N-VANカスタムの集大成! これだけは押さえておきたいN-VANカスタム基本の「キ」

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N-VANの集い」を主催するなど、「カエライフ」ではN-VANカスタムの上級者としてたびたび登場いただいているちぎすけさん。今回は、N-VANをカスタムするうえで最初に着手すべきことについて伺いしました。

「N-VANの集い」とは、N-VANだけの車中泊キャンプイベントで、過去2回にわたって全国から車中泊仕様にカスタムした多くのN-VANユーザーが集結。

イベントを通して、さまざまなカスタムを見てきたちぎすけさんですが、それだけでなく、自身のYouTubeではカスタム術を紹介し、現在では視聴者からのカスタムに関する問い合わせも多いといいます。そんなちぎすけさんだからこそ語れる、N-VANカスタムの基本の「キ」をご紹介します。

目次

 

ちぎすけさんの最新N-VANカスタム

まずは前回の取材から、さらに進化したちぎすけさんのカスタムについてお伺いしました。すでに仕上がっているちぎすけさんのN-VANですが、もう一歩、さらなるカスタムを加えることでより快適な空間を生み出しています。ひとつひとつ見ていきましょう。

 

機能とデザインに磨きをかけた「引き出し式IHヒーター」

機能とデザインに磨きをかけた「引き出し式IHヒーター」

引き出しにはコンパクトなIHヒーターがシンデレラフィット

車内で飲食をするうえで必須なのは熱源。かつては家庭用ガスボンベを使っていたそうですが、一酸化炭素中毒の懸念からIHヒーターの導入を検討していたそうです。数ある商品のなかでも、ちぎすけさんが知る限りもっともコンパクトで安全に使えそうだとセレクトしたのが、ドリテックの「IHクッカー ピッコリーノ」

「サイズはわずか20.5cm四方とA4サイズよりも小さく、湯沸かしや加熱などモード選択もできるモデルです。温度過昇防止機能や、高温注意表示など安全面も心配いりません。このモデルを引き出しに埋め込みたくて、今回のカスタムに着手しました」

車内で使いやすいようにカスタマイズされたIHヒーター

コンセントの導線や排熱口を微調整し切り出している。撤収の早い朝にさっと朝食を済ませるときに大活躍だそう

こだわったのは、都度取り出す必要がなく車内に常設できる引き出し式であること。車内の空間を崩さずに、きちんと就寝スペースを確保できるように棚を改造しています。

 

デザインが統一された「ダッシュボードテーブル」

N-VANに追加されたダッシュボードテーブル

助手席のダッシュボードに二段のテーブルを設置。ナビの前も連結することで運転席まで一体感を持たせている

デフォルトの状態でもドリンクホルダーや小物入れがあった空間に、車内のデザインと一体感を持たせつつ、さらなる機能を追加したダッシュボードテーブルを設置。下段にはUSBポートを増やし、ワイヤレス充電パッドが設けられています。

「軽自動車は車載のバッテリー容量が少ないので、電源はクルマに積んでいるポータブル電源から供給しています。ポータブル電源はソーラー充電していますし、エコなところも気に入っています」

N-VANをカスタマイズして運転席にドリンクホルダーを設置

運転席左側にはドリンクホルダーを増設。右側は底面を開閉式にすることで500mlのペットボトルも収納可能に

リアのカスタムが整った段階で、フロントにもウッド調のテイストがほしくてカスタムを実施。ドリンクホルダーには真鍮の部材を使うなど、細部にもデザインのこだわりが見られます。

 

運転時の安全面も配慮した「換気扇ボード」

ちぎすけさんがカスタマイズしたN-VANの換気扇ボード

格子型の部分は左右にスライドが可能。ファンの配線類が表には出ないようすっきりとしたデザイン

N-VANの後部座席の窓は昇降式ではなく、ポップアップ式と言って全開しないため、多くのN-VANユーザーが後方ウィンドウ部分に換気扇を設置しています。ちぎすけさんが目指したのは、運転時も安全を確保できる抜かりない設計でした。

「車中泊をするうえで、多くのユーザーさんにとって悩ましいのが、就寝時に車内を真っ暗にできるかということ。加えて運転時には死角となる左右後方をきちんと確認できるようにしなければなりません。毎晩寝るときにすべての窓に目張りすれば済むことですが、その両方を解決できるカスタムを施しました」

N-VAN後部座席左の窓を引き戸にカスタマイズ

後部座席の左側は引き戸を設置。開閉時に4枚の板が連動して開け閉めできる

運転時に注意が必要なのが左後方部。後部座席左の窓は引き戸を設計しました。就寝時に車内を真っ暗にできるうえ、運転時には全開にすることで、目視で後方確認もできます。

 

これだけはまずやったほうがいい! N-VANカスタムの基本の「キ」

続いて、これからN-VANを購入し夢のバンライフを始める方のために、最初にカスタムすべき3つのポイントを指南いただきました。

ちぎすけさん自身も試行錯誤しながらカスタムしていくなか、「購入してまずやるべきだった…」と振り返る、今だからこそ語れる基本の「キ」を紹介します。

 

最初に行なうべき基本カスタム①天井断熱&制振

N-VANの天井に断熱材として住宅用グラスウールを設置

断熱効果のあるグラスウールはホームセンターで売っている市販のもの

N-VANで最初に行なうべきカスタムのひとつ目は、天井断熱と制振。軽バンなので、どうしても断熱性能が低く、車内が暑くなりやすく、冷えやすい傾向にあります。夏場の駐停車時に熱がこもることもそうですが、断熱性能を上げることで、エアコンの効きもはるかに改善されるので、ちぎすけさんはまず最初にすべきカスタムだと言います。

「もっとも車内の温度を左右するのは、天井からの太陽の直射日光です。そこで断熱材として住宅用グラスウールを設置しています。また。車中泊をしていてもっとも煩わしいのがルーフを打つ雨音。こちらもホームセンターで売られている制振材を貼り付けています。

DIYを始めると、棚を作ったりベッドを置いたり、目に見えるところから着手しがちですが、まずはプレーンの状態で、天井断熱と制振をすることをおすすめします」

N-VANの天井に制振材を貼り付けるちぎすけさん
でお願いします。

制振材も市販のもの。約80枚を天井に貼り付けている

制振材を取り付けて最初に出かけたファミリーキャンプで大雨に見舞われたそうですが、翌朝車外に出るまで雨が降ったことに気がつかなかったそうです。

ちぎすけさんは、天井断熱&制振の前に車内のカスタムを進めてしまったので、すべて一度分解することになったそうです(笑)。また、車内で長時間の作業となるので、涼しい季節にやるのがおすすめとのこと。

 

最初に行なうべき基本カスタム②開閉式カーテン

N-VANのフロント部をぐるっと覆うように設置した自動開閉式のカーテン

フロント部をぐるっと覆うように設置した自動開閉式のカーテン

次に、バンライフを楽しむうえで実施したいのがフロント部のカーテンの設置です。就寝時に車内を暗くすることと、車外からの人目を遮るという点で、まずやっておきたいカスタムです。

当初ちぎすけさんは断熱という点で、その都度、窓にシートを貼っていたそうですが、カスタムのしやすさと、開閉の手軽さからカーテンの設置を決めたそうです。

ちぎすけさんのN-VANに取り付けられたカーテン開閉用のボタン

カーテンの開閉は運転席のボタンでも可能

N-VANのリアにマグネットでカーテンレールを設置

リアにはマグネットでカーテンレールを設置している

「どうしても隙間ができてしまうのでカーテンの設置は避けていたのですが、『N-VANの集い』で出会ったN-VANユーザーさんにおすすめされてカスタムに踏み切りました。加えて、スマートフォンで操作ができる『SwitchBot』で稼働したかったので、すべての窓にシートを目張りしていたときと比べてはるかに利便性が上がりました

 

最初に行なうべき基本カスタム③フラットな就寝スペース

ちぎすけさんのN-VANは寝やすいようにフラットにカスタマイズされている

最後に紹介するのが就寝スペース。車中泊をするならもちろん快適な睡眠環境を整えたいところです。N-VANは純正の状態でフルフラットにすることができますが、運転席側で161cmと成人男性にはややコンパクトな仕様になっています。

また、純正のままだと床下に収納スペースを確保できないので、底上げしてベッドキットをカスタムすることで、ポータブル電源やキャンプ道具などを積み込むことができ、より充実したバンライフを過ごせます。

ちぎすけさんのN-VANリア部に設置された引き出し収納

ベッドを底上げすることでリア部には大容量の引き出しスペースを確保

「うちの場合は、パイプキットで底上げしてフラットな就寝スペースを確保しています。そのおかげでリア部に引き出し収納を設置することができました。そして、大小大きさの違うパネルをはめ込むようにしているので、1人掛けから4人掛けまでシートアレンジできるような仕様にしています」

 

ちぎすけさんだから語れる自身の「失敗カスタム」

ちぎすけさんがN-VANルーフに設置したソーラーパネル

ルーフに設置しているソーラーパネル。これでポータブル電源を充電し自給自足のバンライフが実現

数々のカスタムを実践し自ら改良を重ねていった結果、現在の仕様に落ち着いたちぎすけさんのN-VANですが、その過程で紆余曲折があったことは言うまでもありません。そんなちぎすけさんが今だからこそ語れる、失敗だったカスタムを教えていただきました。

 

増え続ける電源容量:ソーラーとポタ電のイタチごっこ

ルーフに設置したソーラーパネルでポータブル電源を充電し、N-VAN自体のバッテリーを使わずに車内の家電を稼働させるというのが、ちぎすけさんが目指したバンライフでした。そこで最初に購入したのが100Wのソーラーパネルと、500Wのポータブル電源。

しかし、カスタムを進めていくうえで、必要な電源容量がどんどん増えていき、ポータブル電源の容量は500Wから1000W、1440W、今では2000Wと増え続けているそうです。それに合わせて、ソーラーパネルの容量も100Wのものから、より発電効率のいいものに切り替え、現在では175Wのソーラーパネルを設置しています。

カスタムを行なう前に、あらかじめ使用する電力を把握したうえで電源容量を決めるべきだったと、振り返ります。

 

家具の耐久性:結局いちから作り直すことに…

ちぎすけさんがN-VAN車内に設置した電子レンジなどの家具

N-VANで最低限の車中泊ができれば……とDIYを始めたちぎすけさん。最初に設置した家具は、比較的高価ですが軽量な桐材で制作したものでした。しかし、しだいに電子レンジやIHヒーター、ギャレー(水道、シンク)などを積み込んだキャンピングカーのような仕様をN-VANでも実現しようと考えます。

すると、電子レンジなど重量のある家電は耐荷重の少ない桐材の家具には収納できず、結局作り直すことに……。現在は耐荷重のある集成材で家具をリメイクしました。

教訓は、自分が思い描くバンライフをより具体的にイメージして、そのためには何が必要か、何を優先するかを考え、最短距離で理想に向かうこと。そうすれば大きなやり直しは少ないでしょう。

 

暖房器具:何がいいのかいろいろ試したすえに…

車中泊とはいえ、冬には暖房器具が必須。まずは電気毛布からスタートしたちぎすけさんは、首から上の寒さをしのぐために、カセットコンロタイプのガスストーブ(イワタニ「マイ暖」)を購入。しかし、換気扇を使ってもガス臭さに耐えられず、導入したのが灯油を燃料とする燃焼式ヒーター「FFヒーター」でした。

バンライフの三種の神器のひとつと言われ、念願だった「FFヒーター」でしたが、これも灯油臭さやN-VANにはオーバースペックであることから断念。最終的に落ち着いたのは、冷暖房対応のポータブルエアコン、EcoFlow「WAVE 2」でした。改めて排気ダクトを設計しなおすなどカスタムを施し、「WAVE 2」に着地したそうです。

 

ユーザーから相談の多いカスタム

ちぎすけさんがカスタマイズしたN-VANのリアゲートオープンスイッチ

SNSを介してN-VANユーザーのカスタムに関する疑問に答えることが多いというちぎすけさん。なかでも相談が多いのが、「リアゲートオープンスイッチ」「床下引き出し収納」「ソーラーパネルの車内通線方法」だそうです。

 

⚫︎リアゲートオープンスイッチ

ちぎすけさんがカスタマイズしたN-VANのリアゲートオープンスイッチ

車内からでもリアゲートを開閉できるロック解除のボタン。ちぎすけさんはゲート部分にエーモンの「プッシュスイッチ」を設置しています。N-VANのオープンスイッチと相性がいいのは、「自動もどり(押している間だけON)」のタイプ

 

⚫︎床下引き出し収納

ちぎすけさんのN-VANリア部に設置された引き出し収納

ポイントとなるのは「引き出し長」と「耐荷重」。床下のスペースを有効活用するためにどういったスライドレールを使用し、荷重に耐えるためにどのように固定するかなど、建て付け家具の質問が多いそう。アドバイスとしては、プロの大工ではないので、ある程度の誤差が出ることを前提に数ミリの遊びを持たせること。

 

⚫︎ソーラーパネルの車内通線方法

ちぎすけさんがN-VANルーフに設置したソーラーパネル

ソーラーパネルに限らず、車内に配線を通すときは断線のリスクを避けたいところ。N-VANのハイマウントストップランプ(尾灯)は、1か所だけグロメットが空いているので、そこに穴を開けてソーラーパネルの電源を通線しています。そして穴をコーティング剤で固定することで、断線や水の侵入を防いでいます。

 

より具体的なイメージを描いて計画的なカスタムを

夢のバンライフを手に入れて「あんなことがしたい」「こんなことができるといいな」と、想像を膨らませるのは楽しい時間ですが、そのときに、より具体的なイメージを描くことが重要だと、ちぎすけさんは言います。

「私の場合、アイデアが湧いてきてそれを試すようにカスタムを進めていったので、何度かいちからやり直さなければならないという経験をしました。より具体的かつ解像度の高いイメージを事前に描くことで、やり直しすることなく最短距離でカスタムを進めることができると思います」

もちろん、失敗を繰り返したからこそ、得られる経験や応用できる知識が身につくことがありますが、計画通りに進むに越したことはありません。理想のバンライフを手に入れるためには、ちぎすけさんのような“先人”のカスタムを参考にしながら、SNSなどで積極的にコミュニケーションをとって趣味の輪を広げていくのが、近道なのかもしれません。

笑顔のchigisukeさん
ちぎすけさん
クルマ関係の企業に勤める機械設計エンジニア。2019年11月にN-VANを購入して以来、週末二日間を愛車のカスタム&家族とのアクティビティに費やしている。二男一女の父。chigisukeさんの週末の過ごし方は、Instagram&YouTubeでチェック!
Intsagram @chigisuke
YouTube chigisuke

 

編集/山田卓立、TAC企画
写真/佐山順丸