車中泊をもっと便利に快適に。完売続きのカスタムパーツブランドを徹底深掘り

バックドアを開けコーヒーを飲む休憩時間さん

Honda N-VANをカスタムし、休日に車中泊を楽しんでいる休憩時間さん。さまざまな遊びを突き詰める趣味人ですが、普段は「nuts vanlife products(ナッツバンライフプロダクツ。以下、nuts)」という、N-VAN専用の車中泊カスタムパーツブランドを運営。自ら設計し、製造も手がけています。特にウッドを使った温もりのあるインテリアパーツが人気で、常に品薄状態! 初心者でも簡単にカスタムできると、N-VANユーザーからも注目されています。前編に引き続き、後編でも休憩時間さんに話を伺い、軽バンカスタムにかける思いやおすすめ製品、モノづくりのモットーについて語っていただきました。

目次

休憩時間さん

休憩時間さん
大阪市在住。N-VANをベースとしたカスタムパーツ、および車中泊用品、アパレルを手がける「nuts vanlife products(ナッツバンライフプロダクツ)」の主宰。免許を取得して以来のHonda党で、モーターサイクルとクルマのカスタムがライフワーク。長年カーパーツのプロデュースに携わりながら、その時々でハマる趣味を仕事に反映している。
Instagram @masuuuuuunn

 

大の軽バン好きが語る、N-VANカスタムの面白さ

N-VANについて語る休憩時間さん

アクティ・バン、バモス、N-VAN。現在3台の軽バンを愛用されていますが、さては、かなりのHonda党ですね?

休憩時間さん(以下休憩さん):過去に乗ったバイクもクルマもその多くがHondaでした。なんでしょうね、Hondaはモノづくりに対するプライドが燃えたぎっている、数少ないメーカーという印象があるんです。ハンドルの操作性や走行性も良くて、Honda車は運転していて楽しいんですよ。

さまざまなクルマに乗ってきて、他車種と比べたN-VANのメリットはなんだと思いますか?

休憩さん:それぞれ魅力がありますが、N-VANは軽バンのなかでも居住性が頭ひとつ抜けていると思います。生産終了となったアクティ・バンやバモスはボンネットがほぼないため、荷室全長は約190cm。それに比べてN-VANのほうは約150cmとかなり短い。でもN-VANは助手席をフルフラットにすれば、最大スペース長は約260cmになります。

それに、荷室高は約136.5cmと天井が高い。アクティ・バンやバモスでベッドを組むとなると頭を屈めなければいけませんが、N-VANなら車内で頭をぶつけることなく過ごせるので、十分な居心地を考えるとこれが一番調子がいいんです。

車内でゆったり過ごす休憩時間さん

陽光が差し込み、nuts製品の木目調がキレイに輝く

車中泊もできるキャンピングバンという視点で見ても、N-VANの広さは魅力ですね。

休憩さん:そうですね。それに広さだけでなく、カスタムする人にとっては購入時に装着されている荷室の左右壁面と天井近くにあるネジ穴「ユーティリティーナット」の存在は大きいはず。N-VANの荷室のサイドウィンドウの周りには、左右で合計28ヶ所(+STYLE COOLは26ヶ所)に、M6サイズのボルト穴が標準装備されているのですが、これは素晴らしいアイデアだと思います。コレがあることで自らボディに穴を開けずにカスタムパーツが取り付けられるので、メーカーもパーツを供給しやすいし、ユーザーも自分で簡単に設置できるんです。

ユーティリティナットを利用して取り付けた「nuts vanlife products」のユーティリティバー

ユーティリティナットを利用して取り付けた「nuts vanlife products」のユーティリティバー

ビス留めするだけだから、初心者でも簡単にカスタマイズできますね。

休憩さん:穴がたてよこまっすぐに並んでいて、ちゃんと水平垂直がとれているから本当に使いやすいですよ。ドライバーでビスを回すだけでパーツが取り付けられるので、パーツを取り付けたあとで位置が気に入らなかったとしても、すぐに別の穴に変更もできます。地味ですがこれはとてもユーザーに優しい機能だと思います。

休憩時間さんはN-VANをカスタムした際、どこから始めましたか?

休憩さん:ぼくの場合は、背もたれを倒してフラットになる助手席を活用したいと思って、まずはベッドから作り始めました。ベッドは寝るだけでなく、くつろげるベンチとして使えると思ったら、今度はリア側にテーブルが欲しくなって。さらに壁面に収納棚や電源の必要性を感じて、ソーラーパネルやインバーターも取り付けました。今ではバッテリーも積んでいるので冷蔵庫も使えて、家のように快適な空間になりました。

車内に設置された冷蔵庫

ソーラー発電した電力は冷蔵庫で使用。夏場に大活躍だったという

 

考案者が厳選!「nuts」の便利パーツ

カスタムした愛車は、どこまでが自社のパーツになりますか?

休憩さん:基本的にソーラーパネルやインバーターなどの電気系以外は「nuts vanlife products」でカスタムしています。個別にいえば、ベッドキット、サブテーブル付きのリアテーブル、引き出し、ユーティリティバー、棚ボックス、天井板、換気扇ボードですね。

 

多様な顔を持つ、技ありリアテーブル

自社製品について説明する休憩時間さん

ひとつひとつ興味深いのですが、まずは休憩時間さん自身が快適さを実感したアイテムを教えてください。

休憩さん:あるのとないのとでは劇的に使い勝手が変わる、という点でいえば、やっぱりリアテーブルですかね。車内からはもちろん、リアゲートを開けた状態なら外からカウンターのようにも使用できます。天板は幅119cm、奥行き40cmと大きめで使いやすいんです。

リアテーブルに設置された収納

リアテーブルには引き出しもついているんですね。

休憩さん:テーブルを作ったあとで、小物を入れられる収納が欲しくなって、スペース的にもちょうど良かったので引き出しのオプションも作りました。箱ものや板ものは作れても、DIYで引き出しを作るとなると大変なので、これはブランドとして販売する意義があるのかなと。

サブテーブルを設置しているところ

サブテーブル設置前と設置後

休憩さん:さらに、リアテーブルの下には横幅80cm×奥行き30cmのサブテーブルが収納されていて、必要なときに引き出して使えます。

サブテーブルにシンクをセットしたところ

このサブテーブル、蓋を開けたらシンクが出てくるなんて驚きです!

休憩さん:これも市販化は未定なのですが、車内に水洗があったら良いなと思って特別に作ってみました。テーブルの下に2Lの給水・排水タンクがあり、ちょっと手を洗うくらいなら車内で完結できるようになっています。シンクを取り付けてみたりと、試作する時間も好きなんですよね。

ビスで台座パーツを壁面に固定し、蝶ナットで天板を設置したところ

ちなみにこれらのギミックは全部リアテーブルに備え付けられていますけど、肝心のテーブル本体の取り付けはどうなっているのでしょうか?

休憩さん:これも例に漏れず、N-VANの真骨頂であるユーティリティナットを使用しています。わかりにくいですが、まずはビスで台座パーツを壁面に固定し、その上に蝶ナットで天板を固定する仕様。工具なしでテーブルが外せるから、状況に応じたカスタマイズができるというわけです。

 

車内で快適に過ごすため、換気は意外と重要

サイドのドアに取り付けられた換気扇

サイドのドアには換気扇も取り付けられていますね。

休憩さん:狭い空間では匂いやムレも気になりますし、夏の車中泊では、暑さ対策としてファンがあると快適。N-VANのスライドドアの窓にはめこんで使える換気扇で、製品ではご自身でPCファンをご用意いただき、取り付けられるようなDIYキットとしてボードを販売しています。ぼくのは頑張ってブラインド仕様にしましたが、製品では網戸もしくは窓なしのものを展開中です。

 

ベンチのようにも使えて、便利なベッドキット

ベッドキットをバックドアから車内に入れ込もうとする休憩時間さん

Honda純正のマルチボードのほか、いろんなメーカーからベッドが出ていますが、休憩時間さんのベッドへのこだわりを教えてください。

休憩さん:ぼくが意識したのは、軽量であることと、使わないときは脚を分解できること。そして、組み替えができることです。他社では後部座席をフルベッドにするキットが多いのですが、うちではハーフサイズのものを2つ1セットにして販売しています。

ベッドキットの仕組みを説明する休憩時間さん

このベッドパーツが2セットで全面フルフラット。1セットなら片側もしくは後方だけフラットにできるので、ベンチ的にも使えますし、好きなようにアレンジ可能です。

 

ブランド誕生秘話とデザインする上でのこだわりは?

ステキなカスタムパーツをご紹介いただいたことで気になったのが、ブランド自体のこと。ブランド誕生の話からこだわりまでを休憩時間さんに聞いてみました。

車内でコーヒー豆を挽く休憩時間さん

魅力的なカスタムパーツをご紹介いただきましたが「nuts vanlife products」を始めたきっかけを教えてください。

休憩さん:このブランドを立ち上げる前に「CRE:IM(クレイム)」というバモス用のカスタムパーツブランドをやっていたのですが、ちょうどぼくも車中泊にハマっていたし、さらにキャンプが流行っていたこともあり、これまでと違うテイストのものを作ろうと思ったんです。N-VANを購入して以来、そのカスタマイズ性の高さに惚れてしまって。自分がカスタムを楽しむうちに本気になってきて、キャンパーの人たちにも好まれるテイストで製品を作り始めました。それが2022年の夏頃でしたね。

テーブルの上に置かれたナッツが入ったボトルとブランドオリジナルのボトル

nutsではカーパーツのみならず、車中泊を快適にするアクセサリーやアパレルも展開中

ロゴにはリスのアイコンがありますが、何かブランド名には意味が込められているのでしょうか?

休憩さん:名前は…ただの思いつき。もとから名前は意味のないものにしようと思っていろんな単語を考えていて、最終的にいくつかの候補からnutsを選びました。ロゴは、ただナッツがあるだけでは芸がないなと思って、リスを加えてみました。このリスは一見可愛い雰囲気なのですが目だけは吊り上がっていて、ちょっとだけイカツくしました。

壁に掛けられたボックス棚に収められたコーヒーセット

このボックス棚もユーティリティーナットを使って固定したモノ。中にはコーヒーセットが収まっています

商品でこだわっている点を教えてください。

休憩さん:車中泊に紐付くアイテムを提案するというのがブランドのモットー。N-VANを中心に、軽バンのポテンシャルを引き出しながら、車中泊を便利にする製品を提案しています。

主力商品はウッドを使ったインテリアパーツになります。長期間にわたって使っていただくことを考えて、これらはあえて集成材を使い、リボスオイルという自然塗料を塗っています。集成材は小さい板を継いで板にしたもので、一枚板と比べて反り返りが少ないのがメリット。また「誰でも簡単に取り付けができる」というのも意識している点です。一応説明書がわりに設置工程をYouTube動画で配信していて、それを観ていただければ取り付けができるようになっています。

板をカットする休憩時間さん

自社工房での商品製作風景。ハンドメイドのため生産が追いついていない商品もあるそうです(休憩時間さん提供)

製品設計、デザインをするうえで気をつけていることはありますか?

休憩さん:「ぼくが欲しいものを作っている」というのがベースなのですが、強いていうならやり過ぎず、ほどほどの塩梅になるように気をつけています。カーカスタムはすごく楽しいからこそ、突っ走るとついついやり過ぎてしまうことも知っているので。例えばその昔、気合いを入れてバモスの内装を全面板張りにしたことがありました。おしゃれではあったんですが用途が限られて、使いにくくて後悔したこともあったんですよね。

 

目指すのは、個々と共存するカスタム

N-VANの後部座席のドアを開け腰掛ける休憩時間さん

休憩時間さん自身がユーザー目線で作っている「nuts」。実際に商品を購入されるのはどんな方が多いのでしょうか?

休憩さん:だいたいぼくと同年代かそれ以上、40〜50代以上の方が多い印象ですね。一概にはいえませんが、N-VANを車中泊仕様にカスタムして乗りたいユーザーって、ぼくみたいに趣味に生きる人が、セカンドカー的に使っている場合も多い気がします。一方で、若い世代は、軽バンをゴリゴリにカスタムするって感じじゃなく、もっとラフに使っているのかもしれませんね。

インタビューの最後に、今後の「nuts」としての目標を聞かせてください。

休憩さん:ぼくの目線からあったら良いなというものを作ってきましたし、今後もその軸はブラさせないつもりです。ただ、ユーザーによってカスタムの好みは千差万別。そのことを忘れず、ユニークでありつつも、他のカスタムと共存できるようなモノづくりをしていきたいですね。

「nuts vanlife products」はこちら
https://nutsvanlife.base.shop/

 

文/鈴木 純平
写真/鈴木 純平
編集/濱松 教道、TAC企画
撮影協力/宝船温泉ファミリーキャンプ場