東京オートサロン2019特集 ホンダアクセスブースを見に行こう ~「CIVIC VERSATILIST」編~


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ロー&ワイドなスタイルとハッチバックならではの使い勝手のよさが好評な新型シビック ハッチバックは男女問わず、幅広い年齢層から支持されています。都会へ郊外へ、どこへ乗っていっても絵になるし便利に使えるクルマです。

そんなシビック ハッチバックをベースにした魅力的なコンセプトモデルが「CIVIC VERSATILIST(シビック バーサタイリスト)」です。

まるで実車づくり!? 市場調査から始めたコンセプトモデル

このクルマをデザインしたのは商品企画部の古川 順一朗さんと清澤 雄さんです。清澤さんはブースデザインも手がけていますのでこれが2回目の登場となります。では早速、二人が手がけた「CIVIC VERSATILIST」を紹介しましょう。

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右が古川さん、左が清澤さん。清澤さんが調査を担当し、その後二人でコンセプトを立案。古川さんがデザインを担当しました。

今回のホンダアクセスブースに並ぶコンセプトモデルの中で「CIVIC VERSATILIST」だけは他と少し違います。このクルマは次の新しい価値創造を見据え、ユーザーの声を聞きながらコンセプトの構築とデザインの立案をしてつくられています。

まずシビックと競合になると思われるカテゴリーの市場調査を行いました。その中で注目したのが「立体駐車場にも入る低全高SUVが活況を呈している」ということです。しかし今のHondaにこのジャンルのクルマはありません。

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ユーザーへのデプスインタビュー調査(1対1の面談式インタビュー調査)で見えてきたのは、使い勝手のいい都会派SUVという姿でした。

そこで今度は都市型SUVに乗るユーザーに集まってもらいインタビュー調査を行いました。

その調査では古川さんたちが思っていた以上に「走り」が好きな人が多いこともわかりました。また行動派になるほどドライブ先で遭遇する未舗装路や近年増えている豪雨や大雪などに対して不安を持つ傾向があることもみえました。さらにクルマ選びの考え方もただカッコいいと言うだけではなく「いまの自分や時代と調和しているか」という部分を意識していることもわかりました。

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都会派でも走破性のよさは求められていた。これもデザインを進めるうえで大事なポイントになりました。

そのような実のある調査でしたが何人かが集まれば矛盾した意見も出てきます。この調査でもそれが目立ったときもあったようですが、二人は「希望やイメージは人それぞれで意見が違うことも都市型SUVの特徴である」と解釈し、矛盾を対立した意見と受け止めず、俯瞰してみることで個別のヒントと捉え、そこから感じたものをプランに取り込んでいきました。

この段階でも十分なヒントが得られましたが、二人は次に「使い勝手をシーンごとに体験してみよう」と、シビックであちこちに出かけたそうです。そんな体験を自分たちでもしたうえで改めて提供したいと思った価値は「シーンを選ばず、肩肘張らずにもっと気軽に出かけられる」ということでした。

そこでSUVといっても本格的なアウトドアを想定したハードなものではなく、都会でも自然の中でも楽しめるしなやかさを持たせシックな方向に磨きをかけた提案をしていくことになりました。ここで提供すべき価値は「都会も自然も走れて、日常でも非日常でも様になる」こと。そしてそのクルマのコンセプトを表すキーワードは「都会も自然も涼しい顔して難なくこなす垢抜けSUV」です。

ユーザーの気持ちを想像する

最近のクルマのデザインは、グレードが上がるほどアグレッシブになる傾向なので、デザインをシックな方向へ変えていくことは主流ではありません。でもそこは事前に調査済みなので「受け容れられる可能性は十分ある」と二人は判断しました。この一連の手順はまるで新型車を作っているかのように感じますが、 これは“コンセプトモデル”なのです。

このようなアプローチや方向性は「斜め上をいく」という表現が似合うユニークなもので前例はおそらくないでしょう。なにせカスタムとは本来つくり手が主導であってユーザーはそれについてくるイメージなので、ユーザーを前に出すことは作る側の自由度が減ることを意味します。そのためクルマづくりのハードルが上がります。しかし、二人が提供したいのはつくり手が自由につくるクルマではなく、あくまでこのクルマを通してお客さまが得られる楽しくて豊かな時間です。そう考えると「自由度が減る」どころか「可能性は拡がって」いきます。そのような中で日々考え、悩み、創造してきた「CIVIC VERSATILIST」は興味深い1台といえるでしょう。

エアロとプロテクターを融合させた新形状とその生かし方

さて、ここからは各部のつくりについて紹介していきます。

ホンダアクセスはHonda車の純正アクセサリーメーカーとして、デザインや便利さだけでなく、装着の方法や耐久性、それに法規などいろんなことに目を配って用品の開発をしています。それだけにさまざまな方向から考えるものづくりを得意としています。

そんな思考を活かして作られたのがボディー保護用のプロテクターとエアロパーツを融合させたボディーパーツです。これは「都市で使うけど山道にもいく、あれもこれもやりたい」というユーザーからの意見に対して古川さんが出した回答でした。

色についてもこだわりがあります。一般的にプロテクター付きのオフロード系のクルマではコントラストがハッキリした色使いが多いのですが、そこは「白とグレー」というローコントラストで表現することで主張し過ぎることなく、「CIVIC VERSATILIST」らしい多様性を表現したのです。

サイドに回るとドア部分にもプロテクターを付けています。これはドアを開けたときにエッジをガードするためのものですが、これも調査に基づいたデザインなのです。「CIVIC VERSATILIST」がもし販売されたと仮定すると、購入層は都市部に住んでいることが想定できます。すると駐車スペースはあまり広くないのでドアを開けるときにちょっと気を使うかもしれません。そこで安心してドアを開けられるようにプロテクターを設けたのです。形状は他と同様にプロテクターとエアロの中間的なデザインなのでイメージは統一されています。

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プロテクターとエアロを融合させたボディーパーツを装着。ホイールはヴェゼルRS純正で車高は40mmアップしています。

つぎに見ていただきたいのがバンパーです。新型シビックのバンパーはスポーティーな印象のデザインなので開口部も大きく取られていますが、かなりやり尽くした造形のため後から手を加えるのは困難でした。

そこで古川さんはデザイン的に何かを足すのではなく引くことを行いました。シビックの特徴であった左右の大きな開口部を埋めることにしたのです。さらにただ穴を埋めただけではなく、開口部の替わりにしっかりとした立体を設けました。それがプロテクターのイメージにもあうバンパー下部の造形です。これはエアロ的なものではなくて、なかに筋肉がしっかりつまっていて何かにあたっても大丈夫というイメージです。

こうすることでシビックの顔つきを、イメージを崩すことなく都会派SUVらしいマイルドなものに変えることができました。

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カスタムではフロントグリルを変えることはよくあることですが、このシビックにとってグリルは特徴的な部分なのであえて大きく変えていません。

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コンセプトモデルは乗り込んで気軽に出かけたくなるような明るく上質な雰囲気になっている。

まだまだ細かい部分のつくり込みはあるのですが、そこは会場でじっくりと見ていただくとして、とにかくこのクルマの見どころはリアルさです。ユーザーの生の声を聞いて、そこで出た希望を法規的な面や実際に商品化した際の再現性まで考慮してかたちにした点がなによりのポイントです。

この現実感こそ古川さんと清澤さんがいちばん大事にした部分でした。取材の冒頭で二人は「ホンダアクセスは純正アクセサリーメーカーです。その立場から作るクルマなのでコンセプトモデルといえども会社の立ち位置や技術レベル的に実現できないことはやりません。いま持っている技術で作れるものにしたかったんです」と語ってくれました。

今回のホンダアクセスブースも見応えあるクルマばかりですが、「CIVIC VERSATILIST」も見始めると長くなりそうな1台なので、たくさんのブースを回りたい方は時間配分に気をつけてください!?

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商品企画部 古川 順一朗さん
2008年入社。2009年には本田技術研究所へ転勤してACURA ILXやVEZELのデザインを担当。2011年にホンダアクセスへ戻る。子供に自慢できるような仕事をすることがモットー。

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商品企画部 清澤 雄さん
2016年入社。各種車両の新価値先行企画業務や東京オートサロンプロジェクトの推進などに従事。趣味は二人の娘の育児・観察。

 

東京オートサロン2019 ホンダアクセスブース特設ページ

 

企画/カエライフ編集部
文・写真/深田 昌之