たった1時間で天空の大絶景! メルヘン街道で見つけた癒しスポット

絶景、サウナ、美食。日頃の疲れも吹き飛ぶ、長野県「メルヘン街道」~イラストレーターいとうみゆきのクルマのおうち旅

愛車の「白くま」に乗って日本各地を旅する、イラストレーターのいとうみゆきさん。今回の旅の舞台となるのは「長野県」です。第1回では意外な癒やしスポットの宝庫でもある「メルヘン街道」をのんびりドライブ。知られざる名所の数々に、いとうさんも驚きっぱなしだったようです。

▼プロフィール

いとうみゆきさんのプロフィールイラスト
イラストレーター いとうみゆき
埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
X @noca_m
Instagram @nmoytke
HP ito miyuki's illustration

目次

 

「癒やし」を求めて、いざ長野県へ!

窓を開けたら、金木犀の香りがした。

ベランダに出ると、駐車場に私のクルマ「白くま」が見えた。突然出かけたい欲がむくむく膨らんでくる。季節の変わり目にはいつも胸がざわついて、どこか遠くに出かけたくなるのだ。

いつ行こうか迷っていたけど、今日行こう。クルマ旅のいいところは、この自由さにあるのだから。

真夜中、やるべきことを終えてから家のドアを開け、鍵をかける。向かう先は、昼間のうちに必要そうなものを好きなだけ詰め込んだ白くま。静かに運転席にもぐりこみ、スピーカーを起動して、エンジンをかける。最初にかける音楽だけはいつも慎重に選ぶ。しばらく悩んでから、Flicaの「Recuperate」を流すことにした。

今いる埼玉県は暖かいけれど、これから行く場所は少し寒いだろう。フードのついたパーカーと羽毛布団も詰め込んだ。忘れ物はないはず。あったとしても、なんとかなる。どこにでも行ける白くまには、どこでも寝られるベッドとキッチンがついているのだから。

運転席から後ろをふりむいて、私の家を見る。準備完了。

よし、行こう。

長野県メルヘン街道マップ

最近はちょっとバタバタしていて、ゆっくり羽を伸ばす機会が少なかった。

だから旅のはじまりのテーマは「癒し」に決めた! 

都内からでも3時間ほどで行ける長野県の一角、幻想的でおとぎ話みたいなスポットがたくさんある「メルヘン街道」を巡りつつ、いい休日を過ごしたいと思います。

 

①朝焼けと雲海 日向木場展望台

夜の道路は美しい。

標高が高くなれば霧に包まれて視界が霞んで幻想的な道になるし、頂上付近から見える町の夜景のきらめきは宝石箱のようだし、スピードを落としながらゆっくりと走る夜の森では、のんびりと草を食む鹿の親子の姿を見ることができるし……夜のドライブでは、昼間とは全くちがう心動かされる景色を楽しむことができるのです。

そして、そんな夜を越えたら、朝がやってきます。

朝焼けに染まる雲海の風景

いくつかの条件を満たした日の朝早い時間に行くと雲海を見ることができる

薄ぼんやりと光る七色の空を背に、一面に広がる雲の海。

あまりの美しさに、寒いことも忘れてずうっと見入ってしまった。

展望台で佇むいとうさん

南、中央、北アルプスを見渡すことができる

遠くで鹿の鳴く声がするだけの静かな朝に、展望台から見える淡い夢のような世界……。

すぐ下の道路をクルマが通るたびに、声をかけたくてたまらなかった。絵画みたいな景色が、今、ここにありますよ〜! って。

真夜中、家を飛び出して数時間走ってきた甲斐があった。心からそう思える、本当に美しい景色だったのです。

駐車場に停車する白くま

駐車場は展望台を挟んで反対側にもある

この展望台のもうひとつの素晴らしいところは、駐車場からたった1分ほどで辿り着くというロケーション! いい景色のためにたくさん歩く必要はないし、朝焼け直前までクルマの中で待機していることもできます。

寒さに耐えきれなくなったらいつでも白くまに戻ればいい、という安心感は絶大でした。

徐々に青く染まっていく空

そして何度でも、この美しい雲海を眺めにもどってくればいい。

 

➁妖精のいる道 メルヘン街道散策

白樺を横目に真っ直ぐ進んでいく白くま

白樺群生地の間をドライブすることができる

雲海が見えた展望台を含め、今回の旅の舞台は国道299号線「メルヘン街道」。

木々を水面に反射する湖

湖に反射した木々を眺め、

白樺が生える森

透き通るような爽やかな香りでいっぱいの白樺の森を歩き、

紅葉に染まる木々の間を走る白くま

秋が始まったばかりの道の真ん中を駆け抜ける。

なんて気持ちがいいんだろう!

特に行き先も決めず、自然で溢れている山を、ただただ白くまと一緒に駆けまわる。それだけでなんだかワクワクして、元気が溢れてくる。これが癒されパワーってやつか?

白くまの中で蒸したておやきを食べるいとうさん

たくさん歩き回ったあとは、途中で寄った道の駅で買ったおやきをせいろで蒸してひと休憩。

慌ただしく飛び出してきたけれど、ちゃんと持ってきた冬の調理セット。せいろと鍋と塩があれば、大抵のものは食べられるようになると信じているので、それだけは忘れませんでした!

それ以外にもポータブル電源、IH、食器……目につくままにいろいろ詰め込んできたけど、それができるのはクルマ旅ならでは。時間をかけて荷物を厳選しなくても、白くまのお腹はなんでも包みこんでくれるって知っているから。

おかげで、馴染み深いものに囲まれながら好きなときにゆったり休憩ができるのです。あらためて、いいクルマだよなあ。白くまって。

 

③大絶景に出会えるぷち登山 高見石

駐車場からお手軽に登山が楽しめる場所があると聞いてやってきたのは「麦草峠公共駐車場」。大混雑の中、警備員さんに誘導され、スリムな白くまでなければ入れなさそうなところに止めさせてもらい、登山スタートです。 

駐車場から、草原を抜けて、苔むす森を歩く。

苔むした登山道を進んでいくいとうさん

森を覆い尽くすほどの緑の苔の間に登山道がある

森の中では人とすれ違うたびに挨拶をする。一人と一台のクルマ旅ではもちろん、普段の生活でも知らない人とにこやかに挨拶を交わす機会って少ないから、なんだかとってもうれしかった。笑顔で目を合わせるだけで、なんでこんなに心が元気になるんだろう? クルマ旅をしているときはもう少し積極的に散歩してみよう。

苔の森を楽しみながら丸山を歩き、ついに目的の高見石にたどり着いた。高見石小屋の脇に立ち塞がるいくつもの大きな岩をよじのぼり、山羊みたいにぴょんぴょん進む。

そうすると視界がパッと開け、天空の大絶景が目の前に現れた。

標高2,100m以上の湖としては日本最大の天然湖「白駒池」

日本最大の天然湖「白駒池」は、木々の中で青く輝きます

深い森に包まれ、ひっそりと空を鏡のように映しているのは白駒池。その向こうに見えるのは小諸や八ヶ岳、北アルプスや群馬の山々。

たった1時間ちょっとでこんな景色に出合えるなんて……! 大感激(白駒池側の駐車場からスタートすればもっとすぐに来れるそう)。

動き回って満足感でいっぱい、素敵な景色を見ただけで気持ちがいっぱい。なんていい登山コースなんだろう。

淡い水色に輝く白駒池

帰りは白駒池を経由して駐車場へ。休憩しつつ一周歩いて約3時間、とっても楽しいお手軽登山になりました。

 

④まるごと大自然サウナ 八千穂SAUNA

標高1300メートルに位置する「八千穂SAUNA」は、山々に囲まれた大自然のサウナ。

温泉についているサウナは大好きだけど、大自然サウナはまだまだ初心者。サウナで癒されたい気持ちはあれど、一人だと変に緊張してしまうので……サウナ好きの幼なじみと合流して向かうことにしました。

受付を済ませて、更衣室で水着に着替えたら準備万端(レンタル品も充実しているので手ぶらで来ることも可能です)。

バレルサウナやテントサウナが並ぶ八千穂SAUNA

八千穂SAUNAはサウナのワンダーランド!

小屋サウナ、テントサウナ、バレルサウナなど、3種類のサウナを楽しむことができるうえに、ロウリュ(熱したサウナ石に水をかけて水蒸気を発生させること)に使う水の香りがサウナごとに違ったり、水風呂や飲み物の種類も豊富だったり…とワクワクが止まりません。

サウナを楽しむいとうさん

好きなサウナに入って蒸されたら、すぐ下の渓流か水風呂へ。

山から流れ出てきたばかりの水に浸かればその冷たさに身体がきゅっとなって、吐く息がミント水のようにフレッシュになるのが感じられます。

渓流の側のチェアで涼むいとうさんと幼なじみ

そして渓流に設置されたゆったりチェアに座れば……ふわっとなってぐるっとなり、どこかに飛んでいってしまうかのような極上のリラックスタイムが始まるのです。

狭い空間でガンガンに薪をくべた熱々サウナと山から流れ出たキンキンに冷えた渓流水風呂のおかげで、いつものサウナよりスッキリ感が強く感じられます。せせらぎや野鳥の声などの自然の音とさわやかな森林の風に包まれているから、リフレッシュ度は桁違い。

運転や仕事の疲れ、最近のもやもやしたものたちがすべて自然に溶けていってしまうような感覚になるのです。大げさではなく、本当に。

これが大自然で味わう極上サウナ……!!

きわめつけは、みんなで船(サウナ小屋)に乗り込んで海賊にバズーカ(ブロワー)をぶっ放しながら進む、ととのい島への大航海。小さなサウナ小屋の中で突然はじまった壮大な物語に「そうだここはメルヘン街道だった……」ということを思い出しました。

ライトアップされた八千穂SAUNA

面白くって気持ちよくって最高にスッキリする、あっという間のサウナ体験でした。

八千穂サウナはオートキャンプも可能な駒出池キャンプ場の敷地内にあるので、クルマ旅好きさんにはぜひ、心からおすすめします!

八千穂SAUNA
住所:長野県南佐久郡佐久穂町大字八郡2049-860
TEL:0267-88-2569
基本料金:平日120分3,000円(税込)、土日祝120分3,500円(税込)
※営業時間については、事前にお電話にてお問い合わせください。
URL:https://yachiho-sauna.jp/

 

⑤贅沢キャンプ飯作り 松原湖高原オートキャンプ場

サウナを楽しんだあとは、キャンプ場へ。

松原湖高原オートキャンプ場の一画に停まる白くま

今日泊まる「松原湖高原オートキャンプ場」は標高1200mの高原の森に位置するフリーサイトキャンプ場。予約不要なので行く日を柔軟に決められるため、クルマ旅にぜひおすすめしたいキャンプ場です。

ゆらゆら揺れる木漏れ日に癒される、きれいな木陰サイトをキャンプ地にしました。

車内のベッドをダブル仕様にする解説イラスト

今日は幼なじみも一緒に寝るので、白くまのベッドをダブル仕様に変更。

実は白くま、ベッド下の収納を引き出して、すのこと予備マットをひくだけで簡単に拡張することができるのです! 

ダブル仕様になった白くま内のベッド

持ってきた予備マットレスを敷けば、あっという間にベッドが完成! 埼玉県での旅で披露した四人乗りモードに続く、二人寝るモードのお披露目です。

▼いとうさんのクルマの改装術はこちら

幼なじみとともに料理をするいとうさん

寝床の準備が完了したら次は夜ご飯作り。最上級に幸せいっぱいになれる、簡単でおいしい最高のキャンプ飯を作ります!

今日は二人なので、前から気になっていたダッチオーブン料理に挑戦しました。たくさん作っても二人なら大丈夫。

アクアパッツァ

ちなみにレシピはこちら。

〜アクアパッツァ〜
①ダッチオーブンでニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒める。
②野菜と魚介類をいれた後、塩と胡椒を振ってから蓋をしてしばらく待つ。
③最後にスライスレモンをのせて完成。 

野菜を切るのに少し時間がかかるくらいで、あとはとにかく火が通るのを待つだけ。思っていたよりずっと簡単にできたので、おすすめです! 

焼き鳥、カマンベールチーズのベーコン包み焼き、アボカドトマトサラダ

〜焼き鳥〜
①すでに焼かれた状態で売っていたものをあたためる。

〜アボカドトマトサラダ〜
①葉物を敷き、アボカド、トマト、塩とマヨネーズを和えたものをのせる。

〜カマンベールチーズのベーコン包み焼き〜
①カマンベールチーズにベーコンを巻き、そっと焼く。

私も幼なじみも料理より食べることのほうが大好きなので、ラインナップはできるだけ簡単でおいしいもの。どれもすぐにできるので、時間がかかりがちなキャンプご飯にぴったりです!

眠りにつくいとうさんと幼なじみ

夜はダブルベッドで就寝。

どこにでも行けるクルマでありながら、いつでもどこでも寝られるこの空間を幼なじみもすっかり気に入ってくれました。後ろのキッチンも便利に使ってくれていたし……あとで聞いたら、この日は眠りにつくまでインスタでいろいろな人の車中泊スタイルを見ていたそう。自分が好きなことに興味を持ってもらえるってすごくうれしいなあ。

せっかくお客さまを呼べる設計にしてあるので、一人じゃないクルマ旅もときどきやってみたいものです。

翌日の朝は、アイデアマンの幼なじみのおかげでとっても豪華な朝ごはんになりました。

お茶漬け、サラダ、プルーン

長野県産新米を使ったお茶漬けに、海苔、明太子、しらすをのっけるという最高の朝ごはん!

今まで気が付かなかったけど、準備も少ないお茶漬けは車中泊の朝ごはんにうってつけ。前日の残りご飯があればお湯をかけるだけだし、ないときはパックご飯でも茹でればいい。

私では思いつかなかったお茶漬け、これから車中泊での定番料理になりそうです。

キャンプの後片付けをした白くま

松原湖高原オートキャンプ場
住所:長野県南佐久郡小海町豊里5918-2
TEL:0267-93-2539
※受付時間については、事前にHPにてお問い合わせください。
URL:http://www.matsubarako-kogen.jp/

長野旅のはじまりは、極上の癒し旅。都内からでも比較的アクセスしやすい「メルヘン街道/八千穂高原」エリアを楽しみ尽くすことができました。

次の目的地へ旅立つ白くま

素晴らしい景色からサウナ、おいしいご飯まで余すところなく最高な、すべての人におすすめしたくなる旅でした。本当に、本当にいい時間だった……。

一人きりになった白くまの車内

幼なじみと別れ、また一人と一台の旅に。

山を越えて高原を降りれば、美しいアルプスの山々が顔を出します。さあ、次の目的地へ出発!

 

漫画/いとうみゆき
写真/いとうみゆき
編集/イガラシダイ、TAC企画