キャンプやカヌー、登山など、アウトドアのアクティビティを楽しむのに欠かせないのが「クルマ」の存在。現地までの移動手段としてはもちろん、その人ならではの外あそびスタイルを体現する相棒として、アウトドア好きから愛されています。
そこで今回は、アウトドアのプロフェッショナルたちに突撃インタビュー! クルマ好き・アウトドア好きが集うイベント「Let’s Chill Out!」にお邪魔して、達人たちの愛車との付き合い方を聞いてきました。
目次
アウトドア×カスタムカーを組み合わせた初のイベント「Let’s Chill Out!」とは?
今回伺ったイベントは、2020年11月14日・15日に静岡県の「ハートランド朝霧」で開催された「Let’s Chill Out!」。アウトドアとカスタムカーを軸に、様々なカルチャーが集結した初開催のイベントです。
会場にはカスタムカーが集結した展示コーナーも用意しており、ビンテージカー、アメ車、キャンピングカー、バンライフカーなど、ジャンルを問わず様々なカスタムが施されたクルマが多数展示されていました。
そのほか、アウトドア関連のブランドやショップの出展、ステージでのライブイベントなど、会場内には様々なコンテンツを用意。家族やカップルで訪れている人も多く、2日間大きな盛り上がりを見せました。
アウトドアの達人たちにインタビュー!
カエライフ編集部は、会場内で見つけたアウトドアの達人たちにインタビューを実施。いま乗っているクルマのお気に入りポイントやカスタムしている箇所、アウトドアにおすすめのクルマについてなど、たっぷりとお話を伺いました!
1.キャンパー・イラストレーター こいし ゆうか さん
今回のイベントでMCも務めた、女子キャンプの第一人者でありイラストレーターのこいし ゆうかさん。女子キャンプを盛り上げ、リードし続けているこいしさんの愛車について、お話を伺いました。
- こいし ゆうか
- イラストレーター、キャンプコーディネイターとしてテレビやラジオなど幅広いメディアで活躍。キャンプ歴は11年、「女子キャンプ」の言葉の生みの親。オリジナルテント「PANDA」のデザインも手がける。3月中旬にはキャンプ時の筋トレ4コマ漫画も掲載している書籍「1日5分美若体型 若返り筋トレやってます!!」が発売予定。
>>こいし ゆうか さんのHP
こいしさん:2018年に購入した、ルノーの「カングー 1.6V」です。私が買ったのは1世代前のモデルで、現行のものより少し小さめなんです。今のモデルはデカングー、その前のモデルがコカングーと呼ばれてたりもします。
カングーといえば黄色のイメージがありますが、くすんだ青色のカラーが欲しかったんです。イベントで大阪へ行ったときに中古車店で見つけて即決で購入しました。
こいしさん:コンパクトでフォルムもかわいいところ、荷物がたくさん入る割に車幅が小さく、路地でも小回りが効くところ、色々とあります。エンジンもパワフルで、山道も走れますし、街乗りもできるので便利です。
あとはハードに使えるのもポイント。カングーはキレイに乗るクルマというより、どんどん使い込んで汚してもいいクルマなんです(今日も小汚いままですみません!)。スコットランドではキャンプでよく使われていて、海外の人は汚れても気にしていません。
4WDはマニュアル車しかなかったので、諦めて2WDに。強いて言えばそこが不満点かな。
こいしさん: 車両は特にカスタムしていなくて、ノーマルのまま乗っています。クルマの中は小物を使って、アウトドアっぽい雰囲気に。ゴミ箱に切り株調のケースをかぶせて、友達からもらったハーブを入れたり、木のティッシュカバーも同じシリーズの商品で合わせています。
こいしさん:このクルマが初めて購入したものなんです。一人暮らしを始めてからはカーシェアやレンタカーを利用していました。当時は荷物の出し入れが面倒でしたが、今はキャンプ道具をずっと積みっぱなしにできてとても楽です。
こいしさん: 仕事でも、プライベートでも毎週のようにキャンプに行っています。今週(取材時)は自分の家に1日しかいなくて、ずっとキャンプをしていました。去年はクルマにパックラフト(カヌーに似た小型軽量ボート)を載せて、北海道を10日間旅行したこともあります。
こいしさん:私が憧れているのはスバルの「フォレスター」です。大きすぎないので運転もしやすそう。4WDだから雪道を走れるのも良いですよね!
2.クラフト作家 真島 辰也さん
続いては会場内でワークショップを行っていたキャンプ歴30年以上のクラフト作家、真島 辰也さんを突撃。DIYで様々なカスタムも施した、こだわり満載のクルマを紹介してもらいました。
- 真島 辰也
- キャンプ歴30年以上のクラフト作家。レザークラフト、木工からログハウス製作、カヌー自作など多岐に渡り活躍。イベントでのワークショップ出展も多数行っており、「Let’s Chill Out!」では木の箸づくり、革のコインケース、ポーチ作りを開催。
真島さん :スバルの「フォレスター」です。20数年前の年式の初期型に乗っています。海の家の施工の手伝いもしているので、砂浜を走れる4WD車が必要で購入しました。
牽引しているトレーラーのうわもの(荷台部分)は半日ほどで自作。リア側にドアを付けていて、この中にワークショップで必要な道具やキャンプ用品を放り込んでいます。使い終わると上の箱を降ろし、荷台の後ろ部分を折りたたんで立てて保管できるので、駐車スペースもとらないんですよ。
真島さん:重心が低くてタイヤのグリップも効いて、走り心地が良いところ。あとは山道、砂浜、雪道と、どんな道も走れるクルマなので便利です。古いタイプのせいか、シートが自分に合っていなくてずっと乗っていると腰が痛くなるのが唯一気になっているところですね。
真島さん:ボディをローラーでセルフペイントしています。もともとの色と違ってマットなカラーで仕上げたのでだいぶ雰囲気が変わりました。古い年式のクルマだからこそ、手塗りで出たムラや荒さも良い味になって気に入っています。
真島さん:インテリアだとハンドルカバーやサンバイザーカバーを牛革で自作しています。ちなみに今日着ているズボンや帽子も自分で作ったんですよ。必要なものはほとんど自分で作ることが多くて、どうやって作ろうか考えるのも楽しみのひとつです。
真島さん:ホンダ「シビックシャトル」、ボルボ「940」、ボルボ「850」、SAAB社「9-5」、いすず「ビッグホーン」、トヨタ「ハイエース」、ホンダ「オデッセイ」と色々乗りました。特に古いクルマが好きですね。
真島さん:自作したカナディアンカヌーやカヤックでキャンプツアーをしたり、愛犬と一緒に遊んでいます。キャンプはワークショップの出展をしたときに、あわせて楽しむことが多いです。
真島さん:荷物をトレーラーで引っ張っていき、目的地ではヘッド車だけにして軽快に動けるスタイルが気に入っています。車重の軽いクルマだと引っ張れる重さに法律上の制限が掛かるしパワーも無いので、古いランクルあたりが欲しくなってきました。
3.フォトグラファー 猪俣 慎吾さん
フォトグラファーの猪俣さんは、自ら開発したプラネタリウムテントとともに全国各地を巡り、イベント出展なども行っています。いまのクルマを選んだポイントは、猪俣さんならではの納得の理由がありました。
- 猪俣 慎吾
- アウトドアを中心に撮影を手掛けるフォトグラファー。外ごはん文化を広めるアウトドアパーティーグループ「KIPPIS」を主宰。世界にひとつだけのオリジナルテント型出張プラネラリウムを製作し、イベントなどに出展している。
Instagram @inomatacampphoto
>>猪俣慎吾さんのHP
猪俣さん:2年前に新車で買ったトヨタ「ハイエース スーパーGL標準ボディー」に乗っています。カメラマンとキャンプコーディネートの仕事をしているので荷物がとても多くて。とにかく積載量が多いクルマが欲しいと思ったのが理由です。
猪俣さん:荷物をたくさん積んだ上で、2列目シートに人を乗せられるのが気に入っています。窮屈さもないですし、ロケ現場で使うときはスタッフやモデルの方にも好評です。4WDなので、豪雪地帯でも問題なく乗れます。
リアゲート裏のプラスチック部分が傷つきやすいのが、ちょっと困っているところ。荷物を出し入れするときによくぶつけてしまうんです。内側を板張りにしようかと考えています。
猪俣さん:全体的にかわいいイメージにしたかったので、ボディは特装カラーでライトイエローをベースにしています。ルーフだけホワイトで塗装していて、キャリア、ラダーも色を合わせました。キャンプの撮影のときはルーフに乗って高い位置から写真が撮れるので便利です。
猪俣さん:今のクルマの前はトヨタ「マークXジオ」に乗っていました。このクルマも荷室は広かったのですが、荷物がどんどん増えてきて載せきれなくなってしまったのも買い替えたきっかけの一つです。
猪俣さん:キャンプ以外にもパックラフトやスキーをします。クルマに道具を一式積んでいって、写真を撮りながら楽しんでいます。イベントのときは今日のように、プラネタリウムテントを持って出展することも多いです。
猪俣さん:おすすめは「ジムニー」ですね。コンパクトだから運転がしやすく、女性にもおすすめです。ハイエースは大きくて便利ですが、その分運転には気をつけないといけないので……。
4.焚き火マイスター 猪野 正哉さん
猪野さんはファッションモデルからアウトドアコーディネーター・ライターに転身した珍しい経歴の持ち主です。彼が実践するキャンプの楽しみ方は、アウトドア初心者の背中を押してくれるものでした。
- 猪野 正哉
- アウトドアプランナー、焚き火マイスターとして活躍。千葉県にある焚き火サイト「たき火ヴィレッジ<いの>」の運営・管理も行っている。2020年9月に著書「焚き火の本」を発売。
Instagram @inomushi75
猪野さん:3年前に中古で購入した三菱「パジェロイオ」です。同シリーズの「ミニ」ほど小さくなく、「パジェロ」ほど大きくないのが特徴で、キャンプや登山で使うのにちょうど良いサイズ感が気に入って購入しました。
猪野さん:4WDなので山道に強いですし、タフで燃費も悪くありません。同じクルマで走っている人が少ないので、ちょっとした特別感もあります。思ったとおりサイズ感もちょうどよくて、6人用のワンポールテントが載せられるので必要十分。ただ、最近人を乗せる機会が増えて思ったのですが、荷室がやや狭いのがネックかな。
猪野さん:僕はDIYやカスタムは基本的にしていません。このクルマも買ったまま使っています。クルマ旅やキャンプをするとき、道具にこだわるのが当たり前という風潮をなくしたいんですよね。初心者の人も「こだわらなければキャンプをしちゃいけないのかな」ってストレスになっちゃいます。自分自身、クルマや道具をそのままの姿で受け入れるスタンスで、車中泊のときも特別なものは使わずに寝ています。
猪野さん:フォルクスワーゲンの「ゴルフ」に乗っていました。今のクルマは家族がずっと三菱車に乗っていたから選んだのもあるかも。
猪野さん:キャンプや山登りが多いですね。焚き火のお仕事をいただくことも多くて、だいたい週5のペースで焚き火をしています。
猪野さん:個人的にはセダンがおすすめ。積載量が気になる人もいるかもしれませんが、キャンプで本当に必要なものはそんなに多くありません。道具は最低限、コンパクトで十分。大きいクルマでなくても、キャンプは楽しめますよ。
5.ネイチャークラフト作家 長野 修平さん
自然とともにある暮らしを実践するクラフト作家の長野さん。今回のイベントでは木のスプーン作りのワークショップを開催していました。クルマとの付き合い方についても、興味深いお話が登場します。
- 長野 修平
- 草木や竹など、様々な自然素材を使ってアウトドアや暮らしの道具を生み出すネイチャークラフト作家。焚き火で肉を炙りながら行う独特のスタイルのワークショップも人気を集めており、各種メディアや国内外のイベントにも多数出演している。
Instagram @shuuheinagano
長野さん:新車で買った日産「キャラバン スーパーロングボディ」です。もう8年乗ってるかな。仕事で色々なイベントに行く機会が多くて、たくさん荷物を載せられる商用車を探しててね。大きくて、積載量が抜群なこのクルマを選びました。
長野さん:とにかく色々載せられるところ。ワークショップで使うものも、キャンプ用品も全部この中に入れています。もともと商用車だけど、カスタムしだいで使い方の可能性が広がるクルマだと思います。
気に入らない点はほとんどないですが、後部座席の取り外しが少し手間。ワンタッチでできるといいですね。
長野さん:車内の天井に板を載せて天井収納を作っています。ルーフトップはもともとアルミデッキだったものをDIYして、ウッドデッキにカスタム。この上にテントを設営して寝たり、朝はテーブルとイスを置いてコーヒーを飲んだりして過ごしています。
長野さん:このテントも29年くらい使っていますし、イスは僕が18歳の時に買ったから40年以上使ってます。壊れた部分はリペアしながら、モノは最後まで使い切ることが信条。使った分だけ、道具が自分(の本質)に近づいていくんですよね。
長野さん:トヨタ「セリカ2000GT」、日産「パオ」、スバル「レガシィ」、トヨタ「ライトエース」、「ハイエース」、それで今のキャラバン。色々乗ったけど、今のクルマが一番大きいです。
長野さん:こうしたイベントでワークショップを開くことも多く、色々なところにクルマで行ってキャンプを楽しんでいます。そのときには必ず焚き火料理を作っています。山菜採りをして料理することもあります。
長野さん:積載量が多くて、故障の少ないクルマならなんでも。次乗り換えるとしてもキャラバンがいいかな。僕にとっては「何に乗るか」より、「どう乗るか」が大事。クルマはその人のライフスタイルのひとつですし、僕もこのクルマは家の延長のようなもの。ぶつけたり傷がついたりして、乗り倒すことで自分のものになる。そういう考えができると、クルマに乗り負けないですよね。
「Let’s Chill Out!」主催者のCielBleu(シエルブルー)さんにインタビュー
「Let’s Chill Out!」主催者のクリエーターユニット「CielBleu」(シエルブルー)のおふたりは、バンライフやキャンプを楽しむアウトドアの達人です。今回のイベントを開催した背景や、クルマのカスタムについて、茨木 一綺さん(ワカさん)にお話を伺いました。
- CielBleu
茨木 一綺さん(ワカさん)、美伽さん(アネゴさん) - キャンプ用品を中心としたウッドファニチャーブランド「CielBleu(シエルブルー)」を2010年に設立。前職のカーエンジニア時代に培った技を活かしてバンライフ仕様のクルマのカスタムメイドを手がけたところ大人気に。日本における「バンライフビルダー」の第一人者として活躍中。
Instagram @cielbleu_waka
>>CielBleuのHP
ワカさん:CielBleuの10周年を記念して、もともとは今年(2020年)の前半に開催する予定でしたが、コロナの影響で延期に。フォルクスワーゲン車が集まるイベント「Flash Bugs Meeting vol.37(フラッシュバグズミーティング)」も同じタイミングで延期となったのですが、共同開催という形でイベントを実施することができました。
いままでカスタムカーとアウトドアを組み合わせたイベントは僕の知っている限りではありませんでした。クルマ好きな人は必ずアウトドアが好きなわけではないですし、その逆も同じことがいえます。だから、この2つのカルチャーが混ざり合って、お互いの魅力を知ってもらう場にしたいという思いも、今回のイベントに込めています。
ワカさん:僕たちは「自然の中で遊ばせてもらっている」という気持ちを大切にしています。普段はアウトドアをあまりしないクルマ好きの人にも、イベントを通して自然の魅力や素晴らしさを知ってもらい、自然とともに暮らすことを考えてほしいというコンセプトもあるんです。
こうしてたくさんの人に集まっていただけたのは、その考えに賛同してもらえたということ。皆さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ワカさん:1979年式のGMC社「ラリーSTX」です。このクルマはシェビーバンの兄弟車。アメリカに住んでいたときからシェビーバンに乗っていて、日本に帰った後もアメ車バンに乗り続けています。
ワカさん:アメ車に共通するポイントですが、とにかく車体が大きくて広いのが魅力です。うちは5人家族ですが、幅が広いのでクルマの中で横になって5人寝ることもありますよ。
ワカさん:内外装をはじめ、エンジン、ミッション、足回りまでフルカスタムしています。うちは内装の板張りが一番の特徴。木を打ち付けて土台を作り張り合わせていくのですが、室内空間が少しでも広く使えるよう、板の裏側を削ってクルマに沿わせるようにしています。断熱材や遮音材も入れているので、家のように快適に過ごせますよ。
ワカさん:いまのバンが3台目になりますが、1台目も2台目もシェビーバンに乗っていました。1台目は先輩に譲り、2台目はアウトドアブランド「NANGA」に譲って広報車として使用していただいています。
ワカさん:クルマで日本全国を巡ってキャンプしたり、シュノーケリング、カヌー、カヤック、川下り、ときどきサーフィンもします。子どもたちは生まれた時からキャンプに行っていて、年間100泊以上していた時期もあります。いまは子どもたちも大きくなって、飽きちゃったのかあまり一緒に行かなくなりましたが(笑)
ワカさん:やはりシェビーバンです。室内空間が広く、使い勝手がとても良い。アメ車はちゃんと直せば壊れないで長く乗れますし、使い込むほど味が出ますよ!
自分が楽しみたいアクティビティに応じたクルマ選びを!
インタビューを通してわかったのは、アウトドアに最適なクルマは、自分がどのように外あそびを楽しみたいかによって変わるということ。
キャンプやカヌー、登山など、趣味のアクティビティに応じてクルマのサイズを検討したり、今回のようなイベントに出向いてイメージを膨らませたりすることもおすすめです。
クルマは自分らしいライフスタイルを実現するための大切なパートナー。今回の達人たちの意見も参考にしながら、自分にとって最適なアウトドアとクルマの付き合い方を見つけてみましょう!
文/井上 寛章
写真/木村 琢也