旅をしながら仕事をする「バンライフ社長」宮本メイさん。大学時代にアルバイトで貯めた60万円で中古のキャラバンを買い、シンプルでかわいい空間にカスタム。畳張りのベンチシート、木の温もりを生かした天井やパーテーション、パステルブルーに塗られた壁など、日本と北欧の要素をミックスしたインテリアスタイル「ジャパンディ」を参考に完成させました。こだわりをたっぷり詰め込んだ相棒のバンについてお話を聞きました。
お気に入りの街で車中泊を! バンライファー・宮本メイさんの旅する暮らし
2023.07.28- プロフィール:
宮本 メイさん - 株式会社MeiMei代表。大学時代にキャンピングカーをカスタムして、バンライフをスタート。現在は旅をしながら、キャンピングカーのデザインや女性のエンパワーメント事業の仕事を行っている。バンライフに憧れる女性を応援するため、SNSで情報を発信。女性に向けたオンラインコミュニティも運営中。
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インテリア業界注目の「ジャパンディ」を取り入れたバン
前編では宮本さん流のバンライフの楽しみ方をお伺いしましたが、後編では宮本さんのキャンピングカーについてお伺いしたいと思います! 60万円で中古車を購入しDIYしたとのことですが、キャラバンを選んだ理由は?
宮本さん:ハイエースにしようか迷ったのですが、天窓が付いていたのと金額的に安かったのでキャラバンにしました。
キャラバンに天窓ってありましたっけ?
宮本さん:キャラバンの中でも福祉車両には天窓が付いているので、この車種を選びました。光が入ることで空間が広く見えるし、さらに景色も楽しめます。私はゴールデンアワーと呼ばれる太陽が低い位置にある時間帯が好きなんですが、その時間に天窓から光が入ると本当に美くしくて。あとはハイルーフで天井が高いことも選んだポイントです。
車内のデザイン性が高くて驚いているのですが、DIYのコンセプトは何ですか?
宮本さん:デザインのコンセプトは「ジャパンディ」です。約3年前から海外で流行りだした日本(Japanese)と北欧(Scandinavian)の要素をミックスしたインテリアのスタイルで、天然素材を使いながらシンプルでミニマムな空間にしています。「ジャパンディ」には自分の人生がアートになるという考えがベースにあって、そういう美学もかっこいいなと。
他のバンライファーからDIYのヒントを得たのではなく、インテリア業界を参考にされたんですね。
宮本さん:はい。クルマの内装を考えるときに、既存のキャンピングカーやバンライファーのDIYを参考にするだけではできることに限りがあるなと感じていて。それに他の人とは違う新しいバンライフのスタイルをつくりたかったのでビジュアルは重視しました。
かなり洗練された空間になっていると思います!
宮本さん:ミニマムでありながらも温もりのある空間にしたかったので、ホームセンターで木材を買ってきて自分で車内に取り付けました。天井とパーテーションは木目をそのまま活かして、L字でつながって見えるようにしています。これはインテリアで流行っている手法で、個室感が出るし、バンライフでやっている人がいなかったので取り入れました。
すごい!自分の手でつくられたんですね。もともとDIYは好きだったんですか?
宮本さん:好きではなかったです(笑)。空間やデザインを考えることは大好きなんですが、実際にやってみて、DIYは楽しいけど得意ではないと気づきました。
一番大変だったところは?
宮本さん:まず、何から調べればいいのかさえもわからなかったこと。DIYの作業自体は37日間で終わりましたが、下調べや準備に時間がかかりました。用語もわからないし、YouTubeを参考にしようとしても情報が整理されていなかったり。天窓付きのクルマをDIYしている人もいなくて、下準備に苦労しました。キャンピングカーとして登録するための車検にも苦労して、悔しくて泣いたこともあります。
苦労も多かったんですね。全て自分でDIYされたんですか?
宮本さん:さすがにキッチンセットはつくれないのでIKEAの商品を使っています。カラーバリエーションが豊富でリーズナブルだから、バンライフを始めたい方におすすめです。
自炊はよくされるんですか?
宮本さん:凝った料理はあまりつくらないです。炊飯器でご飯を炊いて、スーパーで地元のおかずを買うことが多いですね。
デザイン性だけでなく、機能面も充実!
デザイン性以外で重視したポイントはありますか?
宮本さん:つくった当時は大学生だったので学校とバンライフを両立できるよう、機能面も重視しました。その一つが、バッテリーシステム。ソーラーパネルを取り付けて、パソコンや携帯電話が充電できるようにしました。
どれくらいの電力をまかなえるんですか?
宮本さん:ドライヤーは使えませんが、パソコンなどの充電には問題ありません。キッチンのIHコンロや炊飯器も使えます。
他に工夫したところはありますか?
宮本さん:ホワイトボードを設置しました。卒論を書くためのアイデアを書いたり、磁石で資料を貼り付けたりできるので。
今だと仕事で使えますね。
宮本さん:はい。携帯でメモするよりも書きやすいし、アイデアもひらめきやすい。あって良かったなって思います。
基本的にこのリビングスペースで仕事をしているんですね。オンとオフで空間を使い分けるなどの工夫はしていますか?
宮本さん:私の日常はオンとオフが分かれていなくて、全てニュートラルだから空間は分けていません。仕事も寝る場所も同じです。バンライフではベッドを常設してる人が多いけど、私はベッドがあるとダラダラしちゃう。仕事をするときはベンチシートに座ってパソコン作業をしたり、仕事のヒントになる本を読んだりしています。
宮本さん:寝るときはベンチシートの中央に木のパネルを設置して、畳を敷きつめてフラットな状態にしています。
ずっと気になってたのですが、収納面はどうなっているんですか? ものが少なくて、すっきりしていますよね。
宮本さん:ベンチシートの下が収納スペースになっています。寝袋や毛布などは、まるっと入れてあります。
友達との二次会も、一人時間も同じ空間で
宮本さんは、デザイン性と機能面、2つの視点を持って自身のキャラバンをDIYされたとのことですが、「バンライフ社長」としてキャンピングカーをデザインするときも同じ視点を大切にしているんですか?
宮本さん:デザインうんぬんを考える前に、まずはどんなバンライフをしたいのか? を聞くようにしています。いろんな人との出会いを求める旅なのか、自分と向き合って人生を見つめる旅なのか、日常を楽しみたい旅なのか。一つじゃなくてもいいのでテーマを決めてからデザインします。
確かにそうですね。車中泊仕様にDIYするときに、まず考えるべきことですね。
宮本さん:それが私の場合は「大学生×バンライフ」でした。バッテリーシステムを充実させて、まずは学習環境を整えました。コの字型になるベンチシートは、同級生を呼んで、飲み会をしたくてつくりました。掘りごたつのようになって、最大9人座れます。実際に何度もここで飲み会をしましたが、みんなとの距離も近くて盛り上がりました。
友達も呼べるし、一人でのんびりした時間も過ごせる。いろんな楽しみ方ができるバンですね。他にもお気に入りのポイントがあれば、ぜひお聞かせください
宮本さん:サイドに付けた大きな窓です! 「シネマティックウィンドウ」と呼んでいて、映像の手法「シネマティック」と同じ縦横比(21:9)で窓枠をつくりました。これによって窓から見る景色が映画のワンシーンみたいに見えます。
素敵です! ちなみに、この窓から見た景色で一番印象に残っている場所は?
宮本さん:北海道で見たヒマワリ畑です。すごくきれいで感動しました。
窓にもこだわることで、車内から見る眺めも変わりますね。
宮本さん:はい。ただ、夜は安全のためにアルミシートを取り付けて、外に明かりが漏れないようにしています。
一人で車中泊するときに注意していることは他にありますか?
宮本さん:私は危ない場面にあったことはないのですが、夜は街灯の下のような明るい場所に駐車します。このクルマって何だろう? って思われないように、生活している雰囲気を出しません。
気になると、人が寄ってきてしまいますもんね。
宮本さん:あとはクルマにステッカーを貼らない。バンライファーってクルマに貼るステッカーを交換する方も多く、私も好きなバンライフカルチャーの一つでもあるのですが、私は普通のクルマに見えるように心がけています。
DIYの魅力は、お気に入りの城をつくれること
最後にお伺いしたいのですが、宮本さんにとって、クルマをカスタムする魅力はどんなところにあると思いますか?
宮本さん:私にとってこのキャンピングカーは城で、「メイの動く城」って呼んでいるんです(笑)。すべて自分でつくったからこそ、誰も侵入することができない自分の城だと思える。たぶん販売されているキャンピングカーを選んでいたら、そんな風に感じなかったんじゃないかな。そもそもバンライフを自分で選択したから、暮らしもクルマも自分らしくしたい! 自分が好きなようにできるところが魅力だと思います。
デザイナーとしては、今後どんなキャンピングカーをつくっていきたいですか?
宮本さん:女性目線のキャンピングカー。自分らしく生きられる女性を増やせるようなデザインを目指したいです。かわいいとうたわれているキャンピングカーはあっても、女性目線ではないなって感じて。どうしてもクルマってデザイン性よりも、機能性が優先されがち。女性がそこでどんな暮らしをしたいのかまで考えて、自己実現できるようなキャンピングカーをつくりたいです。
理想の暮らしを叶えるキャンピングカー、すごくいいですね。今回はありがとうございました。
文/越智 理絵
写真/中田 健司、宮本 メイ
編集/ TAC企画