室内空間の広さから、車中泊しやすい軽ワンボックスとして高い人気を誇るスズキ「エブリイ」。ゆえに書籍やネットではさまざまな情報が得られるのですが、中でもキラリと光るのが沖縄在住のYouTuber/インスタグラマー・カメコローさんが発信するDIYの数々です。変形するフルフラットマットからテーブル、収納まで、ほぼすべてを廃材にて格安で作り上げてしまうという。その狙いとギミックの数々を沖縄現地取材でうかがいました!
▼お話をうかがった人
DIYのきっかけは「家族のため」
青い空に青い海、そしてさんさんと輝く太陽! 月並みな表現で恐縮ですが、素敵なカーライフを送られている方を探してカエライフ編集部がやってきたのは、そう、沖縄です。気温も湿度も、本州からひと足もふた足も早い夏のムードあふれる沖縄で訪ねたのは、YouTubeやInstagramで車中泊仕様のスズキ・エブリイの情報を発信しているカメコローさん。
数あるエブリイ乗りのなかでもカメコローさんがとりわけユニークなのは、フルフラットマットからテーブル、収納まで、車内のあらゆる装備や小物を自らの手で、なおかつ廃材などを用いてタダ同然で作り上げてしまうという点でしょう。しかも、それら便利グッズは他のエブリイユーザーからのリクエストを受けて販売しているほどの人気ぶり。
果たしてカメコローさんとは何者なのか? 廃材でDIYをおこなうその狙いは? また、あらためてその作品(?)の数々を読者の皆さまにもご紹介すべく、沖縄へと飛びました。
はじめまして、平日の昼間にもかかわらず取材ご協力ありがとうございます。
カメコローさん(以下、カメ氏):いいえ、大丈夫ですよ。ぼく、本業は医療従事者で、今日も夜勤明けなので平日昼間はけっこう時間があるんですよ。むしろ週末だと家族がいるので時間が取りにくくて。
なるほど。Instagramで、昼間に海をのんびり眺めつつエブリイでのんびりチルされてる様子が素敵でしたが、実は夜勤明けだったりするんですね。
カメ氏:そうなんです。夜勤明けは疲れ果てて、勤務先の駐車場でフルフラットにして仮眠しちゃうこともあります(笑)。
車中泊仕様はお休みの日だけじゃなく、普段から役立つと。もともと、そのつもりでエブリイを選んだのでしょうか?
カメ氏:いえ、そうでもなくて。いま4歳になる娘の出産を機にクルマを買ったんですけど、エブリイを選んだのは奥さんなんです。どうやら学生時代に貨物仕様のバンに乗ったことがあって、そのときの印象が良かったようです。ぼくとしては「N-VAN」が欲しかったんですけど、お世辞抜きで。
そこからどうして車中泊仕様にされようと?
カメ氏:それも奥さんが関係してるんですけど、もともと奥さんに持病がありまして、出かけた先ですぐ横になれるようにとフルフラットマットを作ったのがきっかけです。ただ、エブリイ専用品は普通に買うと3万円くらいする。じゃあ、自分で作ってしまえば安く上がるんじゃないかと思って、YouTubeを参考にホームセンターと100均で材料と工具を買ってきて作ってみたら案外うまくいって、コストも1万3000円くらいで済んだ。それに味をしめて他の箇所もどんどんDIYするようになったんです。もっとも、奥さんからは「元に戻せる」のが条件としてクギを刺されましたけどね。
え、ちょっと待ってください。それまでDIYの経験は?
カメ氏:ホームセンターのレジ打ちバイトをしたことはありますけど、学校の技術の授業くらいで、経験はほぼゼロですね。
すごい。「面倒だから買っちゃえ」って気分にならないですか?
カメ氏:自分のためにお金を使うのがあんまり好きじゃなくて、もったいないというより、作って安く上がるなら楽しいじゃんって思うんですよね。あと、よくよく思い出したら父は独学で木工をやっていましたし、祖父は大工の棟梁(とうりょう)だったので、身近に手作りする文化があったのかもしれません。
なるほど。カメコローさんにはDIYのDNAが受け継がれているのかもしれませんね。
廃材利用でコストは限りなくゼロ?
フルフラットマットの制作を機に、DIY熱が上がったカメコローさん。続いて取りかかったのは?
カメ氏:天井収納ですね。車内をフルフラットにして寝る際、意外と困るのが荷物の収納場所だったので天井にしまえたらいいかなと思って作りました。これも、ノコギリやクギは100均で買って、板はホームセンターの廃材コーナーにあるものを調達したので1000円かかってないですね。
安っ! ハイルーフの天井には他にもいろいろあるみたいですが…。
カメ氏:バックドアを開けたときに見えているのがクッカー収納。あと、後席の天井にもちょっとしたモノを挟めるよう板を張っているんですが、これは昔使っていたベッドのスノコを利用したものなので材料費はクギ代だけです(笑)。
かえすがえす、安っ! よく見ると、後席のアシストグリップにまで収納が。
カメ氏:アシストグリップ棚ですね。ぬいぐるみを飾って神棚風にしたり、こまごましたモノを収納したりしています。
とにかく隙間という隙間を埋めていこう! という気迫を感じます。そして、これに触れずにはいられないのがトノカバーを引っ掛ける位置にセッティングできるセンターテーブル。
カメ氏:これは折り畳み仕様で、普段は小さくして床下に収納しています。展開すると車内用のテーブルになるのはもちろんですが、バックドアに引っ掛けて外テーブルとしても使えます。
つまり、バックドアを日よけにすれば、テーブルを囲んでご家族でまったりすることもできるんですね。素晴らしい…。
板とひもがあればなんとかなる
この流れで荷室まわりをチェックしたいのですが、リアクォーターウィンドウはふさいでいるんですね。
カメ氏:はい。ふさぐついでに写真やコースターの壁面収納にしています。固定はパラコード(パラシュート用の頑丈なロープ)ですね。実際ぼくのDIYは、ほとんど廃材とパラコードなんですよ。
メモメモ。さらにリアクォーターウィンドウの下にはちょっとしたテーブルも。
カメ氏:サイドテーブルですね。ここは、ゴロ寝の際にスマホを置いたりするちょっとしたスペースです。反対側には、カップ麺やコーヒーのお湯に使うウォータージャグを置いています。あと、サイドテーブルの下にはもともとあったポケットがあるんですけど、ここに100均で買ったカトラリーボックスがシンデレラフィットするんですよ!
すご。なんだか、カメコローさんの話を聞いてると初めてトライしたDIYがうまくいったり、こうしてたまたまピッタリあったり、といったエピソードが多い気がしますけど、何かから祝福されているんでしょうかね…。
あまりにDIY箇所が多すぎて頭が追いついていかないんですが、今回は荷室まわりの前編ということで、最後にバックドアの裏にあるギミックをご紹介ください。
カメ氏:ここにもいくつか手を加えてまして、まずパラコードで作った壁面収納と簡易テーブル、あと車内からバックドアが開けられるコードを設置しています。
え、バックドアから外に出られるんですか?
カメ氏:はい。内装をはがしていたら、「ここに、ひもを付けたら車内からもドアが開けられて便利だな」と気がついて付けてみました。さらに、パネルを一つ剥がすと、テーブルに変形します。
へ、へんけい? つ、つまり…。
カメ氏:組み立ててみますね。




カメコローさん、DIYは素人だったんですよね? それにしてはすご過ぎる変形ギミック…。
いやはや、アイデアと技術が満載のカメコローエブリイなんですが、実はまだ前半戦。後編では運転席まわりや愛用の車中泊アイテムを中心にお届けします。お楽しみに!
文・写真/熊山 准
編集/熊山 准、TAC企画
撮影協力/くるくまキャンプサイト