売れるまで続けます! 軽トラ住みます芸人・はっしーはっぴーが語る車中泊生活

はっしーはっぴーさんと、DIYした軽トラ

3万円で購入した軽トラを10万円かけてキャンピングカー仕様にDIYした、お笑いコンビ「コンピューター宇宙」のはっしーはっぴーさん。約2年前に「売れるまで軽トラキャンピングカー生活」を宣言し、雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず、数々のトラブルにも負けず、今も車中泊で過ごしています。
YouTubeやX(旧Twitter)などのSNSで日々の軽トラ生活を発信してはいるものの、実際のところどうなの? ということをお伺いするため、今回カエライフ編集部がお宅訪問ならぬ、軽トラ訪問を実施。インタビューをしてきました。

 

はっしーはっぴーさん

はっしーはっぴー
1995年4月7日生まれ。神奈川県出身。血液型A型。お笑いコンビ「コンピューター宇宙」のツッコミ担当。2021年に「売れるまで軽トラキャンピングカー生活」を宣言し、車中泊生活をスタートする。よく使う「あでしゃ」というフレーズは「ありがとう・出会いに・感謝」を略したもの。
X @Nnw0407
Instagram @adesya0407
YouTube @user-hs8zi8fn2k

目次

 

総額13万円のキャンピングカーへ訪問

まずは、はっしーはっぴーさんの案内のもと、軽トラキャンピングカーの中を紹介してもらうことに。いたって普通の軽トラックの荷台に居住スペースが載せられています。まさに手作りの軽トラキャンピングカーには、はっしーはっぴーさんのセンスと工夫が詰まっているのでした。

 

入り口には「84」のプレート、鍵は南京錠

住居部分の後方にドアを設置し、出入りはここから。84(はっしー)のプレートは、100均で購入したものだそう。お金はかけずに、でもこだわる姿勢が垣間見えます。

はっしーはっぴーさんと南京錠で鍵をかける軽トラキャンピングカーの入り口

はっしーはっぴーさんと南京錠で鍵をかける軽トラキャンピングカーの入り口
はっしーはっぴーさんと南京錠で鍵をかける軽トラキャンピングカーの入り口
「鍵には南京錠を使っていますけど、正直不安しかないですよ(笑)」

というわけで、さっそく室内にお邪魔します!

 

4人が過ごせる室内。空間を確保するために、さまざまな工夫が

室内は、大人4人が座れるくらいのスペースが。想像していたよりも、空間に圧迫感がなく広く感じます。

軽トラキャンピングカーの内部

窓からは光が差し込み、明るい車内。大人4人でテーブルを囲むことができる

「圧迫感がマジ無理なんで」と語るはっしーはっぴーさん。狭いなりに十分な空間を生み出すために、収納にはさまざまな工夫が施されています。例えば上の写真にある白いテーブル。こちらは固定されておらず、運転時には室内の端に寄せておくそう。

キッチンカウンターをセットするはっしーはっぴーさん

キッチンカウンターは、使わないときは畳んで壁に沿わせておく

キッチンカウンターも折りたたみ式です。調理などで使用するときだけセットし、それ以外のときは畳んでおきます。少しでも空間を確保するためのテクニックですね。

軽トラキャンピングカー内の収納スペースを紹介するはっしーはっぴーさん

居住スペースから運転席側に突き出したスペースを収納用として使う

収納には、効率的で実用的なポイントがみられます。運転席上部は、収納スペースとして活用。車中泊に必要なモノが詰め込まれています。

キャンピングカー部分が、運転席上部に突き出している形状がわかる車体の全景

運転席上部が収納スペース。その形状から「リーゼントスタイル」とはっしーはっぴーさんは呼んでいる

 

みようみまね! 感覚でキッチンをつくりあげる

そして、入り口付近のキッチンは「YouTubeとか、いろいろ見たりしたんですが、専門用語とかが多くて、わけがわからなくて…! 最終的には、形などを見て“こういう原理ね”となんとなく理解して作りました」と、事前の知識はほとんどないところからDIYが始まったそう。

特にシンクは感覚的なDIY力が存分に発揮されており、とても初めてとは思えない出来栄え。水栓は「ニトリで使えそうな台を買ってきて、それに穴を開けて」取り付けたそうで、なかなかの力技です…。

DIYしたシンクと水栓

水はちゃんと出ます。「ここで頭も洗えますよ」

キッチンの全景

換気扇も完備。ガスを使った調理も可能

車外に設置された換気口

換気口はこんな感じ

調理器具や調味料が収納されている様子

キッチン台と対面に棚を設置、食器や調理器具が収納されています。食器はすべてプラスチック製でそろえているそうです。これは移動時に振動などで、落下したり破損したりするのを防ぐため。小さな工夫ですが、車中泊のストレスを減らすためには大事なこと。

 

暑さ対策は万全??

生活の場であるキャンピングカーの中を快適な空間にするために、いろいろと工夫をしているはっしーはっぴーさんですが、さすがに2023年の夏の猛暑はこたえたはず…。どんな暑さ対策をしているのでしょうか?

軽トラキャンピングカーの窓をあけるはっしーはっぴーさん

窓を全開にするとこんな感じ。キッチンカーのように料理を振る舞うカウンターとしても使える

網戸に大きな穴があいている様子

ガスボンベの熱で空いた穴が…

キッチンカウンターの前には広々とした窓を設置。網戸も付けて夏場の虫対策もばっちり…と思いきや、料理中に穴を開けてしまったそうです…。とはいえ、通気は問題なし。

冷却スプレーと扇風機、ポータブル電源

冷却スプレーと扇風機、ポータブル電源
冷却スプレーと扇風機、ポータブル電源
暑さ対策もしっかり。ちなみに電源はポータブルのものを使用

大きな窓に加えて、暑さのなかで重宝したのが、冷却スプレーと扇風機。暑い夜も、この組み合わせさえあれば、問題なく睡眠をとることができたそう。とはいえ、熱中症には十分な注意が必要で、就寝中も数時間おきに水分補給はしていたんだとか。

 

天窓は付けられず…。天井からは雨漏りも

快適に暮らすためにいろんな工夫が施されている軽トラキャンピングカーですが、手作りゆえの失敗も…。

天井を指さす様子

星空の代わりに天井には星柄の壁紙を貼ってみたものの…。

「天窓を作って、そこから星空を見たいと思ったんですが、アドバイスをもらっていた設計士さんに“それは無理”と却下されてしまったんです。その代わりに星柄の壁紙を天井に貼りました」

この星は暗くなると光るそうだが…。天井の防水が万全ではなく、雨漏りをしてしまい、壁紙が浮いてきてしまいました。

 

おもてなし軽キャン飯

おもてなし軽キャン飯「ダラダラ冷やしうどん」を作ってもらいました

さまざまな創意工夫とDIYセンス、それに少しの失敗とともに始まったはっしーはっぴーさんの軽トラキャンピングカー生活。YouTubeチャンネルでは「軽キャン飯」を作る自炊の様子も紹介されています。

ときには後輩芸人を軽トラキャンピングカーに呼んで、鍋を振る舞ったり、餃子パーティをしたりすることもあるという。
取材時には、実際に一品作って、おもてなししていただきました。

というわけで、クッキングスタート。今回は「ダラダラ冷やしうどん」を作ってくれました。

手際よくトマトを切るはっしーはっぴーさん

コンパクトなスペースながら充実のキッチンで調理

軽トラキャンピングカーで料理をする様子

外からはこんな感じ。キッチンカーにも見える

軽トラキャンピングカーで料理をする様子

「料理が上手な先輩方に比べれば、まだまだですし、自分からは“料理できます”とはいえませんよね」と語りますが、その腕はなかなかのものでした。

ダラダラ冷やしうどん

「ダラダラ冷やしうどん」完成!

夏の暑い時期は、うどんやそうめんなどの麺類をよく作るらしく、慣れた手付きで料理するはっしーはっぴーさん。味付けは濃い目、男の料理という感じもします。

軽トラキャンピングカーの中を案内してもらい、軽キャン飯まで作っていただいたところで、やっと本題です! はっしーはっぴーさんの軽トラキャンピングカー生活のエピソードをいろいろ伺いました。

軽トラキャンピングカーの前で、いただきますのポーズのはっしーはっぴーさんとカエライフ編集部スタッフ

手作り軽キャン飯をいただきながらインタビュー! カエライフスタッフもおいしくいただきました

 

エピソード

ほとんど未経験のDIYで軽トラキャンピングカーを完成させる

軽トラキャンピングカーのエピソードを語るはっしーはっぴーさん

この生活で、うれしかったことといえば、まずどんなことが思い浮かびますか?

はっしーはっぴーさん(以下、はっしーさん):やっぱり、軽トラキャンピングカーを完成させたことですかね。

3万円で車体を買って、10万円でDIYしたんですよね?

はっしーさん:始めは、「内装は凝っていくにしても、柱を組んで壁付けて、こんなんマジで3日あれば作れるだろう」って思ってたんですよ。でも実際には2カ月くらいかかってしまいました。

え! これを3日で作れると思っていたんですか!?

はっしーさん:DIYはそんなにやったことがなくて、机とか椅子とか大きなものも作ったことなんかなかったんですよ。だからこそ、完成させられたのかもしれないです。机を作ることの大変さも知らなければ、インパクトドライバーの使い方や寸法の測り方も知らない。作り始めてすぐに「無理だな」って(笑)。

でも、作り続けた?

はっしーさん:初めてだったし、逆に後戻りできなかったというだけですね。だから、プロから見たら「馬鹿じゃない?」って思われるような作り方もしているんですよ。普通しっかり考えて防水チェックをしてから天井を作るところを、おろそかにしてしまっていたり。

結果、雨漏りしてしまうと…。

 

軽トラキャンピングカー生活は芸人としても“おいしい”

カエライフ編集部スタッフと会話するはっしーはっぴーさん

はっしーはっぴーさんは「売れるまで」この軽トラキャンピングカーでの生活を続けると宣言しています。この生活を始めてから変わったことってありますか?

はっしーさん:何かやるときは思いきりよくやるようになった。やるなら、みんなが驚くところまでやるってことでしょうかね。テレビに出ても、ひよらなくなりました。絶対にかまそうという感覚が身についたと思います。

確かに、何をするにも迷いがなさそうですね。

はっしーさん:あとは例えば…サウナが好きなんですが、ちょっと遠くのサウナに行ってみようとか。サウナに入って、帰るのが面倒くさいから、現地でそのまま寝ちゃおうとかができちゃうからそれがいいですね。

出かけるにしても、片道切符でいいんですね。

はっしーさん:僕、一人があんまり好きじゃないんですよ。誰かと一緒にいたいと思うほう。でもこういう生活をすると一人も、こんなに楽しいんだと思いましたね。好きなところに行けるし、一人でいるときのほうがいろんなことを考えられるし。

芸人としての変化はありますか?

はっしーさん:ここに住むメリットが本当に大きくて。やっぱり初めて会う先輩芸人さんに「キャンピングカーに住んでます!」っていうと「え、どういうこと?」って絶対に覚えてくれるんで。「お前気合入ってんな〜」「今どきそんな芸人いないよ」と、先輩みんなにかわいがってもらってます。最近で言ったら、事務所の先輩・土田晃之さんにご紹介いただいてお会いした出川哲朗さんとか、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんとかですかね。淳さん、僕大好きなんですけど、淳さんのYouTubeに電話で少し出させてもらって、そこで淳さんが「こんなやつ、絶対売れるだろ。あとちょっとで会えると思うから楽しみにしてます」って言ってもらったりとか。あとは、オーディションに行っても、みなさんの食いつきが良くなりました。

確かに、「キャンピングカーに住んでいる芸人」ってインパクト残りますよね。

はっしーさん:イベントなんかに出ても、みんな面白がってくれますし。

 

自分の人生とクルマの調子がリンクしている?

逆に困っていることは?

はっしーさん:これは作った自分が悪いんですけど、やっぱり壊れすぎる(笑)。パンクを繰り返したり、台風で屋根が飛んだり…いろいろあります。

なるほど。

はっしーさん:芸人として売れるまでこの生活を続けるつもりですが、始めたころは1年位で売れるだろうと思っていて、それで作りがおろそかになっていたところもあったんです。

10年越しとかじゃないですもんね。

はっしーさん:そうです。でも、売れるまではまだまだかかりそうだなと思うし、当分住むことになりそうです。

これまでで一番困った故障は?

はっしーさん:クラッチがぶっ壊れたときが一番ですね。それこそ、『水曜日のダウンタウン』に出て、バンっと人気が跳ねました。正直、仕事めっちゃ入ってくるし、絶対に売れると思ったんですよ。その前にも『アメトーーク!』や『お笑い向上委員会』にも出演していての『水ダウ』だったので。しっかりキメました。ああもう売れるだろうなと思っていたら、そこから3カ月間、マジで1個も仕事なかったんですよ。

えーーー。

はっしーさん:今思えば、ドッキリができるからって他の番組に呼ばれることなんてあんまりないんですよね。

なるほど。3カ月間仕事がなくて、どうしたんですか?

はっしーさん:こういう生活していると周りからいろいろと言われるんですよ。ありもしないことを裏で言われたり、芸人ならネタで売れなきゃみたいに言われたり。

大変な世界ですね。

はっしーさん:自分が調子のいいときってそういう声は入ってこなかったけど、仕事がなくなると、気になるようになってしまって…。それで「切り替えよう」と、YouTubeのほうでがんばろうと。ある日、山梨のほうにキャンプ道具の撮影に行こうとしたときに、クラッチがバーンとぶっ壊れて、修理に20万円かかりますって言われて。そこで初めて、泣いて落ち込みました

その状況はキツいですね…。

はっしーさん:それでも、いろんな人に話をして、切り替えて…。そうしていたら、千鳥さんの『千鳥のクセスゴ!』の貧乏芸人特集に選んでもらって、そこからまたトントン拍子で仕事が増えていって…。売れるって簡単じゃないんだなって思ったし、この積み重ねで売れていくんだとわかりました。精神的に萎えてきたときにクルマが壊れて、なんかリンクしてるんですかね。

仕事が順調になると、軽トラキャンピングカーでの生活も?

はっしーさん:楽しい! なんでこんなに楽しいんだろう! ってなりますね。

リンクしてるんですね。じゃあ、今では芸人生活も順調ということですね?

はっしーさん:いやいや。僕、バイトをすべて辞めて、借金をしながら生活しているんで。テレビにも出ていて、周りに「もう食えてるんでしょ?」ってめっちゃ言われるんですけど、マジで食えてなくて。お笑いだけで月に5万円くらいの収入ですから。得意の切り絵を売ったりしてなんとか生活してるって感じです。

笑顔のはっしーはっぴーさん

 

まとめ

「売れる」はいつ? はっしーはっぴーの軽キャン生活はいつまで続く?

軽トラキャンピングカーでくつろぐはっしーはっぴーさん

最後に、はっしーさんの今後について教えてください。まずは、芸人はっしーはっぴーとしてはいかがでしょう?

はっしーさん:ひな壇でみんなにいじられる芸人になりたいですね。目指しているのは出川哲朗さんとかそういう先輩方。人から好かれる才能はあると思っているので、そんな芸人になりたいし、順調にそういう方向に進めている気がしますね。

はっしーさんは天性の人たらしだと思います。今インタビューしている私も売れてほしい! と思わされていますし(笑)。では、軽トラキャンピングカーの住人としてはどうでしょう?

はっしーさん:売れるまでと言いながら、「売れる」の基準って難しいと思っています。月に20〜30万円くらいもらえるようになったら、今より大きな、それこそ2階建てのキャンピングカーを作りたいですね。その先、これ以上お金いらないっていうくらい稼げるようになったら、普通に住む部屋を借りたい。それまでは、キャンピングカーをどんどん強くしていきたい、というのが目標です。

キャンピングカーを作っていた当時『アメトーーク!』が決まったりして、キャンピングカーははっしーさんに幸運を呼んできてくれているのかもしれませんね。そのうち、パワースポットのようになるんじゃないですか?

はっしーさん:賽銭箱とか付けようかな。今でも、面白いことしてるなとは思うんですよ。活躍している先輩とかにも「おもろいなー」とか言ってもらって、今やっていることってマジ正解なんだと思って。でもやっぱり、こういう生活をしていて、貧乏というのもあるので、できることが限られちゃうのがすごく悔しいですね。だからもっと稼いで、活動の幅を広げて面白いことをやっていきたいです。

軽トラキャンピングカーで行ってみたいところは?

はっしーさん:今の軽トラがボロボロで、途中で壊れるのが怖くて遠くへは行けていないんです。新しく作り変えたら熊本に行きたいですね。WANIMAが大好きで、人生救われているので。その出身地の熊本にめっちゃ行ってみたいです。

新しく作りかえた軽トラキャンピングカー、期待しています! はっしーはっぴーさん、ありがとうございました!

 

<おまけ>カエライフの切り絵を作ってくれました!

はっしーはっぴーさん得意の切り絵でかたどられた「カエライフ」の文字

はっしーはっぴーさんの特技の一つがこの切り絵。「実家は町工場だし、お母さんが内職をしていたので、余った材料などで遊んでいたんです」と手先はもともと器用で、切り絵も「やったらできた」のだとか。実際に軽トラキャンピングカーで、出向いた先のイベントなどで販売もしている。軽トラキャンピングカーにしても、切り絵にしても、他の芸人がやっていないことをやろうとする姿勢はお見事です。

 

▼軽キャン生活エピソードをYouTubeで公開中
はっしーはっぴーさんのYouTubeチャンネル『はっしーのはっぴーライフ【売れるまで軽トラ生活】』では、さまざまなエピソードが配信されています。車中泊ライフを目指す人の参考になる情報もあるはず。こちらもぜひチェックしてみてください!

YouTubeチャンネル、はっしーのはっぴーライフ【売れるまで軽トラ生活】の画面

 

文/村田智博(TAPE)
取材/吉田健二
写真/中田健司
編集/村田智博(TAPE)・TAC企画