ベース車のフォルムを生かしつつ、ヴィンテージな見た目へ進化させたレトロカスタムカー。軽自動車をベースとしたものが多いので各種コストを抑えられ、日常使いでも運転しやすいこともあって幅広く支持されています。
レトロでアメリカンなカスタムのバリエーションはどれくらい?


森さん
DIYからFRPパーツを使った本格派まで、いろんなカスタムを見てきましたけど、ブローさんのクルマは今までにないインパクト! アメ車っぽいデザインが得意だそうですね。

中澤さん
ありがとうございます。弊社もFRPパーツを使用しますが、すべてハンドメイド。各パーツの原型からオリジナルで作っています。ですから、他にないスタイルが実現できるんです。デザインからパーツ完成までを一貫して自社で行うのは、品質安定にも繋がっているんですよ。

森さん
デザインは中澤さんが担当なさっているとか。どんなバリエーションがあるのか教えてください。

中澤さん
はい、現在21種類を展開しています。 基本的には各モデル、フロントまわりとディテールをカスタムしているとお考えください。フロントまわりのカスタムは、FRP製のフェイスキットに交換していますので、ベース車がわからないほどグレードアップします。
イージーライダー


中澤さん
こちらはHonda・バモスをベースにした「イージーライダー」。シボレー シェビーバンがモチーフです。

森さん
本当にアメリカ車みたい!コンパクトな軽自動車だから、キュートな印象に仕上がっているのもいいですね。
写真のモデルは随所にエナメル塗料によるグラフィックやピンストライプが、手描きで施されている
ミラーは初代ワゴンRの純正オプションであるカリフォルニアミラーを使用。廃番品のため、オーダーがあれば中古を仕入れるそう。本来1筒の排気口を2筒風にカスタムしているのもアメ車テイストをかもし出すポイント
クールライダー


森さん
こちらはスクールバスがモチーフですか?

中澤さん
はい、GMCのバストラックを参考にしました。スズキ・エブリイDA17とマツダ・スクラムDG17、ニッサン・NV100DR17に対応しています。
オリジナル同様の手前に開くボンネットまで再現。外付けの四角いウインカーは入手困難なため、トラクターのパーツを流用
スタイルに合わせて、ルーフキャリアとパウダー塗装風のマットなホイールもコーディネートしている
ウーキーライダー


中澤さん
1957年製のジープ FC150やFC170をモチーフにした「ウーキーライダー」。サル顔なのでウーキーと名付けました(笑)。スズキ・キャリイとスーパーキャリイがベース車です。
仕事に使われることの多い軽トラックでも楽しく、愛着が湧くようデザインした。荷台のテント風の幌は、ブローとbug-truckのコラボ商品。よりミリタリーライクに仕上げている
ナンバープレート下にはトレーラーを牽引するときに用いるヒッチメンバーも。エクステリアとしての役割だけでなく、実際に牽引も可能
ハイライダー ピックアップ660


森さん
小さな荷台がかわいいですね!このクルマは何がベースになっているんでしょう?

中澤さん
実はスズキ・ラパンHE21Sがベースです。後部座席のあたりを全て取り外してピックアップ仕様にしました。
キャビンとヘッドの分割部のリアルさや、カラーコーデされたインテリアなど、細部までこだわり抜いた
荷台のフラップは大人が座れるほど頑丈。非常に手間がかかるため30台限定で販売され、残念ながら現在は販売終了している
全21種類!ほかにもこんなモデルがあります
サーフライダー、スローライダー
ブロー初のフェイスキット「サーフライダー」(写真左)。Honda・バモスの顔まわりをアレンジし、70年代のバンのアイコン的モデルであるダッジバン風に変身させた。写真右は、通好みなフォード エコノラインをバモスで再現した「スローライダー」(写真提供:株式会社ブロー)
キャルペッパーバモス、キャルロッダーバモス
ブリキのおもちゃの曲線やレトロ感をテーマにデザインした「キャルペッパーバモス」(写真左)。キャルペッパーバモスを'70年代のホッドロッドスタイル風に発展させた。キャルロッダーバモス(写真右)は、02’東京オートサロン東京国際カスタムカーコンテスト ミニバン部門グランプリを受賞。Honda・バモスだけでなく、ホビオやアクティにも対応する(写真提供:株式会社ブロー)
ルートライダー

スズキ・エブリイDA17、マツダ・スクラムDG17、ニッサン・NV100DR17を1950年代のフォード COEライクに。独特な重量感があるオリジナルのフォルムを、小さいベース車に無理なく再現した。丸みあるボンネットやグリルのデフォルメ加減が絶妙である(写真提供:株式会社ブロー)
ブギーライダー DA64
インターナショナル社のスクールバスがデザインソースだが、軽自動車のサイズ制限に従ってフレイトライナー風の顔付きに。しかし、フロントが開くチルトカウルで本物感もしっかり。スズキ・エブリイDA64とマツダ・スクラムDG64、ニッサン・NV100DR64 装着できる(写真提供:株式会社ブロー)
ブギーライダー DA17
スズキ・エブリイDA17、マツダ・スクラムDG17、ニッサン・NV100DR17 に対応するスクールバステイスト。バスらしいチルトカウルに加えルーフマーカーも採用されている。車検に通るよう、一番下のライトでも地上高350mm以上の設定にしているのがミソ(写真提供:株式会社ブロー)
ブギーライダー エブリイワゴン
ブギーライダー DA64と同様のコンセプトで、バスのイメージを強調するルーフ・ゲートが採用されている。ベース車もスズキ・エブリイDA64とマツダ・スクラムDG64、ニッサン・NV100DR64に対応(写真提供:株式会社ブロー)
キャルワーカー
スズキ・エブリイDA64、マツダ・スクラムDG64、ニッサン・NV100DR64の、主にフロントバンパーとやサイドステップ、リアバンパーをチェンジ。比較的シンプルなカスタムだが個性はしっかり主張し、コストも控えめで済む(写真提供:株式会社ブロー)
キャルペッパーキャロット、キャルペッパーラパン
「キャルペッパーキャロット」(写真左)は、車名のラパン=ウサギがデザインソースで、ポップさ溢れるフェイスが人気。「キャルペッパーラパン」(写真右)は03’東京オートサロン 東京国際カスタムカーコンテストミニバン部門優秀賞を獲得した。それぞれスズキ・ラパンHE21Sとマツダ・スピアーノHF21S に装着可能(写真提供:株式会社ブロー)
フリーライダー、ロックライダー
「フリーライダー」(写真左)は、ベース車となるスズキ・ラパンHE21Sとマツダ・スピアーノHF21Sの個性を活用。ヴィンテージ感漂うシボレー・サバーバン風にアレンジしている。車型のアメリカンなかき氷機にヒントを得た「ロックライダー」(写真右)は、少しゴツくてレトロカワイイ雰囲気に。ダイハツ・ハイゼット、トヨタ・ピクシストラックに対応 (写真提供:株式会社ブロー)
キャルペッパーグー、キャルペッパーフロッギー
ダイハツ・ムーブラテに対応し、オリジナルのキュートさを際立たせつつレトロ感も加えた。カエルっぽい風貌から命名された「キャルペッパーフロッギー」(写真右)はNEWビートルをヒントに、やわらかいルックスに仕上げた。(写真提供:株式会社ブロー)
パパライダー、キャルアクティバン
トヨタ 200系ハイエースKDH200〜と同 TRH200〜を、印象深いとぼけ顔のA-100にチェンジした「パパライダー」(写真左)。ライトベゼルやグリルのディテール、お約束のバンパーレスまで忠実に再現した。写真右の「キャルアクティバン」は、Honda・アクティバンをアメリカ西海岸で流行したカリフォルニアルッカー=キャルルック風にアレンジ。(写真提供:株式会社ブロー)
カスタムにはどれくらいの予算が必要? 納期は?
中澤さんが過去に描いたデザイン画

森さん
本当にいろんなモデルがあって驚きました。特に人気が高いのはどちらになりますか?

中澤さん
今はブギーライダー系のオーダーが多いです。アメリカの映画やドラマでお馴染みのスクールバスがモチーフなので、分かりやすいんだと思います。


森さん
それぞれコストはどれくらいかかるのでしょうか?

中澤さん
さまざまなパターンがありますが、ベース車の価格とフルペイントでおよそ250万円〜。さらにベッドキットなどをプラスすると約300万円といった感覚です。スズキ エブリイDA17をベースにしたブギーライダー DA17だと、フロントに取り付けるフェイスキットが21万円。フェイス用の部品と灯火類が6万円ほど。極端な話、車体持ち込みなら+工賃でカスタムが可能です。
ただ、未塗装なので納得いく仕上がりになるかは疑問。諸々加えていくならパーツ代とパーツの塗装・取り付け費で16万円くらい必要とお考えください。
ブローではFRP素材のパーツを全て自社の工場で生産。一つ一つ職人が手作りするのでミリ単位の調整が可能となっている

森さん
ベース車の持ち込みも可能なんですね! オーダーから納期まではどれくらいかかりますか?

中澤さん
ベース車を一度分解してからFRPパーツの取り付けにかかりますので、車体をお預かりしてから約1カ月はみていただいています。もちろん、オーダー内容によって変化しますのでご理解を。
アメ車風カスタムのDIYは可能?
FRPや電子部品などを使う大掛かりなカスタムを自分でDIYするのはあまり現実的ではない。プロにお任せを

森さん
私はDIYで愛車をカスタムしているのですが、自分の手でアメ車っぽくアレンジすることってできますか?

中澤さん
大きくデザインを変えるには材料と本格的設備が必要です。FRP素材のパーツを使うようなスタイルは相当難しいと思います。車検の問題もありますのでプロに任せるのが間違いありません。
まぁ、一番手軽でビギナーが可能なのはステッカーによるデコレーションでしょうね。弊社をはじめカスタムショップの多くは、量販店にはない魅力的なステッカーを扱っていますので、チェックしてみるのもいいと思います。また、自分でピンストライプを描き入れたり、別売りエンブレムを両面テープで貼ったりするのも良いかと。いずれにせよ、センスが重要になっちゃいますね(笑)。
アメリカンテイストのペダルはブローオリジナル。セットで9,500円
日本製とは表情の異なるアメリカ産アルミを使用するフットパネル。5枚セットで23,000円

森さん
初心者でもアメ車っぽくまとめられるインテリア系パーツはありませんか?

中澤さん
ブレーキペダルセットは扱いやすく、アメ車っぽい雰囲気が出るのでオススメです。森さんがお乗りになっているバモスにも対応していますよ。また、エブリイに装着できるフットパネルも人気。アメリカ製アルミ板を使っている本格派ですが、固定はビス留めだけでいいんです。
レトロなアメ車カスタムの魅力とは?


森さん
ちょっと無骨な感じがアメリカンで素敵ですね。古いアメ車の魅力って迫力とか存在感だと思いますが、軽自動車で表現するのは難しくありませんか?

中澤さん
そうですね、コンパクトでシンプルな日本の軽とは真逆ですから、バランスを上手く調整してデザインしています。特にレトロなアメ車はゴロッとしたカタマリ感、彫りの深いフェイス、ギラついたメッキパーツなどが魅力。この要素をいかに違和感なく取り入れるか、いつも苦心しています。
でも、コンパクトさとイカつさ、相反するものの融合だからこそ生み出される意外性や可愛さは他にありません。大変ですが人が思い浮かばないようなモデルを作るのって楽しくもあるんです。


森さん
軽自動車以外でレトロカスタムをオーダーするのは無理でしょうか?

中澤さん
理論的には可能です。しかし、新たにFRPパーツの原型から作る必要があり、費用がかさみます。それに、軽自動車だから個性的に仕上がるのであり、普通車サイズでのカスタムだと単なるレプリカ。あまりオススメしていません。
レトロなアメ車カスタムカーのオーナーはどんな人?
今年1月に開催されたジャパンキャンピングカーショー 幕張メッセに、ブローはルートライダーを連れて出展

森さん
このスタイルやカルチャーに惹かれるって、オシャレな方が多そう。やっぱり、こだわりの強い人がオーナーに?

中澤さん
どうでしょう、40〜70歳と年齢層高めなので、それなりに価値観の定まった方が多いとは思います。ほとんどが男性で、もしくはご夫婦でいらっしゃることが多いですね。どちらかというとカスタムオタクではなく、ファッションにこだわるタイプの方々だと感じています。
東京オートサロン 幕張メッセでは新作のロックライダーをお披露目

森さん
オーナー同士で愛車を見せ合ったり、情報交換できるコミュニティってありますか?

中澤さん
特にオーナーの会というのはありませんが、毎年「K660 JAMBOREE」というカスタム軽自動車が集まるイベントを開催しています。また、各地のカーイベントに出展したり、オーナーさんと参加したりも。そういった機会を利用していただけると良いかもしれません。
レトロなアメ車カスタムで新しい世界が広がる!


森さん
レトロアメ車カスタム、とても興味が湧きました。自分とは縁遠そうに感じていましたが、女の子にもハマりそうですね!

中澤さん
女の子とアメ車も素敵なコントラストが出て映えますよ。アメ車は性能うんぬんではなく、無駄なデコラティブさがカッコ良くて面白いんです。ですから、どんどん自由にカスタムを重ねていける。ルールやセオリーに縛られない個性演出のキャンバス感覚でカスタムすると、自分の世界が広がると思いますよ!
レトロカスタム含め、さまざまなクルマを見てきた森さんですが、クラシックなミニアメ車はかなり新鮮に映ったようです。圧巻のバリエーションにも驚いていました。実際、アメリカンスタイルのレトロカスタムを得意とするメーカーは多くないのです。
「かつて、FRP素材のパーツを使ったカスタムは、クルマ好きから格下に見られていました。しかし、今では認知が進み、技術も上昇。FRPだからこそ可能なデザインも増え、たくさんのユーザーに愛されています」と中澤さん。
今後、ますます盛り上がるカルチャーとして、注視すべきなのは間違いなさそうです。