海外でのクルマ旅を綴ったエッセイが話題となり、多くのファンに支持されるイラストレーター・いとうみゆきさんの連載企画。いとうさんの出身地であり、現在住んでいる埼玉県を舞台に、新たな旅がスタートします。
第2回目は、愛車の内装を自分ならではの部屋にカスタムしていく様子を紹介していきます。
- イラストレーター いとうみゆき
- 埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
- Twitter @noca_m
- Instagram @nmoytke
- tumblr Miyuki Ito Illustration
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目次
私が考える、理想の部屋
床作りとカーテン設置を経て、荷室が部屋に変化した私のクルマ、「白くま」。今回は、新しい家(白くまハウス)にはじめて入った日の気分で部屋作りをしていきます!
まずは寝床について考えます。白くまハウスの大部分を占めることになる大切な場所です! 今回は二つの理由から、布団を敷くのではなくベッドを置くことに決めました。
一つ目の理由は、収納スペースがほしかったから。ベッドを作れば、その下に収納スペースを作れます。天井収納や床下収納よりも簡単に作れそうだし、気軽にものを放り込める引き出し式収納のほうが私にとっては楽ちんなのです。
そして二つ目の理由は、座る場所がほしかったから。ベッドを作れば椅子・ソファとして使うこともできて、とっても便利なのです。とくに白くまハウスには机を置きたいと思っているので、そのためにも座る場所が必要!
……という理由からベッドが採用されました! こうして決まった、ベッドをメインにした部屋作り。ここから、どんな部屋にしたいかを具体的に考えていきます。
いろいろ考えた結果、四つのこだわりを盛り込んだベッドを作ることにしました。
- 自分サイズのぴったりベッドを作って、残りの荷室に自由な空間をたくさん残す
- ベッドを分割式にして、四人乗りしたいときは簡単に動かせるようにする
- できるだけ簡単な方法で、ベッドの横幅を伸ばせるようにする
- ベッド下に収納ができるように引き出しを作る
考えたら、あとは設計図を書いて組み立てるだけ!
その際に注意することは、「こだわりすぎない、やりすぎない」こと。頭のなかではなんでもできるので、ついついいろいろ考えちゃうのですが、今の自分と「白くま」に丁度いいベッドを考えることが大切なのです。
こだわりすぎると重くなっちゃうし、作業が複雑になるとどんどん面倒くさくなっちゃうんだよね……。好きなだけこだわるのは私の技術が追いついてからにするとして、ひとまずはできるだけシンプルな部屋作りをすることにします。
みんなと協力して作るDIY
【ベッドの作り方】
ベッドのベースサイズは、自分の身長と横幅を基に考え出しました。
必要な材料は床板作りでも使ったラワン合板と二種類の角材、それから工具はインパクトとネジだけ。
今回は収納スペースを広くするためにベッドの脚を細くし、コの字にぐるっと脚を補強するための角材も加えています。
ベッドの脚(角材)は座るのにちょうどいい高さ(250mm)に設定。ベッドを半分に分けて作ったのは、4人乗りをしたいときのため。2つのベッドを重ねることでいつでも後部座席を使える最強ベッドです! (2つに分けるとちゃぶ台みたいなので、ちゃぶ台ベッドと呼んでいます)
【引き出しの作り方】
引き出しは、ベッド下のサイズを測り、空間に納まるサイズに。材料や工具は、ベッドと同じラワン材と角材、ボンドとフィニッシュネイラという機械を使いました。(できるだけ軽くするために薄い9mm板を選んだのですが、インパクトとネジを使って板と板を固定するには15mm以上の板を選ばなければいけないそうです。なので今回はまず板をボンドで貼り合わせてから、フィニッシュネイラという別の機械で固定しました。)
引き出しの四方の角には、補強のために角材を使用。引き出しとして使うだけなら補強はいりませんが、この引き出しにはちょっとした秘密があるので角材をいれています。そのほかにも、箱が重くなってもスルスル動くよう、「カグスベール」というものを引き出しの底に4カ所貼りました。
……とまあ、いろいろ書いたのですが、実は私は設計図を作っただけで作業をしていません! 昔のバイト先の大工さんと久々の再会ついでに、ベッドと引き出しを作ってもらっちゃいました!
これはもはやDIY(Do It Yourself)ではないのですが、私はとっても満足しています。自分が得意なのはアイデア出しと設計! 得意なことは頑張るし、苦手なことは誰かに手伝ってもらう。そういうモノづくりだっていいよね。
こだわりが詰まったベッドが完成!
そして、完成したベッドがこちら! 寝返りができる程度のぴったりサイズにすることで、残りの空間を広く使えるコンパクトベッドです。椅子(ソファ)としても使いやすいサイズにすることで、居心地のいい部屋に一歩近づきました。
引き出しの四隅に補強用の角材をいれたのはこのため! 引きだしを出して折りたたみ式の座椅子(もしくは板と布団)を乗せればあっという間にセミダブルベッドに変身します。体重にもよると思いますが、私が寝るぶんには問題なさそうです。
友だちや妹家族とどこかへ行くときのために、いつでも簡単に4人乗りができる状態にしておきたい! と、最初から考えていました。無事収まる形に設計できてよかった〜。
調理台を設置して部屋をブラッシュアップ
ベッドが完成したら、ちょっとだけ機能拡張。調理台をイメージしながら、ベッドの足元に棚を作ってみました!
この棚は背面が存在しないので、足をいれて眠ることができる便利仕様。そして、固定していないので邪魔なときにはすぐに移動できます。
さらに、ベッドの脚に折りたたみ式のブラケットを取り付けて板を固定し、折り畳み式簡易机を作りました。調理スペースが広くなっていい感じ。
今はただの棚ですが、そのうちいい感じの常設キッチンにできたらいいな〜と思っています。
インドア派にもぴったりな旅のススメ
こうしてひとまず完成したクルマのおうち「白くま」!
簡易的な改造しかしていませんが、大満足です。
久しぶりに少し遠くまで運転してみました。車中泊でいろいろなところへ行く、というのはインドア派にもぴったりな旅の選択肢だと思っています。
だって、自分の好きな部屋にいながら、いろいろな場所に行けるんだもの! お気に入りの場所を見つけたら、クルマを止めて運転席から部屋に移動するだけ。寝転がりながらゲームをして、本を読んで、ときどき窓の外の風景を眺めて。お腹が空いたらご飯を作って、景色に飽きたら別の場所に移動して……。部屋と自然が好きな私にとっては本当に贅沢な過ごし方です。
ベッドがあって、机があって、自分の好きなものがある。引き出しを開ければ食材があって、作りかけの調理台でお湯が沸かせる。これは私が普段過ごしている小さなアパートの一室と全く同じだ。
これでやっと、クルマのおうち「白くま」に住めるようになったんだなあ。
まだ柿渋(塗料)のにおいが少し残る室内に春の風が入り込み、頬が緩んだ。
冬のあいだはゆっくり準備をして、あたたかくなったら外に出かけたいって前からよく思っていたんだ。それがついに実行できた。好きなものをいっぱい詰め込んだ「白くま」と一緒に、ついに外に出れたんだ!
私たちはここからどこへでも行けるんだ、と思ったらうれしくて、ニコニコしてしまう。
今見ている窓の外の景色が、明日には全く違うものになっているかもしれない、と思うと楽しみでいっぱいになる。
明日はどんな場所に行こう。できたてほやほやの白くまと一緒に、これからどこへ行こうかなあ。
「クルマのおうち」を動画でも公開中!
本記事で紹介したカスタムの詳細は、YouTubeにて公開しています。ぜひ、こちらもご覧ください。
「クルマのおうち」の様子はYouTubeでもご紹介!↓↓↓
漫画/いとうみゆき
編集/望月 祐 (LIG)