実際早朝のほうがいろんな農産物が並んでいて楽しいですよ。
地域の方へのリスペクトをお忘れなく、ということですね。
守屋さん: あと、狭い車内で息が詰まるのもわかりますが、だからといってテーブルや椅子を外に出して我が物顔でくつろいだり騒いだりするのはご法度です。「誰もいないからいいじゃん」は自分の都合でしかなく地域の方が見ている場合もあります。また、ゴミを捨てていくのも基本的にNG。また来てほしいと思われるような行動を取りたいものです。
なるほど。一方で仮眠時のセキュリティに関しては?
守屋さん: たしかに人が常駐するキャンプ場や宿泊施設ではないので、夜間の利用はリスクがつきまといます。特にひとけのない場所や照明の少ない場所は防犯的に不安です。かといってトイレ近くや道路沿いは夜間ひっきりなしに人やクルマが出入りするので寝つけないことも。少しでも危険を感じたらすぐ移動できるよう準備しておくことも大事かなと思います。
事前にしっかり対策を練っておいた方がよいかもしれませんね。
守屋さんオススメ全国の立ち寄り湯5選
最後に道の駅キュレーター・守屋之克さんが今まで訪れて印象に残った、道の駅の湯5選を紹介いただき、本稿を締めくくろうと思います。
青森県 道の駅浅虫温泉・ゆ〜さ浅虫 展望浴場はだかの湯
「早朝7時から営業している温泉です。夜間に北海道から津軽海峡を渡って朝風呂に浸かるのがオススメ。青森湾を見下ろす展望風呂が魅力です」(守屋さん。以下同)
秋田県 道の駅象潟(きさかた)・展望温泉 眺海の湯
「日本海に沈む夕日を見ながら入浴できる展望風呂が魅力。東北最大級の施設なので、お土産選びも楽しいですよ」
栃木県 道の駅きつれがわ・きつれがわ温泉&クアハウス
「日本三大美肌の湯のひとつ、喜連川温泉の道の駅。アルカリ性のヌメっとしたお湯が特徴。足湯では蒸気の熱で温泉タマゴが作れます」
静岡県 道の駅川根温泉・川根温泉 ふれあいの泉
「時刻表にあわせて入浴すると、露天風呂から大井川鐡道のSLを見ることができる、全国でも珍しい温泉です」
大分県 道の駅ながゆ温泉・御前湯
「ラムネの湯と呼ばれる、炭酸水素塩泉のお湯が魅力。温泉の成分が床にこびりついた感じも歴史ある湯治場の風情があります。川沿いに建つ、モダンな建物の雰囲気もいい」
文/熊山 准
写真/熊山 准、守屋之克
編集/熊山 准、TAC企画
撮影協力/道の駅こすげ