クルマ旅で日本一周した夫婦に聞く! 休日に行きたいおすすめローカル旅

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「MUJIキャラバン」で、2012年にクルマで日本一周する旅へ出た長谷川さんご夫婦。地域に根付いた「良いモノ」や「良い食」を見つけるため、全国47都道府県を約1年かけて津々浦々…。ガイドブックや旅行サイトからの情報だけでは知り得ない、「クルマだから行けるローカルスポットの魅力」について聞きました。また、日本一周の旅から10年を経た現在の活動内容についても伺いました。

目次

長谷川家のみなさん

長谷川家のみなさん
浩史さん(夫)、梨紗さん(妻)、結一くん(長男)、永真くん(次男)の4人家族。2010年に夫婦で1年間、世界一周の旅へ出る。日本に帰国後「MUJIキャラバン隊」の活動をスタート。現在は、神奈川県川崎市に地域の編集プロダクション「くらしさ」を設立し、日本各地の暮らしのなかで育まれてきた地域特有の文化に目を向け発信している。
MUJIキャラバン https://www.muji.net/lab/blog/caravan/
くらしさ https://www.kurashisa.co.jp/

 

MOKKI NO MORIの風景

檜原村にある会員制アウトドアフィールド「MOKKI NO MORI」

今回取材で訪れたのは、島しょ部を除くと東京都で唯一の村「檜原村(ひのはらむら)」。村の約7割が「秩父多摩甲斐国立公園」に含まれており、自然のエネルギーをたっぷり感じられるエリアです。広葉樹が多く残る自然林に囲まれたキャンプ場や森の恵みを生かした体験型美術館「檜原 森のおもちゃ美術館」など、豊かなアウトドアライフを楽しめます。

長谷川 浩史さんおすすめのローカルスポットです。

檜原村で過ごす長谷川さんご家族

取材前の長谷川さんご家族の様子

 

世界一周を経て日本のローカルを巡る「MUJIキャラバン」の旅へ

「MUJIキャラバン」のクルマ

「MUJIキャラバン」で愛用していたクルマ。 訪れた都道府県のマークをステッカーにして貼り付けていたそう

始めに「MUJIキャラバン」のコンセプトや活動内容について教えてください。

長谷川 浩史さん(以下、浩史さん): 「全国各地の良いくらしを探す」をコンセプトに47都道府県を巡り、地域のヒト・モノ・コトについて無印良品のWebサイトで発信していました。流行りに左右されず何年経っても廃れることがない地域特有の文化に、改めてスポットライトを当てるための活動です。

 

無印良品との共同プロジェクトだと思うのですが、どういった経緯でスタートしたのでしょうか?

浩史さん:「MUJIキャラバン」の旅に出る1年前に夫婦で世界一周の旅をしていたのですが、海外の人がイメージする日本文化にズレを感じることがよくありました。海外の日本食レストランで「この味付けは違うだろ〜」というような料理を提供されたり…。そんな中、海外で無印良品の店舗に訪れる機会が何度かあったのですが、日本発の衣・食・住のライフスタイルを伝えていることに感動しまして。帰国後何かご一緒できないかと思い描いてました。

 

あ〜、確かにときどき聞きますね。日本人は毎日お寿司を食べていると思われているとか。無印良品へのアプローチは、帰国後に始めたのですか?

浩史さん:たまたま知り合いのデザイナーさんが無印良品とつながっていて、世界一周をしている最中に「帰ってきたら一緒に何か提案しない?」と幸運にも連絡をもらったんです。

長谷川 梨紗さん(以下、梨紗さん):世界一周では41カ国128都市を巡ったのですが、最後に訪れたアメリカで連絡を受けました。パワースポットとして知られるセドナに立ち寄っている最中でした。

浩史さん:さすが世界を代表するパワースポット! と思いましたね。

ボイントン・キャニオン

セドナのボイントン・キャニオン。 パワースポットの力は侮れない…

知り合いのデザイナーさんを通じて無印良品とつながったんですね。「MUJIキャラバン」のコンセプトを提案したとき、無印良品はどんな反応をされてましたか? 

浩史さん:無印良品では、2011年から「Found MUJI」という活動で、永く廃れることなく生かされてきた日用品を世界中から探し出し、それを生活や文化、習慣の変化に合わせて少しだけ改良して販売していこうという取組みを始めていたんです。そこには新たにつくるのではなく、地域の風土から生み出され、歴史の風雪に耐え抜いたものを「探し、見つけ出す」という視点があったので、日本国内津々浦々を回って良いものを探し出す「MUJIキャラバン」にも興味を示してもらえました。

 

ローカル旅で出会った、文化をつなぐキーパーソン・資源が生まれる場所

インタビューに答える浩史さん

「MUJIキャラバン」の旅で、印象に残っている場所はどこですか?

浩史さん:岩手県の釜石鉱山(かまいしこうざん)は印象に残っています。無印良品の化粧水にも使われている「仙人秘水」の源泉があり、トロッコで鉱山内部まで行って湧き水を採取させていただきました。

釜石鉱山の内部

梨紗さん:採取した水をその場で飲むと、滑らかな喉ごしで優しい潤いを体に取り入れているような感覚がありました。

浩史さん:標高1147mの大峰山(おおみねさん)に降り注いだ雨水や雪解け水が、分厚い岩盤を何十年もの時間をかけて通過してきているため、鉱山自体が天然の巨大ろ過装置になっています。日本で2番目に非加熱でも出荷して良いと許可を受けた「ナチュラルミネラルウォーター」で、味も格別でした。

 

採取現場まで行ったとは! スペシャルな体験ですね。

インタビューに答える長谷川さんご夫婦

楽しそうに当時の思い出を語ってくれました

他の地域でのエピソードについても聞かせてください。

浩史さん:工芸、染織、林業、農業など、地域の文化に携わるあらゆる人と出会える旅だったので、そういった方々への取材はどれも印象に残っています。現地での聞き込みやSNSなどを活用しながら、地域のキーパーソンを見つけて取材をしていました

 

キーパーソンとは、どんな人ですか?

浩史さん:①土地に根差した原料や技法を使ったモノづくりをしている、②地域の活性化につながる活動をしている、③伝統文化を現代の暮らしに生かすカタチに昇華している。これら3つを満たす人のことです。

 

なるほど。そういったキーパーソンとの出会いも、ローカル旅の価値を高めてくれそう!

浩史さん:秋田県の男鹿半島(おがはんとう)では、「MUJIキャラバンの方ですか?」と声をかけてくれた人がキーパーソンでした。地元でカフェを経営されていて、男鹿半島の伝統行事である「なまはげ」の役も担うような方でした。

梨紗さん:その方に秋田県の伝統工芸品「大館曲げわっぱ」のプロデューサーをご紹介いただき、その足で会いに行きました。天然秋田杉を使った曲木細工の技術を現代の生活スタイルに生かすため、わっぱの時計や鏡なども商品化している方でした。

掛け時計

曲げ細工を使った時計

梨紗さん:クルマで移動していたので、気になるキーパーソンがいればすぐ会いに行き、工房などでモノづくりの現場を見学させてもらいました。また、彼らが地域に対して抱いている思いや夢などを直接聞けたのも良かったです。

浩史さん:「MUJIキャラバン」の活動としてさまざまなヒトや場所を取材してきたのですが、こういったプロジェクトに関係なく、地域へ行ったときは宿泊先や工房で働くヒトといろいろなお話をすることでローカル文化を体感できます。

 

クルマ旅ならではの魅力って何?

幹線道路沿いで露天販売しているアイス屋さん

秋田県の夏の風物詩「ババヘラ」

「MUJIキャラバン」での経験を通じて、長谷川さんご夫婦が思うクルマ旅の魅力って何ですか?

浩史さん:地方をクルマで走行していると、思わぬところにカフェや食堂、工房やショップなどが出現します。その度に立ち寄れることが一番の魅力だと思います。バスや電車などの公共交通機関で途中下車すると、1時間待ちなど普通にあり得るので…。

 

ポツンと一軒家ならぬ、ポツンとお店屋さんですね! 思わず立ち寄ったお店などはあるのでしょうか? 

梨紗さん:秋田県の幹線道路沿いを走行していると、「ババヘラ」というアイス屋さんが不意に現れるのですが、思わず立ち寄りました。おばさんがヘラでアイスを盛ってくれることから「ババヘラ」と呼ばれています。

ババヘラアイス

ピンクがイチゴ風味、黄色がバナナ風味。 バラのように盛り付けて提供してくれる

梨紗さん:出発するときに「美しい風景には必ず足を止め、写真に収めること」を活動指針の一つにしていたのですが、きれいな景色との出合いもクルマ旅ならではの魅力だと思います。

 

でも、世界を回られたお二人からしたら少し物足りなさそう。海外の絶景はとんでもないスケール感なので…。

浩史さん:確かに南米のウユニ塩湖など、自然によって生み出された絶景には圧倒されましたが、海外とは違う日本特有の景色も同じくらい心に響きました。

ウユニ塩湖でジャンプをする長谷川さんご夫婦

ウユニ塩湖。「こんな絶景を見ると、 やっぱり飛びたくなります」(浩史さん)

日本特有の景色とは?

浩史さん:ヒトの営みを感じられる景色です。棚田や段々畑など、ヒトの営みの過程によって生まれる景色を見ると心動かされました。地域特有の風景は食文化にひもづいていることも多く、地方を巡っているとさまざまな景色があって興味深かったです。

美瑛の絶景

北海道美瑛(びえい)の丘陵地帯。 「麦・ジャガイモ・豆・ビートなど区画ごとに苗が違い、パッチワークのようでした」(浩史さん)

棚田の絶景

千葉県鴨川市の棚田。 「真っ赤な夕日が田園に映る風景は筆舌に尽くし難いものでした」(浩史さん)

梨紗さん:住文化とひもづいた光景にも感動したのですが、富山県の「散居村(さんきょそん)」もその一つ。広大な耕地の中に民家が点在していて、民家と水田と畑のコラージュが素晴らしかったです。

散居村

「散居村」という言い方は富山県特有の呼称

どれも素敵です! こういう絶景に遭遇したときは、少し立ち止まってじっくり眺めたいですね。

浩史さん:事前に行き先をきっちり決めず、1日の流れも柔軟に変えられるクルマ旅だったからこそ、たくさんのキーパーソンに出会え、その地域ならではの絶景も見られたと思っています。

 

産直EC「諸国良品」スタート。地域のキーパーソンたちとのつながりは今も続く

長谷川さんご夫婦と東京チェンソーズとの対談風景

ここからは、「MUJIキャラバン」で出会った 「東京チェンソーズ」の青木さん(右端)・木田さん(右から2人目)との対談です

地域ならではの資源や文化を生かした日用品について、MUJIキャラバンのブログで紹介していた長谷川さんご夫婦。記事の更新を続けているうちに、読者から「どこで買えますか?」などのコメントが寄せられるようになったそう。そこで、「MUJIキャラバン」の活動後、無印良品として産地直送のEコマースサイト「諸国良品」を立ち上げることとなり、地域の生産者と購入者を結ぶ活動へとつながっていきました。

この「諸国良品」の運営を通じて、「MUJIキャラバン」で出会った地域のキーパーソンとのつながりも継続しています。檜原村にある林業会社「東京チェンソーズ」の青木さんや木田さんもそう。「諸国良品」で「東京チェンソーズ」のプロダクトを販売したり、ワークショップを一緒に企画したり、現在でも交流が続いています。

皆さんに当時の思い出話や最近の活動内容についてお話いただきました。

対談中の長谷川さんと木田さん

長谷川さんご夫婦が「東京チェンソーズ」を知ったきっかけを教えてもらえますか?

浩史さん:「東京チェンソーズ」さんは、当時(2012年頃)から林業界で注目されていて、高知県や宮崎県に訪れたときから噂を聞いていました。「檜原村におもしろい活動をしているキーパーソンがいるから、絶対に行け!」と。若い人たちが集まって、林業の新しいスタイルをつくろうとしている青木さんや木田さんの考えに驚いたのを覚えています。

青木さん:創業当初から、補助金にだけ頼るのではなく自分たちの手でどんどん新しいことに挑戦しようと考え、やってきました。衰退したと言われていた業界の課題と向き合い、木を育てて売るだけではない林業のスタイルを模索していました。

木田さん:山に苗木を植え、30年かけて森を育てる会員制の「東京美林倶楽部」にはこれまでに約260組の方が参加しています。年に1回開催するイベントでは、自分で植えた木の周りの草を刈ったりしながら、檜原の森で過ごす時間を楽しんでくれてます。また、キャンプやアウトドアのワークショップを通じて、森の中で遊ぶ楽しさや気持ちよさを提供する「MOKKI NO MORI」というサービスに社有林を使っていただくこともしています(運営:MOKKI株式会社)。

森で過ごす東京美林倶楽部の会員の皆さん

東京美林倶楽部の会員は年に1回程度、草刈りなどのイベントで集まり、森での時間を過ごす。

MOKKI NO MORIで遊ぶ結一くん、永真くん

実際に今回の取材中、結一くん、永真くんは 山の中を自由気ままに駆け回り自然と触れ合っていました

木田さん:長谷川さんと一緒に、木の心地よさを子どもたちに伝えるワークショップを企画したこともありましたよね?

浩史さん:ありましたね。子どもと一緒にコースターや鍋敷きをつくるワークショップを企画しました。そのときつくったコースター、まだ使っていますよ(笑)。コロナの影響で最近は開催できていませんが、近いうちに復活できたら良いなと思っています。

森デリバリーで使用するクルマ

この「森デリバリー車」で、都心部へワークショップに赴くことも

青木さん:ぜひまた一緒にやりたいですね。私たち「東京チェンソーズ」は、都心に暮らしている人たちにもっと森の存在を身近に感じてもらいたいと考えています。そのため、今後はより幅広いニーズに応えられるようなプロジェクトも計画中です。「木のある暮らし」の実現を目指して、今後も林業を盛り上げていきたいと考えています。

インタビューに答える青木さん

青木さんたちの挑戦はまだまだ続く

 

日本各地のローカル文化と出合えるクルマ旅へ

今回の取材を通じて、クルマで地域を巡ることで出合いの幅が広がるんだと感じました。
キーパーソンとなるようなヒトとの出会い、地域特有の文化にひもづく景色との出合い、地域資源となるスポットとの出合いなど、ローカルスポットにはさまざまな感動的な出合いがきっと待っています。そして、柔軟に行き先を決められるクルマがあれば、気になるスポットを見つける度気軽に立ち寄ることもできます。

旅先として、おすすめのエリアを長谷川さんご夫婦にお聞きしましたので一部ご紹介します。全国各地の中から、東北エリア、四国エリア、九州エリアからピックアップしてもらいました。

もちろん、東京チェンソーズがある檜原村もおすすめです!


【長谷川夫婦のおすすめ①東北エリア】
青森県「不老ふ死温泉」

不老ふ死温泉

青森県の最西端に位置する、西津軽郡深浦町の「黄金崎不老ふ死温泉」。「絶景を見ながらの温泉、おもわず長居してしまいました。大間マグロを焼いた名物の深浦マグロステーキ丼も味わえます。深浦産の天然本マグロを刺身丼、片面焼ステーキ丼、両面焼きステーキ丼の3つの食べ方で楽しめるマグロ尽くしのどんぶり御膳がおすすめです」(浩史さん)


【長谷川夫婦のおすすめ②四国エリア】
徳島県「祖谷(いや)」

かずら橋

写真は、国の重要有形民俗文化財に指定された「かずら橋」。「東洋文化研究者アレックス・カー氏が『ここには“日本の原風景”がある』とほれ込んだ地域です。彼がプロデュースした築300余年のかやぶき民家のゲストハウスもあります」(梨紗さん)

 

【長谷川夫婦のおすすめ③九州エリア】
福岡県みやま市「筒井時政玩具花火製造所(つついときまさがんぐはなびせいぞうしょ)」

筒井時政玩具花火製造所の外観


日本では数少ない線香花火を手掛ける花火屋さん。線香花火をつくるワークショップも開催しています。「日本で初めての屋内花火場を建設したり、地域のパン屋さんを集めたイベントを開催したり、ここのオーナーさんは地域のキーパーソンです」(浩史さん)


今回の記事を参考に、日本らしい地域特有のヒト・モノ・コトに出合うクルマ旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。

 

文/吉田健二
写真/中田健司、長谷川浩史
編集/ TAC企画
撮影協力/東京チェンソーズ