ひとりクルマ旅を続ける女性が、テント泊よりも車中泊を好きになったワケ

自然に囲まれた森の中でコーヒーを飲むもりこさん

ガーデングリーン色のHonda「N-VAN」に乗って、気ままに行き先を決めてはひとり旅を楽しむ野外のもりこさん。緑に囲まれ、のんびり静かに過ごす様子をつづった旅動画にファンも多く、YouTubeチャンネル登録者数は25.7万人にのぼります。学生時代からバンド活動を続けながら、2025年には初エッセイを出版するなど、多方面に才能を発揮しているもりこさん。肩ひじ張らず、自分のペースで続ける“ゆるり旅”の楽しみ方を聞きました。

野外のもりこさん

野外のもりこさん
静岡県在住。Honda「N-VAN」をカスタムし、ひとり旅を楽しむ。旅の様子を丁寧に伝える動画に多くの人が魅了され、YouTubeチャンネル登録者は25万人を超える。2025年2月に初エッセイ『小さな車で、ゆるり豊かなひとり旅』を出版した。学生時代に結成したガールズバンド「はぐち」のベース担当。
Instagram:@yagai_no_moriko
YouTube:野外のもりこ

目次

 

予定を立てるのが苦手なもりこさんが、ひとり旅にハマっていったワケ

その日の天気や気分次第で、クルマ旅に出かけるという野外のもりこさん。旅の相棒は、どんな景色にもすっと馴染む、落ち着いたグリーンカラーがかわいいHondaの「N-VAN」です。

愛車のHonda N-VANを運転するもりこさん

父親の影響もあり大のHonda好き、運転も大好きというもりこさん

もともとアウトドア派。子どもの頃の“一番楽しかった思い出”を振り返ると、いつも家族でキャンプをしていた姿が浮かんでくるといいます。川で遊んでおいしいものを食べて、テントで眠って朝起きたら、またすぐに遊びに行ける。自然の中で過ごせるってなんて幸せなのだろうと子どもながらに感じていたそう。「友人関係で気を使いがちだった小中学生のときも、自然教室でキャンプをしている時間はのびのびと自由でいられた」と話します。

キャンプを再開したのは、大学を卒業して社会人になってからでした。初めて手にしたクルマはHondaの「N-ONE」。週末になると、キャンプ道具を詰め込んで、友人を誘ってはキャンプを楽しんでいたといいます。

N-ONEでキャンプをしているときの様子

N-ONE時代は車中泊ではなく、テント泊が多かった(写真提供:野外のもりこさん)

ただ、予定を立てて動くのが苦手だというもりこさん。とはいえ感動を“共有”することが大好きなので、友人とは一緒に行きたい。でも、そのためには少なくとも数週間前から予定を聞いて調整し、行き先を決めて大まかなスケジュールを立てなくてはいけません。キャンプが大好きなあまり、隔週でキャンプに誘うこともあり、「友人は気を遣って予定を合わせてくれているのではないか」「本当はあまり行きたくないのかもしれない」と不安になることもありました。

「大学卒業後は約3年間、介護の仕事に就いていました。シフト制の働き方だったので平日のお休みも多く、『天気のいい日に突然お休みができた』ということもありました。そこで、良く晴れたある日にふと、ひとりでも行ってみようと片道1時間弱のドライブで海沿いに出かけてみたんです。何も準備せず、何も持っていかず、ただふらっとコンビニに立ち寄ってコーヒーを買って、海を眺めて飲んだだけ。それがとても幸せな時間で、ひとりでも楽しめるんだ。それなら大好きなキャンプにも行ってみようと、ひとり旅の世界がぐんと広がるきっかけになりました」

キャンプ中にコーヒーを楽しむもりこさん

初めてのひとり旅では、景色を眺めながら飲んだコーヒーのおいしさに感動。今は、お気に入りの豆を手挽きしてコーヒーを淹れる時間に癒されている

 

誰かと“共有したい”思いが、動画配信とカスタムの原動力に

ひとり旅の行動範囲が広がると、「もう少し広いクルマがほしい」と思うように。キャンプ道具がたくさん積めて、走りも快適な理想のクルマはないかなと探し始めたとき、発売となったのが「N-VAN」だったそう。ガーデングリーン・メタリックの色味にも魅せられ、「Hondaが私のために作ってくれたクルマだ」と思うほどでした。

ガーデングリーン・メタリック色のHonda「N-VAN」

新車で購入したHonda「N-VAN」。ガーデングリーン色に一目ぼれ

N-VANに乗り始めたのは、2019年。当初は、あくまでもキャンプの相棒で、車中泊をする予定はなかったそうです。でも、助手席から後部座席まですべてフルフラットにできる仕様ゆえに「テントを張るより、車内で眠ったほうが安全でラクチン」だと気づき、すぐに車中泊が定番になっていきました。

2年ほどは、後部座席にマットを敷いて寝袋で眠るという簡易スタイルの車中泊キャンプを楽しんでいたそう。自分好みの空間へカスタムを始めたのは2021年頃。きっかけは“共有したい”、というもりこさんなりの理由がありました。

「予定を立てずにふらっと出かけられるひとり旅は、自由で心地いい大好きな時間です。一方で、素敵な景色や自然が奏でる音に触れると、『この景色を独り占めするのはもったいない。誰かと共有したい』と思ってしまう。そこで始めたのが、キャンプの様子を撮影・編集し動画配信することでした」

物心ついた頃から映画やミュージックビデオを見ることが大好きで、大学時代は映像を学んでいたもりこさん。将来は映像の世界に行くぞ、と夢見て進学したものの、同級生たちのあふれる才能に「到底追いつかない。私が勝負できる世界ではなかったんだ」と挫折を経験したそうです。

「仕事としては叶わなかったけれど、好きな景色を発信することならできるかなとYouTubeチャンネルをスタートすると、思いがけずたくさんの人が視聴してくれました。こんなに多くの方が見てくれるのなら、車内も素敵な内装にしたい。私なりのこだわり空間を皆さんと共有して喜んでもらいたいという気持ちが、カスタムへの原動力になりました」

もりこさんの世界観があふれるYouTubeチャンネル。多くの人が癒されに訪れる

旅の様子をゆっくりと丁寧に追う映像が美しいYouTubeチャンネル。BGMには、もりこさんがベースを担当するバンド「はぐち」のオリジナル楽曲も多く使われている

 

天気や気分次第ですぐに出発できる! 車中泊スタイルのメリット

車中泊スタイルが定番になると、より気軽にキャンプに出かけられるようになったというもりこさん。テントが不要なので準備もラクになり、目的地に到着して慌ただしく設営する必要もなし。着いたらすぐに、車内でのんびりくつろぐことができます。

車内でタブレットを設置し映画鑑賞をするもりこさん

車内で映画鑑賞をすることも多い。映画の世界に没頭できて小さな映画館のよう。ちなみに、現在はミニシアターで働いているので「好きなことが仕事になっている」という

「行き先はだいたい当日か前日に決めます。車中泊であれば雨でも快適で、霧がかった幻想的な景色にも出合えるので、『雨予報だから出かけよう!』という日も増えました。片道2時間以内ならどこへでも。春は桜のキレイな穴場スポットに出かけ、夏は高地へ、冬は雪景色を味わいにあえて雪の積もりそうなエリアに行くこともあります」

生まれ育った静岡県内にも素敵なキャンプ場がたくさんあるようで、とくにおすすめは川根(静岡県川根本町)。山と茶畑に囲まれた自然豊かな土地で、SLと雄大な景色を眺められる温泉もあり、癒しの要素が詰まった最高の場所だそうです。夏はあまりキャンプには出かけませんが、山梨や長野の標高の高いエリアまで足を伸ばせば涼しくて快適に過ごせるといいます。

インスタント麺で作る「トマト&チーズラーメン」

旅先でのご飯は「簡単ラクチン」を追求。「料理はあまり得意じゃない」と言いながら作った「トマト&チーズラーメン」は、野菜もちゃんと採れるようにと考案したインスタント麵レシピ

日々の暮らしの中で、クルマを運転している時間が一番楽しく、「そんなお気に入りの車内で過ごせることが至福の時間」と笑顔を見せます。

「家でゴロゴロしていると、スマホを見て気づけば時間が経っていた……ということもあります。でも運転していればラジオや音楽に集中できますし、季節によって窓から見える景色が変わります。街中では、横断歩道を渡っているおじいちゃんおばあちゃんの様子や、登下校中の子どもたちの笑顔を見るだけで癒されます。目的地が近づいてくると緑が広がり、なんだかクルマの中から映画を見ているようなんです」

運転中に聴いているカセットテープ

運転中によく聴くのは、イマドキ珍しいカセットテーププレイヤーから流れる懐メロ

「私にとって車中泊旅は『いつもの日常と違う、自然の中に身を置く』ための大事な時間。出かけたいと思ったその瞬間から動き出せるのは、クルマだからこそ。これからも、朝起きて空を見て、『こんな天気ならば、あの場所に行こう』とクルマのエンジンをかける、ゆるいお出かけスタイルを楽しんでいきたいです」

旅というよりはお出かけ。そんなもりこさんの姿勢は、車中泊をもっと気軽にとらえてもいいんだと思わせてくれます。

 

文/田中 瑠子
写真/やまひらく
編集/くらしさ(TAC企画)
撮影協力/富士オートキャンプ場ふもと村

 

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