アウトドア×サウナは桃源郷!? 冬こそ、大自然のなかでサウナを!

外気浴を楽しむ2人の男性

ここ数年、自律神経のバランスが取れストレス軽減に繋がり、心身のリラックス効果が得られることで大人気のサウナ。そのなかでも、温浴施設だけでなく自然のなかで体験できるアウトドアサウナが注目されています。

アウトドアサウナは、夏のシーズンに楽しむイメージがあるなか、冬に体験することもできる。ということで、地球を肌で感じるサウナ付きタイニーホテル「Earthboat」の代表、吉原 ゴウさん(以下、ゴウさん)にその魅力をお伺いしてきました。

吉原 ゴウさん

吉原 ゴウさん
1982年長野県生まれ。2007年-2022年まで株式会社LIGを経営し、web制作に従事。2022年株式会社アースボートを創業し、代表取締役に就任。アウトドアスクールを経営する家庭で生まれ育ち、子どもの頃よりカヤック、スキー、山採りやキノコ狩りなどをして育つ。田舎の自然の魅力や、アウトドア体験をコアとしたビジネスをするために長野県信濃町にUターン。
X @gosan
Earthboat Instagram @earthboats

目次

 

自由に移動できるクルマ旅

林道を走行中のZR-V

公共の交通機関に比べ、圧倒的に行動の自由度が高いクルマ旅。最初から決められたルートだけでなく、旅先の環境によって途中でおいしいグルメスポットやきれいな景色を求めて寄り道もできることが大きなメリットです。さらにマイカーとなれば、乗り慣れたクルマで遠方へも安心してドライブすることができますよね。今回はホンダのSUV「ZR-V」を相棒に長野県の野尻湖へ向かいます。白樺の林道を通り、自然が深くなってきたことを横目で確認しながら、Earthboatが設置されているゲストハウス「LAMP野尻湖」へ。

目的地に到着しクルマを停めドアを閉めるところ

クルマを駐車して、さっそく大自然の空気をめいっぱい味わうカエライフ編集部一行。これからどんなお話が聞けるのか楽しみです! 

 

大自然と絶景のなか、サウナで感じられる贅沢体験

生まれ育った野尻湖をバックに土地の特徴について語るゴウさん

ゴウさんにアウトドアだからこそ感じられるサウナの楽しさや、新たにスタートさせたEarthboatについてお話をお伺いしていこうと思います。よろしくお願いします!

ゴウさん:遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。今日はぜひ楽しんでいってください。

サウナの魅力の前に、まずはLAMPがある野尻湖についてお聞きできればと思うのですが、ここはどういった特性を持った場所なのでしょうか?

ゴウさん:このあたりは日本人はもちろんのこと、外国人向けの別荘も立ち並んでいる、いわゆるリゾート地です。自分たちの父親世代は、東京から脱サラしてペンション経営をするために野尻湖がある信濃町に移住する人も多かったようです。

LAMPから一望できる野尻湖

美しい自然が広がる野尻湖をLAMPからも一望できる

ゴウさんはここ信濃町で生まれ育ち、東京に出られたんですよね?

ゴウさん:そうですね。実は信濃町には温泉がないので、通年で観光地になりづらいという側面がありまして。夏のウォーターアクティビティや冬のスキーは盛んですが、それぞれのオンシーズンだけ観光地となっている場所でした。実家はカヌーなどのアウトドアスクールを営んでいたので、安定した収入が得られないんですよ。そういうこともあって、ぼくは東京に出ようと思ったんです。何しようかと考えたときに、当時興味のあったIT業界に身を置くことにしました。

野尻湖でSUPやカヌーを楽しむ人たち

LAMPでも夏はSUPやカヌー体験サービスを提供している

そこからどのようにして、野尻湖でアウトドアサウナ事業をしてみようというところへ行き着くのでしょうか?

ゴウさん:経営していたITの会社の事業部で家業だったアウトドアスクールの事業をスケールアップさせ、宿泊施設を伴ったゲストハウス「LAMP野尻湖」の運営を行っていました。ある日、部下の野田 クラクションベベー(以下、野田さん)が「サウナを会社でやりたいので、そのためにまずは一緒にフィンランドに行ってください! 」って直談判してきまして。当時サウナは特段好きというわけではなかったんですが、フィンランドのアウトドアサウナに触れて「なんて素晴らしい体験なんだ」と驚かされました。それにフィンランドと野尻湖は、白樺などの植生や気候が同じであること、さらに湖があったりと、類似点が多かったのは運命的なものを感じましたね。当時アウトドアサウナは日本にほぼなかったのですが、手探りで始めてみることにしたのがきっかけでした。

アウトドアサウナと、温浴施設でのサウナとどのような違いがあるのでしょうか?

ゴウさん:日本の温浴施設のなかに付帯しているサウナは、あくまで入浴の延長線上の体験だと捉えています。それに比べ、アウトドアサウナは雪や湖に飛び込んだり外気浴をしながらコーヒーを飲んだりと、別の楽しみ方ができるのが魅力。これは温浴とは別物の「アウトドアアクティビティ」だと思っています。アウトドアサウナは雨天であっても楽しめるので、アウトドアの弱点である天候をそこまで気にしなくていいのも魅力ですね。

夜空を眺めながら外気浴を楽しむ3人

通年で人気のアウトドアサウナ。満天の星空を眺めながら外気浴を楽しむこともできる

ポンチョを着てインフィニティチェアで外気浴を楽しんでいる2人

秋や冬にはポンチョを着用すると、長く外気浴を楽しめる

なるほど、家業がアウトドア領域を手掛けられているからこその観点ですね…! アウトドアサウナは「夏に楽しむもの」というイメージがあります。吉原さんが思う、夏と冬のアウトドアサウナの違い、また冬サウナの醍醐味について教えていただけますか?

ゴウさん:夏は、ここ野尻湖であれば湖を水風呂代わりにすることができ、水風呂メインで楽しめます。逆に冬は寒さが厳しいので、サウナ室のなかをメインで楽しめるんですよ。つまり、気候によってメインの居場所が異なるのがアウトドアサウナの特徴ではないでしょうか。また、冬サウナの醍醐味といえば、ふかふかの雪にダイブできることですかね。そんなエクストリームな体験はなかなかできないと思います。まさにアウトドアアクティビティじゃないですか(笑)?

 

試行錯誤して完成したアウトドアサウナと、究極の施設「Earthboat」

ユクシの目の前にある熊のモニュメント

写真撮影の定番スポットになっているサウナエリア「The Sauna」にある愛らしいモニュメント

家業であるアウトドア事業をアップグレードした宿泊施設「LAMP野尻湖」にフィンランド式のアウトドアサウナを手探りで作り上げたゴウさんと野田さん。サウナエリアを「The Sauna」と命名。最初に誕生した1号棟「ユクシ」はフィンランド語で「1」を意味しています。現在では5号棟の「ヴィーシ」まであるが、作るごとに改善を繰り返しています。

どんな試行錯誤を経て「ユクシ」は完成したのでしょうか?

ゴウさん:当時サウナ小屋を作っている職人さんは周りにいなかったですし、自分たちで手作りするにもノウハウがなかった。窓の高さや換気場所、ストーブの位置など変えてみたりしていろいろと試行錯誤の日々でしたね。それもあって、結果的にすごくいいサウナができあがったと思っています。

施設の前でインタビューに答えるゴウさん

サウナ棟を増やしていったきっかけは?

ゴウさん:新しくサウナを作るたびに課題は出てくるもので、解決しながら作り続けていたら5号棟まで作ってしまいました(笑)。サウナ室では熱が上にこもるので、2階建てで作った2号棟の「カクシ」、貸切で楽しめる3時間制の3号棟、4号棟の「コルメ」「ネリャ」。そして浅い水風呂と深い水風呂の2種類が楽しめる5号棟「ヴィーシ」と、それぞれの良さがあるのでぜひ体験してみてもらいたいですね。

 

サウナ×ホテル! Earthboatの全貌を紹介

Earthboatの外観

大きく取った窓からは、美しい自然を堪能できる

LAMP内のサウナ施設の歴史をひと通りご案内いただいたあと、向かったのはいよいよ吉原さんの新プロジェクトEarthboat。その全貌に迫っていきます。

それでは、Earthboatを作った理由をまずは教えていただけますか?

ベッドが2つ置かれた室内
ベッドが2つ置かれた室内
Earthboatのプロトタイプ「スワロー」。シンプルでありながら、おしゃれな外装(左)とその室内(右)

ゴウさん:Earthboatができる前は、The Saunaのおかげもあって、LAMPがすぐに満室となってしまうという課題に直面していました。そこで外にある空いているスペースに何か作ろうという流れになり、プロトタイプで「スワロー」というトレーラーハウスを作ったのですが、水回りの設備が屋内になく、シャワーやトイレは共有スペースを利用していただいていました。ですが、ぼくは室内に水場がある、というのが「宿」として完結させるには大切な要素だと思っていまして。今までのLAMPの運営や、新棟ができるたびに出てきた課題を完全にクリアできるものとして考えたのが、Earthboatです。なので、Earthboatはサウナと宿泊、水回りが一体となっている施設になります。

なるほど、今までの経験も踏まえながら課題解決できる施設ということなんですね。とくに力が入っていそうな、Earthboatのサウナについても教えてください。

施設の前で外気浴を楽しむ2人の男性

施設の前で外気浴を楽しむ2人の男性
施設の前で外気浴を楽しむ2人の男性
どんな季節でもコンディション抜群のサウナが楽しめる

ゴウさん:アウトドアサウナは、室内の空気が外気と直接触れ合うのでサウナ室の温度が下がりやすい。サウナ室を高温に保てないということは、薪ストーブからの熱だけに頼ってしまうということになり、そうすると体の表面ばかり熱くなって、体を芯から温めるのにかなり時間がかかってしまいます。これに対応するために、建材に「CLT」というものを使っていることが大きな特徴です。CLTは、簡単にいうと繊維方向を交差させた板を何枚か貼り合わせて作った、蓄熱性の高い板です。ヨーロッパではCLTを使ってビルまで作るほどメジャーな建材になっているんですが、日本だとまだまだ流通していないんです。

蓄熱性が高い板なら、まさにサウナにうってつけですね!

ゴウさん:そうなんです。ストーブに火を入れるとすごくいい温まり方をしてくれるんですよね。このCLTは、Earthboatの部屋の壁などにも使用しています。

CLTを使って建築されたEarthboatの室内

おしゃれなだけでなく、圧迫感をなくすために計算し尽くされた設計なのだという

キッチンで飲み物を注ぐ吉原さん

「宿として完結させるためには水場の設置は必須」と話してくれた通り、素敵なキッチンやシャワー、トイレが備わっている

温度を保たないといけないのは、サウナ室だけでなく部屋も同じですよね。

ゴウさん:はい、信濃町の冬は厳しい寒さで、マイナス10~15℃くらいまで下がる日も度々あります。ですが、CLTでできたこの部屋は、小さいエアコン1つを備えるだけで温もりがキープされた状態になるので、十分くつろぐことができます。宿泊スペースで雄大な大地を目の前に、コーヒーを飲んだりしてリラックスするのが、Earthboatの空間を最大限楽しんでもらえる方法だと思います。

 

全国各地で素晴らしい自然体験ができるように

Earthboatの居室で今後の展望を語る吉原さん

Earthboatのこの先の展望について教えてください。

ゴウさん:日本中のさまざまな場所で、この素晴らしいアウトドア体験をいろんな人にしてほしいんです。そんな想いもあって、Earthboatをトレーラーハウスにすることで移動できるようにし、全国各地に供給できるようにしています。ありがたいことに、すでに全国の事業者の方々からお問い合わせをいただいています。ただ、どの場所でもマッチするのかといったらそうではなく「広くて絶景が見られるところ」「豊富な水源がすぐそばにあるところ」が相性のいい土地なんじゃないかなと。やはり、いい景色のなかでアウトドアサウナを体験してほしいですからね。

ゴウさんの経験が全て礎となってできあがった集大成の施設のように感じますね。

ゴウさん:そうですね。web制作の会社をやっていなかったらデザイン面や自社のwebのクオリティを上げることはできなかったでしょうし、LAMPでアウトドアサウナをいち早く始められたからこそ、利用者側の目線に立って快適な体験ができるものが作れたのだと思います。今後は、アウトドアサウナをより多くの方に体験してもらえるように、さらにEarthboatをバージョンアップさせながら全国各地に展開していく予定です。近況をInstagramにアップしていくので、随時チェックしてもらえたらうれしいです。

 

季節、天候に左右されないアウトドアサウナは、自然とより一体となって楽しめるアウトドアアクティビティであることがわかりました。アウトドアサウナをより快適に体験できるEarthboatをすぐに体験してみたい方は、一度LAMP野尻湖に足を運んでみてはいかがでしょうか!

 

文/古郡 充彬
編集/濱松 教道、TAC企画
写真/守澤 啓佑、株式会社アースボート
撮影協力/LAMP野尻湖、サウナボーイ