年間200泊! DIYした軽バンで日本の四季を追いかける、旅好き写真家の車中泊ライフ【外装編】

自分で取り付けたN-VANのルーフキャリア上でくつろぐ小川 元貴さん

四季折々でその姿を変えるニッポンの山々を追いかけて、実に年間200日以上も軽バンでの車中泊生活を送る写真家の小川 元貴さん。その相棒となるHonda・N-VANは、車中泊や長距離ドライブに向けたさまざまな工夫が施されていますが、実はそのほとんどをご自身でDIYされたとか。前編では「外装編」としてエクステリアを中心に、DIYの数々と車中泊ライフの様子をうかがいます。

小川 元貴さん

小川 元貴さん
1983年千葉県鴨川市生まれ、柏市在住。中学時代、単身渡米した経験から旅にのめりこむ。各地へ放浪するなか、しだいに北アルプスの絶景に魅せられ、独学で写真を学びフォトグラファーの道へ。ファッション、美術品などさまざまな分野の撮影をおこなうほか、N-VANの車中泊旅で日本の四季と山々を巡っている。
HP: https://ogawa-bros.com/
X(旧Twitter): @omaphotovanlife
Instagram: @oma_photraveler

目次

 

青いN-VANを選んだのは「大自然で浮くから」?

雪景色のなかでも目立つ青いN-VAN

真っ白な銀世界のなか、ひときわ目を引く青いN-VAN。撮影:小川 元貴

今回ご紹介するのは日本の山々や自然を追いかけ、実に年間200泊以上もの車中泊生活を送るフォトグラファーの小川 元貴さん。世界中を旅するなかで日本の北アルプスに魅せられ、山登りに夢中になっていく過程で、その美しさを記録したいと写真を覚え、やがて本職にしてしまったのだそう。

その現在の相棒がHonda・N-VAN。しかも、ごく一部の専門的なパーツを除いて、内外装のほとんどをご自身でDIYされているのだとか。これはもう、お話をうかがうしかない! というわけで小川さんが現在拠点にされている千葉県柏市にお邪魔しました。

 

まず、撮影と車中泊にかかせないN-VANですが、なぜ選ばれたんでしょうか?

小川さん:もともと私は旅好きで、N-VANの前もHonda・アコードワゴン(CF6型)で車中泊をしながら全国を旅していました。それが8年、20万キロ。そろそろ買い替えかなというときに検討したのが軽バンでした。アコードだと寝るには広くていいんですが、天井が低いので料理するにも、パソコン作業や着替えをするにも、窮屈だったんです。

桜並木とN-VAN

桜の開花を追いかけて旅ができるのも車中泊の魅力。撮影:小川 元貴

なるほど。でも軽バンだとHonda以外にも選択肢がありますよね。

小川さん:他も考えましたけど、ちょうど父親がダイハツ・ハイゼット、兄貴がスズキ・エブリイに乗っているので、どうせなら違う車種がいいなというのと、もともとHonda好きで、ひょんなご縁からSUPER GT(GTカーをベースとしたレーシングカーで争われる自動車レース)のSTANLEY NSX-GT(TEAM KUNIMITSU)とお付き合いさせていただいたこともあって、もうN-VAN一択でした。

それにしては青いN-VANってちょっと珍しいというか、カーキやイエローが目立つせいか、あまり見かけない気がします。なぜこのボディカラーを選んだのでしょうか?

小川さん:それは、自然のなかで停めても目立つからですね。ライフワークで日本の四季を追いかけて写真を撮っているんですけど、大自然といっしょにN-VANを撮影することがあって、赤や黄色だと紅葉に埋もれてしまうし、カーキやグレーだと緑や土に埋もれてしまう。というわけで一番自然から浮く色ってなんだろう? と考えたときに青だなと思ったんです。

紅葉のなかでたたずむ青いN-VAN

紅葉でも主張の激しい青のN-VAN。撮影:小川 元貴

たしかに海以外の遭難救助のシーンでは、青が一番目立つと聞いたことがあります。購入から4年とのことですが、現在の走行距離はすでに10万キロをオーバーしているのではないでしょうか?

小川さん:アコードワゴンのときは長距離でもガンガン走らせていたんですけど、N-VANはDIYでたくさん手を入れて愛着もあるので、もうちょっと大事に乗りたいなとフェリーを使ったり、あまりに遠方の仕事は飛行機とレンタカーを組み合わせたりと、以前よりは走っていませんね。それでも9万キロですけど。

乗っていないとおっしゃいつつも、年間2万キロ以上…。最終的には?

小川さん:30万キロは乗りたいと思っています。

 

フロントまわりのDIYをチェック!

N-VANに寄り添う小川 元貴さん

フロントまわりにいろんなパーツが付いている小川さんのN-VAN

そんな写真家・小川 元貴さんの青いN-VANですが、エクステリアを見ると、随所にDIYが加えられていることがうかがえます。もういったい何ヶ所あるのかわかりませんが、ほぼすべてご自身の手によるものだそうですから、逐一チェックしてまいりましょう!

 

まず、目を引くのがボンネットに付いている黒い帯。これは?

小川さん:ノーズブラですね。夏場に東北や北海道の高速道路を走るとフロントガラスに羽虫がめちゃくちゃ付くんですが、ノーズブラがあると気流を変えてくれるのでほとんど付きません。虫だけじゃなく、雪にも効果がありますね。もともとN-VAN用がなかったので市販品を装着しているんです。

たしかにフロントガラスに付いた虫は専用ワイパーじゃないと取れないくらいガンコですものね。その下のメーカーエンブレムもマット塗装されていますよね。

ボンネットに付けたノーズブラと、チッピング塗装したHondaエンブレム

ボンネットに付けたノーズブラと、チッピング塗装したHondaエンブレム

小川さん:これはチッピング塗装といって、あえてザラザラしたテクスチャを与えることでギラギラしたメッキパーツ部を引き締める効果があるんですよ。もともとメッキパーツが好きではないので、リアのNマークなんかもすべてこの塗装を施しています。しかも後から剥がすこともできますよ!

剥がせるのはいいですね! 続くバンパー部ですが、ここにも牽引フックやら、後付けのアンダーライトなどが目立ちます。

夜間走行の安全性に寄与するフロントアンダーライト

バンパー付きのフロントアンダーライトも自分で装着

小川さん:牽引フックは雪道の必須アイテムで、スタックしたときに有効なので前後に装着しています。これもチッピング塗装で目立たなくしています。あと、アンダーライトなんですけど、これがあるとないとではもう、夜道の明るさが段違いで。猫やタヌキといった路上の小動物にも気づきやすくなりますね。

 

リアバンパーの穴あけで燃費が1〜2キロ向上

N-VANリアカット

はしごとルーフキャリアが目立つN-VANリア

続いてリアまわりですが、ひときわ目を引くはしごとルーフキャリアは後回しにして、リアバンパーの穴はなんなのでしょうか?

小川さん:これはですね、燃費がよくなるということで空けました。考えてみればリアバンパーって前から吹く風をパラシュートみたいに閉じ込めてしまう構造なので、ここに空気穴を空けてあげると抵抗が少なくなる。実際、燃費はリッター1キロから2キロは向上しています。

年間走行距離2万キロですからバカにならない数値ですね。さらに、リアまわりですと前述したNマークのマット塗装に、牽引フックのほか、マフラーが柿本改(カキモトレーシング。マフラー等で有名な自動車パーツメーカー)! というかサイドステッカーや白いアルミホイール、紫のブレーキキャリパー含めて全体的にレーシーなあつらえですよね。

柿本改のマフラー

唯一、業者にお願いしたという柿本改のマフラー

小川さん:このあたりはSUPER GTの影響です(笑)。さすがにマフラーは業者さんにお願いして付けてもらいましたけどね。ここがほぼ唯一、自分で手を加えていないカスタムかもしれません。

軽バンであるN-VANを、あえてレーシーにドレスアップするセンスは、1980年代のデフォルメ文化をほうふつとさせますね。

 

はしごを登ればルーフトップの絶景ビュー

リアのはしごを登る小川さん

ルーフキャリアの荷物の出し入れやアクセスはリアラダーから

リアのラダー(はしご)とルーフキャリアについても教えてください。

小川さん:これは家のガレージにあったやつをくっつけただけですね。ルーフキャリアには板を張り、アルミだったのでチッピング塗装も施しています。基本的には車内に載りきらない荷物の収納場所ですが、たまにチェアをのっけて絶景を楽しむこともあります

その模様はこの記事のトップ画像というわけですね。うーん、気持ちよさそう! さらにはこのルーフキャリアにカーサイドテントを取り付け、簡易テントでキャンプをすることもあるとのことで、それもぜひ拝見しましょう。

カーサイドテントを取り付けたN-VAN

カーサイドテントを取り付けたN-VAN

小川さん:気に入った場所ではこうしてカーサイドテントを広げて滞在することがあります。直射日光や突然の雨風をしのぎながら、ゆったり調理や食事も楽しめるので重宝しています。

これまた気持ちよさそうで、筆者なら移動を忘れてずっとチルしていそうです。それにしてもノーズブラやエンブレム塗装はじめ、電飾系やルーフキャリアまで自分で取り付けてしまうのはすごいですね。

小川さん:だいたい実家で作業するんですけど、もともと兄貴がトラック乗りで工具やガレージもあるので、そこを借りて作業しています

フロントまわりのDIYの様子

フロントまわりのDIYの様子。撮影:小川 元貴

わからないことがあればお兄さんに聞けばなんとかなるし、そもそもカメラも独学だそうですし、なんだか小川一家はDIY精神にあふれていますね。

小川さん:私は3人兄弟の真ん中なんですが、実はカメラも弟から勧められて始めたことです。子どもの頃から図工やプラモデルも大好きですし、何か欲しいなと思ったものは自作する癖がついているので、言われてみればDIYに向いている性格・環境かもしれませんね。

そのDIY精神、見習いたいところです。続く内装編、インテリアもお楽しみに!

 

文/熊山 准
写真/宮越 孝政
編集/熊山 准、TAC企画
撮影協力/ogawa GRAND lodge FIELD

 

ogawa GRAND lodge FIELDの受付棟

今回撮影でご協力いただいたのは、テントをはじめ寝袋やキッチン用品などキャンプ用品でおなじみキャンパルジャパンが運営するogawa GRAND lodge FIELD(千葉県柏市)。受付棟には小川社製のアウトレット商品もあってお買い得です。筆者も20年近くフェスやキャンプでogawaのテント「ステイシーST-Ⅱ」を愛用しています。