年間車中泊日数360日というバンライフの達人・ヘンミマオさんを直撃するインタビュー後編。テーマはズバリ「センスの磨き方」です。憧れのバンライフに挑戦すべくDIYするものの、なぜか愛車がオシャレにまとまらないという悩みを抱えている方は少なくないはず。そこでオシャレの達人でもあるヘンミさんと一緒にどうやったら素人でもセンスが身につくか、一緒に考えてみました。
<プロフィール>
- ヘンミマオさん
- 1990年埼玉県秩父生まれ。大手リユースショップの社員時代に、趣味のキャンプ好きが高じてアウトドア部門の店長に着任。2020年のコロナ禍でDIYにのめり込み、中古バンを車中泊仕様にDIY。現在はアウトドアフリーランスとして、バンライフ・車中泊アドバイザー、キャンプインストラクター、DIYバン車両展示などで活動中
- Instagram @maohenry

車中泊数は年間360日!? リユース品をセンスよくまとめた”バンライフの達人”お宅訪問
2023.xx.xx目次
まずは見よ! このオシャレ空間を
秩父、東京、そして愛車のバンと3つの拠点を行き来しつつ、基本的に寝泊まりは車中泊という、バンライフの達人・ヘンミマオさん。プロフィールでもご紹介したように、バンライフや車中泊の魅力を伝えつつ、その方法をアドバイスするのがアウトドアフリーランスとしてのお仕事。なかにはカタログやCMの撮影のため、キャンプサイトをまるごとコーディネートする現場もあるのだそう。それほどまでにヘンミさんのセンスがズバ抜けていることの証拠でもあるのですが、それはもう上の写真で一目瞭然。
あらためて眺めても、むちゃくちゃカッコいい。
この作り付けのテーブルなんか、瓶コーラ用の木製トレーを再利用したもの。使い古された木材のもつヤレやシミ、塗装の剥がれも相まって、なんとも言えない世界観を醸し出しているではありませんか。
しかも、ただオシャレなだけではなく、収納としてもしっかり機能。
ブラウン系でまとめられたインテリアに呼応するかのごとく、同系統の風合いでリペイントされたエクステリア(外装)もお見事というほかありません。
いやはや、どうやったら20年落ち、たった30万円の中古バンがこんなにオシャレに生まれ変わるんでしょうか? DIYを試みるもどうもセンスよくまとまらない、という方々にとってはぜひともそのコツが知りたいはず。というわけでヘンミさんと一緒に「センスの磨き方」を5つのポイントにまとめてみました。
ポイント①:オシャレのお手本を見まくる、真似する
そもそもヘンミさんのセンスってどうやって磨かれたんでしょう?
ヘンミマオさん(以下ヘンミさん):前にもお話ししましたが、ぼくは独立する前、大手リユースショップで10年、うち3年はアウトドア専門店で働いていました。もともと古着や古道具が好きなのもあって、そこで毎日見て触る仕入れ品で選択眼を鍛えられたというのがありますね。なんせ商品知識がないと持ち込まれた品物の価値がわからないわけですから、下手な買い取り査定はできないと必死に勉強しました。
いずれにしても「好き」がベースにあると。
ヘンミさん:そうですね。同時に売り場作りも担っていまして。その参考にしたのが、自分が好きなカフェやセレクトショップなどのディスプレイです。休みの日は趣味もかねて、そうした場所をぐるぐる巡っては、自分のお店に取り入れていました。
そもそも中学生の頃から毎週部屋の模様替えをするほど、空間作りに興味はありましたし、やがて自分で家具を作ったりもしました。というわけで、センスの磨き方その1は「オシャレのお手本を見まくる、そして真似する」かもしれません。
なるほど。例えばどういったお店を参考にしたんでしょうか?
ヘンミさん:個性が際立ったショップって意外と都心にあまりなくて、郊外というか首都圏の周辺にあったりします。ぼくが好きなのは群馬県桐生市のPurveyors(パーヴェイヤーズ)。あと、東京ディズニーランドのウエスタンランドとかもめちゃくちゃ参考にしました。そういう自分の好きな空間を掘っていくうちに、「ああ、自分はインダストリアルとかガレージみたいな世界観が好きなんだな」ということがわかって、実際にボンゴのDIYや導入アイテムもこうしたテーマでまとめています。
ポイント②:色合い、トーンを統一させる
確かにディズニーランドの西エリアはそそられます。お次は?
ヘンミさん:これもオシャレの基本ですけど、クルマの内外で使う「色合いやトーンをあわせる」ことですね。ぼくの場合はご覧の通り、ブラウンを中心にベージュやオレンジといった同系色でまとめています。この法則を守るだけでもグッとオシャレに近づくと思いますよ。
かわいい、カッコいい、便利だという理由だけであれこれ車内に持ち込むと、とっ散らかってしまうというわけですね。
ヘンミさん:ファッションでもインテリアでも、こだわってないところほど悪目立ちするじゃないですか。なので、車内に持ち込むギア系も同系色にまとめる。色味が合わないなら、どんなに便利でもあきらめるか、自分で塗り直すくらいの覚悟じゃないと。
ポイント③:木、鉄、布…素材感にもこだわる
しかし、色味さえ統一すればオッケーというわけでもありませんよね?
ヘンミさん:確かに、そこがオシャレの難しいところで、トーンをあわせるのと同じくらい大事なのが「素材感」なんですよ。ぼくの場合は、本物の木材をはじめ、金属やレザーといった、オーセンティックな素材で統一しています。しかもそれらは新品じゃなくて、すべて使い古されたリユース品やデッドストック、廃品ばかり。これらを用いることで、一見雑然としながらも全体的に馴染むというか、バランスが取れるんですよね。
たしかに、ヘンミさんの車内にあるモノって、ピカピカの新品って存在しないですよね。ということは、樹脂製品はなるべく持ち込まないと?
ヘンミさん:そうですね。一部ポータブル電源やクーラーボックス、エアコンなど電化製品関連は、古いモノより新しい方が性能が高いので導入せざるをえない面もあるんですが、なるべくプラスチック製品は使わないようにしています。繰り返しになりますけど、こだわればこだわるほど、場違いなアイテムは浮いちゃうんですよ。
ポイント④:テーマを言語化して決める
そして、その4は?
ヘンミさん:その2、その3とも似てるんですが、「テーマを言語化して決める」ですね。まだ、オシャレの引き出しが少なく、自分の好きな世界観を他人にうまく説明できない方は、いろんなショップに行ったり、雑誌を読んだり、映画を観たりして、自分が好きなスタイルを突き止める作業をされた方がいいと思います。
以前はぼくもよくわかっていなくて、いろいろチェックしているうちに「インダストリアル」「ガレージ」みたいな言葉でくくられるスタイルやカルチャーが好きなんだなってわかりました。こうして言語化できると、モノを探すときに便利ですし、人ともイメージを共有できるんです。
逆に言えば「これはインダストリアルぽくない」「ガレージの世界観とはかけ離れる」などと、取捨選択の判断基準にもなるわけですね。
ヘンミさん:その通りです。優柔不断で選べない、あるいは好きに任せていろいろ買ってしまって世界観がバラバラっていう状態から抜け出せると思います。
ポイント⑤:どんな風に見られているか引いて考える
では最後のポイントは?
ヘンミさん:ときには他人から「どんな風に見られているか、引いて考える」。自分の主観だけでDIYしたり、インテリアを整えていったりすると、視野が狭くなってしまって、実は浮いたアイテムがあるのに気が付かなかったりするんです。なので、たまに客観視してみる。どうしてもできない場合は、写真を撮ったり、友だちや家族に率直な意見をもらったりするのも良いかもしれません。
ダメ出しされるとヘコみそうですが、謙虚に参考意見とすると。
ヘンミさん:そうそう。ぼく自身、アウトドア専門のリユースショップ時代はディスプレイも考えていたんですが、良い展示だとお客さんが立ち止まってくれるし、売り上げもダイレクトに変わってくるんですよ。そういうシビアな世界で毎日試行錯誤していたので、鍛えられた面はあると思います。
このへんのバランス感覚ってオシャレ初心者にはめちゃくちゃ難しいですよね。その1からその4までは「自分が好きな世界観を突き詰めていけ!」って話だったのに、最後はそれがイケてるかどうか「ジャッジするのは他人」という矛盾。でも、考えてみたらオシャレに限らず、世の中のカッコいいものって、この法則が当てはまるような気もします。
いつか北海道を愛車で旅したい
ここまで「センスの磨き方」の極意を聞いてきましたが、最後に愛車「マオヘンミ号」で今後やりたいことってあるんでしょうか?
ヘンミさん:そうですね。車中泊のきっかけになった北海道の旅を、このバンでやってみたいですね。北海道って渡航にお金はかかるんですけど、行ってしまえばタダみたいなキャンプ場がいっぱいあるし、そんなに旅のコストがかかりませんからね。
それは現場仕事を調整して、1〜2カ月くらいかけて出かけたい。
ヘンミさん:それがアウトドアフリーランスのつらいところで、春夏秋は各種イベントが目白押しでなかなか時間が取れなくて…。でもスケジュールを調整していつか絶対に行きたいと思います。
ぜひ、その話もお聞かせください。本日はありがとうございました!
文/熊山 准
写真/宮越 孝政
編集/熊山 准、TAC企画
撮影協力/リトリートフィールドMahora稲穂山
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