りんご以外にも!? 秋の長野で「○○狩り」車中泊旅

香り高い蕎麦や採れたてのりんご。長野ならではグルメを満喫! ~イラストレーターいとうみゆきのクルマのおうち旅

愛車の「白くま」に乗って日本各地を旅する、イラストレーターのいとうみゆきさん。今回の旅の舞台となるのは「長野県」です。第2回では、北アルプスの麓をドライブしながら、蕎麦やりんごなどの長野グルメをお腹いっぱい堪能します。

▼プロフィール

いとうみゆきさんのプロフィールイラスト
イラストレーター いとうみゆき
埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。
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目次

 

北アルプスの麓で長野グルメを味わう

長野の山々が見える街道を進む白くま

季節は初秋。

秋のはじまり、それはつまり、おいしいものでいっぱいの季節のはじまり!

来たる寒い冬に備えて食べまくる動物たち、旬のおいしいものを食べたいと駆け回る人間たちで世界中が騒がしい今日この頃。例に漏れず私も秋の味覚が大好きなもので……。

ということで今日は、秋といったらやっぱり長野! の食材をゲットしにいきます!

長野県北アルプス麓のクルマ旅マップ

旅の舞台は飛騨山脈、通称「北アルプス」の麓。昨年訪れた新潟県の親不知あたりからはじまり、新潟県、富山県、長野県、岐阜県と四県を跨いで連なっています。

北アルプスに限らず、長野県を走っているとしょっちゅう視界に入る大きな山々。その麓には家や田畑があって、川が流れていて……。ここにいる人たちは、自然と一緒に生活をしているんだなあということがよくわかります。

ここで過ごしていたら、きっと日常生活の中で季節の流れが感じられるんだろうな。葉っぱの色づきだったり、畑のぐあいだったり。一方、私ときたら、八百屋さんに並ぶ果物や野菜のラインナップで季節の変化を知るばかり。なんだか少し寂しい気がします。

いとうさんと白くま

でも、だからこそ旅が好きなのかな。八百屋さんで見かける長野県産の果物、スーパーで買う長野の山から来た水……そういったものの生まれた場所に直接訪れられるとき、うれしくて仕方がないから。ずっと昔から日本人が慣れ親しんできた里山の風景をその場で味わうことができるとき、楽しくって仕方がないから。

白くまがいるかぎり、行きたいなって思ったところは(国内なら)どこへだって行けるから!

 

①鷹狩山展望台で北アルプスを眺める

大町山岳博物館前の林道を進み、林の手前にある駐車場から坂道を登ること10分。山頂に到着すると、パッと視界が広がりました。

鷹狩山展望台から望める北アルプスの絶景

ここは鷹狩山展望台。目の前に広がるのは北アルプスの大展望です!

長野県をドライブしているとき、いつも下から見上げていた山々。位置を変えて眺めてみてもその美しさは健在ですが、より雄大さが感じられます。

あの道路を走ってきたんだなあ、とか、あの山は下から見たときも形が好きだったなあ、とか……気持ちのいい風を全身に浴びながら果てしなく広がる景色を眺めていると気分が安らぐだけでなく、なんだかワクワクしてくるものです。

鷹狩山展望台で周囲を見渡すいとうさん

ここは鷹狩山の頂上。今回は近くまでクルマで来ましたが、下から登ることもできます。「鷹狩山」という名前の由来は、江戸時代にこの場所でハイタカやオオタカの幼鳥を捕獲し、鷹狩り用に松本藩に献上していたことから。

そもそも「狩」という漢字にはけものへんが入っているけど、山や海の幸を収穫する「潮干狩り」や「リンゴ狩り」だったり、紅葉を見にいくことを「紅葉狩り」と呼ぶことがあります。昔は花見のことも「桜狩り」と呼んだそうです。

ちょっと調べてみたところ、草花を愛でることにも「狩り」という言葉を使うようになったのは平安時代だという説を見つけました。

移動は牛車が基本で、しかも外を出歩くことが下品だと捉えられていた平安時代の貴族たち。だけど牛車では行けない山の中にも入り、自然を愛でたい……! そんなとき、「狩り」という名目なら出歩いても面目が保たれるだろう、ということになったよう。

他にも、季節の草花を探し求めて野山を歩き回る様子が「狩り」に似ているからそう呼ばれるようになった、などという説もありました。

田んぼに挟まれた道を進んでいく白くま

つまり、風光明媚な景色を求めて色々なところを巡り歩く今回の私たちは「景色狩り」の真っ最中! 黄金に色づいた稲に変わりやすい秋の空、彩度が少しだけ下がって落ち着いた山々……といった秋らしい景色を眺めながらのクルマ旅です。

 

②倉科製粉所で絶品のそば粉を

見渡す限り田んぼでいっぱいの道を抜け、信濃大町駅のほうへ。
商店街の一角にある倉科製粉所にやってきました。

倉科製粉所の店内

長野のグルメといえばやっぱり蕎麦! 今日は白くまキッチンで蕎麦料理を作りたいと思います。

倉科製粉所は明治23年創業のそば粉専門店。ここでは独自の石臼にて製粉されたそば粉を手に入れることができます。

長野県の蕎麦がおいしい理由の一つは、昼と夜の寒暖差が激しいから。それにより風味豊かで味の濃いそば粉ができるのです。さらに山から溢れ出る冷たくておいしい水を使って蕎麦を打つため、より一層味わいに深みが出るのだとか。

倉科製粉所でそば粉を量り売りしてもらう瞬間

蕎麦と一緒にそば粉も注文。必要な重さを量って、その場で袋詰めしてくれました。こういうライブ感、量り売りってなんだかワクワクするんだよなあ……!

お店の方にガレットを作りたいんですけど……と相談すると、なんとガレットのレシピをくれました。やった〜!

倉科製粉所で手に入れたそば粉

倉科製粉所
住所:長野県大町市大町2248
TEL:0261-22-0227
営業時間:8:30~17:00
定休日:日・祝祭日(臨時休業あり)
URL:https://www.sobakoya.com/

 

③山とりんごでりんご狩り

昼と夜の寒暖差が激しいことでおいしくなる食材は蕎麦だけではありません。

長野といえば、の「りんご」です! りんごは果物の中でも寒暖差による成長の影響が大きい果物。昼と夜の寒暖差により糖度が高く身の引き締まったおいしいりんごができるのだそうです。

今回は極力農薬を減らす努力をされながらりんごを作っている、りんご農家「山とりんご」にお邪魔して、りんご狩りをしてきました。

真っ赤に実ったりんご

農家さんに畑を案内していただき、今の時期がちょうど旬の「秋映」「シナノピッコロ」「紅玉」をゲット。一通り説明していただき、あとは自由に採ってね〜とのこと。軽トラでぴゅ〜っと走り去る姿が、なんだか印象的でした。

山とりんごでりんご狩りを楽しむいとうさん

さて、収穫です。

少し小さめの「シナノピッコロ」はおやつがわりにぴったりのポケットサイズ! ちょっと小腹が空いたときに皮付きで食べようかな。白くまのドリンクホルダーにもすっぽり収まってくれそう。

採ったりんごを眺めるいとうさん

りんごジャム作りに定番の「紅玉」を使ってりんご料理をしようと思っていたけれど、長野県生まれの「秋映」を使うのもいいかもしれない。酸味と甘さのバランスがよく、見た目が油絵みたいに美しいりんごでした。

直売所の側に停まる白くま

3種類のりんご、満足するまでたくさん狩らせてもらいました。

最後に収穫したりんごの重さを量ってお金を払います。直売所にあったりんごジュースもおいしそうだったので購入しちゃいました。

旬のりんごも置いてある直売所は道路すぐ横の農園の入り口にあるので、気軽に立ち寄れるのもうれしいところ。訪れる時期によって収穫できるりんごが変わるそうなので何度でも来たいな! 

瑞々しく実ったりんご

山とりんご
住所:長野県北安曇郡松川村川西3391-5
TEL:050-3692-9339
営業時間:9:00~17:00
営業期間:8月中旬~12月
定休日:水曜
URL:https://yamato-ringo.com/

 

④中山高原キャンプ場で堪能する、車中泊キャンプ飯

中山高原キャンプ場に広がる大草原

本日のキャンプ場は「中山高原キャンプ場」。

広い空と美しい草原が特徴的な、とても開放的なキャンプ場です。心地よい風が吹いていて、夏でも快適に過ごせそう。初秋の今は草が黄色に色付いていて、映画のような景色を楽しむことができました。

チェックインしてからもう一度町に行き、カフェに行ったり買い物したり温泉に入っていたらあっという間に夜に。

白くまキッチンで夜ごはんを作るいとうさん

夜ごはんは先ほど購入したばかりの蕎麦です。山から流れてきたたっぷりの湧き水で茹でた蕎麦はつやっつや。

途中で立ち寄ったスーパーで買った海老天と小ネギもつけました!

天ぷら蕎麦を堪能するいとうさん

一口目から口の中に広がる蕎麦の風味、細身ながらも適度なコシ。歯切れの良い麺、滑らかな舌触り、そしてやっぱり香り高い!

口に入れるたび、今日見てきた長野県の鮮やかな風景やおいしい空気のことを思い出しました。蕎麦ってこんなにおいしいんだ。

普段はうどんばかり食べている私ですが、この新蕎麦、さすがにおいしすぎて手が止まりませんでした。間違いなく蕎麦が好きになった瞬間です。長野県産のワサビを買い忘れたことだけが悔やまれます……次こそ絶対!

白くまベッドで読書を楽しむいとうさん

デザートには収穫したばかりのシナノピッコロをひとつ。かわいらしい赤ピンク色の小さな実につまった甘みと酸味は、間違いなく秋の味。

倉科製粉所近くの商店街で見つけた古本を片手に、ゆったりとした秋の夜の時間を楽しみました。キャンプ場には他にお客さんがいなかったこともあり、本当に静かな夜。時折聞こえる虫や鳥の声、木々のざわめきだけがお供のいい夜でした。

なにより、ちょっと目線を前にやれば採れたて真っ赤なぴかぴかりんごたち。クルマの中に採れたての爽やかなりんごの香りが広がっていて、ずっといい気分です。

朝の中山高原キャンプ場の景色

翌朝、青空でいっぱいの朝がやってきました。

大きな木の側に停まる白くまといとうさん

管理人さんにおすすめされた場所をお散歩しつつキャンプ場の様子をチェック。気に入った場所があったので白くまと一緒に移動し、見晴らしのいい場所で朝ごはんを作ることに。

りんごの皮を剥くいとうさん

倉科製粉所でいただいたレシピを元に、ゲットした食材たちで2種類のガレットを作ります!

しょっぱいガレットの作り方

まずはしょっぱい系のおかずガレット。

折りやすくするため、生地を焼くときは薄く薄く伸ばすのがおすすめです(私は少し分厚くなってしまった……)。秋の味覚、キノコを加えるのもあり!

りんごガレットの作り方

りんごを使ったガレットも作ってみました。おかずガレットと同じ生地なので、りんごのほうを少し甘くしてみました。

バニラアイスをトッピングしたい! と思っていたけど、クーラーボックスでアイスを一晩保たせることが難しそうなので断念……。セカンドバッテリーがあれば冷蔵庫を白くまに設置することができるのかな、そしたらアイスを食べることもできるのかな? 今後の夢が膨らみます。

しょっぱいガレットとりんごを使った甘いガレット

途中の道の駅で見つけた長野のブドウも添えたら朝ごはんの完成!

思った以上に写真映えする朝ごはんになって大満足です。

大自然の中でガレットを味わういとうさん

なによりおいしいんだな〜このガレット! 

旅先で採れた新鮮な食材を使って、慣れ親しんだ自分のキッチンでおいしい料理を作り、ゆっくり味わう喜び。それは、白くまと一緒だからこそ楽しめる贅沢な体験なのです。

外で食べるごはんはおいしいし、家で食べるごはんは安心する。

その点、白くまは両方のいいとこどり! 安心する家の一角に座っているのにここは旅先で、窓から見える景色はいつも美しい。

さらにその土地で育った風味豊かな食材を山盛り食べて、心も身体も元気になって……。

今日もいい日になること間違いなし。

白くまキッチンで作った朝ごはんを食べているとき、私はいつも、元気でいっぱいなのです。

中山高原キャンプ場
住所:長野県大町市美麻14902
営業時間:8:30~16:00(金・土は17:00まで)
定休日:不定休
URL:https://miasa-camp.com/

 

まとめ

白くまのなかに並ぶりんご

相変わらずクルマはリンゴのいい香りでいっぱい。たくさん収穫したりんごを積んだまま、次の場所へ向かいます。

今回旅をしたのは北アルプスの麓でしたが、長野県にはあと二つのアルプス「中央アルプス」と「南アルプス」があるのです。山の美しさとその恵みに触れた今、他のアルプスも見てみたい。

中山高原キャンプ場を出発する白くま

どうして旅をするの? と聞かれたら。

今しか見られないものを見て、そこにあるおいしいものを食べてみたいから! と答える気がします。

クルマを走らせ、いい景色を見つけてはそこを目指し、時には歩き、食べ、全身でその土地を楽しむ……そんな旅が好きなのです。だから今回も大満足!

よさげな場所を目指して突き進む、私たちの「季節狩り」はまだまだ続きます。

 

漫画/いとうみゆき
写真/いとうみゆき
編集/イガラシダイ、TAC企画