
日本のみならずワールドワイドに注目を浴びつつある新しいキャンプスタイル「BOX(ボックス)キャンプ」。最近では「#アルミコンテナ」でInstagramを検索すると、キャンプ用にカスタムされたコンテナボックスがズラリと並びます。とはいえ2022年頃から始まったムーブメントなので、まだご存じない方もいるかもしれません。

そこでボックスキャンプの提唱者でブームの立役者zibecamp(ジベキャンプ、以下ジベキャン)さんにご登場いただき、ボックスキャンプの魅力について伺うとともに、愛車のN-VAN デナリのカスタムを見せてもらうことに。

ジベキャンさんに会うためにやってきたのは、岡山県備前市の鹿久居島(かくいじま)にあるキャンプ場「カクカクシカジカ」。ここはジベキャンさんがホームグラウンドにしている場所だそうで、瀬戸内海に臨むロケーションが魅力的なプライベート感あふれるキャンプ場です。

- ジベキャンプさん
- 理学療法士として勤務するかたわら、アルミコンテナをカスタムしてキャンプ道具をディスプレイ&収納するスタイル「ボックスキャンプ」を提唱し、ブームを牽引。最近は手相やカードを組み合わせて運勢判断をする占いキャンパーとしても活動中。
- Instagram @zibecamp
目次
新しいキャンプスタイル「ボックスキャンプ」とは?

ジベキャンさん:はい。キャンプ仲間で、いま一緒に製品を開発しているラスファクトリさん(@lath_factory)と前日から泊まっていました。先日参加した「FIELDSTYLE EXPO(フィールドスタイル エキスポ) 2024」という展示会の反省会という名目で(笑)。
ラスファクトリさん:何か口実を作らないと、(外泊することに)家族が納得せんからね(笑)。
ジベキャンさん:それが「ボックスキャンプ」のいいところかもしれません。欲しい道具がひとつの場所にまとまっているので、パッと取り出せて、戻すときも位置が決まっているので散らからないんです。

ジベキャンさん:ボックスキャンプとは、コンテナボックスなどの収納ボックスをさらに機能的に改良し、キャンプギアを魅力的にディスプレイするキャンプのスタイルです。いろいろなギアをひとつの箱の中に保管しつつ、ボックスそのものもテーブルやラックとして使えるように拡張性を持たせた点が特徴で、「収納、運搬、展示」がひとつの箱で完結します。わかりやすく言うと、万能な「キャンプ用おままごとセット」みたいな感じですかね。


ジベキャンさん:まさにこのブルーのボックスは、ピクニックバスケットを参考に作りました。使いやすさと見た目を両立することはもちろんですが、専用に作られたパーツではなくて、100均やホームセンターで買えるパーツで構成されているのもポイントです。そうすれば、誰でも真似ができますから。
ジベキャンさん:そもそもキャンプを始めたきっかけは、プライベートがうまくいかなくなった時期に、現実逃避するようにひとりでキャンプをするようになったんです。ちょうどコロナ禍になった頃で、当時、給付金10万円が支給されると、そのお金をすべてキャンプ道具に注ぎ込みました(笑)。ぼーっと焚き火を見つめているとすごく癒されて、だんだんキャンプにハマっていったんです。ハンドルネームの「ジベキャンプ」は「地べたでキャンプ」という意味なんですが、その頃は誰もいない河原にパップテント(軍幕テント)を張って、あとは道具といっても焚き火台とローチェアくらいで、いっさい誰とも絡まないのがすごく楽しくて。


ジベキャンさん:それでソロキャンプをするようになったんですが、僕は大雑把で片付けが下手なんです。すぐに道具がぐちゃぐちゃになってしまうので、収納する場所を決めておけば、自然とスッキリとサイトを保てるだろうと思って、キャンプを始めて3カ月くらいで、明邦化学工業というプラスチック製品会社の「ランガンシステムボックス」をカスタムして、自作のキャンプギアボックスを作っていました。ソロなので必要最小限の荷物をコンパクトにまとめるほうがラクですからね。

ジベキャンさん:もともとキャンプを始める前から写真撮影が趣味だったので、キャンプしているところを写真に撮ったりしていたんですが、アルミコンテナを改造したボックスの写真をInstagramにアップするようになってから、ぐわーっとインプレッションが伸びるようになって現在に至る感じです。

ジベキャンさん:母親から「掃除というのは、いかにサボりながら、キチンとしているように見せるかが大事」と言われてたんですが、その教えを実践しているのかもしれませんね(笑)。実際にやってみると、すごく簡単にできるので、誰でも真似できると思います。たとえば、よく使うギアはボックスの外に付けておけば、蓋を開け閉めしなくていいので、取り出しやすくて戻しやすいとか、使い勝手も考えつつ作っています。
ジベキャンさん:いえ、まったく。でも、父親が工場の保守をするエンジニアだったので自宅に大きなガレージがあり、そこでなんでも作ってしまう人なので、その影響を受けているところはあると思います。
N-VANは究極のボックス。ボックスキャンプが進化してN-VANキャンプへ

ジベキャンさん:キャンプギアをボックス化して、キャンプをして、撮影して、Instagramに投稿して、と、「ボックスキャンプ」スタイルの普及振興のために頑張っていたんですが、キャンプしながら撮影をしていると、想像以上に体力を使うんですよね。だんだんテントを張るのが面倒だなと思うようになって。最初は、その頃に乗っていた日産 エクストレイルで車中泊していたんですが、天井も低いですし、あまり車中泊には適していなくて。

ジベキャンさん:それで車検のタイミングに、友人から「N-VANなら簡単に車中泊仕様にできるよ」と教えてもらって。クルマを見に行ったら、自分でもできそうだったんで、ボックスキャンプのノウハウを盛り込んだ車中泊仕様のN-VANを作ることにしたんです。それで、2023年11月にN-VANを買って、実際に作ってみたら予想通り簡単で、快適に過ごせるクルマに仕上がりました。

ジベキャンさん:これはN-VAN デナリです。ベース車両はN-VANで、カスタムファクトリー「DAMD(ダムド)」のDENALI(デナリ) コンプリートキットでカスタムされたクルマを中古で見つけて、2024年6月に手に入れました。

ジベキャンさん:実は、この前に乗っていた黄色のN-VANは、買って5カ月後、停車中に追突されて廃車になってしまったので、N-VANに乗るのはこれで2台目なんです。このクルマを選んだ理由は、N-VAN自体を気に入っていたことと、前のN-VANの車内に作っていた車中泊カスタムをそのまま移設できるからです。


ジベキャンさん:黄色のN-VANも追突されなければライトを丸目にカスタムするつもりだったので、あらかじめカスタムされた車両が見つかったのはすごくラッキーでしたね。

ジベキャンさん:一番のポイントは低床で天井高があるところですね。僕の本業は理学療法士なんですが、車中泊のとき、どうしても腰をかがめて過ごすことが多くなるので、腰に負担がかかりやすい。だけど天井の高さがあるN-VANなら、ハーフベッドにしてベンチとして併用すれば、そこそこ身長のある男性でもこうやって腰を曲げることなく過ごせます。

ジベキャンさん:それから、ひとつ前のN-VANに乗っているときに、安全運転支援システムHonda SENSINGに惚れ込んでいたことも、またN-VANを選んだ理由のひとつです。普通の軽自動車にはついていないような豪華な機能で、高速道路で長時間移動するときも、めちゃくちゃラクです。

ジベキャンさん:ベッドキットは、車中泊アイテムなどを製造販売する「nuts vanlife products(ナッツバンライフプロダクツ)」さんのN-VAN用ベットキットを使っています。車内で使っているテーブルは「GROUSE(グラウス)」さんのロールテーブルです。

ジベキャンさん:N-VANはピラーレスなので、ドアを全開にすると、こんなふうにパノラマの風景を楽しめるのもいいですね。
パーツを組み換えれば複数パターンの過ごし方が可能に

ジベキャンさん:車内の設備を組み替えることで複数パターンの過ごし方ができるのも、このクルマのポイントです。車内で過ごすときは、こんな感じでベッドキットをベンチとして使いつつ、折りたたみ式のテーブルでコーヒーを淹れたりもできます。

ジベキャンさん:天井の収納は、イレクターパイプとジョイントを使った天井収納キットをフレームにして、ホームセンターで買った集成材を棚板に使っています。

ジベキャンさん:天井の棚板は、取り外すとテーブルの天板になります。カメラの三脚をつけて荷台に固定すればテーブルのあるサイトが作れます。

ジベキャンさん:ベッドキットと天井収納は同じイレクターパイプを使用しているので、こうやってジョイントを流用すればベッドキットのフレームに棚板が固定できるんです。同じ部材を使うことが、組み替えを前提でカスタムするときのポイントですね。


ジベキャンさん:ボックスキャンプのセットと椅子を出せば、外でゆっくり過ごせます。夏場は、テールゲートに簾(すだれ)を垂らして目隠しや日除けにしていましたが、これは見た目も涼しげでオススメです。フック付きのマグネットで固定しているので、設置や取り外しも簡単ですよ。


ジベキャンさん:ベッドキットの下は、収納スペースです。ホームセンターで買ったパイプ用ジョイントとレール、それに有孔ボードで作った引き戸と扉をプラスしてます。引き戸や扉もディスプレイ収納として使っています。


ジベキャンさん:車体本体には、切ったり穴を開けたりといった改造を加えていないのも、このカスタムの特徴です。たとえばこの左壁のラックも、もともとN-VANのボディに開いているユニバーサルナットを利用してM6のネジでボルト穴が空いたアルミプレートを留めてるだけ。そこにOneTigris(ワンティグリス)のウォールポケットやメタルラックを引っ掛けています。
ジベキャンさん:どんどん真似してください(笑)。車中泊カスタムの内装では、床にフローリング材を張るのも人気ですが、実際にあれを綺麗に作るのは素人にはかなり難しいと思いますし、車検のときに重量オーバーになってしまう可能性もあるので、そういった点でもプロ級の知識やテクニックが必要になります。でも、僕みたいな方法なら、誰でも手軽に実践できると思いますね。

ジベキャンさん:右壁の木棚は、後ろに磁石を付けて固定しています。テーブルはフィールドラック用の天板にホームセンターで買ったラッチを付けて折りたたみ式にしているのですが、取り外してキャンプのテーブルとしても使えます。


ジベキャンさん:ハンドルやドライビングシート、ダッシュボードのカバーは通販で買ったものですし、荷室のフロアもクッション材を敷いているだけ。岡山はデニムの産地なので、革とデニムのコンビのものを選びました(笑)。

ジベキャンさん:とくに意識したことはなかったんですが、考えてみたらそうかもしれないですね。これまでに乗っていたクルマやバイクもカスタムしていましたし、Hondaのスーパーカブをミリタリー仕様にして、リアにボックスを載せてキャンプに行ったりしていました。子どもの頃にレゴブロックを組み立てて何かを作ることが好きだったんですが、その頃からボックスのような四角い形状のものや、パーツをつなげて拡張していくシステムに惹かれていたのかもしれないなと思います。
ボックスキャンプがつないだキャンプ仲間との縁

今回、撮影でお邪魔したキャンプ場「カクカクシカジカ」が位置するのは、牡蠣(かき)の産地として有名な岡山県備前市日生(ひなせ)。冬場のシーズンになると、地元で評判の牡蠣を取り寄せてくれるサービスもあるそう(牡蠣1kg 1,100円〜)。せっかくなのでラスファクトリさんも一緒に海鮮BBQをしながら、もう少しお話しを聞くことに。
最初はソロキャンプからアウトドアに目覚めていったジベキャンさんですが、最近はグループキャンプのイベントを主催したり、さまざまなガレージブランドと共同でアイテムの開発をしたりと交友も広まっているようです。


ジベキャンさん:そうですね。この焚き火台もフジノハガネさんという岡山の鉄製キャンプギアブランドのもので、オプションで名入れサービスをしてもらえるんですが、せっかくなので「N-VAN CAMP」と入れてもらいました。イベントで知り合ったんですが、僕がフジノハガネさんの製品の写真を撮ってInstagramで紹介するとすごく喜んでくれて、公式サイトに写真を載せてくれたりして仲良くなりました。

ジベキャンさん:この釣具を入れている道具箱は「ランガンシステムボックス」で、僕が最初にカスタムしたボックスです。これを写真に撮ってInstagramで紹介したら、メーカーの方がすごく喜んでくれました。そんなことがいろいろなアイテムで続いて「こんなに喜んでもらえるんだ」ということがうれしくて。それまでは「自分がキャンプしているところをできるだけカッコよく撮影したい」というのが主眼だったんですが、「こんなに喜んでくれるなら、地元のメーカーや岡山のキャンプ業界を応援したい」というふうに、考え方や撮り方が変わったんですよね。

ジベキャンさん:いま僕がメインで使っているボックスも、グラウスさんと一緒に開発した「エクステンションテーブル」に、ラスファクトリさんのフラットバーナー五徳「ゴトク390」を組み合わせていたり、アウトドアショップ「KOTOcamp(コトキャンプ)」さんで取り扱っている弾薬箱をリメイクした「ストレージドッグ」というサイドテーブルに自分で開発したマグネット式収納を取り付けたりと、交流のあるブランドやショップの製品を組み合わせて拡張できるようにしています。
ジベキャンさん:キャンプで知り合った60代の人から「自分のためじゃなくて他人のためにやるんだ。そうすれば自分に返ってくるから」と人生哲学を教えてもらったことがあったんですが、まさにその通りだと思います。ソロキャンプもグループキャンプも、それぞれに楽しさがありますが、個人的に今はデュオキャンプぐらいの距離感がちょうどいいかもしれませんね。単なる飲み会にならずに、突っ込んだ話や仕事の話もできますし。


ラスファクトリさん:僕が開発した「ゴトク390」も、たまたまフジノハガネさんの焚き火台にピッタリ合うサイズで、しかも今日使ってみて、置く向きを変えれば高さを変えられることがわかったですけど(笑)、仲間内のギアを使いながらキャンプしているからこそ、こういう発見があったり、コラボ企画を思いついたりするのかもしれへんですね。


ジベキャンさん:先日の「フィールドスタイル エキスポ 2024」でお披露目した「Lath Box(ラスボックス)」も、「建築用のラス網をラック代わりに使えないか」というところから始まって、「ラス網にマグネットで取り付けられるラックも作ろう」というふうに発展していきました。アイデアを出し合いながら、少しずつ進化している感じですね。
ジベキャンさん:占いも写真と同じく、以前から好きで勉強していたんですが、最近はコミュニケーション手段のひとつとして使っています。キャンプで焚き火を囲んで話していると、恋愛相談になったり、仕事の悩みを吐露する人がいたり、ちょっと深い話になることもありますよね。そんなときに「じゃあ、ちょっと占ってみようか」と言ってくれる人がいて、客観的な視点から意見がもらえたら、スーッと気持ちが軽くなることもあると思うんです。僕は手相やカードで占うんですが、自分の占いで、ちょっと気持ちが明るくなってくれる人がいたらいいなと。「みんなに喜んでもらいたい」というのが共通の原動力ですね。

ジベキャンさん:メーカーから商品紹介などの案件を受けたときも「ええよ、ええよ。その代わり製品は提供してくださいね」って気軽に引き受けます(笑)。そうやってみんなで連携して盛り上げてやってきたから、ボックスキャンプというスタイルが定着してきたんだと思うんです。
カスタムを通じて世界が拡張していく

日が沈み、夜が近づくにつれて潮が満ち、気がついたら海岸線がキャンプサイトのすぐ目前まで寄っていました。なだらかな山の稜線、澄んだ空気と心地よい波の音、焚き火の匂いに包まれ、すっかり癒された瀬戸内海キャンプ。ランタンを灯したジベキャンさんの夜のサイトも綺麗でした。

自分の好みに合わせて、使いやすくて愛着が湧くものを作るのがカスタムの原点。そう考えてみると、アルミコンテナやツールボックスのカスタムは「クルマをカスタムしてみたいけれど、難しいかも」と躊躇している人でも、気軽に挑戦できるのかもしれません。小さな箱の中に、自分だけの宇宙が詰まっています。
そうやって自分だけの一点モノを作る楽しみや「意外と簡単にできるんだ」ということを知った人は、ジベキャンさんのように、次はクルマのカスタムへ挑戦してみてはいかがでしょうか。
▼ライターのプロフィール

- 廣田 俊介(ひろた しゅんすけ)
- 出版社でバイク専門誌、ファッション誌の編集者として勤務した後に独立。アメリカンカジュアルやトラッドを中心としたファッション、乗り物、アートなどの分野を中心に各種媒体で記事を執筆。コロナ禍をきっかけに葉山へ移住し、趣味の釣り、キャンプ、バイク、園芸を満喫中。
Instagram @shunthe1564
取材・文/廣田 俊介
写真/藤巻 健治
編集/平林 きょうこ
撮影協力/カクカクシカジカ