キャンプと乗り物は切っても切れない関係。移動手段によって、予定の組み方や持っていくギアも異なります。公共の交通機関で行く場合を除くと、主な移動手段はクルマとバイクですが、乗り物が違うとキャンプの楽しみ方はどのように変わるのでしょうか。
そこで、今回はクルマを使ったオートキャンプ(以下、クルマキャンプ)と、バイクを使ってツーリングキャンプ(以下、バイクキャンプ)を楽しんでいる2人の女子キャンパーに対談していただきました。
お招きしたのは、以前カエライフに登場していただいたアウトドアコーディネーターの三沢 真実さんと、バイクでのツーリングやソロキャンプ動画をYouTubeに投稿しているVloggerの茅ヶ崎 みなみさん。クルマとバイクならではのギアの選び方、それぞれのキャンプの楽しみ方や魅力をたっぷりと語っていただきました。
キャンプ場に到着した後、まず話していただいたのがキャンプにハマったきっかけや、パートナーとなる愛車について。お二人が今の愛車を選んだ理由には、面白い共通点もありました。
茅ヶ崎さん
私はアニメ『ゆるキャン△』を観たのがキャンプに興味をもったきっかけでした。アニメに登場する主人公のひとりがバイクでキャンプに出かけているのを見て、私もやってみたいとチャレンジ。それまでキャンプの経験は全くなかったのですが、今ではYouTubeでソロキャンプの動画をアップするほど夢中になっています。
三沢さん
私もアニメを見たことありますが、ふもとっぱらキャンプ場など実際にあるキャンプ場の再現がすごいですよね。キャンプ初心者の人が観ても、ベテランキャンパーの人が観ても面白い作品だと思います。
茅ヶ崎さん
そうそう! アニメのワンシーンに登場した場所に実際に行けるのも楽しみのひとつなんですよ。三沢さんはいつからキャンプを?
三沢さん
初めてキャンプにふれたのは、小学校のときに入っていたガールスカウトがきっかけでした。楽しい思い出もたくさんありますが、1日中空き地でテントを張る練習だけをするような日もあって、当時はキャンプに対してストイックで過酷なものという印象を持っていたんです。
茅ヶ崎さん
そうだったんですね……。あらためてキャンプを始めたのはなぜですか?
三沢さん
20代の頃、友人に誘われたキャンプに行ってからイメージが変わったんです。料理もおいしくて、空間もオシャレ。キャンプってこんなに楽しいものなんだと感動しました! この楽しさを共有したいと思って、その後仲間たちと一緒にイベントも開催するように。気づけばアウトドアコーディネーターとしてお仕事をいただく機会も増えたので、本格的に独立し、もう10年以上キャンプ関連のお仕事をしています。
茅ヶ崎さん
ガールスカウトでの大変だった経験も、今のお仕事に役立っているんだろうなぁ。素敵です!
愛車選びのポイントは性能だけでなく「見た目」も重要
三沢さん
茅ヶ崎さんはバイクでキャンプをしようと思ったのも『ゆるキャン△』の影響なんですよね。カブを選んだのはどうして?
茅ヶ崎さん
なんといっても、見た目のかわいさに惹かれました! 私が乗っているのはHonda・スーパーカブC125というバイクで、この「パールカデットグレー」のカラーは2019年に発売したモデル。丸目のライトも、レトロな色も気に入って、見た瞬間に「こんなバイクがほしかった!」と即購入しました(笑)。
茅ヶ崎さん
それと、バイクに乗る前からクルマや電車で旅行をして、旅先で写真や動画の撮影をするのが趣味だったんです。ある日、旅先で古い日本家屋の脇にカブが停められているのを見たのですが、その様子がとても似合っていて。カブは日本の風景に合うバイクだというイメージがあったのも、選んだ理由のひとつですね。
三沢さん
クルマやバイクって、移動中はもちろん、オートキャンプサイトだとずっと一緒に過ごすパートナー。見た目が気に入るかどうかも選ぶときの大事なポイントですよね。
私は友人から譲ってもらったクルマが壊れたのをきっかけに色々探したけど、これに乗りたいと思えるクルマがなかったんです。そんなとき、軽自動車をおしゃれにカスタムしてくれるモデストカーズという会社を教えてもらい、今のクルマと出会いました。私も丸目のライトがお気に入りなんです!
行ってよかったキャンプ場は?
三沢さん
アニメに出てくるキャンプ場はめぐりましたか?
茅ヶ崎さん
「洪庵キャンプ場」に行きました! オートサイトだからバイクと一緒に写真が撮れるのがお気に入り。富士山もばっちり映せましたよ。サイトが湖畔のすぐそばにあるので、水際で波の音を聞きながら過ごせたのもよかったです。
三沢さんは行ってよかったキャンプ場はありますか?
三沢さん
2年前、息子と一緒に行った北海道の「岩尾内湖キャンプ場」は思い出に残っています。北海道をめぐっていたときは台風で、ずっと雨が続いていたんです。湖がきれいなキャンプ場にも行ったけど、天気が悪くて魅力を満喫できなくて……。でも、ここは一面が白樺林に囲まれていて、雨に濡れた様子もすごくきれいだったんです。クルマの色と自然の緑が調和してとてもキレイでした。
茅ヶ崎さん
幻想的ですね〜。クルマの色がこの場所によく似合っています!
クルマ・バイクキャンプの魅力や不便な点は?
話がひと区切りした後はキャンプサイトに向かい、普段使っているテントやタープなどを設営してもらいました。作業を進めながら、クルマ・バイクキャンプの魅力や不便な点、便利なキャンプギアについて話が盛り上がります。
バイクキャンプはギアをコンパクトにすることが重要
三沢さん
茅ヶ崎さんはこの中にキャンプに必要な荷物を全部入れているんですよね。私がクルマに載せてるボックスひとつ分よりも小さい!
茅ヶ崎さん
本格的にキャンプを始めるにあたって、コンパクトなギアをセレクトして買い足しました。それでもテントや寝袋など大きなものはボックスに入り切らないので、ツーリングネットを使ってボックスとシートの間に固定しています。
積載量は限られますが、ソロキャンプだと十分。制限がある中でぴったりなサイズ感のギアを見つけたときはとてもうれしくなります。
茅ヶ崎さん
クルマなら荷物がたくさん積める分、ギアの選択肢が格段に広がるのはいいですね。
三沢さん
そうそう。食材や着替えも気兼ねなく積めるから、連泊しやすいのも大きなメリットです。他にも、テントをいくつか持って行って、ロケーションやその日の気分に合わせて選ぶなど、自分なりにこだわったキャンプスタイルも実現できますよ。
茅ヶ崎さん
どんな荷物が入っているんだろう……。よかったらクルマの中を見せてもらっていいですか?
三沢さん
もちろん!
クルマキャンプの積載はボックスの使い分けがコツ
茅ヶ崎さん
すごくキレイにまとまってる! 整理するときのポイントやコツって何かありますか?
三沢さん
ボックスを使い分けるようにしています。このボックスにはファブリック類、そっちのボックスにはバッテリー類といったように、種類や目的ごとに整理整頓。ボックスの形もできるだけ揃えて積めるようにしたり、ボックスのカラーを変えて、どこに何が入っているか見分けをつけやすくしたりと工夫しています。
茅ヶ崎さん
クルマだと荷物を積みっぱなしにできるのもいいですよね。私はキャンプのとき以外もバイクを使っているので、その都度荷物を降ろさなきゃいけなくて。
三沢さん
そうですね。クルマに積んだままにする人もいますが、私は以前からずっと自宅に置くようにしています。
その後「キャンプと防災」をテーマにした活動を始めて気づいたのですが、災害時の2次避難※ に必要なものとキャンプに必要なものはほとんど同じ。キャンプのために道具を用意するのではなく、家にある道具をキャンプに持っていける状態にすれば、災害時にすぐ持ち運びできて、いざというときに役立ちますよ。
※2次避難:防災に必要な荷物を自宅から持ち出して避難する行為。自身の安全を最優先して避難する1次避難が終わり、安全な状態が確保できたあとに行う。
茅ヶ崎さん
なるほど。最近はオシャレなキャンプ用品も多いから、自宅に置いていても違和感なく使えそうですね。
三沢さん
あとは荷物が多くなると、忘れ物も増えがちなので注意が必要です。以前、グループでのキャンプでみんなが泊まるテントに使うポールを忘れたことがあって、自宅まで取りに戻ったこともありました。キャンプに行くときはリストにまとめて、クルマに積む前と積んだ後でダブルチェックしています。
バイクキャンプの魅力は移動中にあり!
手慣れた様子で設営を進めていく2人。今度はバイク・クルマならではの移動中の過ごし方について話が弾みます。
三沢さん
ずっとバイクに乗っているのって、大変じゃないですか?
茅ヶ崎さん
いえいえ! バイクキャンプの魅力は行きも帰りもツーリングができるということに尽きます。ライダーにとっては、バイクに乗ること自体が一番の楽しみなんですよ。
とはいえ、冬の寒さはやっぱり辛いです。足の先まで冷え切っちゃうので、靴下カイロは欠かせません。最近は発熱ベストなど、機能性ウェアも活用しています。
三沢さん
便利なアイテムがいろいろあるんですね!
茅ヶ崎さん
あと、気になるお店やスポットに気軽に立ち寄れるのもバイクならではの楽しみ方。ツーリング中に雰囲気がいい感じの小路を見つけたら、入ってみることも多いです。その先が行き止まりでも、バイクだとすぐに引き返せるので!
三沢さん
たしかに、クルマだと家から目的地まで一本道で行ってしまいがちかも。気になるお店を途中で見つけても、Uターンして戻るのも手間だし、そもそも駐車場がないこともあるから……。
茅ヶ崎さん
ただ、夜の移動や雨が降ってきたときはクルマよりも大変。バイクのライトだけだと夜道は暗くて危ないし、雨が降れば道路のコンディションが悪くなって、身動きが取りづらくなるんですよね。
クルマの移動中は大切なコミュニケーションの時間
茅ヶ崎さん
三沢さんは息子さんと一緒に出かけることが多いそうですが、移動中はどんなふうに過ごしていますか?
三沢さん
子どもが移動中に飽きないように気をつけています。カラオケ大会をしたり、しりとりをしたり。私にとって、クルマの移動時間は子どもとしっかり向き合える大切な時間だから、ゲームなどはなるべくさせず、コミュニケーションをとるように心がけています。
茅ヶ崎さん
子どもや家族との時間を大切にできるのはいいですね。私も将来子どもができたら一緒に旅してみたいな。
三沢さん
子どもと一緒に車中泊をするのも楽しいですよ。初めてチャレンジしたのは子どもと一緒にスノーボードに行ったとき。そのときは装備も全然揃ってなくて、寒さに震えて眠れませんでした。
でも、少しずつ必要なギアを集めて、どうやったら快適に過ごせるか試行錯誤しているうちに、どんどん自分好みの車内になっていったんです。お気に入りの空間に囲まれて移動できるのも、クルマだからこその魅力ですね。
キャンプ料理のスタイルもクルマとバイクでは異なる?
茅ヶ崎さん
最近はキャンプ料理にもハマっていて、この前はアヒージョやローストビーフを作りました。
三沢さん
そうなんだ! 私は本格的な料理はあまりしなくて、レトルト食品をよく活用しています。料理好きな友人と一緒にキャンプに行くときはお世話になりっぱなしです(笑)。
茅ヶ崎さん
でも、そういうふうにみんなで料理を囲んで楽しめるのもクルマキャンプの良さだと思います。バイクだと調理器具をあまり持っていけないので、「今日はコレを作ろう!」と決めて必要な調理器具を選んだり、自宅で簡単な下ごしらえをした食材を持っていったりしています。
三沢さん
言われてみると、そうかもしれないですね。クルマだと食材の保管がしやすいから、その日の気分でご飯を決めることがあります。北海道に行ったときは無人販売所でじゃがいもやとうもろこしを見つけて。ふかして食べたけどおいしかったなぁ。
茅ヶ崎さん
その土地のおいしいものを気軽に使えるのはうらやましいです。1人だと現地で野菜やお肉を買っても、全部使い切れなくて……。
三沢さん
グループでキャンプに行ったりはしないの?
茅ヶ崎さん
実はまだソロキャンプしかしたことがないんです。バイクキャンプが好きな人は、ひとりの時間を大切にしている人が多いのかも。ぼんやり空を見上げたり、焚き火を眺めたり、そんな時間に癒やされるんですよね。
あ、キャンプ場で過ごすときは服を着替えているのですが、今日も持ってきているので準備しますね!
三沢さん
かわいい〜! もしかしてこの格好も……?
茅ヶ崎さん
はい、『ゆるキャン△』をイメージしています(笑)。バイクジャケットを脱いで上から羽織るだけなので、すぐに着替えられるんです。
キャンプでおしゃれな写真・動画を撮る方法
設営を終えて、焚き火を前にくつろぎながらトークを再開。2人が得意とするカメラの話や、おしゃれな写真、動画を撮る方法について話が盛り上がります。
写真を撮るコツは「主役」を決めること
茅ヶ崎さん
三沢さんのインスタグラムを見たのですが、とても写真がお上手ですよね! 写真をうまく撮るコツを教えてくれませんか?
三沢さん
ありがとうございます! 私は「フレーム中に作品を作る」という気持ちで、どのようなバランスで被写体を切り取りフレームに入れるか意識して撮っています。 キャンプ場・ギア・車などお気に入りのものは全部を写したくなってしまいますが、そうすると間延びした感じになってしまうことも。例えばあえて車が見切れるような写し方にすることで、ストーリーを想像できる印象的な写真にすることができます。
三沢さん
料理を撮るときは雰囲気の違う布やランチョンマットをいくつか用意しておくのがおすすめ。同じ料理でも、敷くものを変えるだけで印象が変わりますよ。
茅ヶ崎さん
これ1枚あるだけでおしゃれな写真が撮れそうです。かさばらないからバイクでも持っていけますね!
動画は「音」を意識すると臨場感アップ!
三沢さん
茅ヶ崎さんの動画も、映像がすごくキレイですよね。こだわっていることは何かありますか?
茅ヶ崎さん
ありがとうございます! 表現したいものをアップで映すことですね。そのときに音を意識するのがポイント。例えばカップに水を注ぐシーンを撮るときは、水が落ちるところにぐっと寄って撮ると、癒やされる感じの映像になります。焚き火も同じで、「パチパチ」という音が拾えるところを探して火に寄って撮ると、映像に臨場感が出て映えますよ。
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動画の10:00頃にある肉を焼くシーンは、「ジュー」という音が食欲をかきたててくれる
三沢さん
とても参考になります。実は最近、息子がYouTuberになりたいと言ってて。息子の代わりに私が動画を編集して投稿しているけど、すごく時間がかかっちゃうんです。
茅ヶ崎さん
最初の動画を投稿するのが一番のハードルと言われているので、もう大きな一歩を踏み出していますよ! 投稿ペースは人それぞれ。コンスタントに動画を出す必要がなければ、時間をかけてこだわって編集した方が自分自身も楽しめると思います。
クルマ・バイクでこれから挑戦したいこと
楽しい時間はあっという間。日も暮れてきた頃合いで、最後にお二人がこれから挑戦したいことをお聞きしました。
茅ヶ崎さん
私はグランピングに挑戦したいです。ネットやツイッターでみんながアップしているグランピングの様子を見て、私も思いっきりおしゃれなキャンプをしたいと憧れていて。キャンプ初心者でも楽しめますし、動画を見てくれている方にも魅力が伝わりやすいと思うんですよ。
三沢さん
グランピングなら荷物も少なめで済むから、キャンプ場に向かうまでのツーリングもいつもより楽しめそうですね。
茅ヶ崎さん
狙っているところは数ヶ月先まで予約が埋まっているのですが、機会があればぜひチャレンジしようと思っています。
三沢さん
私は息子と一緒に日本一周を達成したいです。2年前からクルマで旅を続けていて、あと中国地方を数県回れば、47都道府県を制覇できます。ただ、目的を達成するためだけに回るのは味気ないので、3週間くらいかけてゆっくり旅をしたいですね。
茅ヶ崎さん
そうなんですね!私も日本一周にチャレンジしてみたいなと思っているので、いつか挑戦するときにはオススメの場所など、ぜひお話を聞かせてください。
対談を終えて……
キャンプの楽しみ方は無限大。グループでキャンプをするときは荷物をたくさん載せられるクルマが便利ですが、バイクで気ままにツーリングしながら、ソロキャンプでひとりの時間を満喫するのも、とても魅力的に感じられました。
どちらのスタイルも楽しいところがある一方で、不便な点も付きものではあります。目的やシーンに合わせて、自分らしいキャンプスタイルを探すのがアウトドアを楽しむためには重要かもしれません。
レンタカーと同じように、バイクのレンタルを行っている会社もあります。お二人の話を参考に両方のキャンプを体験して、自分にぴったりなキャンプスタイルを探してみては。
文/井上 寛章
写真/木村 琢也
取材協力/ソレイユの丘オートキャンプ場