車に積んでおきたい防災・災害グッズとは?災害危機管理アドバイザーが解説!

防災グッズを手にした和田さん

地震や台風、大雨、豪雪など自然災害が多い日本。トラブルは思わぬタイミングでやってきます。クルマの乗車中に災害にあったとき、どうすればよいのでしょうか?

自宅に防災グッズを備蓄するのはよく聞く話ですが、正直、クルマにまで防災グッズを常備するなんて考えたことはありません…。どんな状況を想定して、どんなものが必要なのでしょうか?

そんな疑問を解消すべく、防災のプロである防災士・危機管理アドバイザー和田隆昌さんにお話をうかがいました。

 

目次

 

和田隆昌さん

防災士・危機管理アドバイザー 和田隆昌さん
元アウトドア雑誌の編集長。豊富な知識を活かした災害リスクの専門家。オールアバウト防災・自然災害対策ガイド。屋外でのサバイバル方法やSNSの災害時利用法などリアルな防災対策を行なう。自治体の災害対策マニュアルの作成やセミナーの開催も。

 

【防災のプロがチェック】12アイテムが箱に入った車載用「防災安心セット」

今回、防災のプロ、和田さんに厳しくチェックしてもらうのは「防災安心セット」と「スマートレスキュー」です!

どちらも、Hondaのクルマの純正アクセサリー(オプション)を扱うホンダアクセスから販売されているものです。

 

防災安心セットのイメージ

防災安心セット 1人用7,920円、2人用11,880円、3人用15,840円(すべて税込)

まずは「防災安心セット」から。こちらはクルマに常備しておけば、車内で長時間過ごさなければいけなくなったときにも安心な、厳選された12アイテムが入っているとのこと。具体的にどんなものが入っているのか、それらはどういうシーンで役に立つのか、1つずつ見ていきましょう。和田さん、よろしくお願いいたします!

和田さん

和田さん
非常用持ち出し袋など防災セットは、身の安全を確保するための一次避難に必要なグッズと、避難中を快適に過ごすグッズを備えるのが基本です。乗車中に災害にあったとき、どんなアクシデントがあるか想定しながらセットの内容をチェックしていきましょう。

 

防災安心セットの封を開けた様子

さっそく、1人用の箱を開けてみると…。小さな箱にこんなに入っていたのかと驚くほど、ぎゅうぎゅうにグッズが詰まっています。2人用、3人用にはそれぞれ人数分が入っているようです。

 

防災安心セットの中身を取り出す様子

手袋やホイッスル、クッキーにマスクやポンチョまで。いったいどういうシーンで役立つのか、災害未経験者だとまったく用途がわかりません。

 

防災安心セットの中身

そこでわかりやすいよう、用途別に和田さんにざっくり分類してもらいました。

  1. 快適アイテム
  2. 危険から身を守るアイテム
  3. 知らせるアイテム

ではそれぞれ見ていきましょう!

 

【快適アイテム】クルマの中で長時間過ごすときに、確実に欲しくなる衛生グッズ

防災安心セットの快適アイテム

クルマの中で長い時間を過ごすとき、どうしても我慢できないのが生理現象です。衛生用品と食料で、最低限の「快適」をキープ!

① 7年保存水
99.9%不純物を取り除いた純水。未開封で賞味期限は7年、耐温度域は-20~80℃。「飲む、傷口を洗うなど、水は必須アイテム。500mlが1本入っていましたが、それだと心もとないので1人2本は常備しておきたいですね。この水は耐温度域が広いので、エンジンをきったあとの温度変化の激しい車中にも置きっぱなしできるのが◎」

② 7年保存クッキー
風味豊かなチーズ味のクッキー。未開封で賞味期限は7年、耐温度域は-20~80℃。「味も悪くないし、気軽にさくっと食べられるのがいい。美味しいものや甘いものが少しあるだけでも、災害時のストレスやしんどい気持ちを和らげてくれます」

③ ハンディトイレ(小便用)×2袋
約700mℓの尿をゼリー状に固め、逆止弁と吸水ポリマーが尿の逆流と臭いを防ぐ使い捨てトイレ。「クルマから離れて避難所に向かったとしても、水洗トイレは使えないと思った方がいい。だから、携帯用トイレは多めにストックしておきたい必須アイテムです」

④ ポンチョdeトイレ(大小便兼用)
密着チャックで臭い漏れを防ぎ、水分をゼリー状に固める使い捨てトイレ。器状に自立するポーチ型トイレで、目隠し用ポンチョとティッシュ付き。「とても優秀なトイレグッズですね! クルマから離れて用を足すときにも、クルマの後ろのシートでも使えます。災害時だけではなく、高速道路の渋滞でトイレに行けないときにも役立ちそう」

⑤ ポケットティッシュ
8枚入りの水に溶けるティッシュ。「水に溶けるとトイレでも使えるので便利ですね。ほかにウエットティッシュがあると、断水で手が洗えないときも重宝するので、これにプラスして備えておくといいでしょう」

 

ポンチョdeトイレの目隠し用ポンチョを広げる和田さん

ポンチョdeトイレの目隠し用ポンチョ。女性にはうれしい

和田さん

和田さん
豪雪や渋滞、クルマの中に閉じ込められるなど長い時間を車中で過ごすとき、なんといっても困るのは生理現象です。携帯トイレなどの衛生用品と、飲み水、簡単な食料は、必ず備えておきたいアイテム。特に女性はトイレで長蛇の列もざらなので、これだけしっかりしたトイレグッズが入っていると安心です。

 

【危険から身を守るアイテム】車外の作業や一次避難のときに、あると心強いリスク回避グッズ

防災安心セットの危険から身を守るアイテム

続いてグローブやマスクなど、危険から体をガードする道具をチェックします。

⑥ 防じんマスク
粒子捕集効率95%以上の防じんマスクで、PM2.5やウイルスなどの吸入リスクを回避。「地震で建物が倒壊すると、想像以上に粉じんが飛び散り、有害物質を吸い込んでしまう危険性があります。防災セットに入っているマスクは簡易的なものが多いのですが、これは高機能なマスクを手がける3M社製。かなり優秀で安心感がありますね。口や鼻をしっかりガードでき、フィット感も抜群!」

⑦ あんしんグローブ
指先や手のひら部分は摩耗に強い人口皮革を使ったグローブで、夜間でも見つけやすい反射板付き。ベースは蒸れにくいメッシュ素材で、手に優しくフィット。「タイヤ交換などの車外での作業やがれきの中を歩いて避難するときに役立ちそう」

⑧ 常備用カイロ
未開封で3~5年と長期保存できる、貼らないタイプのカイロ。「冬場の車外での作業や、豪雪で車に閉じ込められたときなど、あると安心。長期保存できるタイプですが、カイロは普段でも使うアイテムなので、私は使ったら買い足す(=ローリングストック)ようにしています」

⑨ 3WAYポンチョ
防寒対策、レインウェア、着替えやトイレの目隠しにも利用できるポンチョ。反射テープ付きで夜間でも安心。「かさかさ音のしない静音タイプなので、毛布として使ってもうるさくない。傘と違って両手が自由に使えるポンチョは、悪天候の災害時にも重宝します」

 

防じんマスクを手に取る和田さん

この防じんマスク、高性能ですね。欲しい!

和田さん

和田さん
災害時にはマスクは必須。屋外で粉じんから身を守るだけではなく、避難所などでの感染症からもガードしてくれます。グローブやポンチョは、クルマに何か問題があって車外で作業するときに役立ちますね。

 

【知らせるアイテム】気づいてもらう、伝えるなど、あると便利なグッズ

防災安心セットの知らせるアイテム

写真の4アイテムは1人用、2人用、3人用の各セットに人数分ではなく、各1個ずつ入っている

誰かにメッセージを残したい、自分がここにいることに気づいて欲しいなど、メッセージを発するアイテムがこちら。

⑩ 災害時伝言カード&筆記用具
クルマを離れるとき、氏名や連絡先を記入してダッシュボードなど見える場所に置いて使用。この筆記用具(正式名ダーマトグラフ)はフロントガラスにも文字が書け、雨に塗れても消えにくいペンのこと。「カードは被災地で使われているのを見たことはありませんが、家族や知人だけではなく、“クルマを動かしてOK”など避難所に集まる人へのメッセージにも使えそう。筆記用具はあると便利です。クルマから離れて避難所に行くことになっても重宝します」

⑪ 緊急用ホイッスル
人の耳に最も聞こえやすい3,000Hz付近の音が出せるホイッスル。弱く吹いても高い音が出る。「がれきに埋もれたときなど、救助隊にいる場所を知らせるために使います。クルマの場合はトンネルの崩落とかが考えられますね」

⑫ あんしんペンライト
軽く折り曲げるだけで光る、電池不要の簡易ライト。防じん・防水構造で、強風や豪雨、水中でも使用できる。「光度はあまり強くないものの、クルマのフロントに置くだけでも安心するし、誰かに気づいてもらうこともできます。ちゃんとした懐中電灯かヘッドランプが欲しいところですが、サブの灯りとして活躍しそう」

和田さん

和田さん
停電状態の被災地は真っ暗。まさに沼のような闇に包まれて、かなり不安で怖い夜を過ごすことに。しかし、クルマのライトをつけているとすぐバッテリーが上がってしまうのでNG。そんなときに、電気を使わない灯りがあると安心感が違います。また、ペンやカードなどアナログな伝言キットは同封されているので、スマホをいつでも使えるようにクルマから充電するグッズを自分でそろえておくと安心です。

 

コンパクトに収納できる工夫もあり。クルマから離れるときも持ち歩ける

防災安心セットに付属している布バッグと面ファスナー

「防災安心セット」の1人用は、H24×W21.5×D9cmとA4サイズに収まるコンパクトさ。トランクに置いても箱が倒れたり動いたりしないように、箱の底と車のトランクに貼れる面ファスナー(写真右手前)がついています。防災グッズが入れられるコットン製のバッグがついているので、クルマから離れて行動するときも便利です。

 

レビューする和田さん

全部のアイテムをチェックし終わった和田さん。このセット、ずばり役に立ちますか?

和田さん

和田さん
個人的に加えたいアイテムはありますが、何かが起きたとき、より安全な場所に移動する、助けに来てもらうまで待機するなど、短時間の対処であれば十分に役に立つセットだと思います。寒暖が激しい車内でも長期保存できる水やクッキーもクルマの備蓄向きですし、トイレ用品など絶対に必要になる衛生グッズの充実に好感がもてました。

防災安心セットのオンライン購入はこちら

 

【防災のプロがチェック】車体の水没から身を救う「スマートレスキュー」

スマートレスキュー
スマートレスキューの詳細
スマートレスキュー 6,050円(税込) ※Honda車専用

続いてチェックするのはこちらの「スマートレスキュー」という商品。ホルダーに収納されているのは、赤いハンドルの先にドライバーのような金属が突き出た手のひらサイズの小さな棒。これは一体、何に使うのでしょうか? 

どうやら和田さんが実際のクルマを使って説明してくれるようで…

 

和田さんが乗っているクルマが水没するイメージ

…た、大変です! 和田さんが乗ったクルマがどんどん水没していきます!!

和田さん

和田さん
台風で川が氾濫したり、豪雨で浸水したり、津波が押し寄せたり…、水没の危険は突然に急激にやってきます。でも、水没したクルマって、水圧でドアが開かなくなるって知っていました? しかも車内に水はどんどん浸水してくる。大の男ががんばって開けようとしてもダメだし、傘やドライバーで窓ガラスを叩いても割れやしません。そんなピンチのとき、クルマから脱出用ツールとして使えるのが、このスマートレスキューなんです。

 

クルマに乗ってスマートレスキューを指差す様子

ふだんは運転席からすぐ手が届く、運転席側のグラブレールに装着。水没した和田さん、スマートレスキューをさっと取り出すと…

 

スマートレスキューでシートベルトをカットしようとする様子

まずはシートベルトをカット。赤い部分はハンドルではなく、ベルトカッターでした。
「水没してあせっているとき、シートベルトが外せない!ってあわててしまう人が多いんです。シートベルトが故障してしまうこともありますしね」

 

スマートレスキューで窓を割ろうとする様子

シートベルトから自由の身になった和田さん。すかさず、スマートレスキューの先端をフロントガラスに押し当て、左手でぐっと力を入れると

 

スマートレスキューでクルマの窓ガラスを割る様子

一瞬のうちにガラスにヒビが入り、パンっと割れる仕組みになっています(上写真の出典は動画から)。詳しい様子はこちらの動画(42秒)をチェック!

金属棒の先端には、金属を削れるほど硬い“超硬チップ”が付いているので、簡単にガラスが割れるという仕組み。

スマートレスキューを使えば力の弱い女性でも簡単にドアガラスが割れ、無事にクルマから脱出することができます。ポイントはドアガラスの端を狙うこと。ガラスが枠で固定されている端の部分は、中央部分よりもハリがあるため割れやすくなっているそうです。なお、フロントウインドウガラスは特殊なガラスなので、スマートレスキューを使っても割れません。

和田さん

和田さん
たくさんの脱出用ツールを使ってきましたが、このスマートレスキューほど小さいツールは初めて。これなら運転席のグラブレールに付けていても邪魔になりませんね。冠水しそうな時点ですぐ車から脱出するのが基本ですが、運悪く水没してしまったら最後、脱出用ツールがないと逃げるのは難しい。ゲリラ豪雨や激しい台風が多い昨今、脱出用ツールはもしもの備えに装備したいアイテムのひとつといえます。

スマートレスキューのオンライン購入はこちら

 

【まとめ】災害が起きる前に、道具も知識も備えておくことが大事

和田さん

防災に必要なのは「非常食や懐中電灯?」と一般的なことは思いつくけれど、和田さんの話をうかがっていて印象的だったのは「衛生グッズ」の重要性でした。携帯トイレやウェットティッシュ、オーラルケアやマスクなど、体を清潔に保って病気やケガから身を守ることも大事なんだと気づかされました。

自然災害や事故は突然起きるもの。災害が起きてから慌てて準備しても、間に合いません。必要なのは正しい知識と、何が自分に必要なのかを考えて道具を選ぶこと。クルマに乗ることが多い人こそ、外出先や車中でのトラブルを想定して、リスクを回避できるアイテムを備えたいですね。

 

取材・文/嶺月 香里
撮影/矢野 宗利

 

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