車のメンテナンス&日常点検のポイントを現役整備士がレクチャー!

現役整備士がレクチャー!クルマのメンテナンス&日常点検のポイントのアイキャッチ

愛車のHonda「バモス ホビオ」をアウトドア仕様にカスタムしている森 風美さん。カエライフでは森さんの愛車カスタムの様子を連載でお届けしており、先日は内装の板張りに挑戦しました。

キャンプはもちろん、日常使いにも活躍中の森さんのバモス ホビオですが、お気に入りの愛車に長く乗るためにも、しっかりと自分でメンテナンスができるようになっておきたいもの。そこで今回はクルマに乗るときにチェックすべき日常点検項目を習うことに。

今回は現役のレーシングドライバーであり、一級自動車整備士として読売自動車大学校で講師を務める谷口いづみさんに、長く安全にクルマに乗る方法を教えてもらいます。

森風美さんのプロフィール写真
森 風美(もり ふうみ)さん
年間80泊するキャンプ女子。女性ひとりでも気軽に楽しめる独自のキャンプスタイルをSNSで発信。女性向けアウトドアWebメディア「なちゅガール」の編集長を務める。愛車はHondaの軽バン・バモス ホビオ。初めての著書『はじめよう! ソロキャンプ』(山と溪谷社)が好評発売中。
Instagram @fu_u.m
Twitter @fu_uyu

関連記事はこちら

連載のバナー

 

読売自動車大学校講師の谷口いづみさんプロフィール写真
谷口 いづみ(たにぐち いづみ)さん
創立50年以上の老舗専門学校の読売自動車大学校で講師を務めるかたわらレースドライバーとしても活躍。ツインリンクもてぎが主催する四輪耐久レースでは学校を代表してドライバーを務めた。愛車は2代目ロードスターで、もともとサーキット練習用に買ったものの走りの良さから手放せなくなったそう。(写真提供:読売自動車大学校)
読売自動車大学校HP https://yccm.ac.jp/

読売自動車大学校講師の谷口いづみさんがプロレーサーとして大会に出場した写真

プロレーサーとして活躍する谷口さん。2019もてぎEnjoy耐久レースではClass2優勝、茂木町賞を受賞(写真提供:読売自動車大学校)

 

目次

 

点検の前に、まずは自分のクルマについて知ろう

クルマの日常点検・メンテナンスを習う森風美さん

森さん:今日はよろしくお願いします! 今のクルマに長く乗り続けたいのですが、普段どんな箇所を点検すればいいのか全然知らなくて……。いろいろと教えてください!

谷口さん:よろしくお願いします。今日はクルマに乗る前におこなう日常点検を中心に学んでいきましょう。まず、森さんは普段はどんな手入れをしていますか?

森さん:定期点検のときにディーラーでオイルやバッテリーを替えたりする程度で、自分では手入れらしい手入れをしたことがないんです。

谷口さん:ほとんどのオーナーが森さんと同じような感じだと思います。ですが、普段から日常点検をしていればトラブルが起きる前に「なんだかいつもと違う」と気づくことができ、故障を予防できます。日常点検でチェックするポイントは全部で15項目ありますので、1つずつ学んでいきましょう。

森さん:わかりました!

谷口さん:その前に、森さんはこのクルマのユーザーマニュアルを持っていますか?

森さん:あっ、車検証と一緒に入ってると思います。そういえば、買ってから一度も見たことがありませんでした。

谷口さん:点検方法はクルマによって少しずつ違うので、まずユーザーマニュアルやメンテナンスノートを確認するようにしましょう。

 

愛車のバモスホビオのユーザーマニュアルを見る森風美さん

森さんが乗っているバモス ホビオはいろいろな場所に点検ポイントが分散しており、ユーザーマニュアルを確認したほうがわかりやすい

森さん:これですね! 点検する箇所やメンテナンスについていろいろと書いてある...…。今まで気にしたことなかったです。

谷口さん:目を通しておくと、クルマに対する理解が深まるので、車両を手に入れたら一度読むのがおすすめです。それから、車載工具もチェックしておきましょう。

 

バモスホビオの車載工具を後部座席下から取り出す谷口いづみさん

バモス ホビオの車載工具は後部座席左側に収納されている

 

バモスホビオの車載工具一覧

森さん:こういう工具が入っていたんですね!

谷口さん:これらの車載工具は日常点検で必要なものが入っている場合もあるので、車種によっては要チェックです。せっかくなので、荷室のメンテナンスホールも開けてみましょうか。

 

バモスホビオのメンテナンスホール

バモス ホビオのメンテナンスホールを開けたところ

森さん:クルマをカスタムするときに、一度開けたことがあります!でもそのときは「おぉ〜、こんな風になってるんだ」としかわからなかったんですが、ここも定期的に開けてチェックしたほうがいいですか?

谷口さん:いえいえ。バモス ホビオの場合、基本的にここは整備士がメンテナンスをするための穴なので、普段は開けなくて大丈夫です。もし開ける機会があれば、ついでに軽く拭いてあげたり、オイルなどが漏れたりホースや配線類がひび割れたりしてないかなどをチェックしてあげてください。

森さん:わかりました!

日常点検でチェックする15のポイント

ユーザーマニュアルを読んで、愛車のパーツについてチェックしたところで、ここからは普段クルマに乗る前にチェックしておきたい15項目の点検を教えてもらいました。

エンジン周りやオイル類の5つの点検箇所

 

1.ウィンドウウォッシャー液の量

バモスホビオのボンネットを開けた画像。ラジエーター冷却水とウィンドウウォッシャー液が見える

谷口さん:それでは実際に自分で点検すべきチェックポイントを確認していきましょう。まずはウィンドウウォッシャー液の量のチェックです。バモス ホビオはボンネット内の向かって右側にあります。

 

バモスホビオのボンネットを開けた画像。ウィンドウウォッシャー液を点検する森さん

森さん:これですね!

谷口さん:はい。ウィンドウウォッシャー液が少なくても故障の原因になるわけではありませんが、使えないと不便なので定期的にチェックをしましょう。

森さん:いますでに半分ぐらいの量なんですが、ディーラーに持って行って補充すればいいですか?

谷口さん:プロに頼んでもいいんですが、蓋を外して注ぐだけなので、自分で継ぎ足してもいいと思います。

森さん:わかりました! 他に注意することはありますか?

谷口さんいま入っているウォッシャー液と同じもの、さらに言えばメーカー純正のウォッシャー液を入れてください。ウォッシャー液には錆止めや凍結防止の添加剤が入っているので、それらのバランスを崩さないほうがベターです。

 

2.ラジエーター冷却水の量

クルマの日常点検・メンテナンス。ラジエーター冷却水の量をチェックする森さんと谷口さん

谷口さん:次はエンジンを冷やすラジエーター冷却水の量のチェックです。

森さん:これですね。チェックの仕方はありますか?

 

クルマの日常点検・メンテナンス。ラジエーター冷却水の点検。タンクに記載されている量をチェック

谷口さんタンクに記載されている規定量の範囲内に液面が収まっているかどうかがポイントです。このクルマの場合はちょうどMAXラインあたりに液面が見えているので、冷却水の量はOKです。

森さん: タンクの口のギリギリまで液が入っていなくても大丈夫なんですね。

谷口さん:はい。冷却水は蒸発などで自然に少しずつ減っていきますが、著しく減るものではありません。ただし、著しく減っている状態で車を動かすとオーバーヒートを起こしエンジンのトラブルにつながるため、日ごろからリザーバータンク内の冷却水の量を確認しておくといいです。補充する場合はメーカー純正の指定品を入れましょう。

走ってエンジンが熱くなると冷却水の体積が増えるので、熱くなったときのことを想定してタンクも大きめに作られています。それから気をつけてほしいのが、横にある金属のキャップ。走行後、ラジエーターが熱くなっているときにここを開けると、熱湯が吹き出します。大変危険なので、注意してください。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。ラジエーター冷却水の点検の際の注意点。金属キャップはさわらないよう教える谷口さん

森さん:注意喚起のステッカーが貼ってある場所ですね。他に気をつけることはありますか?

谷口さん:オーバーヒート(冷却水が適温を超えてしまうトラブル)などをおこさない限り、基本的に冷却水は減りません。普段から量をチェックして、トラブルが起きていないのに減っているようであれば、冷却水が漏れている可能性があります。

 

3.ブレーキオイルの量をチェック

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのブレーキオイルをチェックする森さん

谷口さん:次はブレーキオイルの量のチェックです。バモス ホビオは運転席側のダッシュボードにありますよ。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのブレーキオイルは運転席側にある

森さん:ここですね。これもさっきと同じく規定の範囲内に液面があるかチェックすればOKですか?

谷口さん:はい。ブレーキオイルの量が目に見えて減っているようであれば故障を疑いましょう。リザーバ・タンクの液面レベルが著しく下がっている場合は、パッドの摩耗が進んでいるか、ブレーキ系統から液が漏れている可能性があります。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。ブレーキオイルが塗装につくと剥離する危険性を説明する谷口さん

谷口さん:それから、ブレーキオイルは塗装を剥がしてしまう作用があるので、オイルを触った手で車体に触れたりしないように気をつけましょう。

森さん:気をつけます! もし触ってしまったときはどうすればいいですか?

谷口さん:塗装の剥離作用は水分で機能しなくなるので、触ったところを水で流して拭いてください。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。エンジンオイルの量をチェックする森さん

谷口さん:次はエンジンオイルのチェックです。オイル量が少ないとエンジンの焼き付きなどトラブルの原因になるので、定期的な点検が重要です。オイル量の点検は平らな場所で、エンジンをかける前かエンジンを止めてから10分以上経ってから行いましょう。

バモス ホビオは左後輪の奥に、エンジンオイルのレベルゲージがあります。森さん、開けてみてください。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのエンジンオイルのレベルゲージは左後輪の奥

森さん:ここですね。ネジ留めなので反時計回りに回して...…、外れました!

 

クルマの日常点検・メンテナンス。エンジンオイルをウエスやペーパータオルでふきとる画像

谷口さん:エンジンオイルのチェック項目は2つあります。まずはオイルの色。ゲージが外れたら、綺麗なウエスやペーパータオルで拭き取って色や粘度をチェックしつつ、鉄粉などの異物が含まれていないかも見ましょう。

それから2つめのチェック項目は、オイルの量です。もう一度ゲージを挿して引き出してください。その際に平らな場所に駐車して、ネジ留め式のゲージの場合はネジを回さずに引き出すと正確に測れます。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。エンジンオイルのレベルゲージ先端のギザギザ範囲を示す画像

森さん:できました!

谷口さん先端のギザギザ部分の範囲内にオイルが付着していれば適正量です。量は大丈夫そうですね。

森さん:オイルのチェックや交換をサボると、どうなりますか?

谷口さん:エンジンオイルはエンジンの内部を潤滑したり、きれいに保つ役割があります。ですので、あまりにもサボっていると最終的にはエンジンが壊れます。また、エンジンオイルはガソリンと一緒に少しずつ燃えるので、走っていると少しずつ減っていきます。エンジンオイルの状態は故障に直結しますので、ここはマメに見たほうがいいと思います。

 

クルマの日常点検・メンテナンスを習う森風美さん

森さん:わかりました。エンジンオイルはどのぐらいの頻度で交換すればいいですか?

谷口さん基本的にはクルマのマニュアルに則った走行距離や時期で交換するように心がけてください。それから、最近のクルマは信頼性が向上したこともあって1万キロでエンジンオイルの交換をするようにマニュアルで定められていたりしますが、できればもう少し早いタイミングで交換したほうがエンジンへの負担が少ないと思います。

森さん:よくカー用品店などでエンジンをきれいにするガソリンの添加剤が売られていますが、ああいったものを使うとオイルのメンテナンス期間が延びたりは……?

谷口さん:新車のときから定期的に添加剤を使えば、エンジン内部の汚れを防ぐ効果は期待できます。特にバモス ホビオのような直噴エンジンには効果的だとも言われます。ですが、添加剤が落としたエンジン内部の汚れはオイルに溶け込むため、オイル自体は逆に汚れやすくなります。添加剤を活用するならオイル交換前に使い、しばらく走ってからオイル交換するのがセオリーです。

 

5.バッテリー液のチェック

谷口さん:それでは、次はバッテリーを見ていきましょう。

森さん:前にバッテリーが上がってしまったときに場所をチェックしたのでわかります。バモス ホビオの場合はウォッシャー液の下にありますよね。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのバッテリー液をチェック。フロントグリル奥にバッテリー液が見える

谷口さん:その通りです。フロントグリルのちょうどバッテリーの液面をチェックできる場所に穴が開いているので、ここからチェックします。液量が規定の範囲(UPPERとLOWERの間)にあるかを見ますが、少し暗いので、直射日光が当たる場所で見るとチェックしやすいかもしれません。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。バッテリーがあがったときの対処を教える谷口さん

谷口さん:バッテリー上がりも経験したということなので、ジャンプスタート(別のバッテリーに繋いでエンジンを始動させる方法)についてもお伝えしておきましょう。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。ジャンプスターターの説明をする谷口さん

谷口さん:ブースターケーブルを使ってジャンプスタートするときは、手順や気をつけることがいろいろとあります。なので、一番手軽なのはジャンプスタート専用のバッテリーを用意しておくことです。ちなみに、私はAUTOWNの製品を使っています。USBポート付きなので普段はモバイルバッテリーとしても使えますし、LEDライトも付いていて便利ですよ。

森さん:これなら付属の説明書に従うだけで大丈夫ですし、簡単そうですね! 本当はキャンプ用のポータブル電源をケーブルに繋げられるといいんですけど……無理ですか?

谷口さん:私自身は使ったことがないのですが、メーカーによってはジャンプスターター機能を搭載したポータブル電源もあるようです。

タイヤ周り、ライトの4つの点検箇所

 

6.空気圧のチェック

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤの空気圧をチェックする画像

谷口さん:次は空気圧のチェックです。空気圧のチェックは専用のゲージをタイヤのバルブに挿して測ります。挿しが弱いと空気が抜けてしまうので、一気に挿し込むのがコツです。最近では100円ショップで取り扱っているお店もあるので、簡単に手に入りますよ。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤの適正空気圧は運転席側のドアにシールが貼ってあることを説明する画像

谷口さん:適正な空気圧やエンジンオイルに関する情報は運転席側のドアにシールが貼ってありますよ。単位はkpa(キロパスカル)と呼びます。

森さん:本当だ。前輪と後輪で数値が違うんですね。空気圧が足りないとどうなるんですか?

谷口さん空気圧が低いと燃費が悪化したりハンドリングに支障が出たりしますし、タイヤの歪みにより異常発熱が起きてバースト(破裂)のリスクが高まります。 空気圧が高いと、タイヤの中央部だけ摩耗してしまい、ゴツゴツとして乗り心地が悪くなります。

森さん:空気圧が高すぎても低すぎてもいけないんですね。

谷口さん:そうですね。空気圧は少しずつ自然に低下するので、最低でも月に1度、特に高速道路に乗る前などは点検したほうがいいと思います。ただし、走行した直後はタイヤ内の空気が膨張し、正確な空気圧を測定することができません。走行前に測定するのが理想ですが、難しい場合は近所のガソリンスタンドでチェックしてもらうのもオススメです。

 

7.タイヤの偏摩耗・異物のチェック

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤ周りをチェックする森さんと谷口さん

谷口さん:それから、タイヤの接地面に釘などの異物が刺さってないか、偏摩耗していないかをチェックします。偏摩耗とは、タイヤの片方だけが極端に減っていることです。偏摩耗しているなら、空気圧が適正でなかったりクルマのアライメント(車体に対するホイールの角度)が狂っている可能性があります。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤのサイドウォールをチェックしている画像

谷口さん:あと、気をつけて見てほしいのが、タイヤのサイドウォール(タイヤの側面)です。ここは接地面より薄くて弱いので、縁石などで擦ってしまうとだんだん膨らんできて、いきなりパンクすることがあります。

 

8.タイヤの山の残り具合をチェック

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤの溝の残りを、デプスゲージを使って調べている様子

谷口さん:次にチェックするのはタイヤの山(溝の深さ)の残り具合です。1.6mm未満だと車検は通りません。しかし1.6mm以上あればOKというわけではなく、安全に走行するためにはもっと早めの交換が必要です。デプスゲージという工具を使えばミリ単位でチェックできます。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤの溝の残りを、10円玉を使って調べている様子

森さん:デプスゲージを持ってない場合はどうすれば...…?

谷口さん:実は10円玉で簡単にチェックできます。10円玉の縁が約1.6mmで「10」の文字がギリギリ全部見える位置が約4mmです。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。タイヤの溝の残りを示すスリップサインと三角マークの説明

谷口さん:タイヤの横にスリップサイン(タイヤの摩耗を示すサイン)の位置を表す三角マークが必ずあります。三角印の先を見てスリップサインがタイヤの表面と同じ高さになっていたら、もうそのタイヤは寿命です。法令違反となるだけでなく、スリップやパンクの危険が高まるので、すぐに交換してください。

 

9.ライト・灯火類のチェック

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのフロントライトのチェック

谷口さん:それからフロントのヘッドライトやウィンカーがちゃんとつくかをチェックして...…

 

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのテールランプ、ブレーキランプのチェック

谷口さん:リアの灯火類も同様にチェックしましょう。

森さん:ひとりだとライトが付いているか確認が難しいと思うのですが、どうすればいいですか?

谷口さん:ガラスに反射させたり、壁ぎわにクルマを寄せてからライト類をつけると、ひとりでもチェックできますよ。

クルマに乗ってチェックする6つの点検箇所

 

10.ブレーキの踏みしろと効き

クルマの日常点検・メンテナンス。ブレーキの効き具合をチェックする森さん

谷口さん:最後はクルマに乗り込んで調べる項目です。まずはブレーキを踏み込んで、踏みしろと効きをチェックしましょう。

森さん:どのぐらいの踏みしろが適正かわからない場合は……?

谷口さん:ユーザーマニュアルに記載されている数値を参考にしてください。ブレーキ性能は安全に直結する部分なので、いつもと違うように感じたときは整備士にチェックしてもらいましょう。

 

11.パーキングブレーキの引きしろと効き

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのパーキングブレーキの効き具合をチェックする森さん

谷口さん:同じく、パーキングブレーキも引きしろと効き具合をチェックします。

 

12・13.ウィンドウウォッシャーの噴射とワイパーの動作

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのウィンドウウォッシャー液の噴射とワイパーの動作を確認する森さん

谷口さん:ウィンドウウォッシャーが適切に噴射されるかどうかもチェックし、ワイパーを作動してキチンと動作するかどうかも確認します。

 

14・15.エンジンの掛かり具合・音、アクセルの具合

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオのエンジンのかかりぐあい、アクセルの音をチェックする森さん

谷口さん:エンジンを掛け、スムーズに始動するか、異音がしないかを確認します。エンジンが温まったら出発進行です。アクセル・ペダルを徐々に踏み込んだとき、ペダルに引っ掛かりがないか、また、エンストやノッキングなどの異音がしないかなどを確認しながら走り出しましょう。これで日常点検の15項目すべて終了です。

森さん:ありがとうございます! それにしても、ずいぶんたくさん見るところがあるんですね。どのぐらいの頻度でチェックするといいんでしょうか?

谷口さん:この15項目は「乗車前点検」と言って、本来はクルマに乗る前に毎回するべきものとされています。ですが、すべてをチェックするのはなかなか難しいと思いますので、無理のない範囲でできる限り頻繁におこなうようにしてください。

セルフメンテナンスしてはいけない箇所をチェック!

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオの前で話す森さん、谷口さん

森さん:頻繁にディーラーや整備工場にクルマを持ち込むのも大変なので、自分でできるところはやりたいのですが、セルフメンテナンスをしてはいけない場所はあるんでしょうか?

谷口さん:いまのクルマはコンピュータ制御がたくさん盛り込まれているので、基本的にプロに任せたほうが安心です。クルマ好きな人はオイル交換を自分でやったりもしますが、ジャッキアップが必要だったりと手間も掛かりますし、他の場所の点検も合わせて整備士に依頼したほうが安心だと思います。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。メーターパネルの警告灯について説明している画像

谷口さん:メーターパネルに警告灯がついたときはクルマを停めて状態を確認し、必要に応じて整備工場に持ち込んでください。特にブレーキ異常を表す◯に「!」マークの警告灯やマスターウォーニングという△に「!」マークの警告灯がついたときなど、赤色でビックリマークつきのランプが走行中に点灯したときは速やかに停車してください。

森さん:色やマークによって緊急性に違いがあるんですか?

谷口さん:どんな警告灯でも点灯するようであれば整備すべきです。ただ、ビックリマークつきのものは安全や走行性能に関わるもので、黄色よりも赤のほうが緊急性が高いと思ってください。

森さん:わかりました。愛車のトラブルを減らすために、他にも何かできることってありますか?

谷口さん:始動するときにセルモーターの音が変じゃないか、ギアをリアに入れたときに変速ショックがしないか、ペダルがいつもと違う踏み心地じゃないかなど、運転の際に五感を使ってクルマの状態を感じ取るようにしてください。わずかな違和感に気づけるようになれば、深刻なトラブルになる前に対応できる可能性が高まります。

森さん:普段からクルマの声に耳を澄ますことが大事なんですね。他に気をつけることはありますか?

谷口さん:ハイブリッド車の場合は高圧の電流が流れている場所がたくさんあります。そういった、触ってはいけない場所には警告シールが貼ってあるので、日常点検の際に触らないようにしましょう。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。コーティングや洗車について説明している画像

森さん:機関部の状態だけでなく見た目もきれいなまま保ちたいんですが、なにかいい方法はありますか?

谷口さん:クルマを購入したあと、プロが手作業で行うガラスコーティングなどを施すのが理想です。その後は洗車機でもセルフ洗車でも定期的にメンテナンスを行うことで塗装も長持ちしますよ。

セルフ洗車を行うときは、スプレー式のコーティング剤を使うのもおすすめ。汚れ自体がつきにくくなりますし、コーティングした後なら洗車機で洗ってもボディに傷がつきにくいんですよ。

 

クルマの日常点検・メンテナンス。車内の日焼けを防ぐためにサンシェードが有効なことを示す画像

谷口さん:それから、年式の古い車両だと、経年変化でダッシュボードがひび割れることがあります。防ぐにはガレージ保管がベストなのですが、屋根付きの駐車スペースを確保できないときはフロントガラス用のサンシェードを使うのがオススメです。

森さん:これ、バモスにぴったりのサイズですね。車中泊のときにも使えそうです。

谷口さん:実は100円ショップで手に入れたものですが、ちょうどいいサイズでしたね! 各メーカーから車種専用品のサンシェードも販売されているので、きれいに乗り続けたいなら購入を検討してみては。

長くクルマに乗りたいなら、日々の点検を大切に!

クルマの日常点検・メンテナンス。バモスホビオの前で笑う森さん、谷口さん

デイリーメンテナンスと言うと、オイルを変えたり工具を使って調整するようなイメージがありますが、実はそれだけではありません。

森さんが今回教わった15項目の点検を通じて「自分のクルマがどんな作りになっているか」と「普段の状態」を大まかに理解しておけば、故障する前に違和感に気づけるようになります。そして愛車に安全に長く乗り続けるためには、車検や法定点検のタイミング以外にも、マメにオイル交換や空気圧の調整をおこなうことが重要です。

クルマの日常点検は、朝起きて洗顔をしたり、体重計に乗ったりといった、いわば体調管理のためのモーニングルーティーンみたいなもの。歯磨きや洗顔と同じように、クルマに乗る前に点検をおこなう習慣を身につけましょう!

取材・文/廣田 俊介
写真/木村 琢也
編集/井上 寛章(LIG)

取材協力/読売自動車大学校