この記事では、エブリイの外装をレトロにカスタムし、内装は板張りに改造したバンライフ車、キャンピングカーを紹介します。
「レトロなデザインのクルマって、かわいくて憧れるけど、古いクルマはメンテナンスが大変そう……」そんなお悩みを持つ人への救世主とも言えるのが「レトロなカスタム」という選択肢。
旧車が持つヴィンテージ感と、新しいクルマの利便性の「いいとこ取り」ができるということで、どんどん人気が高まっています。
前回は、レトロなカスタムの専門店「モデストカーズ」にお邪魔しました。
今回お話を聞くのは、実際にレトロなカスタムカーのある暮らしを楽しんでいるキャンプコーディネーターの三沢真実さんです。アウトドアシーンでの空間スタイリングを本職とする三沢さんは、そのずば抜けたセンスはもちろんのこと、現在7歳になる息子さんと2人で「日本一周のクルマ旅」をしてしまうほどの行動派なんです。三沢さんのカスタムカーライフと、クルマ旅を自分らしくおしゃれに見せるワザについて教えてもらいました!
また、おしゃれな軽バンカスタムの例は下記の記事でまとめて紹介しています。あわせてチェックしてみてください!

【全15例】 軽バンのおしゃれカスタムをまとめました!スタイルも使用方法も十人十色!
2021.01.18- 三沢 真実(みさわ まみ)さん
- クリエイティブデザイナー、キャンプコーディネーター。日本各地のキャンプ場やアウトドアブランドなどとコラボしながら空間装飾を行う。代表を務めるクリエイターズユニット「CAMMOC(キャンモック)」 では、「キャンプのある暮らし」をテーマにアウトドアの魅力を発信。また、車中泊の旅の様子をWebマガジン『ソトビラ』で「アリとおかあさんの車旅」として連載中。
- 個人サイト Mami Designs, and…
Instagram @mamimisawa
目次
レトロな顔に変身! 新車エブリイをスズライト風の「ピコット」にカスタム
今日は埼玉県の秩父巴川オートキャンプ場 に来ています! 秩父の大自然に映えるこのクルマ、見た目はクラシック、レトロな雰囲気ですが、これってカスタムなんですか!?
三沢:そうなんです。ベースになったのはスズキの軽バン「エブリイ JOINターボ(ハイルーフ)」。もともとの見た目は「働くクルマ」という感じですが、カスタムによってがらりとイメージが変わりました。
このかわいすぎるフェイスは、一体どうやって?
三沢:これは軽自動車カスタム専門店「モデストカーズ」が提供している「ピコット」というデザインのフロントキットを使ったもの。スズキのスズライト風にカスタムしたデザインです。ボンネットフードやバンパー、ウインカー、ヘッドライトなどのフェイス部分を丸ごと交換しました。
このカスタムをしようと思ったきっかけは2016年。友人から譲ってもらったクルマが壊れて、初めて自分でクルマを買うことに。だけど当時の私はクルマにそんなに興味がなくて、どれを見ても欲しいと思えなかったんです。
そんななかで、クラシックカーだけは別格でした。たとえばワーゲンバスなんて「アンティークなおもちゃ」みたいで、ワクワクする、乗りたくなる。でも、クルマの知識がほとんどない私には扱いが難しすぎました。何をするにもコストがかかりそうだし、もしも突然動かなくなったらどうすればいいのか。とても管理する自信がなくて諦めていました。
三沢:そんなときにモデストカーズのレトロカスタムを知って、ピコットのフェイスを見たときに「こんなクルマに乗りたい!」とひとめ惚れ。一気に気持ちが盛り上がって、ベースとなるエブリイを新車で購入しました。ピコットに改造できるベース車は、スズキのエブリイだけなので。
とはいえ、予算はなるべく抑えたいという思いも……。ピコットのカスタムには外装のオプションパーツや内装の革の張り替えなど、いろいろな選択肢があってとても魅力的だったのですが、そこはぐっとこらえて(笑)。
結局、フルカスタムではなく「フェイスチェンジ」だけをお願いすることにしました。かかった費用は20万円ちょっとで、レトロカスタムとしてはかなり安いほうだったと思います。
セルフペイントでコスト削減!
セルフペイントとのことですが、ご自分で塗ったとは思えない、きれいなカラーです。
三沢:もとは白いクルマでした。アースカラーを選んだのは、キャンプに行ったときに自然の中で溶け込むクルマにしたかったから。
三沢:使ったのは「タカラ塗料」の「グリーンソイビーンズ」 というカラーです。 ボディからフェイス部分までを全塗装して、総額1万5千円くらい。プロに塗装を頼むとこれだけで数十万円はかかりますから、かなりの節約でした。
三沢:ペイントのやり方としては、まずは塗料が乗りやすいように、サンドペーパーでボディの表面に細かいキズをつけていきます。続いて塗らない部分をビニールで養生して、ボディについたワックスをアルコールで丁寧に拭きとって、それから下地材を塗って、ようやくその上から塗料を塗り始めて……。
正直言って、決して楽な作業ではありません(笑)。大人5人で12時間近くかかりました。
それに、プロが塗装した場合のつややかな仕上がりとはやっぱり全然違います。近くで見ると、塗りムラや刷毛の跡などの粗さがわかったり。だから完璧なものが欲しい人はプロに頼んだほうがいい。でも私自身は、このラフな味わいがけっこう気に入っているんです。
三沢:ひと通りのカスタムができ上がったのは、購入から1年半も経った頃。「理想のクルマがやっと形になった!」という興奮で、クルマがかわいくて仕方ありませんでした。
内装を板張りにして車内が別世界に!
車内を板張りにしたカスタム、素敵ですね!
三沢:内装は2019年、デザインユニット「CielBleu(シエルブルー)」さんに施工をお願いしました。
というのも、このクルマに乗り換えてから、私はすっかりクルマに乗ることが好きになってしまったんです。息子と一緒に何度も車中泊の旅をしているうちに「車内をもっと自分好みにカスタムしたい」という欲求がおさえきれなくなって……。
三沢:海外のVAN LIFE(バンライフ)のような、木目で統一したナチュラルスタイルの内装が憧れでした。それで、自身もバンライファーでクルマのエキスパートでもあるCielBleuの茨木さんご夫婦に相談しました。私は大体のイメージだけをお伝えして、あとは全部お任せ。まるまる1カ月くらいクルマを預けて、大がかりなカスタムを施してもらいました。
三沢:仕上がりは「最高!」のひと言。この空間で車中泊するためだけに、どこかに行きたくなるほど。細部まで丁寧に仕上げられていて、完成度の高さに感動しました。今ではすっかり家族の一員のような、愛すべき存在です。
まるまるお任せだったとのことですが、三沢さんご自身のこだわりはありましたか?
三沢:私がこだわったのは「2列目シートをちゃんと使える状態で残したい」ということ。車中泊専用ではなく、友人たちを乗せて一緒にドライブすることもあるので。
三沢:板張りカスタムの良さは、見た目だけではないんです。クルマの鉄板と木材のあいだに断熱材を入れているので、外気温の変化を受けにくくなりました。実際に車中泊してみて、過ごしやすさはカスタム前とは段違いでした! 木の香りがするのも落ち着きます。
車中泊のときは荷物をルーフに上げてゆったりスペース
リラックスモードのときや寝るときはどうアレンジしていますか?
三沢:じゃあ実際にやってみますね!
三沢:ちなみにバックドアの内側にも板を張ったので、その重みで下がってきてしまうので、ポールを使って固定しています。これはアウトドアで使うタープポールです。
三沢:キャンプやクルマ旅に出かけるときは、だいたいこんな感じで後ろに荷物を詰めています。子どもの分も入れると、どうしても量が多くなってしまうんですよね。このままでは親子2人が寝るスペースがありません。
三沢:そこで使うのが、ルーフキャリアです。私の場合、おそろいのコンテナボックスを4つ用意して、すぐに使わないものはここにしまい、ルーフキャリアに積んでいます。ただ、重いと上げ下ろしが大変なので、洋服などの軽くてかさばるモノだけ入れるようにしています。
三沢:あとはこんな風に「小物入れ」をぶら下げて、すぐに使うものを収納したりしています。クルマのキーやお財布、化粧品など、小さな持ち物って埋もれがちなので。車内で使うときは、S字フックを利用して引っかけています。
使っている車中泊グッズは? 網戸にシェード、ポータブル電源、小型扇風機
寝具、布団はどうしていますか?
三沢:マットの代わりに使っているのはローコットです。荷室に2つ並べてジャストフィットするものを探すのに苦労しました(笑)。
三沢:メリットは床下収納が可能になること。デメリットは、コットの設営にスペースが必要になることですね。キャンプ場であればOKですが、車中泊のときに狭い駐車場の片隅で組み立てるのは、ちょっと難しいかもしれません。今後、車中泊向けの組み立てやすいコットが発売されるといいな(笑)。
三沢:ローコットの上にラグマットと薄手のかけ布団を敷きます。これだけで車内がリラックス空間に早変わり!
さらっとしていて肌触りのいい素材を選べば、夏は涼しく、冬も快適。底冷えする冬の時期は下からどんどん冷気が入ってくるので、ラグがあると心強いですね。
三沢:夏の車中泊に欠かせないのが、網戸。夜に窓を開けたまま寝ても虫が入りにくい。さらに外から丸見えにならないよう、布を押しピンでとめてカーテンにしています。
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【LACITA】ポータブル電源はキャンプでも車中泊でも大活躍:三沢 真実さん
2020.06.25
三沢:もう1つ夏の暑さ対策に使っているのはサーキュレーター。ポータブル電源につないで回しておくと、車内の空気がこもらず快適です。私は暑さに強いほうなので、これだけで真夏の夜でも過ごせています。
三沢:そして、夏でも冬でも車中泊の必需品はシェードです。外からの目隠しになり、熱気や冷気を防ぐ効果も。外の明かりをカットでき、安眠できます。
趣味だったキャンプが、いつのまにか仕事に
続いて、三沢さんご自身のお話を聞かせてください。現在はキャンプ関連のスタイリングをされていますが、どうしてこのお仕事を?
三沢:私はもともとアウトドア専門家だったわけでも、デザイン業界の出身でもありません。前職では日本語教師をしていました。
キャンプとの最初の出会いは、小学生のときに入っていたガールスカウト。ただ、当時やっていたキャンプはまるで訓練でした。空き地でひたすらキャンプの予行練習をしたり、ロープワークを学んだり……。キャンプって過酷でストイックな行為なんだな、と思っていました。
そのイメージが変わったのは大人になってから。たまたま友人に紹介されて、現在のビジネスパートナーである三宅 香菜子さんと知り合いました。アウトドア雑誌のモデルをしていた彼女が教えてくれた「最新のキャンプ」は、おしゃれで心地よくて、ごはんがおいしくて! こんなに楽しいキャンプがあるんだと感激しました。
それからは毎月、三宅さんと一緒にキャンプに出かけました。テントの中にかわいいクッションやラグを持ち込んで、自分好みのテイストに仕立てるのが私の役目。デザインや絵を描くことは昔から好きだったので、いろいろと工夫しました。一方で、三宅さんはフードコーディネーターの仕事を始めたばかりだったから、料理にすごくこだわって。
もっといろいろな人たちと一緒にキャンプしたくなって、お互いの友人を集めました。そのうちFacebookでイベントとして告知するようになり、興味を持ってくれる人がだんだん増えて……。
キャンプブームの追い風もあって、メディアの取材を受ける機会が増え、「コーディネートの仕事をやってみない?」と声をかけていただくように。出産を機に本格的に独立しました。かれこれ10年くらいキャンプ関連のお仕事をしています。
2014年に息子さんの「アリくん」が産まれてから、「ママキャンプ」を提唱されていますね。
三沢:妊娠9カ月のとき、ママキャンプイベントの第1回をやりました。なぜ始めたかというと、当時はたくさんの人が「ママが子どもを連れてキャンプに行けるはずない」と思っていると知ったからです。
キャンプって、家にいるよりやることがたくさんある気がしますよね。テントを立てて寝床を整えて、いつもと違う環境でごはんを作る。そのうえ子どもの面倒まで見るなんて不可能だ、と。でもよく考えてみると、そのほとんどは、キャンプに慣れていないことからくる不安です。
そこで「私たちがサポートします。みなさんが楽しく過ごせる場を提供します。だから安心してお子さんと来てくださいね」というのが「ママキャンプ」です。大自然に囲まれて子どもと一緒に過ごせることって、とても特別な体験なんです。諦めたらもったいない!(笑)
アウトドア体験で深まる親子の絆
三沢さんご自身は、お子さんとキャンプや車中泊の旅をするなかで、どんなことを感じましたか?
三沢:息子のアリは生後1カ月で初めてのキャンプ、4歳で車中泊に連れて行きました。キャンプは慣れていたので問題なかったですが、車中泊は私の経験不足のせいで、装備が足りずに暑かったり寒かったり、しんどい思いをさせてしまったことも。
でも今、私がふと思い立って「明日から旅に行こう!」と誘っても、アリは大喜びでついてきてくれます。それはきっと「外に出ればママとずっと一緒にいられる」というのがわかっているから。
私は自営業をしているので、普段は仕事とプライベートの境目がありません。家でアリと一緒にいても、合間にパソコンを開いてメールしたり、スマホに連絡がきたりと、アリのためだけに時間を使うことが難しい。一時期は罪悪感とストレスで、もう限界だと感じたときもありました。
そんなとき、クルマで「日本一周の旅」に出ることを決意したんです。1回目は2018年の夏、3週間かけてアリと2人で東日本をまわりました。
三沢:私はキャンプやクルマ旅をするとき、1つのルールを決めています。それは「なるべく仕事をしない」ということ。だから子どもとしっかり向き合える時間です。
とくにクルマの運転中は、移動を退屈なものにしないようにと、会話を楽しみます。たわいもない会話をすることもあれば、クイズを出し合ったり、しりとりをしたり。結果的に、親子のコミュニケーションが深まっていったと思います。
ときには他の人が交ざったりするのも楽しい。友人と合流してワイワイ焚き火をしたり、旅の途中で偶然出会った人たちと過ごしたり。かと思えば、大雪の夜に2人きりでくっついてクルマの中で眠ったり……数えきれないくらいの思い出があります。
いろいろな体験のなかで、アリくんに何か変化はありましたか?
三沢:朝から晩まで1日じゅう家の外で過ごすことって、普通はないですよね。もちろん、不便なことがたくさん出てきます。
アリは私がキャンプの支度をしているのを、そばでずっと見てきました。今は「もうすぐ日が暮れるから、電気をつけようか」などと言ってくれます。外にいるから、空の変化に敏感になるんです。季節によって暗くなる時刻も違います。1つ1つを自分の体で感じて、学んでいっているんだなと、アリを見ていて思います。
ちなみに、三沢さんのおすすめキャンプグッズを教えてください!
三沢:「TARPtoTARP(タープ・トゥ・タープ)」のエコキャンプクリーナーです。お水がなくてもシュッとスプレーして拭き取るだけでお皿を洗えるので、キャンプや車中泊にとっても便利です!
三沢:もう1つは、ずっと愛用している「SOTO(ソト)」のスライドガストーチ。アウトドア用の耐風強力バーナーなので、風が強いときでもしっかり着火できます。火口までの長さが調整できる(最長75mm)のも便利。燃料はカセットガスから充填して繰り返し使用できます。
車中泊の醍醐味は、朝、目覚めたときの絶景
車中泊ならではの良さを挙げるなら何でしょうか?
三沢:私たち親子が初めて車中泊にチャレンジしたのは、スノボに行くための前泊でした。早朝からゲレンデに出たいけど、ホテルやコテージは高いからクルマで泊まってみようかなと。あくまで実用的な車中泊でした。
それが、内装を板張りにカスタムしたことで気持ちが大きく変わりました。まるで素敵なお部屋が自分たちごと移動して、どこへでも連れて行ってくれる感じ。車中泊そのものを楽しんでみようと思うようになりました。
三沢:車中泊でしか味わえない良さもたくさんあります。朝起きたとき、バックドアを開けて広がる美しい景色は、キャンプ場のサイトではなかなか見ることができません。見晴らしのいいスポットを調べて、夜に移動し、翌日の景色を楽しみにしながら眠りにつくこともあります。
お気に入りの絶景ポイントは、愛媛県の「カレイ山展望公園キャンプ場」です。
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車中泊をするとき、オシャレな空間をつくるためのポイントを教えてください。
三沢:まずは自分の好きなテイストを見つけることですね。アメリカンなヴィンテージテイストや、かわいらしい女性的な感じなど。キャンプ場でまわりの人のサイトを見て参考にしてもいいですし、雑誌やSNSでもたくさんの見本が探せます。
テイストが決まったら、テントやチェアなど、そのテイストに合わせてアイテムを揃えていきます。たまに差し色のアイテムを入れてあげるのも効果的。
たとえば今回は、フェミニンなテイストを意識して、レトロポップな色調のベッドカバーをメインにコーディネートしています。車内と車外でガラッと別のテイストにしてもおもしろいですよね。
母として、働く女性として、三沢さんは自分らしく充実した時間を過ごされていると感じます。今後はどんなことをやっていかれたいですか?
三沢:最近になって「キャンプと防災」※というテーマについて考えるようになりました。
きっかけは2019年の大型台風(台風第19号「ハギビス」)のとき。台風の数日前から、みんなが「大変なことが起きる!」とあわてて生活用品や食料品を買い占めていました。でも私自身は、とくに何も買うものがありませんでした。
そこで思ったんです、「ライフラインが止まっても、キャンプの経験や道具があれば、いつも通りに生きていけるのかもしれない」と。
キャンプや車中泊で使うアイテムには、最低限の物資と環境で快適に過ごすためのノウハウが詰まっています。防災というと、どうしても固苦しいイメージを持ってしまいがちですが、おしゃれなアイテムだったら集めるのも楽しい。もしものときにも落ち着いて、楽しく暮らせる。それは「生きる力」への自信になると思います。
取材・文/小村 トリコ
写真/木村 琢也
編集/平林 享子(LIG)
撮影協力/秩父巴川オートキャンプ場
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