「新潟県」を舞台に愛車・白くまと旅をする、イラストレーターのいとうみゆきさん。最終回となる今回は「日本海夕日ライン」をさらに進みつつ、上越地方を散策します。歴史の深いお店や海沿いのRVパークなど……、上越地方でも胸が高鳴るスポットの数々と出合えました。
▼プロフィール
- イラストレーター いとうみゆき
- 埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
- X @noca_m
- Instagram @nmoytke
- HP ito miyuki's illustration
新潟県の海岸線に沿った道路、「日本海夕日ライン」を走り抜ける旅もついに最終回を迎えました。最後に訪れるのは新潟県南西部である上越地方です。
新潟クルマ旅ももうおしまいなので、いろんなお土産を集めながら進めるといいな。
そんなことを考えながら、気になる場所を巡っていきます。
①日本一古い飴屋さん「髙橋孫左衛門商店」
まずは江戸時代から400年続く、日本一古い飴屋さん「髙橋孫左衛門商店」にやってきました。
創業は寛永元年。日本で一番古い飴屋さんで、販売する飴は参勤交代の際のお土産に使われたり、『東海道中膝栗毛』の十返舎一九による『越後道中記・金の草鞋』のなかで紹介されたりと、長い歴史を持ちます。
駐車場も広く、ツアー客のバスも訪れていました。
店内には実にさまざまな飴が並びますが、特においしかったのが、素朴な甘みともちもちの食感がたまらない「翁飴(おきなあめ)」です!
水飴に寒天をまぜて作られているため、やわらかい食感になっているそう。味も見た目も上品かつやさしくて、お気に入りの一品になりました。
ずっと昔の人たちが楽しんでいたおやつを今でも楽しめるうえに、味もおいしくって大満足。深い歴史に思いを馳せつつ、小腹も満たされました。
ドライブ中に何か食べたくなったときのおやつとして白くまのポケットに忍ばせることに。日持ちがいいのでクルマ旅のおやつにもぴったりです。
他にも新潟産のもち米から作られた「粟飴」や、夏目漱石の『坊ちゃん』にも登場する「笹飴」、お土産用にカラフルな翁飴「あられ飴」などを購入。
地元産のもの、歴史のあるものを食べることができて静かな感動も覚えます。自分用にもお土産用にも、おすすめの飴屋さんです。
住所:新潟県上越市南本町3-7-2
TEL:025-524-1188
営業時間:8時30分~18時30分頃
定休日:毎週水曜日
URL:http://www.etigo-ameya.co.jp/
②ヒスイ探し「ラベンダービーチ」
「髙橋孫左衛門商店」を出たあとは、有名な「ラベンダービーチ」を目指してドライブ。
ここは新潟県糸魚川市を流れる青海川の上流で産出されたヒスイが漂着する、石好きの間でも人気の高いビーチとのこと。そう、美しいヒスイが見つかるんです。
広場前の駐車場に白くまを停めて散策スタート!
どこまでも続く浜辺と澄み切った青い海、空がとっても美しいビーチは、お散歩コースとしても人気みたい。
早速ヒスイを探してみます。それらしきものをいくつか見つけましたが、はたしてこれはヒスイなのか……。
一瞬ヒスイかと見間違うものの、厳密にはヒスイと異なる石のことは「キツネ石」というらしいです。私も何度かしっかり騙されました。
でも、ヒスイ以外の石もそれぞれ個性があって、なんだか良い味を醸し出しています。
そして石が多いからか、波が押し寄せるたびにシャラシャラと音がします。耳を澄ませば、心が洗われていくようです。
しっかりした装備で石拾いに励む人たちもちらほら。
近くには拾った石がヒスイかどうかを鑑定してくれる場所もあるそうです。いつかゆっくり石探しをして、鑑定までやってみたいな……!
③北陸道の最大の難所「親不知子不知」
ラベンダービーチのあたりは絶好のシーサイドドライブスポット。
美しい景色を通り過ぎていくときの爽快感はやみつきになるし、トンネルを抜けるときには屋内ジェットコースターみたいなワクワク感を味わえます!
そういえばこのあたりには「もしもしピット」という、携帯電話などを操作できる道路沿いの駐車帯が用意されていました。私の地元では見たことないスペース。地域によって道路にも違いがあって、そこに気がつけるのもクルマ旅の良いところです。
そんななか、今回新しく覚えた道路用語(?)があります。その名も「覆道(ふくどう)」!
景色を楽しめるタイプの珍しいトンネルだと思っていたのですが、実はこれ、雪崩や落石から道を守るために作られた重要な防護用建造物とのこと。ただの珍しいトンネルじゃなかったんですね。
今回通ったのは「ロックシェッド」という、落石から道路を守るための覆道です。
でも、どうしてその覆道が建造されているのか。なんていったってここは……
上も下も断崖絶壁、崖の間に作られた国道だからです!
そして下には荒波……。
遠くからでも「ドゴオッ、ボゴオッ!」と恐ろしい音が聞こえるくらいの、迫力ある場所でした。
しかもなんとこの荒波が押し寄せている浜辺が、旧北陸道の一部。明治天皇の北陸巡幸をきっかけに上の国道が開通するまで、この道が使われていたといいます。
狭い砂浜を通ることは多くの旅人にとって命懸け。波に飲まれてしまうことも少なくなかったそうです。古くから交通の難所として知られていて、この一帯は「親不知子不知」と呼ばれています。
ドライブを楽しみながら気軽に来てしまいましたが、よくよく考えると、すごい道を通ってきたんだなぁ……。
また、ここの展望台からは、海の上を走ることができる北陸自動車道も見えます。そして世界初の海上インターである「親不知インターチェンジ」も。
展望台から見える景色には歴史とたくさんの技術が詰まっていて、思わず感動してしまいました。
④RVパーク「道の駅 マリンドリーム能生」
今回寄った「道の駅 マリンドリーム能生」はRVパークも併設されているため、宿としても利用できるスポットです!
「日本海夕日ライン」上にある、海岸沿いの道の駅。眺めも抜群です。
RVパークとは「快適に安心して車中泊ができる」施設のこと。私みたいなクルマ旅好きにとっては、とてもありがたい場所です。
道の駅に到着したら、インフォメーションセンターでRVパークを利用したいことを伝え、料金を支払い、ゴミ袋を受け取って手続き完了。簡単に宿を確保できました。
お土産屋さんの隣には、夜までオープンしているコンビニが! 車中泊をしていると、「寝床からコンビニまでクルマで数十分かかる」こともザラなので、とってもうれしい。
さらに新鮮な魚や食べ物が売っている市場がありました! その場で食材まで入手できるなんて、車中泊したい人にはとってもありがたい。
ここでは今日の夜ご飯を調達しました。
夕暮れの時間は道の駅の駐車場で。
これまでの旅で何度も夕日を見てきましたが、今日のそれはいつもよりも赤みを帯びていました。
周りのものがみんな真っ赤に染まって、一瞬強く輝いて、すうっと消えていく。一日のなかでもひときわ短く美しい、幻想的な時間を過ごすことができました。
もうすぐ「日本海夕日ライン」の旅もおしまい。
最後の夜にもこんな美しい夕日が見られて、最高の思い出ができました。
さて、RVパークに移動しました。ここが私の今日の寝床です。
一般的な駐車場よりも余裕のある駐車スペースが確保されているので、隣接する他のクルマを気にすることなく、ゆったり過ごすことができます。写真にはありませんが右手には24時間使えるトイレもありました。
市場で買ったカニ飯と、お土産屋さんで買った塩辛が今日の夜ごはんです。
塩辛はお土産にしようと思っていたのですが、ついついちょびっと食べてしまいました。
お土産屋さんでは道の駅マグネットも買ってみました。今日から道の駅を訪れるたびに少しずつ集めて、白くまに貼っていこうと思います!
夜ごはんを食べたら、ささっと歯磨きをして就寝です。
翌日。日の出とともに目覚めて、晴々としたいい気持ちです。
よくよく見ると、すぐ近くに大きな船が! 船の隣で寝たのは白くま史上はじめてかも。
「高橋孫左衛門商店」で購入した水飴と、道の駅で購入した新潟新米米粉でホットケーキを作りました。ちょっと物足りなかったのでコンビニまで走ってヨーグルトと果物も購入。
こうして上越地方の旅は素敵朝ごはんでしめくくり。
朝から晩までしっかり楽しめる、楽しいクルマ旅でした!
住所:新潟県糸魚川市能生小泊3596-2(国道8号線沿い)
TEL:025-566-3456
営業時間:館内施設によって異なるため、詳細はHPをご確認ください
URL:http://www.marine-dream.net/
まとめ
最後にこれまでに通ってきた道とスポットを、ひとつのマップにまとめてみました!
こうしてみると盛りだくさん……。おいしいものから綺麗なスポット、癒される温泉など、本当にさまざまなものが詰まった新潟旅でした。
そして何よりも楽しんだのは、夕日です。
足湯を楽しみながら、ぼんやりと光る幻想的な夕日を楽しんだ下越旅。
日本海夕日ライン上で、黄金色に輝く夕日を楽しんだ中越旅。
そして今回、宝石みたいに真っ赤に輝く夕日を見つめた上越旅。
彩度の高い夕日の色と、白い波しぶきが重なって、どの瞬間もまるで絵画のように美しい日本海の夕日。周りに何もないところばかりなので、音も澄んでいて、風は気持ちいい。日によって、場所によって表情を変える夕日を楽しむことができました。
常に「日本海夕日ライン」沿いを走ってきたから、わずかな夕日チャンスも逃すことなく楽しめて、本当によかったなあ。
夕日をいっぱい浴びて、いつだって綺麗な景色を見ながら運転して、大満足の日本海夕日ラインの旅。
すぐ隣が海だから運転していて楽しいし、おいしい海の幸を味わうことができるし、道路も広くて快適! 季節によって楽しめることが違うと思うので、今度は春夏くらいに来てみようと思います。楽しかったな〜!
新潟県のポータルサイト「新潟のつかいかた」にて、エッセイを公開中!
特集「新潟思い出ひとり旅」いとうみゆきさん編
冬の日本海夕日ラインを巡る。 美しい風景を胸に刻む、クルマ旅
2024.05.24漫画/いとうみゆき
写真/いとうみゆき
編集/イガラシダイ、TAC企画