1人でキャンプを楽しむ「ソロキャンプ(=別称ソロキャン)」ってご存じですか。日本オートキャンプ協会の発表※によると、近年家族連れやカップルではなく、ソロによるキャンプ人口が増えているそうです。
たとえば最近メディアに芸人のヒロシさんがソロキャンプ好きとしてよく登場しています。でも、キャンプ初心者にとっては「1人って寂しくないのかな?」「女性が自然のなかで野宿するのは無理」「道具がハードで重そう」とイマイチ魅力がわからないと感じることも…。
そこでソロキャンプの魅力を探るべく取材を決行! すると以下のようなことがわかったんです。
- ソロキャンプでしか体験できない魅力
- 女性1人でも楽しめること
- 持ち運びやすい小さな道具が充実
- 守るべきルールもあること
今回、お話をうかがったのは、ソロキャンパーのためのソロ&デュオキャンパー限定イベント「ソロキャンジャンボリー」を企画・運営した田中 啓太さんと佐久間 亮介さんです。
※日本オートキャンプ協会 オートキャンプ白書2019
目次
- 田中 啓太さん
- 三重県の「青川峡キャンピングパーク」で企画を担当。青川峡キャンピングパークは、キャンプ雑誌『ガルヴィ』で“西日本一”と賞賛された人気キャンプ場。2018年から同キャンプ場で「平日限定ソロ&デュオキャンプラン」をスタート。同年からソロ&デュオキャンパー限定イベント「ソロキャンジャンボリー」を主催している。
- 佐久間 亮介さん
- 初心者向けのキャンプ情報サイト「Hyper Camp Creators」(https://camp-in-japan.com/)を運営し、各メディアでも活躍中。2019年「ソロキャンジャンボリー Vol.2」の東日本版をプロデュース。仲間とグループキャンプを楽しんでいたが、5年前に沖縄を旅してソロキャンプに目覚める。国内のみならず、海外でもソロキャンプ経験のある生粋のソロキャンパー。Twitter:@sakumanx
ソロ&デュオ限定平日イベント「ソロキャンジャンボリー」を開催した理由とは?
前年に続き2019年6月、2回目が開催された「ソロキャンジャンボリー Vol.2」。1人もしくは2人で楽しむキャンパーだけが参加できるイベントです。2019年は初めて東西の2カ所で開催され、西日本は「青川峡(あおがわきょう)キャンピングパーク」に勤めている田中 啓太さんが、東日本はソロキャンプ歴5年目の佐久間 亮介さんがプロデュースしています。
そもそもソロキャンプ限定のイベントって、あまり聞いたことがありませんが、なぜ開催することになったのでしょう? その理由を田中さんにおうかがいしました。
「以前から、アウトドア用品メーカーのユニフレームさんと『キャンプブームといわれているけど、土日は満場のキャンプ場でも、平日はガランとしている』、『すでに満場になっている週末に、さらにイベントを開催する必要があるのか?』と話をしていたんです」と田中さん。
そんななか「平日にイベント開催するなら全面的に協力します!」というユニフレームさんからの力強い後押しと、2017年ごろから、平日にソロキャンパーからの予約が増えてきていたこともあり、「平日×ソロキャンパーならイベントを開催できるのでは!?」と考えました。
実際、2019年の「ソロキャンジャンボリー Vol.2」では東西2会場合わせて約180名が集まったのです。
働き方の多様化でソロキャンパーが増加。ソロ向けアイテムやプランも人気に
さらに田中さんは「2017年頃からソロキャンパーがじわじわと増え始めたことで、キャンプ業界全体がソロキャンプに注目し始めたんです」と教えてくれました。
実際、大手アウトドア用品メーカーからも、ソロキャンプ用品の発売が目立つようになり、「ソロキャンジャンボリー Vol.2」でも、各メーカーの出店ブースにコンパクトでコスパのいいソロアイテムがたくさん集まりました。
田中さんが勤める三重県の青川峡キャンピングパークでも、2018年から平日限定で「ソロキャンプ」と「デュオキャンプ」を楽しめる『ソロ&デュオキャンプラン』をスタート。デュオキャンプとは2人でキャンプを楽しむスタイル。このプランを利用すれば、たとえば通常、施設利用料+サイト料金で5千円かかる場所でも、3千円(テントのレンタルなし)でソロキャンプがお得に楽しめるような料金設定にしたのです。
このプランを始めたきっかけについて「多様な働き方が浸透してきて、平日でも自由時間を持てる機会が増えましたよね。そういうときにも、1人で気軽にキャンプを楽しんでほしいんです」と田中さん。
「大人数でキャンプ場の料金を割り勘できないソロキャンパーにとって、グループ向け料金の設定は利用しづらいはずです。キャンプ場としてもファミリー層が利用する週末とは違い、活気が少ない平日にお客さまを増やしたいと思っていて。そこで平日の料金を下げてソロキャンパーに利用してもらおうと考えました」
すると、このプランは大当たり! ソロキャンパーからの人気が徐々に高まっているそうです。
「自分だけの時間」だから楽しみ方もいろいろ! 初心者でも簡単に始められるのも魅力
次に、イベントの東日本版をプロデュースした佐久間さんに、ソロキャンプの魅力をおうかがいします。佐久間さんによれば、その魅力は「1人の自由さを満喫できる」こと。
「ソロキャンプなら誰かと予定を合わせることなく、自分の好きなタイミングで行けて、好きなことができるんです。焚き火をしたり、お酒を飲んだりしながら、ぼーっとしてもいい。インドアなこともできるから、テントのなかで読書することもありますね。ごはんを作りたくなかったら、市販の惣菜を買ってキャンプしてもいいんです。しかも、好きなモノを、好きな量だけ食べられます(笑)」
グループキャンプだと「今日はBBQじゃなくてパエリアに挑戦したい」と思っても、BBQしたい人たちに合わせないといけない雰囲気になりがち。一方、まわりに縛られないソロキャンプなら、窮屈な思いをしていた人にとって魅力的といえそうです。
とはいえ、キャンプって道具がたくさん必要そうだし、1人で道具を扱うのは難しいイメージが…。「1人で楽しめればいいんだし、誰かに見せる必要もないので、自宅にある調理器具や食器をクルマに積んでいけばOK。それにソロキャンプ向けのグッズはコンパクトだから、扱いやすいんです」と教えてくれました。それなら、初心者でも始めやすそう!
- Tental(テンタル)
- ソロキャンパー向けのレンタルセットを提供しているサイト
写真提供:https://tental.campic.net/campaigns/solo_camp01
キャンプ道具がなければ、キャンプ場やインターネットでもレンタルできるそうです。「ソロキャンプしたい!」という気持ちだけあれば、いつでもソロキャンパーになれる時代なんですね。
「キャンプに慣れていない初心者なら、まずはデイキャンプから始めることをおすすめします。そこでテントの張り方や焚き火の楽しみ方、外ごはんの作り方をマスターしてから、次のステップとして泊りがけのキャンプをしたほうが安全です。あまり寒くない季節に1泊2日くらいであれば、忘れものをしても何とかなると思います」
女子の1人カラオケみたいに「女子ソロキャン」も定番に
もう1つ気になっていることを佐久間さんに質問してみました。芸人のヒロシさんのようなスタイルは、オフロード車で森や湖に出かけてハンモックで寝る野宿(野営)だから「野性的なイメージ」が強いです。佐久間さん! ソロキャンプって、女子には難易度高くないですか…?
「実は、女性のソロキャンパーは大勢いるんです。旅行で使うキャリーバックにキャンプ道具を詰めて、気軽にソロキャンプを楽しんでいる『キャリーキャンパー』も見かけるようになりました。これは女性でも重いキャンプ道具が楽に運べるよう工夫した、新しいキャンプスタイルのこと。それを生み出したのが、もりふうみさんという女性なんです」
- もりふうみさん
- 佐久間さんの知人でもある、もりふうみさんは女性向けのキャンプ情報を発信するサイト「なちゅガール」の編集長。Instagramで12,800人のフォロワーがいる、大人気のキャリーキャンパー。写真提供:Instagram @fu_u.m
もともとは、家族で年1回キャンプをする、ファミリーキャンパーだった彼女。しかし3年前にキュートなキャンプ道具を発見し、1人なら「自分のかわいいと思うものを好きなように並べられる」という楽しさを知ってからは、すっかりソロキャンプの虜になってしまったそうです。
昔はグループで楽しむイメージがあったカラオケだって、今では女性1人でも楽しめる時代。ソロキャンプは、それと一緒になりつつあるようです。
「確かに、男性ソロキャンパーのような川や山で野宿するスタイルだとハードルが高いと思うので、女性ならクルマで乗り入れるオートキャンプ場がおすすめです」
もりふうみさんの連載記事はこちら↓↓↓
ソロキャンパー同士が組んで楽しむ進化系「ソログループキャンプ」
また興味深いのがソロキャンプといっても、1人で楽しむことが原則ではないこと。「キャンプ場ではソロキャンパー同士でだんだん顔見知りになっていき、デュオやソログループキャンプを楽しむ流れに広がっていくこともあるんですよ」と佐久間さん。
「ソロキャンジャンボリー Vol.2」で開催されたトークショーでは、「ソログループキャンプ」の楽しみ方について盛り上がったそう。「ソログループキャンプ」とはソログル、ソログルキャンとも呼ばれ、それぞれがソロキャンプの装備をして、現地で仲間と合流する楽しみ方です。
「トークショーでは、漫画『ふたりソロキャンプ』を連載する漫画家の出端 祐大さんと、キャンプコーディネイターこいし ゆうかさんにゲストとして参加してもらいました」と佐久間さん。
- 出端 祐大さん
- 漫画雑誌「イブニング」で『ふたりソロキャンプ』(講談社)を連載中。女子大生のソロキャンパーが中年ソロキャンパーに弟子入りし、2人の異なる楽しみ方や道具のこだわり、キャンプ料理のアイデアなど、豊富なアウトドア情報とともに描かれる話題の漫画。
- こいし ゆうかさん
- イラストレーター、キャンプコーディネイター。「女子キャンプ」の呼称を考案、女子のソロキャンプをいち早く推進。著書『カメラはじめます!』(サンクチュアリ出版)、『そうだ、キャンプいこう!』(standards)など。
10年以上前から女子ソロキャンプを推進してきたこいしさんは、ソロキャンパーが集まって楽しむグループキャンプでも「個食個泊」というソロスタイルを勧めています。
「こいしさんが推奨している個食個泊というのは、ソロ同士が集まるソログルキャンの場合でも、あくまで1人の時間を尊重して楽しもうというスタイルです。それぞれが自分のテントやクルマで寝たり、食事を用意したりします。共有するのは、真ん中に置かれた焚き火だけ」と佐久間さんは解説してくれました。
ソロが集まるグループキャンプでも、あくまで自分基準で自由に動くソロスタイル…。自由を愛するソロキャンプの精神はそのままなんですね!
周りの迷惑になってない? ソロキャンパーが「守りたいマナー」
自由が魅力のソロキャンプ。ただ、それはマナーを守った上でのこと。佐久間さんは初心者ソロキャンパーが気をつけたいことを4つ紹介してくれました。
- 1つ目は「音楽の音量」
- 「音楽を鳴らすことは『完全にNG』か『ほかのキャンパーの迷惑にならない範囲ならOK』など、キャンプ場によってルールが違います。とくに夜は就寝時間が決まっているところもあります。利用する施設のルールにのっとって楽しみましょう」
- 2つ目は「焚き火の処理」
- 「ソロキャンプなので、自分以外に火を管理する人がいません。5〜10分でもその場を離れるなら、火が燃え広がらないように対策をしましょう」
- 3つ目は「道具の管理」
- 「気をつけたいのは、キャンプ道具の窃盗事件が増えているということ。その場を離れるときは、クルマの中や南京錠などで鍵をかけたテントに収納したほうがいいと思います。とくに高価なものは注意!」
- 4つ目は「ソロキャンパーに干渉しすぎない」
- 「自分と同じソロキャンパーに話しかけて『仲良くなりたい!』と思う人も少なくないはず。もちろん“話しかけちゃダメ”という決まりはありませんが、1人で楽しみたい人もいます。話しかけたときの反応次第では、そっとしておきましょう」
なるほど、ソロキャンプならではのこんな注意点があるとは、勉強になりました!
ソロの調理道具はコンパクト! 工夫を凝らした「ソロキャンプ飯」
最後に2019年の「ソロキャンジャンボリー Vol.2」で大盛り上がりしたという「俺の私のソロキャン飯選手権」の様子をご紹介します。
「キャンプ飯」といえば、炭火を起こしてBBQしたり、薪割りをしてから焚き火でごはんを炊いたり…と重くて、大掛かりな道具が必要なイメージ。ところが参加者が使っていた道具は、女性でもラクに使えそうなコンパクトなものばかり!
とくにソロキャンパーの多くが使っていたのが「小型ガスバーナー」です。ほかにも鉄鍋やテフロンフライパン、飯盒、ホットサンドメーカーなどを使いながら、工夫を凝らした料理ができ上がっていきます。
おいしそうなソロキャンプ飯が続々と完成!
コンパクトな調理道具で、手際よく「ソロキャンプ飯」を作るソロキャンパーたち。完成した料理は、どれも彩り鮮やかで、本格的な料理ばかりでした。
自分の好きなことを贅沢に楽しんで、思いきりリフレッシュ!
コンパクトなキャンプ道具を持って、自分だけのタイミングに合わせて、サクッと気軽に行けるソロキャンプ。佐久間さんは、仕事で疲れたときにふらりとソロキャンプに行って、「いい休日だったな」とリフレッシュしているそうです。
休日、家で1人映画を見ながらお酒を飲むのは、なんだか虚しい…。だけど、ソロキャンプに行って自然の中で同じことをすれば、なんだか贅沢な気分になれるはず。女性が気になるお風呂問題も、温泉つきのキャンプ場もあるようだし。私もソロキャンプで自分だけの贅沢体験がしてみたくなりました!
文/流石 香織
写真/松本 いく子
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