
「歳をとったから遊ばなくなったのではなく、遊ばないから歳をとるのだ」――この格言をそのまま体現するような、75歳のwinpy-jijii(ウィンピージジイ)こと中村 和博(カズヒロ)さん。YouTubeチャンネルは27万人のファンを擁し、ボンゴの改造風景を記録した動画は208万回の再生数を突破。「改造にかかった費用は30万円ほど。ホームセンターとAmazonでそろうものばかりで作っています」という実践的なノウハウをたっぷりと教えてくれました。奥さまとふたりで老後を遊びつくす車内づくり、そのDIYアイデアをとくとご覧あれ。

- 中村 和博(カズヒロ)さん
- 1950年生まれ。大阪の難波出身で、現在は滋賀の琵琶湖のほとりで奥さんと二人暮らし。根っからの趣味人で、アウトドアや写真、料理、バイク、クルマなど幅広く楽しむ。定年をきっかけに始めたYouTubeでの動画配信が人気を博し、「winpy-jijii(ウィンピージジイ)」として登録者数は27万人に。初エッセイ『いくつになっても遊び続ける ジジイのアウトドアノウハウ大全』(KADOKAWA)をはじめ著書多数。
- Instagram:@jijii_70
YouTube:winpy-jijii
目次
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中古のボンゴを30万円で大改造
2023年、winpy-jijii(ウィンピージジイ・以下ウィンピー)さんは走行距離4万7000㎞で売りに出ていた中古車のマツダ・ボンゴバンを入手し、シンプルで無駄のない大人のカスタムを目指して、奥さまと一緒に改造すること2ヶ月半。二人で車中泊ができる愛車を完成させました。

「使ったのは、Amazonやホームセンターで必ず手に入るものばかり。ポータブル電源などは以前から持っていたものを使っているので、かかった費用のほとんどは材木代。だいたい30万円ほどでした」
一つ前の愛車はN-VANで、すでに車中泊には親しんできたものの、「これほどの大規模なクルマの改造は初めてだった」とウィンピーさん。
「いろんな方のYouTubeを拝見して方法を学びました」と言い、自身のチャンネルでボンゴ改造の軌跡を記録したタイムラプス動画を公開しています。
動画の説明欄には「人生これからが本番。キャンピングカーが欲しい、でも高い(汗)出来れば安く自分で作りたい、そんなジジイとババアの挑戦」とあり、「こんな老後がいい」「車検もいけるんだ!」「私もこんなクルマでソロキャンしたい」とファンからの熱いコメントが並んでいます。
改造時、最初に取り掛かったのは、内装をすべて取り払うことでした。
「その後、断熱材と防音材を施工しました。試しに壁をコンコンと叩いてみても響かなくなり、走行音もずいぶん静かになりましたね」
続いて、床作りをスタート。
「何か液体をこぼしたときに染み込むと大変だから、掃除のしやすさを考えて木目を模したフロアシートを選択しました。その代わり、天井や壁には本物の木を張っています」


L字カウンターキッチンの秘密
サイドドアを開けると、まず目を引くのが、運転席の後ろに備え付けられたL字型のカウンターキッチン。もちろんこれもウィンピーさんの自作です。

長旅に備えて水栓とシンクも完備。シンク下には10リットルの給水・排水タンクがありますが、排水の臭いを気にして極力使わないようにしているそうです。

L字カウンターキッチンの下にはこれでもか! と収納しておける引き出しや棚を設置しています。


キッチン下を見ただけでも「必要なものはすべて積んである」とウィンピーさんが言うのがよくわかります。
逆サイドのドアの向こうに電装系
天井にはライトがあり、コンセントも完備されているウィンピーさんのボンゴ。電気周りをコントロールしているのが、この見慣れないスイッチです。

「これはよく船で使われているスイッチです。2,000~3,000円くらいで売ってるんですよ。電気の配線は自分でやりました。表からは見えないだけで、裏側はつぎはぎだらけで恥ずかしいんですが、見てみますか?」
と、一度車外に出たウィンピーさん。入り口とは逆のサイドドアを開けました。そして、おもむろにL字カウンター棚の背面に手をかけて…パカッ。なんと反対側からも棚が開くようになっていました!


「昔からよくクルマのステレオをいじったりしていたので、その延長で作りました。配線のどれが何かをすぐ忘れちゃうから、線のつながっている先をメモしているんです。こうしておけばメンテナンスも簡単!」

「本気で蓄電するなら、やっぱり走行充電が便利だしスピーディ。北海道の旅では大活躍しました。1回フルに充電すれば、2日間くらいは普通に家電を使いながら生活できますよ」
ポータブル電源は、1500Wと2000Wの2台持ち。気兼ねせずに電気を使えるので快適だといいます。

“寸法”を制する者がDIYを制す
さて、こうした内装の制作時にウィンピーさんが最も苦戦したのは、「寸法を考えること」だったそう。
「例えば、妻と向かい合わせで座ったときに足が当たらないようにするにはテーブルの幅を何センチにすればいいのか。あるいは、2リットルペットボトルを立てて収納するためには何センチの棚をつくればいいのか。全体を見ながらいろんな条件を足し引きして、サイズを決める作業が一番大変でしたね」
その苦労の甲斐あって、ウィンピーさんのボンゴは、細部に渡ってシンデレラフィット! 見事なまでの車内設計を見せていただきましょう。
ふかふかベッドの“おやすみモード”
まずはボンゴの横幅すべてを生かしたベッドです。車中泊する人にとっては、毎日のベッド作りは意外と大変と聞きますが、ウィンピーさん流はいかに?


なんとベッド台側面の板を起ち上げ、上にマットを敷きつめるだけで、あっという間に奥行き170cmの広々としたベッドが完成してしまいました!

「マット部分は10cmほどの厚みがあるニトリの高反発マットを包丁で切り分けました。シリコンスプレーを塗ったらスムーズに切れるんですよ。豆腐を切るみたいな感じでね」
カバーは、奥さまがミシンで縫製。生地は二人で生地ショップをまわり、好みのものを選んだといいます。

「最初、2年に1度の車検で済むように8ナンバー(キャンピングカー登録)にしたかったのですが、その場合はクッションに難燃剤を使うこと、ベッドは180cm以上あることなどの条件があるんです。好きな布が使えないし、ベッドサイズも170cmあれば十分だったので、4ナンバー(貨物車登録)にしました」
車検は1年に1度になりますが、L字カウンターやベッドの枠組みはボルトでガッチリと固定してあるため、車検のときはマットなど動くものだけ外して出せばOK。二人乗りで申請しているクルマだから、新たに座席を設置する必要もないのだそう。
カフェ風の“ソファ”モードにチェンジ
車内で使える空間は限られているので、「ひとつのアイテムが何役も兼ねるように設計することも重要でした」と語るウィンピーさん。このベッドエリアは、テーブル付きのソファにもなるんだとか。





1分足らずでカフェ風の空間に早変わり。雨の日にはバックドアを開けて、ここでチルタイムを過ごすことも。コンパクトな空間だけれど、まったく違う2通りの過ごし方ができるのでした。
どこでもテラス席に! 技ありテーブル
ウィンピーさんの“兼用”の工夫はまだまだ尽きません。バックドアを開けた側のベッド側面にもフタをつけ、開ければテーブルの天板になる、そんな仕掛けが施されています。


ベッド下の収納のほうに目を向ければ、これまた工夫のオンパレード!
棚とアイテムが並ぶ様子は、サイズがぴたりとフィットしていて見ているだけで爽快。これぞDIYの醍醐味です。

「棚の左上にある赤いコールマンのケースは、アウトドア誌『BE-PAL(ビーパル)』の付録なんです。これがスパイス入れとして使えるんですよ! これもその付録で作りました」
そんな言葉とともに登場したのは、なんとペグケース。

「板にペグの数だけ穴を開け、バッグの内部に入れました。ペグは、一本ずつ穴にさして収納しています。入れ忘れたペグがあると、穴が余るから紛失予防になるんです」


「このストッパーは、家に余っていた金具を叩いて平らにしたものです。使えるものは何でも再利用しちゃう。夏にバックドアの開口部を覆う網も、古いテントのメッシュ部分を切りだして使っています。持ちものに捨てるとこなし!」
ちなみに、こうした建具に使った材木は、主に「針葉樹のコンパネ」。
「理由は、比較的安価で、年輪の模様もきれいだから。ほかは、シナベニヤやパイン材など。木材はバラバラだけど、どれも上から『ワトコオイル』のクリアカラーを塗っています。こうすることで自然に日焼けして、似た印象の風合いになっていくんですよ」

ウィンピー流カスタムの哲学
クルマ作りもさることながら、実は愛用品をオリジナルグッズのようにカスタムするのも、ウィンピーさんがハマっている遊びの一つ。焼き印を押したり、カッティングシートを車窓に貼ったりと、方法はさまざま。
「オリジナルを作ると“自分だけのモノ”になるでしょう? 工夫すればするだけ愛着がわいてくる。それがカスタムの醍醐味だと思います」


ウィンピーさんの手にかかれば、まるで「jijii」という高級アウトドアブランドがあるかのよう。しかも上の写真の「mazda」は、古き良きポルシェのフォントにそっくり! このさりげない遊びゴコロ…たまりません。
ウィンピーさんのDIY哲学は「背伸びをしない」こと。
「僕は写真が大好きなんやけど、高いカメラを買っちゃったらきっと続けられなかったと思うんです。自分の手の届く範囲のものを使って楽しむのが、ずっと長く続けるコツ。それでも十分、面白いことはいっぱいできますから」

実際、「まだまだやってみたいことがあるんです」と話すウィンピーさん。75歳になっても、好奇心は尽きません。
「好奇心があれば、これをしたい、あれもしたいと思えてきます。そして、実際にやってみたら『なんか違うな』『これではアカンな』ってことで改良を重ねていく。“必要は発明の母”という通り、動いて初めてアイデアが湧いてくる。その積み重ねが面白いんです」
70代でも冒険はできる。考え方次第で、その選択肢をどんどん広げていける。そんな生き方があることを教えてくれたウィンピーさん。暮らし方や発信の仕方、改造のやり方をもっと知りたい! という方、ぜひ過去の登場回ものぞいてみてくださいね。
▼前編はこちら▼
過去記事
クロスカブも家もカスタム!70歳YouTuberのN-VANアウトドアライフ!(後編)
2020.08.20
文/矢口 あやは
写真/やまひらく
編集/くらしさ(TAC企画)
撮影協力/ マイアミ浜オートキャンプ場