イラストレーター・いとうみゆきのクルマのおうちで埼玉一周の旅 vol.01 めんどくさがり屋の改装術〜内装準備編〜

dIYをするいとうみゆきさんのイラスト

海外でのクルマ旅を綴ったエッセイが話題となり、多くのファンに支持されるイラストレーター・いとうみゆきさん。ワーキングホリデーをきっかけにニュージーランドを訪れ、車中泊生活を経験したことからその魅力に取り憑かれたそう。

そんな いとうみゆきさんの新たな旅がスタート! 舞台は出身地であり、現在住んでいる埼玉県。旅を通じたさまざまな出会いや体験の様子を連載企画でお届けしていきます。第1回目は、旅に向けた愛車のカスタムの様子を紹介。イラストエッセイの最後には、いとうみゆきさんのオリジナル動画も掲載しているため、お見逃しなく!

いとうみゆきさんのイラスト
イラストレーター
いとうみゆき

埼玉県在住。セツ・モードセミナー卒業。畑と音楽を好み、パーマカルチャーや自然農を学んでいる。著書に『車のおうちで旅をする』(KADOKAWA)がある。

Twitter @noca_m
Instagram @nmoytke
tumblr 
Miyuki Ito Illustration

 

 

目次

はじめましての自己紹介

家に閉じこもることばかりだった昨年。
机と台所、そして布団の行き来をするだけの変わらない毎日。
終わらない作業に飽き始めたころ、スピーカーから流れ始めた音楽にふと手を止めた。

 

旅の思い出を回想しているいとうみゆきさんのイラスト

聞こえてきたのは、旅をしていたときによく聞いていたólafur arnaldsの「epilogue」。
どこかに向かわせるような音が響いたその瞬間、ニュージーランドで車中泊の旅をしていた一年半前のことを思い出した。

相棒のクルマと一緒に行きたいところを転々として、きれいなものをたくさんみて、気ままに眠る毎日。とてもすばらしくて、たのしい生活だったあの毎日。

外に出たくてうずうずしている両足。押入れの中で眠るいくつもの旅のお供たち。そして、駐車場にはずっと放置されているクルマ。
ちいさなアパートにこもって、机に向かっている場合じゃない。いつまでも昔のまとめをしている場合じゃない。今すぐどこかに行きたい! そんな気持ちでいっぱいになってしまった。

とはいっても遠くに行くことが難しい世の中だし、相変わらずそんなにお金もないし、定期的に歯医者にも行かなくちゃ行けないし……
行けるとしても家のまわりくらいが現実的だなあ。
と、いろいろ考えていたら、ちょうどいい計画を思いついた。

そうだ、埼玉県を一周しよう!

 

埼玉一周の旅に出る理由

なにもない県と名高い県のひとつ、埼玉県。
私が生まれ育ったのが埼玉県であり、今もひとり暮らしをしている場所です。

小学校の半分がひきこもりで、中学校からは片道1時間半かかる学校と家の行き来だけの毎日を過ごしていた私は、自分がどんな場所に住んでいるのかをあまり知りません。
「埼玉県ってなにがあるの?」という質問に自信を持って答えられたこともほとんどないのです。

 

いとうみゆきさんが描く埼玉県のイラスト

なんだかんだ20年ちょっと住んでいるんだから、もう少し知っていてもいいよなあ。
人に伝えたくなるようないいところ、本当はいっぱいあるはずです。

子供の頃と違って、今の私は運転ができます。好きにあちこち回れるし、車中泊スキルも身に付いている!
公共機関の出発時刻を気にする必要も宿の予約をする必要もない、行き当たりばったりの私にぴったりな旅の方法が車中泊なのです。

ということで、なんにも知らない地元・埼玉県についてちょっぴり詳しくなる、そんな旅をすることにしました!

今回私と一緒に旅をするのは「白いくるま」、略して白くま。
ニュージーランドから帰ってきてからしばらくして父に譲ってもらったクルマです。

 

いとうみゆきさんの愛車のイラスト

いいとこいっぱいのかわいい子、白くま。(普通車と比べてスピードとパワーが出にくい、衝突したときにダメージを受けやすい、などの悩みどころもありますが……)
まだ遠出の経験はほとんどないので、これからいろいろなところへ行くのが楽しみです。

 

DIYのスタートはベース作りから

実は白くまがうちに来たのは一年前。
移動手段としては使っていたものの、車中泊仕様にすることなくずっと放置していました。

 

いとうみゆきさんの愛車の内装

というのも、車中泊改造の基本である「床をフラットにする」ことがめちゃくちゃめんどくさかったのです。
軽バンはフルフラット になるクルマが多いですが、よくみると意外とでこぼこ。
ネットでフラットにする方法を簡単に調べてみたところ土台を組んでから床板を置くのが一般的らしい。

床を正確に測って、木材を測って切って、木で枠を組んで、固定して、床板を取りつけて……って

……めんどくさい!!!!

 

いとうみゆきさんが抱くDIYに対するイメージイラスト

しょっぱなから挫折、そのまま頓挫。
私はものを測ったり、言われた通りに作ることがとても苦手なのです。

そして時間が流れた1年後、私はようやくあることに気がつきました。
「白くまって、土台いらないんじゃない……?」

確かにでこぼこはしているけれど、白くまの場合は大きなでこぼこを上手に避ければ大丈夫そうだったのです!
床板を置くだけでいいなんて、なんていい子なんだ!
俄然やる気が湧いてきて、一気に白くまのことが好きになりました。

 

床板作り

1.設計、材料調達

とはいえ床板づくりだってめんどくさい。白くまの荷室は直線ではないのです。
床をぴったり埋めるには板をカーブ状に切らなくてはいけません。
そもそも曲線ってどうやって測ったらいいの? どうやって切るの?
ざっと調べたところ、段ボールを使って型を取り、曲線を切れる機械でカーブした形をつくる方法があるみたいですが……

……まあ、直線にすればいっか。

完璧にぴったりではありませんが、床だし問題ないでしょう。

 

dIYをするいとうみゆきさんのイラスト

後部座席を使いたいときのために床板は前後で分けることにしました。
土台がないから移動も楽ちんです。

必要な材料はラワン材のみ。ホームセンターで大きなカットだけお願いして、あとはノコギリで細かい部分を切るだけ! ノコギリで一度も真っ直ぐに切れたことがない私にできるのか分かりませんが、多分大丈夫でしょう…… 
……ちょっと心配なので、ひとまずリフォーム屋さん(父)に相談に行くことにしました。

2.完成

DIYをするいとうみゆきさんのイラスト

相談したら、全部やってくれました。やった〜!

しかも私が見落としていたシートベルトの金具部分を避けて床板を作ってくれました。
あっという間に床板が完成。急に楽をしてしまいました……

3.仕上げ

いとうみゆきさんの愛車の内装

ここからは仕上げの作業。
ざっとヤスリをかけてから防虫・防腐・防水効果がある柿渋を重ね塗りします。
さらに上からミツロウをうすく塗ります。防水効果が高まり、つやっとしていい感じ。
どちらも時間が経てばさらに奥深さが出ます。こういう正確さが求められない作業だけしていたいな……

 

カーテン作り

クルマのなかで快適に過ごすために必要なカーテン作り!
私が考える限り一番簡単な方法で作ってみました。

1.前

DIY中の愛車の車内

両端の内張りクリップ(外そうとすると割れてしまうので、通販で新しいのを買って全て交換)をはずし、片サドルバンドをはめてから戻します。
そこに切った丸棒を置いたら完成。ジャストサイズに切るのが大変でした……

2.後

DIY中の愛車の車内

ちょうどいい場所があったので、ここにマグネットをつけた丸棒を固定……する予定でしたが、マグネットを買い忘れたので家にあったつっぱり棒で代用しました。あまりにも簡単だったので、前も突っ張り棒にすればよかったな〜と思いました。

3.横

DIY中の愛車の車内

内張りクリップに針金を挟んで、ピンと張ります。いろいろな太さの針金を試しましたが、0.9mmが一番張りやすくてよかったです。運転席のそばには内張クリップがなかったので、最後はピラー+ダブルクリップに固定。

4.布

DIY中の愛車の車内

麻と綿でできた布が目に余る遮光率だったので、前の家で使っていたカーテンも使うことに。そのまま使ったらかなり長すぎたので、いつかやる気が出たら裾上げします。
カーテンクリップを使うと隙間ができてしまうので、布のほうはヘアピンで止めました。

 

いとうみゆきさんの愛車のDIY後の内装

これで完成!
車中泊の時間です!

 

お試し車中泊してみた

車中泊をしているいとうみゆきさんのイラスト

本棚と座椅子、コタツを持ち込んでみました。
ポータブル電源が大活躍です。さらにIHであったかいお鍋!

座椅子は広げるとベッドになります。
横幅70cmの激狭ベッドですが、普段からこれで寝ているので問題ありません。

実際にその場所で過ごしてみると、イメージがむくむく湧いてきます。
一晩過ごすだけならこれで十分だけど、生活するって思ったらもっといい部屋にしたい。

 

作るのは苦手だけど、想像は得意!
作業するのは自分だと思うと今から気が滅入るけど、それ以上にわくわくでいっぱい。

次はどんなこと、しようかな!

「クルマのおうち」を動画でも公開中!

本記事で紹介したカスタムの詳細やお試し車中泊の様子は、YouTubeにて公開しています。ぜひ、こちらもご覧ください。

「クルマのおうち」の様子はYouTubeでもご紹介!↓↓↓

漫画/いとうみゆき
編集/望月 祐 (LIG)